「ただの人間じゃない?」
「あっ! 紅い瞳?」
ナタンは、正面に立つ、五人の帝国側に属する、改造人間みたいな姿に驚く。
メルヴェも、彼等の赤々と宝石みたいに光る瞳を、じっと見つめる。
「おっと失礼しました、私達は連合軍の特殊部隊《コマンド》でしてね、それで帝国から入手した改造手術により、敵と同じく強化兵士として任務遂行の為に派遣されてきたのです」
「と言う事は反抗作戦が近いと…………」
ペラペラと愛想良く喋る、ギデオンに対して、ハキムは彼等がきたと言うことが気になる。
彼は、連合軍による、ノルデンシュヴァイク帝国に対する、反抗作戦があるのかと期待していた。
「詳しくは後程、ブリーフィングルームでお話し致しましょう」
「そうか、じゃあ楽しみにしてるぞ」
柔和な笑みを絶やさず、詳細は後でと言いつつ丁寧に語る、ギデオン。
彼の言葉を聞いて、ハキムは通路から奥へと連合軍コマンドを案内する。
「先ずは貴方達のリーダーに御報告が、有りますので指令室へと案内して貰えますか?」
「ああっそれなら此方だ、後な? お前らは解散して各自、自室で待機していろ」
ギデオンと彼の部下達を、ウェストとハキム達は引き連れていく。
こうして、リーダーの居る指令本部へと案内しに行くために、ナタン達を解散させた。
そして、連合軍コマンドが連れてきた、ドローン部隊だが。
これ等も、荷物をぶら下げつつ彼等を追跡していき、通路の暗闇に消えていった。
「解散かぁ~~気が炭酸ジュースの泡並みに抜けるわぁ」
「ああーーそうだね、帝国側に変装したり、変装がバレて銃口を向けられたり散々な一日だったよ」
レギナは、肩を落とし、口から息を強く吐いて、ハルドルは両手を天井に向けて疲れたと愚痴る。
「全くだわ、もう疲れて肩が凝って仕方無いわぁ~~」
「早く、シャワールームに行きたいわぁ」
ハーミアンは、右肩を左手で擦って苦痛を耐える様な表情をする。
その隣では、胸元を引っ張りつつ、ティエンは風をシャツに出し入れして仰ぐ。
「俺も、ふかふかのベッドで横に成って休みたいぜ」
「そうね? 皆さ、愚痴って無いで部屋に戻ろうよ」
リュファスとサビナ達の言葉を最後に、皆は通路奥にある各々の自室へと帰って行った。
そして、今この暗い通路には、ナタンとメルヴェ達だけが取り残された。
二人も、ここに居ても仕方がないので、並んで自室まで戻ろうと歩き始める。
「ふぅ~~僕等も疲れたし、部屋に戻ろうか?」
「そうね、休みましょ~~うっ!」
皆が居なくなり、そう告げた、ナタンに対して、メルヴェは欠伸をした。
直後、彼女は首をコキコキ鳴らして、彼とともに自室へと戻ろうとする。
「じゃあ行くか」
そう言いつつ、自室へ向けて通路を行だした、ナタンとともに、メルヴェも歩いて行った。
その後。
自分たちが使っている部屋に戻った、二人は装備を下ろして、銃の安全装置を掛ける。
そして、ベッドに腰を落として休むが、彼等は並んで、疲れた表情を浮かべてしまう。
白いシーツが敷かれた、ベッドの上に座っていた、ナタンとメルヴェ達は、ボンヤリとする。
「暑いから脱ぐわ」
やがて、肉体と精神がクタクタに疲れ切って俯いている、メルヴェだったが。
彼女は、重たい身体をベッドの上で横たえると、上着を脱いで白いTシャツ姿と成った。
「連中、改造人間だったね、連合軍はいよいよ本格的な反攻作戦に打って出るのね」
「どうやら、その様だね? まだまだ連合軍側も余力が有ったんだな、きっと大丈夫だよ、この反攻作戦で帝国は壊滅的な打撃を受けるさ」
ラフな格好のまま、メルヴェは連合軍による反攻作戦に関することを、ナタンに話し掛けた。
そんな彼女の問いに、彼は楽観的な言葉を口から吐いたが。
内心では、本当に帝国に勝てるのかと彼も思っていた。
「ねぇ、彼等見たいに私等も改造手術を受けられるかしら?」
「どうだろうな、連合軍の選び抜かれた精鋭兵しか受けられないのかも知れないよ、それに改造装置も無いしさ」
眠たそうな瞳を、ナタンの背中に向けて、不意に思い付いた事を、メルヴェは言う。
それか、ベッドに腰かけた、彼は壁の天井付近に設けられた、通気孔を見ながら語った。
「私達も欲しいわ、あのワーウルフの猫みたいな奴…………猫だけにワーキャット? 或いはワータイガーかしら?」
「あはは…………君なら、きっと似合ってると思うよ」
メルヴェは、右手の中指に填めた、奇妙な指輪を優しい眼差しで眺める。
それは、青と白で彩られた、ティルクで使われている目玉型をした、魔除けの飾り。
ナザール・ボンジュウが付けられた、指輪であった。
それを背後で、ジィーーと眺めるメルヴェの方へと振り向いた、ナタン。
彼は、彼女の顔を見つめながら似合ってると誉め言葉を言ったが。
「何? 馬鹿にしてるわけ? ナタン、貴方は私がワーキャットより、オーガーの方が似合ってると言いたいのかしら?」
「いや、僕はそんな積もりじゃっ!」
メルヴェは馬鹿にされたと思ったのか、鋭い眼光を向けてきた。
それは、今にも狼の如く、雄叫びを上げながら襲い掛かって来そうなほど、キツい視線だった。
その心臓に、突き刺さるような眼差しを受けた、ナタンだったが。
彼は、両手を前に出しつつ、手を振りながら慌てて否定するのだが。
「ふふっ♡ 冗談よ、有り難うナタン、そんなに私は猫見たいにキュートかしら?」
「悪いジョークは言わないでくれよ、それと…………勿論君は猫見たいに可愛いよ」
先程の表情とは、打って変わって、冗談だと言って微笑む、メルヴェ。
ナタンは胸を撫で下ろしつつ、再び彼女の機嫌を取るために誉め言葉を言う。
「クスッ! …………有り難う、嬉しいにゃんっ♡」
「!?」
身体を横たえたまま、両手の拳を丸めて、猫が背を丸めたようなポーズを取った、メルヴェ。
その余りに愛らしい姿に、ナタンは思わず顔を赤くして目を剃らそうとしたが。
「あれ、それ指輪にしたんだね?」
「!! ああ、コレね? かなり昔に貴方にも上げたわよね確か」
ナタンは、一瞬だけだったが、メルヴェの右手に填められた、宝石が見えた。
その目玉型をした飾りが気になって、コレが付いている指輪を発見した、彼は驚いて声が出た。
「そうだったね、あの時、まだ僕達が小学生で平和だった時に君に安全祈願の御守りにって君に貰ったんだよ」
「そうそう、今もあるでしょ?」
過去に貰い受けた、御守りの事を思い出した、ナタンだったが。
彼は、メルヴェから今も持っているかと問われたので慌ててしまう。
だが、ポケットの中から、ナザールボンジュウを取り出して、きちんと持ち歩いていることを示す。
「有るよ、無くさないようにポケットに大事にしまって有るんだ」
「じゃあコレも上げるわ、これで私とお揃いよ」
メルヴェはそう言うと、懐から同じ、ナザールボンジュウが付いた指輪を取り出し、ナタンに渡す。
「これは…………君のと同じ指輪」
「ねぇ? 填めて見て」
右掌に載せた指輪を見つめるナタンに、早く付けて欲しい、メルヴェは填めてと上目使いで頼む。
「今填めて見るよっ」
「似合ってるわよ♡」
メルヴェに填めて欲しいと急かされた、ナタンは中指に指輪を填めて見る。
すると、彼女は似合ってると言って笑顔で喜ぶ。
「処で誰が作ったの? この指輪、まさか君がっ?」
「手先の器用な人にちょっとね?」
誰が作ったのかと問い掛けるナタンに対して、メルヴェは誰かとは言わなかったが。
それを、レジスタンスの整備員か工作が得意な誰かだと、彼は思った。
「ふーーん?」
「そんな事より、今日はもう疲れたわ、だからベッドで一緒に寝ましょう…………」
何気なく答えた、ナタンをベッドに横たわる、メルヴェは早すぎる就寝に誘った。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!