ナタンは、建物の奥に行こうとしたが、レジスタンス員から拳銃で撃たれそうになってしまった。
「弾切れかっ? ならば…………」
「は?」
レジスタンス員は、ナタンへと銃口を向けたが、弾丸が発射される事はなかった。
しかし、帝国に掴まるくらいならばと、レジスタンス員は自らの首をナイフで切り裂いて自害した。
「うっ!」
その彼は、ナイフを床に落とすと、ドサリと力なく倒れてしまう。
「…………クソ、俺は味方だったんだがな」
そう呟きつつ、ナタンは死んでしまった、レジスタンス達から服装を剥ぎ取る。
なるべく、血や弾痕が無い衣類を選び、警察隊員たちが着る服装の下に着込む。
「行けるか? いや、ブービートラップか…………こりゃ、ダメだな」
それから、ナタンは自身に銃を向けていた、レジスタンス員の遺体を避けて、ドアに向かう。
しかし、それを静かに開くと、紐に繋げられた、爆弾が仕掛けられてるのが見えた。
なので、ここは危険すぎて、とても通れそうには見えなかった。
「仕方ない、来た道を戻るか?」
帝国警察に変装して、レジスタンス側に合流する時に備えて、そちらの服装も入手した、ナタン。
彼は、今きた道を戻り、ビルの外を遠巻きに眺めて、敵が何をしているかと様子を伺う。
「…………ナタンに似た奴がさ?」
「それより、飯にしよう? その話しは腹を満たした後だ」
「その案に賛成~~! チーズ&トマトがたくさん載った熱々のピザが食いたいわーー」
「まあ、もう昼食時だしね?」
レオ・カルミーネ・ベーリット・ミア達が歩いていく。
また、ナタンはビル陰からは、後ろ姿しか確認できないが。
新たな女性警察隊員が、五人目として、彼等とともに歩いている姿を視認する。
「…………なんか、あの隊員は見た事があるような?」
新しい女性隊員の背中を見ながら、ナタンは呟く。
「それより、メルヴェ達に合流せねば」
ナタンは、今歩いて行ったばかりの五人とは、反対方向へと歩いて行く。
そうして、地面が爆発で、大穴が開いた場所に入った。
レジスタンス達は、基本地下で、秘密基地を作って密かに活動する。
彼も、穴の中では帝国警察として、振る舞う必要がなくなった。
なので、黒い制服を脱ぎ捨て、緑色を基本とした、レジスタンス員が着る服に着替える。
こうして、彼は自分たちへの拠点《アジト》へと、続いている地下道に戻って行った。
「ここまで、地下では戦闘がなかった……珍しいな?」
ナタンは、レジスタンス達による本格的なテロ攻撃が始まり、地上は大混乱な上体だと考察する。
なので、下水道・カタコンベ等では、あまり戦闘が行われていない。
きっと、そう言う事なんだろうと、彼は思いながら、ひたすら地下を進む。
「そっちに逃げたぞっ!」
「罠だっ!」
しかし、やはり戦闘は地下でも行われているらしく、ナタンが歩く道中では、怒声や銃声が響く。
「なるべく、戦闘からは離れて行こう…………」
何処からか聞こえる声と銃撃音だが、ナタンには遠すぎて、敵味方の判別がつかない。
レジスタンスが逃げているのだろうか、いや帝国兵が銃を撃っているか。
とにかく、彼は不用意に、戦闘音が鳴り響く方には近づかず、慎重に歩いてゆく。
こうして、時おり不意に聞こえる戦闘の音や足音に、ビクつきながらも彼は進んで行った。
「…………ここまで来れば」
暫くの間、ずっと薄暗い地下道を歩いていた、ナタン。
「後は、アジトまで、もう少し」
ナタンは安堵すると同時に自分たちが使用している、拠点《アジト》まで戻って来られたと喜んだ。
そうして、気が緩んでいたからか、狭い地下通路のアチコチから、一斉に銃口を向けられてしまう。
「…………しまった、帝国兵か?」
「いや、私達はレジスタンスだよ」
「帝国軍も警察も、ここには居ないぜ」
急に暗闇から銃を向けられた、ナタンは帝国側の部隊に待ち伏せされたと思っていた。
だが、彼の前に現れた者達は、味方であるレジスタンス員たちだった。
地下通路の両端には、円柱が何本もあり、そこから彼等がAK74を、ナタンに向ける。
何人も存在する彼等だが、背後からも二名が、ナタンに近づく。
もちろん、二人とも銃を向けながらだ。
「…………俺は、見ての通り、味方だ」
「見た目だけな、ナタン…………いや」
「帝国のスパイ、コードネーム、ガルム」
レジスタンス員達は、全員がナタンを激しい憎悪の目を向ける。
そんな中、正面の暗闇から、ナタンがよく知っている仲間たちが現れた。
ウェストとメルヴェ達だ。
「ウェスト、メルヴェ…………信じてくれ、俺は帝国の人間じゃない」
急に、二人からも憎しみの眼差しを向けられた、ナタンは必死で誤解を解かんとする。
「…………いや、アンデッドだろ?」
「貴方は、警察署から落ちた上に、ギデオンに銃撃された…………それでも生きている何て化け物よ」
「そうだ、貴様は人間じゃないっ!」
しかし、ウェストは首を横に振りながら、メルヴェは真剣な顔で喋る。
さらに、後ろから自動拳銃ウェブリー&スコットを握りながら、ギデオンまで現れた。
「お前っ! よくも、俺をっ!」
「ふん、あの時はアレが最善の策だった……それに、本部からの情報で、貴様が帝国の人間だと言う事が、既に判明している」
ナタンは、自身が警察署から落下した際、車上のボンネットに運良く落ちた。
しかし、ギデオンは彼を助ける事なく、四肢を拳銃で撃ち抜き、見捨てて行ったのだ。
「…………俺が帝国のスパイだとっ! バカを言うなっ! 俺はレジスタンスとし…………」
「いや、お前は人狼ゲームで、村人の中に騎士と騙り、混ざりこんだ、ワーウルフに過ぎない」
ナタンの言葉を制して、ギデオンは比喩的に、彼を人間に変装している怪物だと話す。
「…………ナタン、諦めて、情報を吐くなら悪いようにはしないわ」
「そうだ、情報を吐くなら悪いようにはしない…………コードネーム、アセナッ!!」
メルヴェは、ナタンに大人しく降伏するように諭す。
だが、今度は彼女の顔に、ギデオンは銃口を向ける。
「動くな」
「お前にも、スパイ容疑がかかっているのよ」
突然、メルヴェの両脇に、クラークとベッキー達が音もなく現れた。
「えっ? は?」
「動かないでね…………」
「妙な真似はするな」
ひたすら焦るメルヴェに、ベッキーはSIG、540の銃口を向ける。
クラークも、彼女が暴れださないかと、両手にINSASを構えている。
「はっ? ………これは、どう言う事よ? 説明して、ちょうだいっ!」
「帝国警察が用意した、潜入工作員は二人だった………一人は北欧神話から取られた名前で、ガルム………」
「もう一人は、ティルク系だからな? ティルクの建国神話から取られた名前で、アセナと名付けられたそうだ」
驚いた、メルヴェは目を大きく開いた表情で、ギデオンを見る。
対する彼は、彼女もまた工作員の一員だったと、淡々と語る。
また、ウェストも彼女が工作員であると言う理由を、残念そうな顔をしながら語った。
「待ってっ!! ティルク系だからって、そんな、いい加減な情報で、私をスパイ扱いするの?」
「残念だが、そうせざる得ない…………」
「ナタン、メルヴェ…………お前たちには、これから尋問を受けて貰う…………大人しく来てくれよ」
メルヴェは、必死で弁明しようとするが、ギデオンは言葉とは裏腹に、冷たい表情を彼女に向ける。
また、ウェストは、まだ残念そうな顔をしながら二人に語るのだった。
こうして、彼等はスパイ容疑が晴れぬまま、レジスタンスの拠点《アジト》へと連行されていった。
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