【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第156話 拠点からの脱出

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:28
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:50
文字数:3,382


「っと? さて、君はーーもしかして、あの時の?」


「よっ! 湿っぽいわね? で、あんた達は…………?」


「フフ…………そうです、さあ、参りましょう? ガルム、アセナ」


「先は俺が行く、万が一、敵が出てきたら排除するからな」


 地下に入ってきた、ナタンとメルヴェ達を出迎えたのは、幻影を解いた帝国兵らだった。


 女性兵士は、本当の姿を一瞬だけ見せ、黒髪で、チィーナ系を思わせる派手な衣服を晒した。



 ギガントも、同時に一瞬だけ緑色から黒に変色したが、すぐに元の色に戻った。



「ソムサック…………まだ、幻影魔法はかけてあるから、敵と遭遇しても交戦は控えてね?」


「分かってるって、だがよっ? 正体がバレたら殺るしかね~~だろっ!」


 そう言って、女性兵士は、相方のソムサックに戦闘は、出来るだけ避けようと声をかけた。


 彼も、それは分かってはいたが、敵に変装を見破られる可能性もある。



 その時は、自分が真っ先に突っ込んでいくと、彼は想定していた。



 こうして、二人の案内で、ナタンを含む四人は、コンクリートに包まれた通路を歩いていく。



「ここから先は、土壁となっています…………落石や罠に注意を…………」


「ま、罠は俺がワザと引っ掛かって、強引に解除しちまう手もあるが」


「それより、ここを通れば地上には出られるんだよね?」


「私たちは早く地上に出たいのだけれどーー」


 女性兵士とソムサック達は、通路から坑道へと変わる境目を越えた。


 ナタンとメルヴェ達は、地上に出て、連合側から逃げたいので質問した。



「僕らは、もうレジスタンスや連合軍からは狙われているし」


「暖かい地下より、寒い地上の方が今じゃあ~~安全だからね」


「ご心配は要りません、この道から私達は侵入して来ました」


「レジスタンスの拠点構造は筒抜けだった…………ただ、想定以上に敵の戦力は強力だったがな」


「あのグレネードランチャー&ロケットランチャーの量は…………」


「下手すりゃ、こっちよりも強い兵器まで保有しているかも知れない」


 一刻も早く拠点《アジト》から脱出したい、ナタンとメルヴェ達。


 対する女性兵士は、冷静に心配ないと話しながら先へと急ぐ。


 その一方で、ソムサックは連合側が用意した、武器に苦戦したと話す。



 ロケット弾などが起こした、爆風や火炎による火の海を思い出して恐怖する、帝国兵。


 AK109を構えつつ、背後を見張りながら歩き、さらなる兵器の登場を心配する、帝国兵。



「あっと?」


 そうこう話をしていると、ソムサックが落とし穴に落下する。



「うわっ!」


「大丈夫なのっ!」


 それを見て、ナタンは狼狽《うろた》え、メルヴェも慌てて下を覗く。



「これも、御心配は要りません」


「早く着てくれ~~~~」


 心配は要らぬと言った女性兵士は、自ら落下し始めて、深い穴の底へと落ちてゆく。


 その穴からは、先に落ちた、ソムサックが大きな声をかけてきた。



「どうやら、安全なようだね、先に行ってみるよ」


「分かった、じゃあ、後に続くわ」


 と言って、ナタンも穴の底へと落下すると、少し遅れて、メルヴェも身を投げた。



「ぐわあっ!? 網が張ってあるのか?」


「っと…………罠が、逆に脱出用に使われていたなんて」


「全ては貴方たち、潜入工作員のお陰ですわ」


「んな事より、後は斜め上に続く坂を上がるだけだぜ」


 ナタンとメルヴェ達が落下した後、網に引っ掛かり、何とか着地できた。


 その直後、女性兵士とソムサックたちが暗闇から声をかけてきた。



「った、う…………」


「よっと、ここは?」


「一応、脱出まで背後は頼むわ?」


 コンバットナイフ&AK109を持つ帝国兵たちに、メルヴェは後ろからの奇襲に備えるよう頼む。



「それでは、こちらへ…………」


「と言うか、誰がこんな物をいつの間に?」


「いったい、どうやって……」


 斜め上へと続く坂道を上がってゆく、女性兵士にナタンとメルヴェ達は質問をする。


 自分たちの知らぬ間に、敵によって拠点《アジト》に対する侵入ルートが設けられていた。



 この事実に、二人は帝国が有する諜報能力とスパイ達に、驚嘆するばかりだった。



「貴方たちでは無いのなら、別の諜報部員でしょう? 私たち警察部隊や帝国軍憲兵隊の他にも情報局や諜報部は多数存在しますし…………」


「オルツィ? そろそろだ」


 坑道は終わりを向かえ、二人の質問に答えていた女性兵士は、ソムサックに名前を呼ばれた。


 坑道から出た、彼等はコンクリート壁に覆われた部屋に入る。


 ここには、一台の青い装甲車両ボクサーが待機していた。



「ええ、ソムサック、到着しましたね…………さて、中に入る前に着替えて貰いましょう…………ミラージュ・ミスト」


 オルツィと呼ばれた、女性兵士は変身を解き、次いで両手を前に出した。


 そうして、幻影魔法を唱えると右側の壁から手前に、虹色に光るモザイクを作った。



「これで、OKですね」


「おい、開けろっ!」


「お待ちしてました…………」


 その技や魔法から、にこやかに微笑むオルツィは、ソーサラーだと察せられる。


 バンバンッと、ボクサー装甲車を叩く、ソムサックは中に居る乗員を呼ぶ。



 すると、後部ハッチを開いた乗員が黒いプラスチック製の箱を、二つ持ち出しながら出てきた。



「これをどうぞっ! 着替えを用意してました」


「ふぅ~~? これで、任務完了だなっ!」


「着替えね…………すぐに終わらせるよ」


「すこし、待っててね」


 その箱を受け取った、オルツィは直ぐさま、ナタンとメルヴェ達に手渡す。


 ソムサックは、オーガーのヘルメットを外して、頭をさらけ出した。



 その顔は、痩せこけ気味な褐色肌をした、黒い短髪アシュア系男性だった。



「その虹は、すり抜けられますので」

 

「分かったよ…………てか、二人とも、アシュア系か?」


「洗脳されたのかしら?」


 オルツィの説明を聞いた、ナタンとメルヴェ達は虹色に光る壁に入る。



「聞こえてるぜ、俺は元々ティー国人だったが、帝国に志願したんだ…………フランシュ外人部隊に所属してたが、部隊ごと帝国の傘下に着いたからな~~その時に実力を見せたら採用されたって言うな」


「貴方の場合は、何人もの帝国兵を殴り倒して、病院送りにしたんでしょう?」


 ナタンとメルヴェ達が口から溢した疑問に、ソムサックは答えた。


 その横で、オルツィは真顔で口を挟む。



 帝国も兵力不足により、白人種だけではなく、有色人種の兵士も徴集している。


 もちろん、大抵は強制的に洗脳されたりして、だが。



 しかし、指揮官に実力を認められたり、彼みたいに志願した兵士もまた、一部には存在する



「そう言う君の方は、なぜ帝国に?」


「気になるから教えて」


「私は祖国モングルで軍務に着いてたし、同時に極右組織に所属してたわ…………そして、祖国は支援国ロシャが帝国の傘下に入ったから、自然と私も帝国軍の一員になったの」


 ナタンは上着を脱ぎながら聞いてみると、横からメルヴェも同じ質問をした。


 彼女の姿だが、もちろん虹色に光る魔法で見えぬように配慮されていた。



 そして、オルツィは帝国に志願した理由を答えた。



「そう言う事だったのか」


「私は思想的に、帝国の国家主義思想に共鳴しているし…………東アシュアじゃあ、ロシャ連邦東側からチィーナ北部にかけて、帝国側に着いた国や部隊も多数だし」


「モングル、チュソン…………等だな? ただ、ジューポンやコリャン、チィーナでは南北に別れて激戦が続いたらしいな?」


 ナタンは、黒いズボンを履きつつ、オルツィの話を聞いていた。


 また、ソムサックの話す通り、東アシュアは軍事強国や、技術力が高い工業国が多数存在した。



 それらの国々は、帝国に制圧された。



 だが、元から東側と言われた国家は、一部勢力を除いて、大半が帝国に従属した。


 しかし、東側の大国チィーナを含む西側に属した、ジューポン&コリャンは激しい内戦となった。



 工作員による重要人物の説得や、拉致洗脳などにより、東アシュア三国でも、軍が反旗を翻した。


 これにより、北側から攻めてくる帝国軍に恭順を示した部隊と、反抗勢力の間で交戦が開始された。



 その結果、反抗勢力は戦いに敗北して、東南アシュアやオーストレリアに敗走する。


 また、この戦いで、南方に存在する島国リパブリック・チィーナも制圧された。



「向こうも、ゴタゴタしていたんだな…………」


「戦乱は世界中を駆け巡ったのよ」


 ナタンが、遥か遠く東側に位置するアシュア地域を思い、不意に呟く。


 メルヴェも、疲れたような声を出して同じく呟くのだった。

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