「あれを狙って、こうして私が…………」
「うんうん、なるほど、なるほど?」
ベーリットは、レギナに作戦を説明し終えた。
「…………っと言うワケで、行くわよっ! ブシュアアァァァァァァーーーー!!」
「分かったわ、今やるから待っててっ!!」
大きく息を吸い込み、事務机の裏から立ち上がった、ベーリットは口から青い毒ガスを噴射した。
さらに、シモーネは風刃魔法により、風の勢いに毒ガスを載せて運ぶ。
「毒ガスが来るっ! 気を付けろっ!! ぐあ? あ…………」
「ヤバいっ! ぐああああっ!?」
「ごあっ! ブクブク…………」
「ぐああっ!! ぐええぇぇっ!!」
連合軍兵士は、毒ガスから離れようとしたが逃げ切れずに吸ってしまい、床に倒れる。
アシュア系民兵は、毒ガスを吸うまいと走ったが、散布範囲に入ってしまい、苦しみに悶える。
黒人PMC要員は、青いガスを吸って、口から泡を吹いて倒れてしまう。
白人PMC要員も、一気に狭った青い霧に包まれて悲鳴が聞こえる。
「グールが存在するっ! 気を付けろっ!」
「あそこだっ! 火力集中しろっ!!」
「援軍だーー! 敵兵は何処に居やがる?」
「前進する、援護してくれっ!」
グリーン・シュヴァリエは、ミニミ分隊支援火器を連射してきた。
東南アシュア系PMC要員も、RDIストライカー散弾銃を乱射してくる。
アシュア系民兵は、机裏からDP28軽機関銃を機銃掃射させる。
アラビ系民兵は、エンフィールド小銃を撃ってきた。
また、敵に複数の増援が現れて、戦列に加わると即座に射撃を開始する。
「援軍登場っ! 敵を殲滅する」
「敵部隊を確認」
連合側に、ラテン系民兵と南太平洋系PMC要員が現れる。
その奥から、ドリアード・マジシャン・スパルトイなどが、続々と援軍にやって来た。
「敵も特殊兵種を投入してきたぞっ!」
「不味いわね? 何とかしないとっ!」
レオは応戦しようと、H&K、UMPだけを隔て板から出して撃ちまくる。
ミアも、事務机の横から少しだけ顔を出して、二連散弾銃メルケル200Eを発砲する。
「そうだ、何とかしないとなっ!」
「ぐあっ! 現れやがったか? このっ!」
身を隠して背中を隔て板に預けていた、レオの右側からワータイガーが現れる。
それと同時、奴は肩に噛みつき、強力な右拳《パンチ》を彼にぶつける。
「ぐあっ! 喰らえっ!」
「当たらんなっ!」
腰から素早く、ワルサーP5Lを抜き取り、レオは何回も引き金を引いて反撃する。
それを受けて、ワータイガーは素早く後ろに、スウェイして、銃撃を回避した。
次いで、直ぐさま隔て板の裏に隠れる。
「プライシンスバイトかよ…………」
麻痺かみつき攻撃を受けた、レオは肩から力が抜けてしまい、体が動かしずらくなる。
「レオ、大丈夫? 毒じゃないわよね?」
「いや、ワータイガーの牙にやられたんだ? そこまで強力な毒じゃないが、体に力が入らん」
隔て板の後ろを通ってきた、ミアは動けないでいる、レオを心配した。
「しっかし、数が多いなぁ?」
「シモーネ、今度は私と連携してっ!」
「分かったわよ、準備するから待って?」
レオは、キョロキョロと目を動かしつつ、周囲を探って、敵味方の交戦状態を確かめる。
すると、レギナがゴクリと唾を飲んで、口を開く姿が遠くに見えた。
シモーネは仕方なく、彼女に合わせて、魔法を展開する準備を行った。
「もっと、RPGを持ってこいっ!」
「69式なら、あるぞっ!!」
白人民兵が叫ぶと、黒人民兵がチィーナ製RPGー7である、69式火箭筒を持ってきた。
そして、榴弾を発射した。
「ぐわっ!! 外れなかったら、死んでたぞっ!」
「ソムサック、もう隠れた方がいいわ、敵の数が増えてきたし」
ソムサックは、分隊の中央で敵を牽制し、また注意を惹くべく、一人両腕から銃撃を行っていた。
そんな彼に対して、RPGー弾が四方八方から飛んできた。
幸い、RPGー7による攻撃は周辺にある、机や隔て板に当たって爆発するだけだった。
だが、このままでは何れ、彼に弾頭が直撃してしまうだろうと、オルツィは判断する。
「分かってるって、ほら身を隠したぞ」
「そんな事より、敵が多い…………」
「火炎魔法を喰らえっ! 喰らえっ!」
「敵の装甲兵種が面倒だわ?」
ソムサックは、サッと素早く遮蔽物の後ろへと身を隠した。
オルツィは事務机から身をだし、リカーブボウを射つ。
両手からバスケットボール大の火球を、交互に乱発する、シモーネ。
AGー3を単発連射しまくる、ベーリット。
「うわっ! 火球がくるっ!」
「避けろっ! ぎゃあっ!」
「魔法で反撃してやる」
「俺には効かんぜ、機銃掃射のお返しだ」
黒人PMCは、連発される火球を、机下に身を屈めた事で何とか避けられた。
しかし、RRGー7を発射しようとした、アシュア系民兵は、頭に火球が直撃してしまった。
そして、奴は引き金を引いたまま後ろに倒れた。
その結果、弾頭が後方左側へと発射され、天井をブチ抜いてしまった。
アラブ風に、ターバンを巻いた、アラビ人らしき、マジシャンは頭上に両手を掲げる。
そして、1メートル程の大火球を作ると、シモーネの方へと投射してきた。
グリーン・シュヴァリエは、相変わらず、ミニミ分隊支援火器を乱射している。
「やばっ! どわあっ!!」
榴弾やグレネードランチャー並みの威力を持つ、大火球はシモーネが隠れる事務机に命中する。
すると、炎が弾けてしまい、火の粉が彼女に降りかかる。
「うわわわわ、」
「慌てないで、ほら?」
衣服に付いて燃え広がる炎に対して、シモーネは転がりながら消そうとするが。
それを、急いで駆けつけた、ベーリットが冷静に上着を脱いで、バサバサと叩いて消火した。
「ありがとう…………助かったわぁ」
「それを言うより、魔法を? ん…………」
疲れたと言う表情で、床に伏せる、シモーネに対して、ベーリットは魔法による援護射撃を求めた。
だが、彼女は敵部隊の後方で、何かが動いている姿を目撃する。
敵には、ドリアードが存在するから、囮《デコイ》や案山子かも知れない。
そう思った、彼女はAGー3を構えて敵を狙うが。
「背後からだっ!? 連中、回り込んでやがったぞっ!!」
「反撃し、ぐわあっ!!」
「撃ちまくれーー!?」
南アシュア系民兵が叫びながら、上下二連散弾銃撃を撃つ。
その横では、コーカサス系PMC要員が、ステアーAUG、A3を撃とうとしたが逆に射殺される。
また、カルカノ小銃を構える白人民兵が反撃していた。
「敵が後退していくわ、何かしら? は? 味方…………」
「味方部隊が来てくれたの?」
ベーリットとシモーネ達は、味方部隊の登場と言う、思わぬサプライズに驚く。
「不味い、挟み撃ちにされる」
「援軍だぜっ?」
「今は、後退しろっ! 敵に挟まれるっ!」
「退避、退避ーーーー!?」
RRK分隊支援火器を抱える連合軍兵士は、焦ったのか射撃を止めて逃げ出した。
援軍に、RPGー2を抱える白人民兵が現れたが、黒人民兵に撤退を告げられる。
アラビ人PMCも、慌てて奥の方へと、真っ直ぐ逃走を開始した。
連合側は、正面からは、警察隊員が銃撃してくる上に、背後からは別動隊が回り込んでいた。
そう勘違いしたのだ。
「ぐわっ!? ぐえっ!」
「うっ! があっ!!」
敵の左側から出てきた味方部隊は、正確な射撃と素早い動きで、次々と敵部隊を倒していく。
「反撃するっ! 先に行けっ!」
「殿は任せてっ!」
敵部隊の中で、何人かが残り、後退していく味方部隊を援護する。
「今よっ! 私たちも一気に仕掛けるわっ!」
「ランチャー野郎どもも、奇襲には敵わないのね」
ミネットは、左横から受け銃撃で、混乱する敵兵士に向かって疾走していく。
シモーネも、両手を掲げて雷玉を三個も作り、それを一斉投射した。
こうして、殿を勤める敵部隊を狙って、二人は攻撃した。
「ぐわあっ!?」
「ぎゃああああっ!」
シモーネの雷撃魔法により、弧を描いて飛んでいった光球は、殿を勤める民兵たちに命中した。
そして、弾けた雷光は周囲の兵士たちを感電死させる。
こうして、味方部隊の到着により、警察隊員たちは窮地を救われた。
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