【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第114話 悲しげな美女

公開日時: 2024年7月10日(水) 10:11
更新日時: 2024年7月13日(土) 11:26
文字数:3,022


 ナタンとイルメラ達は、白いベッドの上で向かい合っていた。



「どう、醜いでしょう? 前に難民から暴行されてね…………治そうと思えば治せるし、一度治療したけど違和感がしてね?」


 己の顔を醜いと言って、顔を暗くさせながら隠すように俯く、イルメラ。


 彼女に対して、ナタンは何と声を掛ければ良いのか分からず、黙ったまま話を聞く。



「…………だから、私はグールとして、帝国の警察官になったの…………」


 イルメラは、ナタンの方に向き直ると、悲しげな表情で、自身が経験した過去を語りだす。



「ケレンの大晦日事件の事は知っているかしら?」


「知っているよ…………」


 イルメラからの問いに、小さな声で静かに答える、ナタン。


 そして、さらに悲しげな顔で、彼女は淡々と語る。



「あの後もずっと、難民の男達はハンザの女性を襲っていたのよ…………私は彼等から酷い扱いを受けてね? この傷はその時の物よ」


 イルメラは、自らの傷ができた理由を、すごく嫌そうな顔をしながら語った。



 2015年、ハンザ連邦合衆国、ドイツェル州、ケレン市。


 ケレン大聖堂にて、発生した難民達による大暴動。



 これは、後にケレンの大晦日事件と呼ばれた。



 その後も、連日ハンザ連邦では、難民による女性に対する暴力事件が多発していた。



「きゃああっ!?」


 イルメラもまた当時は警察官として、ケレン市内の巡回に当たっていた。


 その時、彼女は運悪く、複数人からなる難民に捕まってしまい、酷い暴行を受けてしまった。



「大人しくしろっ!? このアバズレ」


「早く黙らせろっての?」


 路地裏の地面へと、アラビ人と黒人たちから押し倒された、イルメラ。


 泣き叫び、必死の思いで抵抗する彼女を動けなくするため、両手両足を掴んだ、難民たち。



 それから、浅黒い肌の男が彼女に覆い被さり、凄まじい暴行を加える。


 彼等は、交代しながら暴力を振るい続け、彼女を乱雑に扱う。



「へへっ! ようやく、大人しくなったか」


「これだけ、やったら後は…………」


 イルメラは地面に倒れたまま動けないでいると、アラビ人と黒人たちは、やっと満足したようだ。


 そして、ぐったりとする、彼女に対して、さらに惨《むご》い行為が行われる。



「アバズレには…………これが、お似合いだぜっ!?」


「ハハッ! 違いねぇ~~」


「いやっ! これ以上はやめてっ!! 酷い事はしないでっ! …………ギャアアアアーー!!」


 アラビ人が、ライター火に火を着けると、イルメラの顔面を炙る。


 また、他にも、黒人が彼女の頭を後ろから、ガッチリと押さえつける。



 段々と燃え広がる、顔面の熱さと痛みに彼女は泣き叫ぶ。



 しかし、誰も助けには来なかった。



「へへ…………これで嫁の貰い手は来ねぇな?」


「良かったら、俺が貰ってやろうか?」


「ぎゃははははっ!!」


 散々暴行を加えた難民達は、彼女を路地裏に置き去りにして、何処かへと去って行った。


 あの後、すぐに彼女は、ふらつきながら近くに存在した病院にまで歩いていき、診察を受けた。



 しかし、怪我や顔の傷よりも、彼女は精神がズタボロにされていた。


 こうして、PTSDだと、後に精神病院で診断される結果となった。



「アバズレには…………これが、お似合いだぜっ!?」


「ハハッ! 違いねぇ~~」


「ぎゃあああっ!?」


 自宅にあるベッドの上で、悪夢に魘《うな》されて、飛び起きた、イルメラ。


 その顔には汗が滲み、火傷を負った額は、左側から髪を伸ばして、アシンメトリーで隠されていた。



 毎夜、悪魔がごとく夢に現れる、下卑た笑いを浮かべる難民達。



 こうして、夢の中でも難民達に襲われた悪夢を、毎晩何度も彼女は見ていた。



「何故ですっ! 私は難民達に暴行を受けましたっ!!」


「そうは言っても、上層部の命令なんだよ…………」


 それから数日後、イルメラは暴行を受けた警察に訴え、難民達を捕まえようと努力した。


 しかし、難民達を捕らえても、弁護士や警察の上層部が、犯罪者である難民を庇ってしまう。



 警察署長に直訴した、イルメラだったが、それも空しく終わった。



 こうして、彼女は絶望の底に叩き落とされてしまった。



「だから、私は…………」


 あれから彼女は、復讐に身を捧げるべく、一人で、難民達に対する報復の機会を待った。


 何人かの仲間と行動をともにしたり、下手に動けば、ネオナチとして、捕まるかも知れないからだ。



 だから、ひたすら孤独と恐怖に耐えながら、彼女は事を成就する密かに機会を伺っていた。



「誰かしら?」


 それから、復讐を果たす時を、一人淡々と待つ、イルメラだったが。


 彼女が帰宅して、アパートの玄関ポストに目を向けると、一通の手紙が入っていた。

 


「私に? 何の悪戯《イタズラ》よ…………」


 イルメラに届いた一通の手紙、それは差出人は不明で、中身は怪文書みたいだった。


 そこには、行動を起こすのは止めろ、その時を待つんだ。


 反旗を翻す時期がきたら、大勢の傷付けられた女性たちとともに立ち上がるんだ。



 とだけ、書かれていた。

 


「何コレ? ネオナチかしら…………」


 文書の内容を読んだ、彼女は気持ち悪いと思い、ただ紙を破り捨てるだけだった。



 それから、また年月は流れた。



 ハンザ連邦合衆国、ドイツェル州、ケレン市、ケレン市庁舎前。



「リーカー市長、反乱軍が目前まで迫って居ます、どうか脱出を」


「分かっているわよ、クズどもの分際で私に楯突くとはっ!?」


 ケレン市に勤務する、スーツ姿の役人は、上司である、リーカー市長を避難させようと提言する。


 その言葉を受けた、彼女は部下に怒鳴り散らしながら返事する。


 彼女は、傲岸不遜な女性政治家、メッケル大統領の友人にして、悪徳政治家として有名だ。



「ったく、面倒な事態になったわね?」


 さらに、リーカー市長は、メッケル大統領の部下である高級ホテル経営者ホリッキー氏とも友人だ


 彼女は、彼が所有するホテルに対して、大量のアラビ・アフレア難民たちを収容させた。



 それにより、多額の難民補助金を、ケレン市から受給して、私腹を肥やしたと言うわけだ。



 さらに、彼女はケレン大聖堂事件の時も、難民達に暴行された、女性達に対しても態度が酷かった。


 暴行された理由は、ドイツェル女性達の方に、問題があったからだと言ったからだ。



 そして、自らが市長であるにも関わらず、余りにも市民の生活を考えては、いなかった。


 彼女は、難民支援にばかり、市が徴税した税金を湯水の如く、注ぎ込んだりしていた。



 それだけに飽きたらず、彼女が難民に仕事を提供すると、集会で失業者の事を試みない発言もした。


 その時には怒り狂った、ドイツェル人に腹を刺されたりするなど。



 こう言った、様々な人々から、顰蹙《ひんしゅく》と侮蔑の視線を浴びる、人物なわけだ。



「リーカー市長、こちらです」


「言われなくても、分かっているわよっ!!」


 警察官たちに誘導され、護送用の乗用車に乗り込もうとする、リーカー市長。



「な、何を? 何故…………はっ!?」


「裏切り者めっ! お前のせいで、私達は…………私はっ!!」


 しかし、その場に居た数人の警察官たちが、いきなり、リーカー市長に向けて襲いかかった。


 彼等は、彼女に向けて、H&K、USPから銃弾を何発も放つ。



 当然だが、そこには怒り狂う、イルメラの姿もあった。



「うぎゃああああっ!!」


 警察官たちから何回も銃撃を受けた、リーカー市長は、凄まじい悲鳴を上げる。


 こうして、彼女は目を見開いたまま、真っ赤な血液を撒き散らして呆気なく死んだ。



「はぁ…………」


 かなり強く、H&K、USPを両手で握っていた、イルメラは肩から力を抜いて、両腕を下げた。

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