【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第298話 グロート・ハイベールデン城の城主たち

公開日時: 2024年7月12日(金) 17:51
更新日時: 2024年7月15日(月) 08:43
文字数:3,983


 警察署と化した、グロート・ハイベールデン城では、警察隊員たちが話し合う。


 そうして、デリバリー注文した、ピザを食べていた。



「てかさ? ここは、我ら第二小隊に与えらた新しい基地なんだよな?」


「けど、噂じゃあ、直ぐ別の場所に再び拠点を移設するとか?」


「そんなに急いで、帝国は何がしたいんだろうか? 休暇くらいは欲しいよ? なあ、ベーリット」


「ちょっと、ベタベタしないでっ!」


 ピザをトマトとともに食いながら、レオが話し出すと、ミアが答える。


 カルミーネは、ベーリットの腰に手を回しながら愚痴るが、彼女は真顔で睨みつける。



「あたっ!」


 しかも、カルミーネは頬を思いっきり、ぶたれた。



「んーー? てかさ、何で、ナタンはミアと付き合わなかったの? それっぽい噂があったのに?」


「あ~~それね? 実は、私がレオに寝取られた…………んじゃなくて、再開した時は既に、ナタンが、メルヴェに略奪されたのよ」


 首を傾げて悩むレギナの疑問に、ピザに手を伸ばした、ミアが答える。



「は? 何それ? え、ちょっ! 何なの?」


「いったい、どう言う事だ」


 レギナとキーラン達は、おもいっきり頭上に、?マークが浮かぶ。



「ああ、ナタンと私は帝国侵攻時、一緒に逃げてたんだけど、彼は瓦礫の下敷きで、しかも重傷だったの? まあ、ハッキリ言って、生きるか死ぬかだったわ」


 メルヴェは、過去を思い出しながら、皆に語り始める。



「そこに、丁度よく、フロスト中尉が現れたわ? そして、彼を警察隊員に洗脳する代わりに、生かしてくれると持ちかけてきたわ」


 フロスト中尉は、悪魔のように迫ったが、メルヴェは彼と契約する他なかった。



「もちろん、その話しに私は乗ったわ」


「後は、偽の記憶を植え付けられて、フロスト中尉に助けられた事を忘れてた訳だ」


 メルヴェが静かに語る中、ナタンも自身が全てを忘れていたと真顔で話す。



「当時、ナタン君に私は惚れてたけど、帝国に捕まえられてから再開した時、もう二人は彼氏彼女の間柄になってたのよ…………そこから、私はレオと行動するようになって今に至るわけ」


「その後、ミアはオレと自然にくっついたっ! そう言う流れだな」


「ベーリットと、僕も同じ間柄だよねーー?」


「ええいっ! 離れなさいっ!! このっ!」


 ミアとレオ達の説明を聞いていた、カルミーネは、いきなりベーリットに抱きついた。


 しかし、彼女は顔を真っ赤にしながら彼の頭を叩いたが、まんざらでも無さそうだ。



 その顔は、少しだけニヤけているからだ。



「ぐはっ?」


 だが、カルミーネは真実を伏せたまま、彼女を洗脳した本当の理由を語る事はない。



 それは墓場まで、持って行く気だからだ。



「まあ、以降はナタンとメルヴェ達は、連合側に幼年工作員として、戻されたのよ?」


「ナタン、レギナ? 帝国兵に変装していた事を覚えてる? 実は、あの時もデータチップを敵に手渡していたのよ」


 ミアは、二人がレジスタンス側に所属していた経緯を語り、メルヴェは潜入していた時の事を話す。



「分かっているさ…………メルヴェは、虫型ドローンで情報収集しながら、時おりフロスト中尉にデータチップを届けてたもんな」


 ナタンは、メルヴェともに行動する事が多かったので、彼女が潜入中に何をしていたか知っている。



「そう、あの日…………貴方が死にかけてから、幼年スパイになった私達は活動し続けたわっ! ある時はレジスタンス、また、ある時は帝国警察としてね」


「そうだ、大聖堂で全てを思い出した」


「要は、二重スパイだった訳か?」


 メルヴェは真実を全て語り、ナタンも真顔で話すと、キーランは不意に呟いた。



「ま、そう言う事だな」

 

 ナタンは、フロスト中尉とメルヴェ達に、絶対の忠誠を誓うように調整された。



「キーランの組織も、内部から腐っていたのよ? フロスト中尉や他の工作局と繋がりがあった見たいね?」


「帝国、連合とどちらも、工作局や諜報部は多数存在する? 足の引っ張り会い&裏切りは日常茶飯事だ」


 メルヴェは、キーランの所属していた連合軍組織について語る。


 どちらの組織も腐敗しており、昼夜を問わず権力闘争に開け繰れていた。



「それより、こっちに戻った今なら二人の言葉の意味が分かる…………」


 ナタンは警察署に潜入していた時、レオとミア達が言っていた言葉を思い出す。



「ナタン…………また一緒に楽しくやろうぜ? 二人で子供の頃のように戦争ごっこの続きをしよう、それに今度はメルヴェも連れて来いよ」


「そうよ? ナタン…………私達は何時でも貴方達を歓迎するわ、だって仲間なんですもの」 


 レオとミア達は、あの時もナタンが工作員だと知っていた。


 だから、彼の変装が気づかれた訳ではなく、単純に懐かしい顔を見たと思っていた訳だ。



「まあ、みんな再び一緒になった、これからは帝国の猟犬として、また頑張ろう」


 ナタンは、そう呟きながら、グラスに注がれた安物ワインを飲み干すのだった。



 それから時間が立ち、ナタンは地下射撃場に来ていた。



「ん? 誰か熱心な奴が居るな…………」


 ナタンは、防弾ガラスに仕切られた、射撃台に小さな人影を見つける。



「ルカ? 熱心だな」


「隊長、ご苦労様ですっ!」


 ナタンは、ルカの射撃技術を見ようとして、ゆっくりと近づいてきた。



「全弾、円内には命中しているな? 射撃の腕が上がったな」


「隊長が、僕を改造してくれた、お陰ですっ!」


 ナタンは、白い板に描かれた、黒い人影と円形の的を見た。


 そこには、ルカが開けたであろう、胸に描かれた円に何発もの風穴が空いていた。


 これは、彼自身が言うように、改造手術により、身体能力と筋力が向上したからである。


 元の体なら、ナタンを撃っても、殆ど当たらなかった時と同じ結果が出ていただろう。



「まあ、そうだな?」


 ナタンは、ルカが笑顔を浮かべるさまを見て、複雑な気持ちになる。


 今朝、出会った軍用犬化された、ワーウルフとハンドラーを、彼は思い出すのだ。



 帝国警察隊員として、味方を増やす事は当然の義務だが、それでも彼は抵抗感を感じる。


 殲滅任務では、二人を殺害しないため、警察隊員に改造する事を選んだ。



 しかし、その選択は正しかっただろうか。



 彼を、自分と同じ怪物にしてしまった事は、正義なのだろうか。



 まだ、レジスタンス員としての記憶と感情が染み付いている彼は、そう悩む。



「俺は人間じゃなくて、アンデッド? レジスタンスじゃなくて、警察隊員…………」


 不意に、ナタンは呟いていた。



「隊長?」


 マニューリンM73の凛胴を、ずらしながら、ルカは不思議そうに、ナタンを見つめる。



「何でもない、ルカ? 射撃を続けろっ! あと、遠距離射撃時は真っ直ぐ腕を伸ばせ」


「はい、ナタン隊長っ! こうですかっ?」


 ナタンは、ルカの射撃訓練を指導しようと、右腕や左肩を掴む。


 そして、フロスト中尉と射撃場で、ともに発砲訓練をした事を思い出す。



「ナタン、真っ直ぐ腕を伸ばせ、こうやって、遠距離の敵は狙うんだ? あと、君は優秀だから僕の予備拳銃を進呈しよう」


 ナタンは、フロスト中尉が的の頭を正確に撃ち抜いた事が頭に浮かぶ。


 そして、彼からMASー1935を貰った時の様子が脳内に過《よぎ》る。



「ナタン隊長、命中率が上がりましたっ!」


「そうか、なら、そのまま訓練を続けろ」


 ルカが喜ぶと、ナタンも少しだけ微笑み返す。



「俺は、外で煙草を吸ってくる」


「了解ですっ!」


 ナタンが射撃訓練場を後にすると、それをルカは見送った後も発砲を続けた。



「さて? ん、なんだ? サミーラとターリクじゃないか?」


 ナタンは、黒い制服と水色シャツを着ている二人の姿を見て呟く。



「分隊長は、今何処に居るかは分かりません?」


「申し訳ないですが、暫くは、お待ちを…………」


「あら、そこに居るじゃない?」


 二人とも、黒い制帽には、楕円形の白枠内には、青と黒い模様がある白鷲が紋章と描かれている。


 そして、制服には右側から白く光るモッブを垂らしている。



 彼等の間には、護衛を連れた、イルメラ大尉が訪ねて来ている姿があった。



「貴女は…………イルメラ大尉?」


「ああ、やっぱりっ! 貴方は、警察隊員だったのねっ!」


 ナタンは、鮮やかな長い金髪の美女であり、ニッコリと笑顔を向ける、イルメラ大尉を前に戸惑う。


 相変わらず、彼女は右から垂らす、アシンメトリーと青い眼帯で、右目を隠していた。



「あの? なんで、こちらに?」


「なんで、って、貴方に会いに来たのよ?」


 頭に、?マークを浮かべ続けるナタンに対して、イルメラ大尉は何気なく笑みを浮かべて答える。



「それだけのために、こちらへ…………」


「貴方は平隊員、私は大尉? よって、上級将校の命令は絶対よね?」


 ナタンは、急に押し掛けてきた、イルメラ大尉に驚くが、彼女は将校と言う立場を利用してきた。



「悪いけど、彼は借りていくわね?」


「は?」


 イルメラ大尉は、ナタンの腕を掴むと無理矢理ひっぱりながら連れていく。



「あの? 僕には既に、パートナーが…………」


「あら、そうなの? でも、私は大尉よね?」


 ナタンの左側から、イルメラ大尉は腹部に硬い物を押し付ける。



「あ、そうでしたね? 済みません」


「分かれば、いいのよ」


 ナタンは、それが銃口だと気がつき、イルメラ大尉に逆らわない様に大人しくする。



「さて、中に入りましょう」


「了解です?」


 城の敷地内には、真っ青なランボルギーニ・ガヤルド・ポリツァイが駐車してあった。


 本来は、パトカーとして使用される車両だが、ガラスは黒いスモーク使用となっている。



 後部座席を開いた、イルメラ大尉は、ナタンの黒ネクタイを強引に引っ張り込んだ。



「全てを思い出したでしょう? 公営住宅で、私を救ったヒーロー」


「ええ、今は警察隊員に戻りましたので」


 暖かみのある肌と、深海を思わせる、ウルトラマリンに光る瞳。


 コーンフラワー・ブルーのぷっくりとした唇。



 イルメラ大尉の美しさに、ナタンは顔を剃らさず、真っ直ぐ見つめる。


 彼は、ドアを閉めると車内で、二人だけの時間を長く過ごした。

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