連合軍は、ブリュッセル公園を守り通したが、帝国軍は未に攻勢を諦めていない。
「戦いは終わったが、気は抜けないな?」
「おいっ! 誰か居ないかっ!」
ウェンは、戦闘が終結した事で、次なる戦いに備えるため、重たい木箱を運んでいる
そんな中、モンターニュ・デ・パルク通りから、一台の自転車が走ってくる。
「なんだ? お前は何者だっ!」
「いったい、何しに来たっ!」
「伝令兵だっ! 味方を呼ぶために来たんだっ!」
ウェストとハキム達は、北側の完全崩壊した廊下から、民兵らしき人物に目的を問いかける。
すると、彼は援軍を呼びに来たと言って、走らせていた自転車を止める。
「シャンセルリー通りの郵便局が激しい攻撃に晒されているっ! 俺は他の連中を呼びに行くっ!」
「分かった、直ぐ用意する」
それだけ言うと、伝令兵は再び自転車を動かして、何処かへと去って行った。
彼の背中に向かって、ギデオンは大きな声で返事を伝えた。
「どうする? 奴は敵のスパイかも知れない?」
「その可能性が高い…………」
「無線は電子妨害で使えないしな」
ウェンとハキム達は、伝令兵を味方だと思わず、もしかしたらと顔を険しくさせる。
ヴァンパイアやソーサラーが変身して、混乱を誘発させようとしている。
そう考えて、二人とも警戒心を解かない訳だ。
ギデオンも、無線が使えない事を確かめ、どうしようかと頭を悩ませる。
「ん? 味方の車両部隊が来るわっ?」
「本当に、苦戦しているかは分からないが行くとするか」
「なら、近道させてやるっ! 退いてろ」
パトリシアは、四台もの白いキャスパー装甲兵員輸送車が走っていく様子を見た。
それを見て、ウェストは現場に行って確かめようと考えた。
もし、本当に苦戦しているならば、直ぐに援軍として向かう必要があるからだ。
そして、ズカズカと歩いてきて、二人を退けた、スタッロはウォーハンマーを振り回した。
「これでよしっ!」
スタッロは、ウォーハンマーを逆さにして、その柄に、ビッグ・クロスボウを載せる。
彼は、グラップリングフックを放つと、それは道路側に近い場所の瓦礫に突き刺さった。
「ほら、行けっ!」
「いや、フックが無いわよ?」
「BFなら、洗濯用のハンガーで滑って行くんだけどね」
「ああ、なら、こうすれば良いのよ」
得意気な顔をする、スタッロに対して、メルヴェとナタンは降りる方法がない事で困る。
すると、ヤブロー・チャクはコップ付きスナイダー銃を両手で掴むと、ロープを滑って行った。
「はぁ~~分かったわ、行くしか無いわね? ロープの用意、ありがと♡」
「へへっ! 大したモンだろ?」
パトリシアは礼を言いながら、バレットM82を使い、ロープを滑って行く。
すると、また、スタッロは得意気な顔をした。
「俺達は、装備を整えてから向かう」
「こっちもだ、まだ用意が出来ていない」
「ナタン、ハキム、メルヴェ、行くぞ」
ウェンとギデオン達は、木箱やプラスチックケースから、武器と弾薬を取り出す。
一方、ウェストはクリスヴェクターを使って先に降りていった。
「ふっ! お前たちも早くこいっ!」
「私達も行くわよ?」
「俺は、コイツを回収してから行く、お前らは先に行けっ!」
「それじゃ、先に行くよっ!」
ハキムは、ムーディーAKMSを使い、メルヴェはイエローボーイを両手で掴みながら降りていく。
スタッロは、ナタンに早く向かうように促すと、彼もAMDカービンを使って滑っていった。
「よっ?」
滑空しながら地上付近で、左手を離して着地した、ナタンは周囲を確認する。
「ナタン、こっちよ? こっち」
「スナイパーが居るかも知れないからね、気は抜けないよ」
「大丈夫そうだが、どうだか」
「アレ、そう言えば? コリャン軍の二人は?」
メルヴェとパトリシア達は、BNPビルの壁とガラス近くで、二人とも待機していた。
ムーディーAKMSの弾倉を抜いて、残弾数を確認しながら、ハキムも敵狙撃兵を警戒している。
そんな中、ナタンは建物に、イとユン達が居なかった事に達が気づいた。
「彼等は、特殊部隊なのよ? ひょっとして、援軍を呼びに行ってたのかも知れないわ」
「それより、味方部隊が来たわっ!!」
メルヴェは、二人の事を考えたが、ヤブロー・チャクは大きな装甲車が走ってくる姿を視認した
茶色い、ブッシュマスター防護機動車が、二両編成で進んでいく。
さらに、黄緑色のコマンドウ装甲車が現れた。
「お前たち、乗ってけっ!」
「銀行まで向かうんだろう?」
コマンドウ装甲車が、建物側に近づいて来ると、左側面のドアが下に開かれた。
車内から、連合軍兵士と白人民兵たちが乗るように誘って来る。
「今、乗るわ」
「待ってて」
メルヴェとパトリシア達を含めた一向は、コマンドウ装甲車に乗り込んでゆく。
「よし、出してくれっ!」
「顔は、車内から出すなよ」
全員が乗り込むと、白人民兵は運転手の連合軍兵士に発進するように頼んだ。
それから、コマンドウ装甲車は走りだし、路上を進んでいく。
「ん? あの色は…………味方だ」
運転手は、交差点に味方機甲部隊が展開している事に気づく。
ナタンも見てみると、そこには、15式軽戦車とサブラ軽戦車が鎮座していた。
しかし、次の瞬間には両車とも、砲身から一気に爆発音を吹いた。
「うわっ! 脅かしやがって」
「あそこも、敵が攻勢を掛けて来たか?」
運転手は愚痴を呟きながら、右側のシャンセルリー通りへと進む。
その様子を見て、連合軍兵士は、敵が再び本格的な侵攻に出たと思い、額から汗を垂らす。
ナタンは、仕舞われたドアの小窓から外を眺めるが、味方歩兵が走り回る姿を目にする。
両側にある中世風の建物は、元々はクリーム色だったが、帝国により鼠色に塗り替えられていた。
しかし、ここは連合側が占拠しているらしく、敵の攻撃は飛んでこない。
「コロニー通りを、塞いでやがるな?」
「敵は、あっちから来ているのか」
白人民兵が呟くと、ウェストはドアの小窓から交差点・南西を見た。
そこには、先ほどのブッシュマスター防護機動車が、横に並びながら機銃掃射を行っていた。
また、周辺にはPMC要員やレジスタンス員たちが、銃やRPGー7を撃っていた。
「ここで、降りろっ! 俺たちは大聖堂に行くっ!」
「分かったぞ、そっちも幸運を祈るっ!」
交差点のど真ん中で、運転手は停車させると、連れてきた味方に降りるように伝える。
ウェストは、言われた通り降りる前に、ドアを開きながら彼に礼を言う。
「ここが、目的地か…………」
全員降車すると、銀行の方に向かおうとしたが、急に後ろで爆発が起こった。
ナタンは、後ろを振り返ると今まで乗っていた、コマンドウ装甲車が炎上している様を目にする。
「離れろーー!? RPGーの砲撃だっ!」
「こっちに来るんだっ!」
「うわ、あ………くっ!」
「ナタン、急げっ! 走らないと的になるっ!」
ブッシュマスター防護機動車の方から連合軍兵士が叫び、レジスタンス員がナタン達を呼ぶ。
そんな中、ウェストは走りだし、ビヨンド・ユー・アイズの入口へと急いで向かう。
「私達も行くわよっ! 早く走りなっ!」
「ナタン、急いでっ!?」
「ああ、分かっているっ!!」
「急がねば、死ぬだけだ」
パトリシアとメルヴェ達が、砲撃や機銃掃射による土煙が道路に舞う中、素早く走っていく。
その後に続いて、ナタンとハキム達も、ビルに向かって駆け出す。
交差点には、彼等が走っている時も絶え間なく、着弾音と火柱が上がった。
こうして、連合側は新たな戦場で、帝国側と激突するのであった。
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