スピィン、ジブラルタル海峡・北側、軍事都市ジブラルタル。
元ブリティン海軍が駐留していた、大規模な基地だが、現在は帝国海軍が駐留している。
雪積もるハンザ大陸側の半島であるジブラルタル基地だが、ここでは空襲警報が鳴っていた。
基地は、既に長距離から空対地ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃を受けた後だった。
警報が鳴り止まぬ理由は、基地上空にバイラクタルTB4が飛来したからである。
これは、航空機型ドローンの中でも、長距離を飛行して、空戦から地上爆撃にも活用される。
「対空砲火を浴びせろっ! SAM《サム》の用意を急げっ!」
『了解、反撃を行うっ!』
ジブラルタル地下防空壕ないに作られた、作戦司令部では、基地司令官の怒号が響く。
その指令を受けて、地上では市内各所から上空を飛ぶ、バイラクタルTB4を狙った攻撃が始まる。
パーンツィリ・シルカ・レーザー砲台・魔導筒から何発もの対空射撃が行われた。
ミサイルや機銃弾は、バイラクタル部隊を次々と射ち落とす。
レーザーは、青色の高熱光を地上から追尾させつつ照射しながら、機体を故障させて墜落させる。
雷撃魔法は、いくつもの雷を上空に射ちだし、滑空してくる飛行編隊を何機も破壊した。
「敵の爆撃ですっ!」
地上から反撃を受けた、バイラクタルTB4は機数が多く、全部は射ち落とされなかった。
残った機体は、UMTASミサイルを地上へ向けて発射した。
それらは、黒いトラックに載せられた、対空兵器パーンツィリや、対空車シルカを破壊する。
また、ジブラルタル国際空港に駐機していた、多数の帝国空軍機を爆破する。
多目的機ハインド・輸送機カサッカ・大型輸送機ヘイローなどのヘリコプターが火柱を上げた。
さらに、格闘戦闘機ミグ35・ステルス戦闘機Suー57・主力戦闘機タイフーンなども吹き飛ぶ。
こうして、迎撃のために出撃しようとしていた航空機は全て破壊された。
「よし、我々は地上目標を破壊するっ!」
「訓練通り、機雷を避けて来れたな」
「ぐわっ!?」
「が…………」
爆撃機だけでなく、SBSコマンドが秘密裏に、ジブラルタル基地に上陸していた。
彼等フロッグマン部隊は、市内各所で対空射撃を行っている帝国軍・防空隊を混乱させる。
破壊工作部隊は、サプレッサー付き短機関銃MP5、SDで、防空部隊を見つけ次第銃撃する。
こうして、音もなく敵に弾丸を浴びせては、対空兵器を無力化していく。
防空部隊を蹴散らした彼等は、黒色のレーザー砲台に、プラスチック爆弾を仕掛ける。
その形状は、軍用艦艇に搭載された円い砲塔に、ソックリだ。
また、左右に車輪が付いた黒い魔導筒も発見次第、同じ方法で破壊してゆく。
これは、黒い丸太のような砲身に青いクリスタルが先端部に取り付けられていた。
「ここまでやれば安心だ、そろそろ来るぞっ!」
破壊工作部隊の隊長が告げると、空港に味方ヘリコプター部隊が到着する。
南部の山間部は、様々な輸送機Cー130ハーキュリーズが遥か上空を飛ぶ。
すると、SASと空中騎兵連隊を中核とする、空挺部隊が降下を始めた。
彼等が降下していく様子は、地上から多数の落下傘として視認できた。
『山間部への降下を確認した、我々は飛行場を目指す』
一部のCー130ハーキュリーズは、空港に強制着陸を試みた。
次いで、空港周辺には各輸送ヘリが飛来する。
SA330ピューマ、SA321シュペルフルロン等だ。
こう言った着陸を目指す部隊を、攻撃ヘリが護衛する。
SE.3130アルエットII・SA341ガゼル・655ECティーガーなどだ。
しかし、大多数の地上目標である戦車や対空砲などは、すでに全て破壊されていた。
この事から空挺部隊は、無事にジブラルタル国際空港へと着陸できた。
モラッコ、ジブラルタル海峡・南側、港湾都市と漁村。
タンジェ、エダリヤ、クサール・スギール、セウタ。
これら、ジブラルタル海峡の南側に位置する地域は、作物栽培を行うために寒冷化されてなかった。
しかし、ここは今や連合軍艦隊と帝国軍・沿岸守備隊が、激しい砲撃戦を繰り広げていた。
「艦砲射撃が来るぞっ!」
「防空壕に退避しろっ!」
セウタ北西の山々には、砲台と地対艦ミサイルが大量に配備されていた。
もちろん、それらは短距離ミサイルや艦砲射撃を行って来る連合軍艦隊と射ち合う。
艦隊の目標は、ジブラルタル海峡を越えて地中海を制圧、制海権を奪取する事だった。
また、その中心には旗艦として、クイーン・エリザベスが航行していた。
「我々は、ドラゴンの館が面するレアル通りを制圧するっ! 現場では民兵部隊が、既に行動しているっ!」
セウタは、アフレア大陸で、スピィンが自治する都市の一つであった。
今、ここには複数の輸送ヘリ、スーパーリンクスが、都市中央部を目指して海上を飛ぶ。
それを、上空から護衛するのは、軽汎用ヘリ、ウェイストランド・スカウトだ。
これらの機体には、L7汎用機関銃が二挺、SS.11対戦車誘導ミサイルが、四発搭載されている。
また、それよりも上には、オースターAOP.5観測機が、都市上空を旋回しながら監視する。
「行くぞっ!」
プーニーハットを被った、SAS隊長はスカウトから垂らされた、ファストロープを降りていく。
その後に、部下たちも続いて降りていき、ある建物に着地する。
それは、ドラゴンの館と言われる観光名所だ。
降下部隊は、南西の一角に向かい、そこから各自が銃を構える。
クリーム色に塗装された壁面上部には、灰色のドラゴンがある。
もちろん、これは彫刻だが、その隙間には槍型手摺が備えてあった。
「ここを、拠点に狙撃支援を行うっ!」
「南東に敵車両を発見っ!」
「ジャベリンを使うんだっ!!」
SAS部隊は、スナイパーとして、ドラゴンの館から市内各所で戦闘を行う友軍を支援する。
それは、レジスタンスや他のコマンド部隊だ。
また、屋上を制圧した彼ら以外にも、SAS部隊は付近に展開している。
近くにある大型商業ビル、スポーツ専門店ビルからも、機関銃や狙撃銃が道路を狙う。
当然ながら、ヘリの強襲に驚いた帝国軍は黒いBTRー80を迎撃に向かわせる。
しかし、SAS隊員がジャベリンで狙いを定め、
即座に弾頭を発射した。
それは、真上に向かって飛んでいき、今度は一気に上空から落下してきた。
当然、弾頭は叩き潰すように、装甲車を上部から完全破壊してしまった。
「やった、あっ!」
「クク…………死ね」
「お前がなっ!」
ジャベリンに、次弾を装填しようとした、SAS隊員を狙って、ワーウルフが襲いかかってきた。
だが、橫に居たSAS隊員がL96A1を撃ち、奴の側頭部に風穴を開けた。
「ぐ………………」
「助かったっ! まさか、クライミングしてくるとはな」
「気を抜いている暇はないぞっ!」
一声だけ発して、ワーウルフは落下していくが、彼等に安堵する猶予は一刻もない。
なぜなら、壁面を登りながら、帝国軍部隊が銃を撃ってきたからだ。
ビゾン短機関銃を片手で構えるトーテン・シェーデル・ゾルダートは上に向けて乱射してくる。
その合間を抜けるように、制帽を被った、ヴァンパイアが壁面を駆け上がってくる。
まるで、パルクールやクライマーの選手みたいにだ。
しかも、下から蔓が屋上にある手摺に絡まったと思ったら、ドライアドが一気に距離を縮めてくる。
「不味い、スナイパーライフルじゃ不利だっ!」
「かと言って、分隊支援火器やアサルトライフルでも無理だぞっ!」
弾幕を張りつつ、壁面を登ってくる帝国軍部隊は、まるでホラー映画に登場するゾンビのようだ。
SAS部隊は、火力に押され、武器を持ちかえようとした。
しかし、屋上から下に顔も出せないほど、大量の銃弾が飛んでくる。
だが、そこに援軍が現れた。
「支援するっ!! 持ちこたえろっ!!」
周囲に木霊するほど、大声で叫ぶ、スーパーリンクスのドアガンナー。
直後、L7汎用機関銃が火を吹き、ドラゴンの館に貼り付いていた帝国軍兵士たちが落下していく。
「ガンナー、援護射撃に感謝するっ!」
「ラジャー、支援は任せろっ!」
SAS隊長は、ドアガンナーに感謝すると、スーパーリンクスは離れていった。
ここ以外にも、セウタ東にある城塞や西にある刑務所は制圧されていく。
また、南西にあるフニデクにも緊急展開部隊が送られていた。
このようにして、ジブラルタル海峡は戦場と化した。
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