【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第196話 味方戦車と敵戦車の間で

公開日時: 2024年7月12日(金) 01:13
更新日時: 2024年7月14日(日) 10:05
文字数:3,269


「グラナータッ!」


 誰かが叫んだ瞬間、道路に柄付き手榴弾が投げられた。



 当然、それは数秒後に爆発した。



「うわ、敵が前進してきている? これだと、こっちが押されちまうっ!」


「RPGの支援の元、防弾兵が歩いて来るわっ!」


「ありゃ、ロシャ製の複合装備《ラトニク》を着けているんだっ!」


「私の幻影魔法も、所詮は幻術《デコイ》を魅せているだけ」


 機甲部隊による支援の元、敵歩兵部隊が前進してくる。



 銃弾を恐れず、地上を突撃する兵士や、ビル内からRPG弾を放つ者も居る。


 さらに、ビルの二階や三階を制圧しながら攻勢を仕掛けてきた様子が伺える。



 ナタンとメルヴェ達は、それを見て、斜め向かいのビル窓や道路に自動小銃を乱射する。



 ビル内から地面に伏せながら、チューは03自動歩槍を撃つ。


 アイリーも、JSー7、62狙撃銃で、窓ガラスに写る敵RPGー兵を射殺する。



「敵歩兵が多すぎるっ!?」


「しかも、防弾だしっ!?」


 ナタンとメルヴェは、路上を飛び交う銃弾や機関砲弾に当たらないようにと。


 自動小銃を抱える両手だけを、二人は屋内から出して、とにかく適当に乱射する。



 それから、敵味方双方の比我《ひが》を確認する。



 リンクス120歩兵戦闘車も、いつの間にか完全に破壊された。


 だが、残るブーメランク装輪式装甲車両からは、30ミリ機関砲が撃ち続けられている。



 そして、味方の05式自走迫撃砲も、二台ほど炎上していた。



「ブーメランクが、コルネットを撃ったっ!?」


「ク……残る一両も、破壊されました」


「まだ、装甲車があっただろ?」


「あれじゃ勝てないの? やるしかないわよっ!」


 二台のブーメランク装輪式装甲車両からは、対戦車用ミサイルが発射される。


 それにより、残り僅か一両だけとなっていた、05式自走迫撃砲も完全破壊された。



 また、背後に控えていた、08式歩兵戦闘車も、同様に爆破されてしまった。



「マジシャン達も、死んだのか?」


「氷の壁が無くなっているわっ!」


「氷壁が無くなれば、後はミサイルでやるだけ」


「これじゃ、俺達は殺られちまうっ?」


 チィーナ軍・機甲部隊を主力とする装甲戦力は、全て帝国側が破壊し尽くしてしまった。


 ナタンとメルヴェ達は、破壊された味方機甲部隊の車両と、雪上に倒れているマジシャン達を見た。



 一般のチィーナ兵と、彼等は何ら変わらない格好をしているが。


 物言わぬ仏と化した、場所が機甲部隊の正面だった事から魔法を展開していたと分かる。



 冷静に思考を巡らせながら、アイリーは敵歩兵との距離を、スコープを覗きつつ測る。


 チューは、機甲戦力が壊滅的な被害が出たことで、後退しようかと考える。



「ウェン隊長たちも、後退しているな?」


「私達も、早期撤退を」


 向かい側では、ビルの柱に隠れている仲間たちと、イズラエル兵たちが見える。


 チューとアイリー達は、そう言いつつ路上から出るか、屋内の奥部に向かおうかと考えていると。



「ん? なんか変な音がするっ! マシンガンか?」


「ミサイルかしら?」


「伏せろっ! 敵の砲撃だっ!」


「爆風がきますよ」


 ダダダダと、遠くからマシンガンが撃たれたような音が鳴り響いた。



 それと、同じく空から妙な音が聞こえた。



 ナタンとメルヴェ達は、耳を澄ましながら新しい敵車両が、機関砲を撃ってきたのだろうと思う。


 しかし、チューとアイリーは、それが砲撃だと即座に判断して、サッと素早く床に伏せる。



 直後、轟音とともに凄まじい嵐のような砲撃が路上に降り注ぐ。



 それは、まるで機関銃や機関砲を撃っているかのごとく、途切れなく落下してくる。


 また、砲弾に混ざり、時折火球も一緒に弧を描くように落ちてきた。



「迫撃砲だっ! いったい何門用意したんだっ!」


「火球を放つのは、敵のウィザードですね」


 降り注いだ砲弾が道路を破壊しまくり、穴ボコを量産する。



 その度に、コンクリート片や土埃を舞い上げる。



 この砲撃に混じって、放たれ続ける火球は、路上に着弾するとともに弾ける。



「今度は、空襲だっ!?」


「ヘリ・タクシーだわ、でも、色が黄色じゃなくて、黒い?」


「つまりは軍用って、事だ」


「これは不味い…………」


 通常は黄色い機体である、セルヴェルトSV5B無人タクシーが、上空から飛来する。


 これは、ティルトローター機をヘリコプター並みに小型化した物である。



 帝国が、ハンザを支配下に納めた際、空中タクシーとして、富裕層用に導入された。



 しかし、今、空を飛ぶのは軍用型。



 つまり、大量の対戦車ミサイル&ロケットポッドを運搬している。



「はやく、奥に行こうっ!!」


「逃げなきゃっ!?」


「これは不味い、不味すぎるっ!」


「こけに留まれば、確実に」


 軍用の漆黒カラー、セルヴェルトSV5B無人兵員輸送機は、ついに空襲を開始した。



 機体下部に搭載した、ロケット弾57ミリSー5専用連装ポッドは四基もある。


 両脇下には、対戦車9M17PファラーンガーMを取り付けられている。



 それらから、一斉に火が吹いた。



「うわっ!? 連中、俺たちを丸ごと焼き払う気だっ!!」


 ビル奥部に入っていた、ナタンは道路を完全に焼き尽くす爆撃を目にした。


 連合側は、空と地上から完全に押されつつあり、敵の戦力は、凄まじく強大だ。



「うおおおおおお~~~~~~!!」


「即時撤退、行くわ」


「待てっ! また、敵が来たらしいっ!」


「逃げる方向からだぞっ! どうなってるんだ?」


「喚いても仕方ないわ、逃げるわよっ!?」


 敵のヘリコプターが、機銃弾を放ちながら上空より降下してくる音がする。


 そのローター音は、よりにもよって逃げる方向から聞こえてくる。



 しかも、大勢の兵士が後方に回り込んでいたらしく、奇襲を仕掛けてきていた。



 アイリー・チュー・ナタン・メルヴェ達は皆揃って、襲撃を受ける覚悟を決めた。


 もちろん、それは戦いながら逃走すると言う先方だった。



「はっ? まて、上空から爆発音が聞こえたぞっ!」


「えっ!?」


 空を見る、ナタンの目には、セルヴェルトSV5B無人兵員輸送機が火を吹く姿が見えた。


 それから程なくして、機体は地上にガシャンと大きな衝撃音を立てて落下した。



 メルヴェも、割れた窓から外を見ると、緑色に塗装された、ロビンソンR22が飛ぶ姿を発見する。


 この小型ヘリコプターは、両面に取り付けられた

M230機関砲を撃ちまくりながら近づいてくる。



 また、その後続として、タンカラーの小型ヘリ部隊が飛んでくる。


 これは、リトルバードと呼ばれる機体であり、合計六機もの飛行編隊は空襲を仕掛けた。



 両面の武器マウントに搭載された、GAUー19ガトリング式銃機関銃は、射撃音を木霊させる。



 ガガガガーーと、途切れることのない機銃弾は、地上を走る帝国兵たちを、ミンチにしていく。


 手足が千切れ、首が吹き飛ぶ、と言ったさまを、彼女は黙って見ていた。



 オーガー、シュヴァルツ・リッターと言えど、よほど防弾装甲を固くせねば、機銃弾に負ける。


 理由は、弾丸が何発も当たると防弾ベストは、弾を防ぎ切れず破損していくからだ。



 増して、今地上に展開しているのは、ラトニクを装備した防弾兵だ。


 つまり、兵器にとっては、一般兵に毛が生えたような物でしかない。



 次々と、派手に死んで行く敵兵士の姿に呆然としながら、四人は事態を見守っていた。



「すごい、敵が壊滅していく…………」


「あっ! 味方が見えるわっ!」


 ナタンは空襲により、敵歩兵が機銃掃射で四散していくさまを眺める。


 メルヴェは、向かい側にあるビル内の二階・三階を味方が制圧していく様子を見た。



「死ねっ! うらっ!!」


「うわああっ!」


 ピューマ顔のウッドランド迷彩を上下に着た、連合軍兵士が、帝国兵に回し蹴りを喰らわす。


 紅いフード付きスウェットを着て、緑色のズボンを履いた民兵が、消火斧で帝国兵を斬る。



 それらを受けた、帝国兵は窓を破り、地上に落下していく。



 こう言う風に、三階の窓に味方である、彼等が暴れている姿が視認できた。



 また、二階では野戦帽を被る、スパルトイが口から緑色の毒ガスを吐く。


 それにより、窓ガラスは緑色に覆われてしまい、中の様子が見えなくなる。



 そして、一階では連合連兵士、レジスタンス員、民兵たちが突撃を行っていた。

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