レジスタンスか、連合軍コマンドー部隊か、それは不明だが。
左側から大量の銃弾が飛来する中、フロスト中尉とネージュ准尉たちは反撃を開始する。
「全く、厄介な連中だな……」
「早く殲滅しましょう」
フロスト中尉は、右腕を壁から慎重に出すと、素早くMABモデルD拳銃を発砲する。
その下では、ネージュ准尉が屈んだ状態で、ブローニングM1910拳銃を何度も発砲する。
二種類とも、見た目が似ている拳銃だが、それもそのはずだ。
ブローニング拳銃は原型品であり、MAB拳銃は銃身を伸ばした、ライセンス生産品だからだ。
「…………っで、うちの男子連中は、みな揃って、トイレまで行ったか?」
「そう言えば、彼等の姿が見えませんね?」
フロスト中尉が壁に身を隠しつつ、弾倉を交換しながら仲間達の姿が見えないことを呟く。
援護射撃のために、再びP90を構えた、ネージュ准尉も同じことを思った。
その時、ドーーンと、一発ド派手な銃声が轟いた。
「誰だ? いや、この銃声はミネットか……」
「屋上に、無事たどり着いたようですね」
フロスト中尉とネージュ准尉たちが、ビル壁から銃を撃っている間にだが。
ビル内に侵入した、ミネットは敵の様子を伺いつつ、連中が何処に存在するか。
また、何処に潜むか位置を特定して、息を殺していたのだ。
そうして、窓からFRF2スナイパーライフルの銃身を出さずに狙撃した。
「…………一人やったわね」
遠方のアパートにある、ベランダから機関銃手が身を隠しながら連射していたが。
ミネットの狙撃により、緑色をした、フリッツ・ヘルメットを被る頭ごと撃ち抜かれた。
「シモーネ、ミア、レギナ、ベーリット……彼女たちは絶対に殺らせない……」
そう堅い決意とともに、また引き金を引く、ミネット。
そのスコープ内には、次に標的として捉えた、敵兵士が移っていた。
「機関銃の攻撃が、一つだけ止んだ?」
「今のは、ミネットによる狙撃だわ」
二発目の銃声を聞いて、地上で稲光を纏う台風シールドを回していた、シモーネ。
激しかった敵による機銃掃射が、少しだけ弱まったことに、彼女は気づいた。
そんな彼女の背後から飛び出て、レギナは転がりながら、ビルの隙間へと走ってゆく。
「シモーネ、援護するわっ! こっちに来てっ!」
「分かったわ、レギナッ!!」
転がりながらも無事に、ビル陰へと身を引っ込めた、レギナ。
早速、彼女は、WIST《ヴィス》ー94L拳銃を撃って、敵の注意を引いた。
その間に、稲光台風シールドを展開したまま、陰に隠れつつ、シモーネは移動する。
二人の向かい側には、フロスト中尉とネージュ准尉たちが居た。
「レギナ、シモーネ? どうやら、無事に来られたようだね? 僕らは援護しながら前進するっ!」
「貴女たちは、ビル内から奴らを攻撃してっ!!」
「分かりましたっ! 中から侵入しますっ!」
「二人で、敵の裏を掻いてやりますわっ!!」
そう言いつつ、フロスト中尉&ネージュ准尉たちは、援護射撃を続ける。
そして、二人の命令に従って、レギナとシモーネ達はビル内へと突入していく。
「隊長、私たちは他の仲間たちを援護しますっ!」
「ここから敵の火力を惹き付けますのでっ!」
今度は、ミアとベーリット達が派手な銃撃を行いながら来た。
「援護するっ! 前進をっ!」
「OK、一気に行くわよっ!」
ミアが立ち止まっては撃ち、その間にベーリットが疾走してゆく。
それを、ここまで繰り返しながら、お互いに援護し合いつつ、二人は進む。
そして、敵による機銃掃射を掻い潜って、走りながら来たのだ。
「分かった、僕らは少し前進するっ! 行くぞ、ネージュ…………後に着いて来てくれっ!」
「はい、中尉っ!!」
フロスト中尉がMABモデルD拳銃を発砲しながら走り出し、直ぐビル内に入った。
同じく、P90を乱射しながら、ネージュ准尉もビルの内部へと転がり込んだ。
二人は敵がビル内に居ないか、罠が仕掛けられてはいないかと疑いつつ慎重に進む。
「今のところ、敵は無し…………」
フロスト中尉は、鞘からMABモデルDを握りながら、スモールソードの柄に触れる。
そうして、右手には自動拳銃を、左手には抜いたばかりの細剣を、それぞれ握る。
ネージュ准尉も、P90を右腕の脇に挟みつつ、ワールーンソードを引き抜いた。
それから、彼女も同じように、右手には小型拳銃を、左手には片手剣を持った姿勢を取る。
室内における近距離戦では、銃身の短い銃や白兵戦用武器である剣などが有利だ。
だから、二人は銃と剣を手にしたのだ。
しかし、幸運な事に、室内は静かであり、敵は一人も存在しなかった。
「ふぅ……どうやら、剣を振るうチャンスは無かったようだね」
「無いなら、無いで良かったです」
と言いながら、フロスト中尉とネージュ准尉たちは、影に包まれた室内から外を覗く。
「…………!? アレはっ! レオとカルミーネ達だっ!!」
「二人とも、密かに裏手から進んでいたのねっ!」
フロスト中尉は、窓から外を見ていると、遠く離れた位置に居る敵を暗殺する二人組が視認できた。
それは、レオとカルミーネ達であり、二人はド派手に暴れまくる。
二人の暴れ回る姿を見て、ネージュ准尉も驚く。
彼等は、敵が陣取る交差点の左側で、果敢にも白兵戦を挑んでいたからだ。
「オラオラッ! どうしたっ! レジスタンスやコマンドーの連中にゃあ、根性のある奴が居ねぇ~~のかっ!」
「うばぁっ!? ぐぅ……」
「げぇぇっ!!」
レオは、ワルサーP5Lを乱射しつつ、左手に握る蛇剣フラムベルクを力強く振るう。
その攻撃は、レジスタンス員らしき軽装をした白人男を撃ち殺す。
次いで、黒人コマンド隊員らしき重装備の男に対して振るった剣は、首を遠くへと撥《は》ね飛ばす。
「もっと、鍛えてないと、僕らには勝てないぜっ! ここには骨の堅い男は居ないのかよ? こんなんじゃあ~~女に持てないよっ!」
「ぐあっ!」
「ぎゃああああっ!」
「ぐえーーーー」
「うあっ!?」
「うごがぁぁぁぁっ!!」
走る、カルミーネは三人のコマンド隊員たちを、アネラスソードを振るい、連続で斬り捨てる。
一人は頭を真っ二つに、二人目は胸を深々と切り裂き、三人目は下半身を袈裟斬りにした。
さらに、レジスタンス員らしき軽装の連中が怖じ気づいている間に、彼は更なる攻撃を仕掛ける。
ベレッタMX4を横凪に掃射しながら敵を容易に近づかせず、しかも敵を二人も撃ち殺す。
「連中を止めろっ!!」
「撃てーーーー!!」
もちろん、暴れ過ぎた二人を、レジスタンス・コマンドー部隊らが放っておくはずがない。
仕返しだと言わんばかりに、左側のビルから激しい銃撃や砲撃が飛んできた。
「はああ~~!? 不味い、アレは…………」
「あーーるっ! ぴ~~じーー!?」
屋上や窓から銃撃が飛び、さらにRPGー7の弾頭が真っ直ぐ、二人に向かってきた。
レオとカルミーネ達は、声を叫び上げながら踵を返して走ろうとしたが。
「うわああああっ!?」
「ぐああーーーー!?」
二人の直ぐそばに弾頭が着弾して、レオとカルミーネ達は吹き飛ばされる。
「いつつ、カルミーネ? 生きてるか?」
「一応ね…………」
土煙に紛れた、ビル内に爆風により、窓を突き破りつつ入る事ができた、レオとカルミーネ達。
しかし、運良く建物内に逃げ込んだ、二人を今度は連合軍コマンドー部隊員たちが襲う。
「行けっ! 奴らは二人だけだっ!」
「追い込んでしまえば、こっちのもんだっ!」
レオとカルミーネ達は、派手に暴れ過ぎたせいで、敵に包囲されてしまった。
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