【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第123話 地上へと

公開日時: 2024年7月10日(水) 10:54
更新日時: 2024年7月13日(土) 11:36
文字数:3,061


 階段を上る、ナタンは黙々と、外を目指して、ひたすら進んでいく。



『…………帝国側は自分ですら潜伏工作員《スリーパー》だと分からないスパイを投入しているのか…………』


 帝国が持つ恐ろしい程の高い洗脳技術に、ナタンは嫌悪感を感じる。


 先ほど出会った、イラクリも、元はレジスタンス員だったのだろうか。



 一度、帝国に捕まってから洗脳を施され、知らぬ間に、悪の手先として働いていた。


 それは、まるで地中に潜む地雷みたいに、その日が来るまでは、本人にすら分からない。



「敵を排除」


「こっちは捕虜を得た…………」


「ぐぅ………………」


 いざ、その時が来れば、いきなり本人にすら分からず、作動する狡猾な罠。


 信じていた仲間が、ある日、突然に敵側へと寝返る卑劣な仕掛け。



 帝国の洗脳技術を憎む、ナタンは連中が行う非人道的な活動を許さない。


 そんな彼だったが、声や銃声が階段が、階段を上がった先から聞こえてくることに気づいた。



『…………またこれか? 済まない…………今の俺に君達は救えないんだ…………』


 そこに出た、ナタンが見た光景は、衝撃的なものだった。


 死体に紛れていた、レジスタンス員を帝国兵が見つけて、銃で撃ち殺す。


 さらに、ワーウルフが、女性レジスタンス員の頭髪を掴んで、引き摺る後ろ姿などだった。



「こっちの奴は不意討ちを仕掛けようとしたから、撃ち殺してしまった」


「しょうがねぇさ、それよか俺は気絶しちまった、この女を連れてくぜ」


 黒い服装に、フリッツ・ヘルメットに防弾ベストを着た、トーテン・シェーデル・ゾルダート。


 奴は、服装と同じ黒色のAK200を抱えている。


 黒色の長髪をした、ワーウルフは全身に黒いラバースーツを着込み、黒い胸当てを装備していた。


 右手には、灰色のステッチキンを持ち、左手は金髪ショートの女性レジスタンス員の毛髪を掴む。



「俺は下に報告に向かう」


「じゃ、俺は地上に行くぜ」


『…………奴等は邪魔だが、通り抜けるしかないな…………』


 やがて、トーテン・シェーデル・ゾルダート&ワーウルフ達は、別れ始めた。

 

 ナタンは此方に歩いてくる、トーテン・シェーデル・ゾルダートの側まで走っていく。



 その通り過ぎさまに、彼が左側に避けると、向こうも気を使って、右側に避けた。



「やっぱ、番《つがい》にでもして貰おうか」


 捕らえた女性レジスタンス員を、ズルズルと引き摺る、ワーウルフは独り言を吐く。


 ナタンは、奴よりも後ろを走っていたが、その一言に胸が痛くなる。



 気を失った彼女は、眉をハの字にして昏睡状態で眠っている。


 このまま放って置いたら、彼女は確実に帝国兵に洗脳されてしまうだろう。



「せっかくだから、同じワーウルフにしてやるか」


『…………済まない…………可哀想だが今は君に何もしてやれないんだ…………』


 ワーウルフの右脇を通り過ぎた、ナタンは再び奴が吐いた、一言に反応した。


 女性レジスタンス員を救う方法はなく、下手に関われば、自身が帝国兵に捕まる恐れがある。


 また、仲間達の拠点を目指す、彼は先を急がなくては成らない。



「はぁ…………」


 そう自分に言い聞かせつつ、ナタンは呑気に歩く、ワーウルフの前を走って行った。



 その後。



 走っていた、ナタンは廊下を抜けて、左側にある階段を駆け上がる。

 

 やがて、幾つもの階を上がった、彼は広い空間へと辿り着いた。



 そこは、何処かの地下室らしく、両ドアが一つだけあった。



「ここから、外に出られるかな?」


 ナタンが両扉を開けると、そこは広いトンネル状の場所に出た。


 この逆U字型をした、形状から察するに、ここは第二次大戦中に作られた、地下防空壕だろう。



 彼は、暗闇と静寂に包まれた、長い通路を黙って歩いていく。


 ここの両壁には、多四角い穴が、多数存在しており、中に何があるかは不明だ。



『…………何かが居そうだけど行くしかないな? と言うか凄く不気味だ…………』


 多数の四角い穴だが、これらは倉庫や食糧庫として使われる小部屋だ。


 そこから光る、ライトやランプ等の灯りは、一切なく、ただ静まり返っている。



「…………進むしかないか、はぁ」


 ナタンは、溜め息を吐きながら、真ん中を進み、暗闇の先を目指す。



「うん? 死体か」


 ナタンは歩きながら、道の脇に死体が頃がっているのを目にする。


 勿論、それ等はレジスタンス員の遺体が殆どであり、帝国兵は少ない。



 無惨にも、体を銃弾で撃ち抜かれた者、体中を切り裂かれた傷で死んだ者。


 そう言った、酷い外傷で死んだ者達の亡骸を目に入れることは気が滅入る。



『…………酷いな…………抵抗空しく激しい攻撃を前に全滅したか…………』


 暗闇の隅に転がる、緑や茶色と言った、服装をしている物言わぬ死体を眺める、ナタン。


 両脇にある、それ等の亡骸が突然動き始めないかと彼は思う。



 昔、彼はレオと共にプレイした、ゾンビ物のゲームを思い出す。



『…………確か死体に紛れた、ゾンビが襲ってくる事があったな…………』

 

 ナタンは、ゲーム内で、いきなり起き上がって足を掴んだ、ゾンビの事が頭に浮かんだ。


 もしかしたら、レジスタンス達の死体も起き上がって、自らを襲うかも知れない。



 そう考える彼は、道の真ん中を、慎重に歩きながら進んでいくが。



「ぐらぁっ!」


「はっ!?」


 急に、右足首を掴まれた、ナタンは後ろに倒れてしまう。



「くっ! 生き残りが居たのか、うぅっ!」


「死ねぇっ!!」


 突然の出来ごとに驚いたまま、ナタンは必死で、後ずさった。


 しかし、生き残っていた、レジスタンス員から右足を掴まれているので、上手く下がれない。


 この好機を逃すまいと、奴は右足を掴んだ右手を離さない。



 そして、左手に逆手持ちで握る、コンバット・ナイフを、彼の脇腹を目掛けて振るった。



「まっ! まっ! 待てっ!!」


「誰が待つか、この野郎」


 ナタンは、コンバット・ナイフを力強く振るう、レジスタンス員の一撃を避ける。



「死ねぇっ!! 帝国の犬めっ!!」


「俺は帝国兵じゃっ!?」


 直後、レジスタンス員による、ナタンの脇腹を狙った斬撃が再度迫る。


 その瞬間、彼は右手を前に出し、ガッチリと奴が繰り出した左拳を握る。



 これにより、奴のコンバット・ナイフを何とか、彼は受け止めた。


 だが、そのまま彼等は、揉み合いを続けて、互いに体を揺らす。



「ぐぅぅ………………クソッ!!」


「へへ…………もう少しだせ」


 しかし、その激しい攻防だが、それも遂に終わる時がきた。


 ナタンの首筋にまで、レジスタンス員が鋭いナイフを突き刺さんと、手を伸ばしたからだ。



「くぅぅっ!」


 段々と、ナタンに迫る、銀色に輝く、コンバット・ナイフの切っ先。


 それを、彼は首筋から剃らそうと、両手で、レジスタンス員の左手を押さえる。



「ぐぅおおっ!」


「あっ!?」


 ナタンは、必死の形相で反撃し、無防備なレジスタンス員を下から思いっきり蹴った。


 その勢いに負けた、奴は倒れ混み、苦しそうに腹を押さえる。



 彼は、動きを止めた奴の隙を見逃さす、拳銃を引き抜いた。



「済まん、これも生き残る為なんだ…………」


「くっ!! コイツを喰らえっ!?」


 MASー1935を撃った、ナタンの方が、一瞬だけ、レジスタンス員より早かった。


 奴の方も、スローイング・ナイフを投げようとしていた。



 だが、それは奴が頭を撃たれた事により、彼の左頬を掠めて飛んでいった。



 直後、金属音が静かな地下防空壕内に響き渡るのだった。



「終わったか、終わったんだよな…………」


 不意に呟いた、ナタンは顔中から冷や汗を垂らして、辺りを見回す。


 そこに見えるは、相変わらず、物言わぬレジスタンス員の死体だけだ。



 もうここには、誰も居ない。



 そう考えた、ナタンは再び前を向いて歩き出した。

 面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。


 あと、生活費に直結するので、頼みます。


 (^∧^)

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート