【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第159話 清々しい朝を迎えて

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:31
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:52
文字数:3,565


「ん…………ん? 朝ねっ!」

 

「交替の時間ーーは終わりだ、そろそろ出発したいところだが、朝飯を食わないと」


 メルヴェが目を覚まし、アクビをしながら体を起こすと、ナタンが声をかけた。



「そうね、腹が減っては戦が…………?」


「な、なんだ、外がうるさ…………」


 メルヴェが黒いコートを纏い、立ち上がろうとすると外の道路から激しい震動音が鳴り響いた。


 ナタンも異変に気づき、急いで窓から通りへと目を向けてみるが。



 そこには、帝国軍の大部隊が、黒いTー90戦車を中心に道路を進軍している姿があった。


 しかも、走っているのは装甲強化型である、Tー90プロフィフだ。



 車列の後半からは、灰色のBTRー80装甲車も走っている姿が見えた。


 そして、後尾には、青灰色のウラルー4320トラックが走っていた。



 路上の雪を踏みしめ、進んでゆく部隊を、二人は窓陰から睨む。



「見つかったら厄介だな、帝国側の姿をしているとは言え、身分証も無いしな…………」


「私たち、昨日の戦闘から逃げているし、脱走兵って、扱いになってたりして…………」


 窓の外を眺め、ナタンは敵部隊による大移動を密かに観察し続ける。


 脱走兵狩り、レジスタンス狩り、これ等を帝国部隊が行うのではないかと、メルヴェも心配する。



 じっと敵を見続ける二人だったが、予想していた通り、何人かの敵兵士がアパート入口に近づく。


 こうして、内部に入ってきた帝国軍兵士たちから身を隠すべく、二人は動く。



「軍服を着ているが、不味いな…………相手をしたくない」


「ベッドの下に隠れましょう」


 急いで、ベッドの下に入り込んで身を潜めた、ナタンとメルヴェ達。


 息を殺して全く動かなければ、自分たちは発見されないだろう。



 そう思い、二人はベッドの下で帝国兵が来ないように願う。


 けれども、そう簡単にいくはずもなく、室内に誰かが入ってきた。



「…………?」


「…………!」


 入ってきたばかりの誰かたちだが、二人を探すどころか、彼等も身を隠し始めた。



 一人は、クローゼットの中に急いで入り込み、扉を閉めてしまった。


 もう一人も、部屋の隅に置いてあった段ボール箱に身を潜めた。



「…………なんだ、黒いブーツしか見えなかったが?」


「なんで、彼等も隠れるのかしら?」


 いったい何故、敵を探しにきた帝国兵が身を隠す必要があるのだろう。


 そう疑問に思った、二人だったが、その理由は直ぐに分かった。



「ここだ、毒ガスを充満させてやる」 


「いや、私が探すから獲物を奪わないで…………」


 野戦帽を被る、青髪青目のグールが室内に入って来ると、口を大きく開いた。


 だが、茶髪カールボブの女性ワーウルフが匂いを嗅いで、連合側兵士を探し始めた。



「部屋中に毒ガスを蔓延させれば、倒すのは楽…………しかし、それだと捕虜を捕まえられないわ」


 そう言いつつ室内を嗅ぎ回る、ワーウルフは腰から、ガッサー1870リボルバーを取り出す。


 それから、バンッバンッと何発かの銃声がなると、クローゼットや段ボールから赤い血が流れる。



「やっぱり隠れてた…………心臓は~~うごいてないわね? 動いてたら仲間にして上げたのに」


「どうせ、殺すなら俺にガスでやらせろよ」


 ガッサー・リボルバー拳銃で、レジスタンスを射殺した、女性ワーウルフは呑気に呟いた。


 一方、よほど口から毒ガスを吐きたかったのか、グールは残念そうに話す。



「あ~~? それよりも貴方たちはだぁれ?」


「はっ! 下に誰か居るのか?」


 女性ワーウルフは、ベッドに腰掛けながは、ガッサー・リボルバーをシーツに押し付ける。


 それを聞いて、グールも急いで、MP5短機関銃の銃口を、ベッド下に向けて怒鳴る。



 こうして、奴の嗅覚&聴覚により、ナタンとメルヴェ達は発見されてしまった。



「さぁて、何者かなぁ~~?」


 ベッドに腰掛けた、女性ワーウルフの両脇から、ナタンとメルヴェ達は這い出てくる。



「撃たないでくれ、僕らも帝国側だよ」


「レジスタンスから逃げてたのよ?」


 ナタンは、帝国側だと嘘を吐いて、この場を何とか誤魔化そうとする。


 連合側から逃走していたと最中であったと、出てきたばかりと、メルヴェは言い訳した。



 それを聞いて、女性ワーウルフが説明された話を信じるかは分からない。



「ふぅむ…………帝国、連合、双方の匂いがする? おそらく、潜入工作員かな?」


「本当か? コイツらを信じるのか…………」


 女性ワーウルフは顔色を変えず、二人を眺めながら呟いた。


 しかし、グールの方は未だ彼等を信用せず、睨みを効かす。



「ふぅ~~?」


 女性ワーウルフも、じっと二人を見ていたが、やがて見飽きたようだ。



「う~~? まあ、帝国側の匂いもするし、嘘を言っているようには見えないねぇ~~? けれども、何か怪しい感じもするしぃ」


「どっちなんだよ…………」


「制圧完了、テロリスト狩りは終了だっ!」


 女性ワーウルフは、未だ敵味方の判別がつかない、ナタンとメルヴェ達を眺め続ける。


 その橫で、グールは半ば呆れつつも、二人から目を話さず警戒心は解かない。



 彼等が話している間に、他の部隊が撤収する声が聞こえてきた。



「怪しい感じって、今までレジスタンス側に潜り込んでいたからね…………そりゃ、匂いは混じっているでしょうよ」


「怪しまれたら焦るだろ、まさか怪しいってだけで味方を撃たないよな?」


「そう言われちゃ、そうよねぇ~~」


「まあ、いいっ! お前たちも着いてこい」


 メルヴェは、説明するのが面倒だと言うような表情で匂いについて語る。


 ナタンも同じように何とか思い付いた言い訳をしながら惚《とぼ》ける。



 気だるげな目のワーウルフは、寝言を喋るようにトロくさく話す。


 その後ろでは、グールが踵を返して部屋から出ていこうとする。



「残念だけど、別任務で再び連合側に合流しなければ成らないの」


「また、面倒な潜入任務が上から、僕らに下されたのさ」


「そう言う事なら、仕方ないわ…………それじゃ名前と所属を教えてくれる」


「まさか言えないとは、言いださんよな?」


 他に任務があると、平静さを保ち、メルヴェは再びデタラメな事を言う。


 それに合わせて、ナタンも適当に思い付いた言葉を吐いた。



 二人の話を聞いて、ワーウルフは味方だと納得したようだが、今度は所属などを質問してきた。


 グールも、即座にMP5を構えて、険しい表情で睨んできた。



「もちろん…………私達は~~」


「サボり魔、二名…………早くこいっ!! 大隊が移動を開始するっ!!」


「あぁ、また呼ばれちゃったわぁ」


「仕方がない、先を急がせて貰う」


 一呼吸おいて、メルヴェが偽の所属を言わんとした時、階下から指揮官による命令が聞こえた。


 それを聞いた、ワーウルフとグール達は質問に答えなくてよいと言って、部屋から出ていった。



「…………ふっ! ふぅぅ? 何とか誤魔化せたか?」


「すぅ~~! 上手く騙せたわね…………で、どうする?」

 

 緊張が解《ほぐ》れて、溜め息を吐きつつ脱力する、ナタン。


 階下から足音がしなくなると、肩から力を抜いて深く息を吸う、メルヴェ。



 レジスタンス狩りを終えた、帝国兵が居なくなり、危機を脱した二人は安堵する。


 それも、束の間かも知れぬと、二人はすぐに動き出す。



 早速だが、ナタンはクローゼットを漁り、メルヴェは段ボールを探った。



「やっぱり、死んでたか…………いや、こうしては居られない…………着替えよう」


「こっちもよ? ダメね…………まあ、仕方がないわ」


 ナタンは、目を開いたまま死んだ黒人レジスタンス員の死体を見た。


 メルヴェも、段ボールを両手で掴んで取ると、そこには白人女性レジスタンス員の死体があった。



 その後、帝国兵の衣服を脱いだ、二人は部屋にあった衣服に着替える。



「これを着るか」


「私は、これを」


 ナタンは、薄茶色いコートを着て、深緑色のズボンを履く。


 メルヴェは、白に近い灰色のダウンジャケットを羽織り、鼠色をしたジーンズを履く。



 また、二人とも帝国兵にいつでも化けられるように、リュックに黒い制服を仕舞った。



「行こう、メルヴェ」


「ええ、行きましょう」


 二人が、物音を立てずに部屋から出ると、直ぐに左右を確認する。



 ナタンは、通路右側にサッと素早くMASー1935を向ける。


 メルヴェは、左側に目を向け、サルマスシズK10を両手で構えた。



「ん?」


 ナタンの目に、何かが廊下を走る姿が一瞬だけ見えた。


 しかし、廊下の一番奥に見えた、それは壁に隠れてしまい、すぐに姿が見えなくなった。



「今、なんか見えたよ」


「お化け~~じゃなくて、帝国かレジスタンスね? 静かに追いましょう」


 ナタンが今見たばかりの何者かを、メルヴェに教えると、彼女は追跡しようと言いだした。


 だが、いきなり味方だと言って出ていけば、誤射されたり、帝国兵だと警戒される恐れがある。



 しかも、彼等は元居たレジスタンス組織では、帝国のスパイ疑惑は消えてない。


 ゆえに、二人は慎重に後を追って、音を立てずに歩いていくのだった。

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