「それで…………手元のカートの箱に部品が入ってるんだな」
「備品管理員に聞いたら、もう既に部品を持った人員を向かわせたって言ってたから貴方がその人員よね?」
若い男性と黒髪ショートヘアをした女性たちは、カートの持ち手を握る、ナタンに話し掛けてきた。
彼と彼女たちは、何の部品かは、ナタンには分からないが、箱を寄越してくれと催促する。
若い男性は、コーク・ヴラウン髪に、ヴェローナ・ブルー色の瞳を持つ。
うっすらとピンクがかった、白い肌の細い顔で、頭に、オレンジ色ベレー帽を被る。
服装は、中に黄色いシャツを着こみ、深緑の作業服と、タンカラー・ズボンを履いている。
腰のベルトには、小さいドライバーやスパナ等を入れる、作業用ミニポーチを幾つも下げる。
足には、作業用ベージュカラーのブーツを履いていた。
女性は、黒艶のある髪ショートの髪に、丸く大きな黒真珠みたいな瞳を持つ、丸い顔立ちだ。
頭には、赤い作業帽を被り、服装はODグリーンカラーの作業ツナギを着ている。
また、沢山のドライバー等を入れるポーチが付いた草色ベストを着込む。
足には、黄緑色の運動靴を履いており、右手には蓋を空けた、コーラ缶を握っていた。
「ああ、僕は君達に部品が何かは知らないが届ける様に頼まれていたんだよ、カートに積んだ二つの箱の中にきっと有るよ、だからこれを受け取ってくれ」
ナタンは、先ず彼等に小箱を渡そうと。
大きな箱の上に、載せた小箱を両手で掴んで持ち上げるが。
「ああ? そこにカートと一緒に置いといて良いよ、後は私達に任せてくれ」
「運んでくれて有り難う、ここは私達が修理するから、貴方は自分の仕事を頑張ってね?」
若い男性レジスタンスと黒髪女性のレジスタンス達だが。
二人は、カートで、二つの箱をここまで運んで来た、ナタンに感謝の言葉を述べる。
そして、後は任せても大丈夫と言って、作業を開始する。
「分かりました、では、僕はこれで…………」
お使い仕事を終わらせた、ナタンは、トイレにカートを押して入って行く、二人に告げる。
それから、やっと面倒な仕事から解放されたと、彼は思った。
また、メルヴェの待つ部屋に戻ろうと、彼は今きた通路を戻って行く。
「終わったかぁ~~」
ナタンは、頼まれた仕事が終わった嬉しさと、メルヴェの元に戻れる嬉しさで、気分が良くなる。
そして、彼はメルヴェがぐっすりと気持ち良く、寝ているのであろう、個室まで戻って来た。
「メルヴェ~~? 居るか、済まない仕事を頼まれちゃって」
「…………ナタン、何処をほっつき歩いて居たのよっ!」
個室のドアを軽く叩いた、ナタンに対して、部屋から、メルヴェが怒っている声が聞こえた。
彼女に、ナタンは謝りながら部屋に入ろうと、ドアを開ける。
「ゴメンね? 雑用を頼まれて、どうしても断り切れなくてさ?」
「だと思ったわぁ? あんたは人が良いから何時も皆に利用されるのよねぇ?」
ドアを開けた、ナタンの目に入ってきた光景は衝撃的だった。
帝国警察の漆黒制服を羽織り、黒い制帽を右斜めに傾けて被った、メルヴェが居たからだ。
青いランジェリーと青タイツを履こうとする彼女は、ベッドに腰掛け右足を上げている。
それは、かなり非常に煽情的な姿であった。
「えっ!?」
「どうしたの? ナタンッ?」
そんなメルヴェの姿が見えた途端、急いで目を瞑り、袖で擦る、ナタン。
彼が両目を擦っている間、メルヴェは、どうしたのかと心配して声をかける。
「あれっ? 見間違いか…………」
「だ、か、らっ! どうしたのって言ってるでしょうっ!?」
再び目を開けた、彼が見たのは、シグナル・グリーンジャケットを羽織る、メルヴェだった。
下を見ても、レタスグリーン色の短パンを履き、黒いブーツを履き終えているところだった。
そして、彼が自分の見間違いだったかと一安心していたが。
話し掛けても、こちらに反応しない、ナタンに対して、メルヴェは怒りを爆発させた。
「ナタンッ! 聞いてるのっ!!」
「あっ! ゴメンよ? 今、君が帝国警察に見えたんだ?」
いきなり、大声で叫んだ、メルヴェに一瞬だけ驚いた、ナタン。
彼は謝りながら、幻覚見たいな物が見えたんだと、素直に答えるが。
その言葉に、メルヴェは怪訝な表情をしながら怒る。
「はぁ~~まだ、寝惚けてんのよ? 寝言は寝てからにして、ちょうだいっ!」
「いや、本当に見えたんだよ? 見間違いだったけど…………」
怒りを通り越して、呆れた表情を顔に浮かべる、メルヴェに対し。
本当に、幻覚が一瞬だけ見えたんだと言って、ナタンは言い訳をするが。
「あぁ~~! はいはい分かったわ、どうせ私の体をいやらしい目で見てたんでしょう?」
「違うよっ! そんなこっ!?」
メルヴェの冗談を、慌てて両手を振って否定する、ナタン。
そんな彼に、メルヴェはキスをして口を塞ぐ。
唇を重ね合わせた、二人は暫くの間、互いに唇を離さずに抱きあった。
「ぷはっ! 分かっているわよナタン、貴方は長い戦いの果てに緊張で疲れが貯まりすぎているのよ」
「うん、きっとそうだね? 僕は疲れ切っているんだ…………だから幻覚や何かを見たんだ、夢の中でも君も僕も帝国警察に成っている変な夢を見たんだな」
唇を離した、メルヴェは、黒い瞳を愛おしそうに、ナタンに向ける。
そして、長期に渡る戦いで、疲れているのだろうと、優しい言葉をかける。
その言葉に、やはりメルヴェの言う通り、自分は、疲れが貯まりすぎている。
だから、ナタンは精神が疲弊してきて、悪夢に魘《うな》されたり、幻覚を見るのかと思う。
彼と彼女は、ベッドに腰掛けて話し合う。
「僕は…………僕はこれ以上は戦え無いのかも知れない? 精神が病んで変な物が見える様になってしまったんだ、だからもう戦いは無理だっ! うぅっ!」
「大丈夫よ、心配しないで良いわ…………貴方は優しい人よ、どうしても帝国と戦え無いのなら私と一緒にレジスタンスを辞めて田舎で暮らしましょう」
顔を、両手で覆い泣き始めた、ナタンの背中を優しく撫でながら、メルヴェは耳元で呟く。
彼女は、ナタンの身を案じて、田舎で平穏に暮らそうかと提案する。
「そうだね…………田舎で暮らすのも悪く無い…………帝国も、レジスタンスも、何もかも忘れて二人で幸せになるのも悪く無いね?」
「そうよ、誰も貴方を咎めたりしないわ? 貴方と私は一緒…………ずっと一緒よ」
顔を、両手で覆っていた、ナタンは涙を流した両目を服の袖で拭う。
そうして、気を取り直したのか、ぎこちない笑顔を向ける。
気落ちしていた、彼が少し元気になったようだと、メルヴェは思った。
もし本当に、彼が望むのならば、彼女は二人して田舎に移り、夫婦として暮らしたいと考えた。
「ずっと君と一緒か…………それなら何処に行ったとしても上手くやって活けそうだ、有り難うっメルヴェ…………君のお陰で元気が出たよっ! もう心配は無い、これでまたレジスタンスの一員として帝国と戦えるっ!」
「そう…………それなら良かった…………貴方は強い戦士よ、貴方が帝国と戦いたいと言うなら私も共に銃を手に取るわ」
気落ちしていた、ナタンは完全に元気と勇気を取り戻した。
そして、励ましてくれた、メルヴェに対して、感謝の言葉を述べた。
その言葉を、メルヴェは聞くと、彼が戦いを望むなら何処までも着いていくと答えた。
彼女は、ナタンと一緒に居る事が出来るならば、それでいい。
また、ナタンが行く先が、たとえ戦場だろうと、平和な町中だろうが何処でも良いのだ。
「メルヴェ? 戦いはまだまだ続く、例え帝国が、僕と君を残して、全ての人間を殺したり洗脳してしまっても、僕たちは最後の最後まで一緒に居よう」
「最後まで…………もし帝国が私を捕らえて洗脳して兵士に変えてしまったら、貴方は私を殺してくれる?」
最後の瞬間まで、帝国と徹底的に戦い抜く、覚悟を決めた、ナタン。
そんな勇ましい彼に対して、メルヴェは一つの質問をする。
もし、私が帝国に洗脳されたらと。
「そう成ってしまったら、僕は君を…………」
「もしもよ、もしも…………本当にそんな状況に成ったら迷わずに私を殺して頂戴っ! 私の事を思っているなら迷わずに出来るわよね?」
ナタンは、メルヴェに言うべき、言葉が分からずに困る。
そんな彼に、彼女は迷わずに自分を殺して頂戴と頼む。
彼女は、もしも自分が帝国に洗脳され、偽りの忠誠心と恋愛感情を植え付けられた場合にだが。
こうして、誰かの愛人へと、強引に作り変えられしまったとする。
その時は、自分が心からに愛する、ナタンに殺された方がましと考えた。
「状況が、そう成ってしまったなら、僕は君を銃で撃てないよ? その時は僕も降伏して帝国の兵士になるよ」
「ナタン、馬鹿ねっ! 洗脳されたら二人とも、一緒に居られるか分からないのよ?」
ナタンは、そんな勇気はなく、自分に君を殺すことは出来ないと答える。
何故なら、彼に取って大事な人である、メルヴェが、生きてさえいれば良いからだ。
その為、彼は自らがレジスタンスの一員として、戦死しようが。
または、帝国兵として、使い捨てにされようと構わないのであった。
「だとしても君を殺してしまうよりは良いよ、君が生きて居てくれるなら僕はそれで良い…………」
「ナタン…………」
二人は、御互いを尊重し合い、ともに愛する人の為ならば、命さえ惜しまない。
それほど、絆の深いパートナーであった。
そして、ナタンとメルヴェ達は、一時の平穏な日常をゆっくりと過ごす。
再び帝国との激しい戦いが始まる時が来るまでは。
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