【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第十部 帝国警察は増員・増強される レジスタンスは遂に本格始動する

第108話 帝国警察の一時的な平和

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:51
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:34
文字数:3,945


 ナタン達が、襲撃作戦を実行する前日。



「よぉ? フロスト」


「ザミョールか…………何の用かな?」


 帝国警察の警察署屋上にて、一人白雲を見ながら黄昏ていた、フロスト中尉。


 その背後から、ザミョール中尉が声をかけながら現れた。



「いや、ちょっと世間話をしにな…………」


「そうかい、あっ! コレを…………」


 ザミョール中尉は、ゆっくりと歩いてきて、隣に立って、駐車場を眺めた。


 そして、手摺代わりのコンクリート壁に、両肘を着いていた、フロスト中尉は慌てだす。



「ちょっと、待ってくれよ」


 フロスト中尉は、自らの懐を急いで探る。



「おっ! あった、あった」


「煙なら、自前のがあるぜ?」


 フロスト中尉は、ザミョール中尉が懐から煙草《タバコ》を取り出そうとするのを察したのだ。



「煙草より、コレを吸ったらどうだい?」


 フロスト中尉は、懐から煙草代わりに、葉巻を一本だけ取りだし、ザミョール中尉に手渡す。



「コレを…………キューバル産か?」


「いや、だけど結構コレも美味いよ」


 渡された葉巻を見つめた、ザミョール中尉は一言だけ呟くと、直ぐに口に咥えた。


 フロスト中尉は、彼の口に挟まれた嗜好品に、マッチで火を着つける。



「何て言うんだ…………この葉巻は?」


「コイーバベイーケ52って言うんだ」


 口にくわえた葉巻の甘ったるい匂いを深く味わう、ザミョール中尉。


 その隣で、フロスト中尉は自身も咥えた、コイーバベイーケ52に、マッチで火を着ける。



 こうして、二人ともコク深い甘みを、ゆっくりと味わう。



「そうか…………んっ! かなり甘いな、悪くない味だ」


「だろう…………ラヴィーネ大佐に貰ったんだ」


 ザミョール中尉とフロスト中尉は、白く染まった曇り空を眺めて、話を進める。



「貰ったのは、それだけでは無いだろう」


「勿論、新しい人員も貰ったさ」


 そうザミョール中尉が表情を変えずに言うと、フロスト中尉は、勿論だと笑顔で答えた。



「はぁ…………羨ましいぜ…………!?」


「君の分も貰って来て上げたよ、あの車両は君達用だからな」


 深い溜め息を吐きつつ、警察署から手前の道路を眺めていた、ザミョール中尉。


 彼は、いきなり現れた、五台の車両を驚いた顔で見つめる。



「どうだい?」


「ほぉ?」


 これらは、フロスト中尉が、ラヴィーネ大佐に頼み込んだ物だ。


 彼は、ザミョール中尉が率いる、第二小隊の分まで、物資と人員を増強することを要請していた。



 そうして、コネを回していたから送られてきた車両であった。



 上部に機銃を備えた、ティーグルM、ファリカトゥス装甲車が各二台ずつ。


 その後ろはBTRー82A装甲車とホルンジー装甲ワゴンが、一台ずつ走る。



 ティーグルMは、紺色に塗装されており、上部には、Kord重機関銃を備える。



 ファリカトゥスは、元から漆黒だが、本来の紅い部分は、紺色に塗装されていた。



 上部砲塔に、2A72、30ミリ機関砲を備えた、BTRー82A。


 これは、漆黒に塗装されており、ホルンジーは鼠色に塗装されていた。



「あっちは第一小隊のサスーリカの分だよ」


「…………凄いなっ? 良くも、これだけの数を揃えたもんだぜ」


 警察署の屋上から、フロスト中尉とザミョール中尉たちは、道路を走る軽車両を視認する。



 バイクは、漆黒の大型バイクIZhが、二台並走してくる。


 後ろには、ブルーカラーのステルス200フレイムが、四台。


 さらに後ろは、漆黒のトライクである、オーヴムが、二台。


 それから、灰色のカラシニコフIZHが、二台で走行する。


 灰色と鼠色の迷彩塗装された、トーラス2が、二台ずつ走る。



 ブルーカラーの側車に、PKM機関銃を備えた、IMZ・ウラルサイドカーは二台。


 側車に、AGSー30自動擲弾銃を備えた、IMZ・ウラルサイドカーは一台。


 PKP機関銃を備えた、ATVであるAMー1四台。


 上部に、Kord《コード》重機関銃を備えた、大型バギーである、鼠色のツアリストは二台。


 鼠色の無人軽戦車ウラン9は一台。


 KPVT重機関銃を搭載された、BTRー80S一台。


 

「こうして、見ると第一小隊は機動性の高い車両を揃えたな」


「彼女は、機動性を重視していたからね…………それと、新設された第四小隊が来るはずの時間何だけど?」


 フロスト中尉とザミョール大尉達は、コイーバベイーケ52を相変わらず、咥えたまま喋る。


 そうして、道路をボンヤリと眺めつつ、煙を深く吸いながら、ゆっくりと話し合いを続ける。



「新設された部隊? ああ、そんな話があったか…………!?」


「どうやら、その新設された部隊が来たようだよ」


 新しい部隊が送られてくると言う話を、思い出したばかりのザミョール中尉だったが。



 そんな彼の目に、奇妙な現象が映る。



 それは、警察署前にある道路上で、いきなり空間が歪み、渦を巻いた。


 かと思うと、向こう側に暗い闇のような空間が広がり、それを見ている、フロスト中尉は呟いた。



「ありゃあ…………時空転移装置か?」


「そうだよ、何処からワープしてきたのかな?」


 ザミョール中尉とフロスト中尉たちが、じっと見ている道路だが。


 そこに、黒いブラックホールの向こう側から、黒い装甲鎧に包まれた馬が現れた。



「アレは、何だ…………」


「さあね~~? 征服した異世界から来たんたじゃないか?」


 ザミョール中尉が、困惑する中、同じく馬を見つめる、フロスト中尉は欠伸《アクビ》をしながら呟く。


 二人の見た馬には、黒いマントに身を包んだ、帝国軍士官が跨がっている。


 その後ろには、副官らしき、黒い甲冑に身を包んだ、女性騎士がついてくる。


 もちろん、彼女も黒い装甲馬に跨がっており、その後ろには、黒い甲冑を着ている騎兵隊が続く。



 さらに、後続には、装甲馬が引いた黒いチャリオットが二台。


 漆黒のカボチャ馬車&青いランドー馬車と、馬車部隊が続く。



「新しい部隊か…………ファンタジー世界か、中世の時代から来たんだな」


「見た感じは、そう見たいだね?」


 ザミョール中尉は、増員された部隊が、異世界から来たと推測する。


 それに、フロスト中尉も、じっくり彼等を観察しながら呟く。



「これだけの増員をするって事は、アフレア、アラビ方面からの反抗作戦が近いって事か…………」


「だろうね…………連中も必死なのさ、暖かいアフレア地域も何時落ちるか分からないし、そうなったら日光浴も出来ないだろう?」


 これだけ、重武装の兵器と大量増員が意味する事は、ただ一つ。


 それは、これからレジスタンス・連合軍の反抗作戦が近い。


 連中が、帝国軍・帝国警察との正面衝突の準備をしているからだと、ザミョール中尉は語る。


 フロスト中尉も、連合軍側が全てを賭けた、勝負を仕掛けてきたのだと判断した。



「だと良いがな…………噂じゃあ? 俺達以外にも、何者かが影で暗躍しているらしい…………」


「影で…………それは警察の潜入工作員? 見たいにかい?」


 帝国軍・帝国警察の兵士達には、一部で流れる不穏な噂がある。


 それは、自分達と同様に、異世界からの来訪者が暗躍していると言った話だ。



 真剣な顔で語る、ザミョール中尉も裏で糸を引いている存在が気になっていた。


 フロスト中尉は、まさかそんなと言いそうになったが、取り合えず、彼の話を聞く事にした。



「ああ、そうだ、そいつらはアフレア側で秘密裏に武器を援助したり、新兵の訓練を支援したりしているんだと」


「だったら気が抜けないな…………雑魚だと油断してたら不味い…………」


 ザミョール中尉は、何処の誰か分からない正体不明である敵に関することを淡々と語る。


 ただの噂話とは言え、確かに、レジスタンス側が使用する武器は、性能が格段に向上していた。



 なので、油断大敵だと思った、フロスト中尉は苦い顔をしてしまう。



「しかし、それなら、上も早く殲滅命令を出せば良いのに?」


「それで、南側の連中を核兵器で吹き飛ばすか? それとも、住人全員を化学兵器で、下級アンデッド奴隷にするか? または巨大収容所を建設して、帝国軍兵士に洗脳するとかな…………」


 フロスト中尉は愚痴を垂れるが、ザミョール中尉は色々と、惑星全体を制圧する方法を呟いていく。



「まあ、上層部は、この惑星を狩猟場だと考えているからな? だから、一般人には、サブリミナル洗脳程度しか施してないし」


「はぁ? テロリストの連中で、活きがいい奴が居たら、獲物として殺すか? 捕まえて、洗脳するハンティングするって、考えだもんな」


 フロスト中尉とザミョール中尉たちが言う通り、軍や政府の高官たちは、敵を見下している。


 そして、貴族が馬に跨がって、獲物を仕留めるような森林保護区みたいに、この星を扱っている。

 


「だが、いくら何でも、敵を過小評価し過ぎだ…………いつに成ったら、アフレアに侵攻するんだろうか?」


「それは、俺も思うぜ」


 何故かは分からないが、帝国政府は、いつまで立っても、強力な軍隊を派遣して来ないのだ。


 それに業を煮やしているのは、フロスト中尉とザミョール中尉たちだけではない。



 帝国軍・帝国警察の者達は、全員が南方地域へと進軍することを望んでいる。



「まあ、考えても仕方ないか?」


 フロスト中尉は、下を向いて悩んでいたが、気を取り直した。



「その通りだな、ホラッ! コレを受け取れっ! 葉巻の礼だよ」


「コレは…………」


 そろそろ時間が来たと思ったのか、ザミョール中尉は、踵を返して去り始める。


 それと同時、フロスト中尉に、何かのペットボトルを投げて寄越す。



「茶色はクワス、黄緑色はタルフンだ、俺の元祖国の飲み物だよ」


「そうかい、有り難く貰っておくよ」


 茶色と黄緑色のペットボトルを投げた、ザミョール中尉が、名前を教える。


 すると、ペットボトルを、まじまじと眺めつつ、フロスト中尉は礼を言った。



「じゃあな、先に戻ってるからな」


「分かった…………」


 ザミョール中尉は歩き去り、一人残された、フロスト中尉は、彼の背中に向かって短く返事した。

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