【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第8話 奇襲攻撃を受けて…………

公開日時: 2024年7月8日(月) 13:47
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:30
文字数:3,607


 目的地の調剤薬局に到着した車両は、凄まじい衝撃とともに横転してしまった。


 ナタンとメルヴェ達は、何が起きたか分からず、驚きながらも、すぐに立ち上がった。



「うぅ? 痛いな? 何があったっ! 銃撃っ!」


「この金属音…………どうやら、外から撃っているわねっ!」


 横転した荷台の中で、ドアに対して、カンカンと銃撃が当たる音に、ナタンは気がついた。


 メルヴェも、ドアを迂闊に開かず、一先ずは敵の出方を伺う事にした。



「うぅ? うぐ…………」


「かっ! かはぁ」


「これは、衛生兵が必要だな」


「隊長、私が呼んでき? きゃっ!?」


 何人かの警察隊員たちが、体を車内で衝突させてしまい、軽く負傷してしまった。


 将校は、彼等の手当てをするべく、怪我を確認するが、エリーゼは外に飛び出した。



 その瞬間、屋根上から一斉発射された、RPGー7による砲撃が、無防備な彼女を襲う。


 放たれた弾頭は、灰煙を噴射しつつ、道路のコンクリートを欠片《かけら》にして、勢いよく弾き飛ばす。



「エリーゼ、無事かっ! 直ぐに遮蔽物に隠れろっ!」


「私達も、出ていくわよっ! 装備は返して貰うわねっ!」


「援護するっ! 二人とも、先に走ってくれっ!」


 目的地の調剤薬局へと、到着したはずが、まさか銃撃戦に巻き込まれるとは、誰も思わなかった。


 そんな中、荷台コンテナの中から将校が、ベホラ拳銃を発砲しながら叫ぶ。


 メルヴェは、リュックを拾って、今がチャンスとばかりに、道路に飛び出していった。


 ナタンも、自らの装備を手に取ると、UMP45短機関銃と弾帯を、次いでに拾った。



「不味いな、このままじゃ敵の標的になってしまう…………」


「どうする、ナタンッ!?」


 ナタンが、辺りを囲む屋根に対して、適当に乱射しまくる中、敵もAKなどで撃ち返してきた。


 コンテナのアチコチにも、小銃弾や機銃弾などが当たり、金属音が鳴り響く。



 近くに停車してある赤い自動車へと、路上に倒れた、エリーゼを引っ張りつつ、メルヴェが叫ぶ。



「申し訳ないですね…………せめて、援護だけは」


 引き摺られた、エリーゼは無事だったらしく、よろけながら立ち上がると、懐に手を突っ込んだ。


 そして、彼女は右手に、ザウエルM1913を握って、周囲の屋根や窓に拳銃弾を撃ちまくった。



「メルヴェ、今そっちに向かうっ! ん?」


「早く来てっ! 私達は身動きすらっ! うわっ!」


 ナタンは急いで、メルヴェとエリーゼ達を助けようとしたが、何かに足をぶつけた。


 一方、メルヴェは敵の位置を確認しようと、自動車の陰から対向車線を見た。



 そこにあるのは、車線に挟まれた街路樹が植えられた歩道と、そこに停められた自動車だけだ。


 また、さらに向こう側には、茶色い枝の隙間から建物が見えたが、そこから銃弾が飛んできた。



「メルヴェ、受け取れっ!」


「ナタン、感謝するわっ!」


「それより、直ぐに離れないと」


 ナタンは、冷静に状況を把握しようと、周辺に隠れられそうな場所がないかと探す。


 次いで、彼はメルヴェに対して、右足で拳銃を蹴りながら地面を滑らせて、何とか武器を渡せた。



 リュックから装備を取り出す暇もなかった彼女は、これで戦えるようになった。


 その間、エリーゼは両手で握る、ザウエルM1913を撃ちまくっていた。



「次も、敵がRPGー7を使ってくるかも知れない…………」


 ナタンは、少数部隊とは言え、レジスタンス側が強力な武器を使用する事を懸念する。


 さらに、ここは建物や車両が乱雑に配置されており、敵の位置を特定することは容易ではなかった。



 しかし、モタモタしていると、敵の撃ちまくる銃弾が四方八方から飛んでくることは明らかだった。


 そこで、彼はRPGー弾が開けた、右側の穴へと、UMP45を敵に乱射しながら走っていった。



「二人とも、建物の中に隠れるんだっ! こっちに来いっ!」


「今、そっちに行くわっ! 待ってて」


「援護するから先に行ってっ!! 私が、敵を惹き付けるっ!!」


 ナタンは、自動車の陰に隠れている、メルヴェとエリーゼ達を呼んだ。



「さあ、今の内に来るんだっ!?」


「危なかったわ…………って、まだ安心できないわね」


「このっ! きゃあっ!」


 ナタンは、壁穴の左側から、膝だちで両手に構えた、UMP45を撃ちまくる。


 メルヴェも、ランゲンハン軍用ピストルを何発か発砲したあと、建物内へと入ってくる。



 しかし、エリーゼは敵が投げてきた、手榴弾によって、瞬時に吹き飛ばされた。


 彼女が居た場所は、爆風が灰煙を舞い上げ、その姿を消してしまった。



「敵とは言え、世話になったわ…………」


「殺られたか…………」


 元々、レジスタンス側の人間であり、エリーゼは自分たちを罠に嵌めた。


 しかし、メルヴェは彼女が援護してくれた事で、無事にナタンの元まで逃げられた。



 それで、煤けた路上のコンクリートを見ながら、二人は複雑な気持ちを抱きつつ立ち尽くす。



「メルヴェ、次の行動を移ろうっ! 早く逃げないと不味いっ!」


「え、ええ…………奥から逃げましょうっ!!」


 ナタンが気を取り直して、メルヴェに声をかけると、彼女も真剣な顔に戻った。


 二人は、屋内を走りつつ、外から聞こえる銃撃戦の音に耳を澄ませる。



「ちっ! 行き止まりか? 仕方ない、もう戻って、別の道から行くしか?」


「いや、待ってっ! 銃撃音が聞こえなくなったわ」


 急に走っていたのを止めて、ナタンは壁を前にして、立ち止まってしまう。


 敵の攻撃を止んだために、メルヴェは周囲に気を向けて、状況を冷静に確かめようとした。



「あそこから攻撃していた、敵が居なくなっているわっ!」


「撤退したのか? 警察部隊は少数だったが、増援を警戒したか? 弾薬が切れたか…………」


 メルヴェが、RPGー7による砲撃で、割れた窓から外を見て呟く。


 すると、ナタンも壁穴の右側から、路上や建物を観察しながら話す。



「警察隊員の生き残りも、存在するかも知れない? 彼等に見つかる前に、早く逃げよう」


「増援が来ると、厄介だしねっ!」


 ナタンは、慎重に次の行動を考え、壁穴から出ていき、チラリと横転しているトラックを見た。


 メルヴェも、同様に警察隊員に目を向けたあと、壁穴から出ると歩道を走っていく。



 彼等は、歩道の先にある左側へと続く、曲がり角に立てられた、アシュア系レストランを目指した。


 二人は、レジスタンスと帝国側による戦いに再び巻き込まれないため、良作を練る必要があった。



「別ルートから迂回するしか、アジトに帰る方法はないっ! メルヴェ、ついてきてくれっ!」


「分かっているわ、本当の逃走ルートに向かいましょう」


 ナタンが、走りながら話すと、メルヴェも頷きながら同じ場所を目指す。


 二人は、左側に建ち並ぶ建物の元、歩道を通って、戦場から素早く退却していく。



 こうして、真の脱出ルートへと向かうために、彼等は街中を駆けていく。


 もちろん、調剤薬局だが、ここは帝国側に逃走経路を知られないように伝えた嘘の場所だ。



「ここから曲がればっ! うわあっ!?」


「何が? きゃああああっ!!」


 アシュア系レストランを曲がった、ナタンとメルヴェ達は、道路に鎮座する戦車に驚いてしまった。


 しかも、それが砲身から火を吹いて、いきなり砲撃してきたのだ。



 理由は、レジスタンス側が、付近の建物に隠れつつ、帝国軍を狙っていたからだ。


 こうして、殺気と死臭が渦巻く、彼等の生死を賭けた戦闘が、またもや始まってしまった。



「銃撃音が、アチコチからっ! Tー80だっ!」


「きっと、私達も狙われているわよっ! って言うか、帝国兵はっ?」


 ナタンとメルヴェ達は、急いで、アシュア系レストランの中に入った。


 しかし、外では、黒いTー80U戦車による砲撃と、レジスタンス側による機銃掃射が続いている。



 火力集中する敵の攻撃を受けても、帝国側には、銃を撃ち返す、歩兵部隊が存在しない。


 左右両側の道路に、ズラリと並んだ、白いトラックや自動車などに、普通なら兵士達が居るはずだ。



 二人は、帝国軍部隊は全員が殺されたか、それとも密かに移動しているのか、全く分からなかった。



「RPGー7を用意しろっ!」


「梱包爆薬は、誰が持っているんだっ?」


「ぐああああああっ!」


「ぎゃああーーーー!!」


 左側の屋根から、ラテン系レジスタンス員が、RPKを連射しながら怒鳴る。


 その下では、膝だちしながら、アラビ系レジスタンス員が、発煙弾を地上へと幾つか投げ棄てる。



 こうして、白煙が舞い上がっていく中、Tー80の砲撃で、右側にある建物が吹き飛ぶ。


 当然だが、その二階に隠れながら、AKなどを乱射していた、レジスタンス達は爆死する。



「装甲車まで来たぞっ! BTRが、二台だっ!」


「不味い状況ね」


 BTRー80装甲車は、ドンドンと激しい音を鳴らしながら機銃掃射してくる。


 さらに、後部ハッチから帝国軍部隊が降車して、周囲に素早く展開してきた。



 果たして、ナタンとメルヴェ達は、無事に目的地の脱出ルートにまで辿り着けるだろうか。


 それとも、敵の攻撃で死んでしまうか、その行く末は、彼等にも分からなかった。

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