【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第248話 帝国軍野戦病院

公開日時: 2024年7月12日(金) 12:36
更新日時: 2024年7月15日(月) 07:55
文字数:3,035


 帝国軍・帝国警察は、多数の重傷者を出しており、野戦病院をアトミウム広場に設置していた。



「病院すら足りなくなるとはね?」


「隊長っ! 市内の病院は、ほぼ半数も敵が占領しているそうですっ!」


「負傷者の治療だけでなく、我々同様ミュータント化しているようですね」


 フロスト中尉は、野戦用テントから出て、円形の噴水を眺めながら歩いて呟く。


 その後を、レオとミア達が続き、三人は軍用トラックが並ぶ、駐車場左側へと向かっていく。



「君達は優秀だし、頑丈な体で良かったよ? まだ、少し辛いだろうが、もう戦闘に戻って貰うよ」


「まあ、改造を施された、アンデッド兵ですからね」


「それに、戦線復帰できたのは、リッチや移動型治療マシンのおかげです」


 後ろに振り向いた、フロスト中尉は、レオとミア達を褒め称える。


 そして、彼は銀色に輝く原子力を表現した巨大オブジェ、アトミウムを眺めた。



「まあ、それより他の連中も見に行こうか?」


「何処へ行く、お前の血も吸わせろ?」


 フロスト中尉が、何台も並ぶ軍用トラックMAZー537まで行こうとするが。


 その後ろから、いきなり、ラヴィーネ大佐が現れた。



「大佐? なんで、こちらに?」


「軍上層部は、方針転換した…………住民を即刻、洗脳するか殺処分しろ? だ、そうだ」


 フロスト中尉が、急に後ろから現れた驚きながら、ラヴィーネ大佐に質問する。


 それを聞いて、彼女は面倒そうに答えながら車両が走る音を聞いて、そちらに振り返る。



「来たぞ、私のご馳走だ」


「はあ? ご馳走ですか?」


 黒い車体に、横に青線を描いた、ウラルー5323ベース暴動鎮圧用放水車が、駐車場に到着した。


 それを見て、ニヤリと嗤うラヴィーネ大佐と、怪訝な顔をするフロスト中尉。



「さあ、出ろっ! このやろうっ!」


「さっさと、歩けっ!」


「ぐっ! てめえっ!!」


「私は、民兵じゃないわっ!? ねぇ、助けてっ!!」


 車体右側のドアが開くと、中から重装備であるラトニクを装備した防弾兵が、二名登場する。


 二人は、中から次々と後ろ手に手錠を掛けられた、民兵や民間人を次々と荷物のように放り出す。



「お前ら、もっと早くしてくれ? 私は腹ペコなんだ」


「はっ! 了解しましたっ! おい、急ぐぞっ!」


「そうだな、高級将校は怒らせられんっ!!」


「貴様ら、絶対に殺してやるっ!」


 ラヴィーネ大佐に催促された、二名の防弾兵たちは、捕らえた連合側兵士を放出する作業を急ぐ。


 そんな中、一人の白人民兵が生意気な事を言いながら反抗した。



「あん? お前、誰に口を聞いているのか、分かっているのか? ああっ!!」


「ぐぅぅ…………」


 怒鳴り散らしながら、ラヴィーネ大佐に、顎《アゴ》を蹴られた、白人民兵は苦しむ。


 さらに、彼女は黒いブーツで背中を踏みつけながら後頭部に、ライヒスレボルバーを突きつける。



「ゴフッ! ごがああっ!」


「いやあーーーー!?」


「うるさい、死にたいのかっ!」


「ヤバイな、殺されるぞ」


「黙ってろ、俺達まで殺られちまうぞ」


 背中を圧迫された、白人民兵は血反吐を撒き散らしながら苦悶の表情を浮かべる。


 それを見て、女性民間人は驚きのあまり泣き叫ぶ。



 悲鳴を聞いた、ラヴィーネ大佐は、ブチキレながら彼女に、ライヒスレボルバーの銃口を向けた。


 囚人護送車に乗っている二名の防弾兵たちは、彼女が見せる狂暴性に畏れをなす。



「まあ~~? お前たちは殺さん、殺さないが精神だけは殺す…………」


「それは、洗脳するのがっ?」


「いや、それだけはっ!」


 ラヴィーネ大佐の言葉に、民兵は口から血を垂らしつつ恐怖する。


 女性民間人も、再び大きな声で叫びながら、ジタバタと踠き続ける。



「いったい、何をするんすかね?」


「かなり、ヤバイ雰囲気ですよ?」


「いいから、黙って見てな? 彼女は上級アンデッドだからね…………やり方は派手なんだよ」


 レオとミア達は、急に重たい雰囲気が辺りを包んでしまった事に怖じ気づく。


 重圧が辺りを支配する中、フロスト中尉も真剣な顔をしながら、ラヴィーネ大佐を見守る。



「さて、それじゃあ~~? 早速、部下を増やそうか?」


「ぐっ? や、や止めろーーーー!?」

 

「きゃああああああーー!?」


「ぐああああっ!?」


「うぐぅぅぅぅ、うああああっ!」


 ラヴィーネ大佐の大きく開かれた口から一気に、真っ青な蝙蝠《コウモリ》と鼠《ネズミ》が噴出する。


 それらは、囚人護送車の前に投げ捨てられた捕虜たちに、真っ直ぐ向かっていく。



 蝙蝠や鼠たちは、吸血と食人を繰り返しながら、やがては傷口から中に溶け混んで行く。


 こうして、体内に吸血ウイルスが侵入した彼等は、少しの間だけは叫んでいた。



 しかし、やがて急に大人しくなる。



「アヒャヒャッ! おい、命令だっ! あっちのトラックまで行けっ!」


「うげ、うごっ? ぎぃ?」


「ギャピーー! ぴぎゃぴぎゃ」


 嗤いながら、ラヴィーネ大佐は何台もトラックが並ぶ駐車場の奥にある太木を指差した。


 そこには、戦車などを運搬する大型軍用トラクター型トラック、MAZー537が停車している。



 荷台には、黒い貨物コンテナ状の細長いプレハブ小屋が搭載されている。


 そこには、野戦病院を示す、スター・オブ・ライフが描かれていた。



「ククッ! このままでは、低級なヴァンパイアしか作れんからな? あっちで色々な兵種に改造して貰うんだぞ」


 ラヴィーネ大佐の嗤い声を聞いた、低級ヴァンパイアと化した顔面蒼白な捕虜たちは立ち上がる。


 彼等は、二名の防弾兵たちにより、手錠を外されると列を成して歩きだす。



 こうして、洗脳された捕虜たちは全員指定された大型トラックに行った。



「大佐、流石ですっ!」


「だろう? ククッ! これから私は前線である、アストリッド公園に向かう? 後は任せたぞ」


 フロスト中尉がゴマを擦ると、ラヴィーネ大佐は上機嫌で踵を返して歩いていく。



「防弾兵、連中は武器を手に取ったら、ヘリコプターに乗るように指示を伝えておけ」


「ハッ! 了解しました」


「必ず、伝えておきます」


 ラヴィーネ大佐は、鋭い目付きで、二名の防弾兵たちに命令する。


 そして、彼女はMiー17ヘリが降下してくると、登場員により開かれたドアに入って行った。



「ヤバかったな」


「ああ、上級将校は恐ろしいぜ」


 ラヴィーネ大佐が居なくなると、二名の防弾兵たちは緊張を解く。


 そして、ウラルー5323ベース暴動鎮圧用放水車は、次なる人員輸送のために走り出して行った。



「居なくなったか? 昨日の戦闘で、重傷を負った者も回復した事だし、全員集合させよう…………我々は、軍や警察を問わず、他の部隊が揃ったら全軍で突撃する」


「隊長、それは?」


 フロスト中尉が、真剣な表情で語った事に、レオは驚く。



「ああ、決戦だよ? 奴ら、ピレネーを越えたばかりか、パリを避けて進軍してきたらしいね?」


「今のところ、敵の航空機はドローンばかりだと聞いてます」


 フロスト中尉は、連合軍の本隊が到着する前に、市内で反帝国運動を続ける部隊を壊滅させる。


 それを、上から通達されていたから、発した言葉だった。



 ミアは、それを聞いて、飛行ドローンの部隊が到着していると不安げな顔で言う。



「心配ない、こちらもドローンと兵士たちなら揃っている」


「うわああっ! あ? ぁぁ…………」


 ウラルー375が、駐車場に続々と到着すると、荷台から兵士達が降りてくる。


 そして、テプルシカと言われる鉄道用の牽引貨物車を、改造した青い牽引車から捕虜を連れ出す。



 フロスト中尉が空を見ると、スキャット無人航空機が、二機体制で回転しながら旋回飛行していた。


 それから、急に聞こえた悲鳴に、三人は振り向いた。

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