「じゃあ僕達は、これにて失礼させて頂きます」
「うむ…………」
深々と御辞儀をした、フロスト先生に、老人は一言だけ答える。
その後直ぐに、ナタン達を連れて、フロスト先生は部屋から退出する。
「君達、問題を起こさないでくれよな?」
「先生は彼等と知り合いなの?」
「そうよっ! 何か、あの爺は先生の事を知っている見たいだったし」
疲れた顔をしながら、後ろを歩く生徒達に、フロスト先生は、困ったような感じで声をかけた。
それを気にせず、ナタンが質問をすると、次いで、メルヴェも質問をしてきた。
「彼とは、古い付き合いで、その…………親戚の叔父さん見たいな感じかな?」
「ふぅ~~ん? 所でさ、ここは何の工場になるの?」
「最近は、景気が悪いとか言っているのに? こんな場所に、工場なんてさ…………」
偉そうだった老人を、親戚の叔父さんだと言う、フロスト生徒だったが。
しかし、銃を積めた箱を見ていない、ミアは工場が、どんな製品を作っているのか気になる。
レオも、何故こんな場所に建てられているのかと、不思議がる。
「あ~~? 何の工場だろうねーー? 先生も実は知らないんだよ…………今日は叔父さんが工場の責任者に赴任したって言うから、来ただけだからさっ!? って、君達もか…………」
廊下を歩く、フロスト生徒だが、前方から警備員に捕まってしまった、四人の生徒が現れた。
「ご免なさい、先生…………」
「えへへ…………怒られちゃったよ」
「やらかした、任務失敗だぜ」
「鬼に捕まってしまいました」
ベーリット・カルミーネ・レギナ・キーラン達は、フロスト先生に謝る。
四人は、ションボリとしながら歩き、拳銃を持った、警備員に連行されていた。
「あっ! 貴方は…………失礼しました」
「あぁ…………そう言うのは良いから、僕と彼等の案内を頼むよ」
警備員は、フロスト先生の姿を見や否や、直ぐに敬礼をして、謝罪するが。
それを、彼は直ぐさま止めてくれと、苦笑いしながら断った。
「は、はいっ!」
「凄いな、先生…………」
「警備員を、ペコペコさせるなんてさ」
すごく焦りながら、頭を下げ続る警備員に対して、ナタンとレオ達は感心するが。
「おい、お前ら口の聞き方にっ!?」
「良いんだ…………それより案内を」
当然だが、警備員は二人を怒ろうとするのだが、フロスト先生は、またも奴を制す。
「また、失礼を…………」
「ね~~オジさん、先生はそんなに偉いの?」
再び謝った警備員に、今度はミアが声を掛けると、彼は言いづらそうに、口を開く。
「あぁぁ? …………そりゃあ、工場長と…………」
「さっきの通り、遠い親戚って感じだよ…………だから、僕はVIP待遇なわけ?」
中々言葉が出ない警備員に、横から助け船を出した、フロスト先生。
彼は、直ぐさま言い訳するように、生徒達に関係性を説明した。
「そっ! そう言う訳だ…………分かったなら、先生の言う事に従うんだぞっ!」
「はあぁい」
「それからさ、あの箱の中身は何なの? 銃を作ってるなんて、マフィアかテロリス…………」
警備員の言葉を聞いた、ミアは嘘くさいと感じながらも返事する。
だが、まだ腑に落ちない部分もあるが、彼女は何とか納得したのだが。
しかし、箱の中身として、AK74が詰められている事を、メルヴェは見てしまっている。
だから、彼女は、二人の胡散臭い芝居には騙されなかった。
「くそうっ! バレたかっ!! これでも…………」
「!?」
「!?」
とつぜん、怒鳴り出した警備員は拳銃を構えて、今にも、その場に存在する者達を撃たんとしたが。
「アハハッ! 何てな…………これはテーザーガンで電撃線しか出せないし、お前ら箱の中身を見たのか? アレは玩具で、ジューポンやチィーナに輸出する高級品だ」
「ああぁ…………そうかっ! あっちは景気が良いから玩具の売れ行きもいいだろうし、工場で製造されているのはエアガンなんだね」
冗談だと言って、両手で腹を抱えて涙を流して笑う警備員と、奴の言葉に納得した、フロスト先生。
「玩具…………ですって?」
「アレが、玩具…………」
やはり、箱の中身が偽物だと言われても腑に落ちない、メルヴェとナタン達。
「本物に見えるし、本物の重さだっただろう? そりゃそうさっ! 中身は玩具だが、外側は本物と同じ材質だからな」
「さあ、ここが玩具工場だと分かったろう? それじゃあ~~何時までも邪魔しちゃあ、警備員さんにも工場の方々にも悪いから、退散しようね?」
警備員とフロスト先生から、ナタンを含む仲間達は帰るように促された。
彼等は、しょうがないので、それ以上は質問を追及せず、素直に工場から出る事にした。
「もう、二度と来るなよ~~」
「次は、大変な事になるからね~~」
その後、彼等は正門から出ると、警備員とフロスト達に、見送られながら家路に着く。
「怪しいわねぇ~~?」
「だからって、あの工場には、もう行かないからな」
「あの怖い爺とかに、怒鳴られるのはヤだし」
まだまだ怪しいと思う、メルヴェに対してナタンは、工場には近寄りたくないと言う。
また、レオも同感だと思って、渋い顔をしつつ歩きながら語る。
「まあ~~私も気になるのは分かるけど、二度と行きたくは無いわねぇ?」
「玩具工場ね…………映画とかなら、良く製造されていた玩具が本物って事…………な訳、無いわよね?」
ミアも、大人に怒られそうになたので、工場には行きたくは無いと語る。
やはり工場は、本物の武器を作っているかも知れないと言って、周りを怖がらせる、ベーリット。
「そんな空想話が現実にあるわけ無いだろう…………そんなどうでも良い事よりも、僕はお腹が減ったか
ら、カポナータを食いに家に帰るよ」
「そうだな…………悪いけど俺も親との予定があるからもう帰るわ、じゃあなっ!」
「私もお腹が空いたし、帰ってお母さんにプラツキを作って貰わなくちゃ」
腹が空いたから帰りたいと、カルミーネ・キーラン・レギナ達が言い出す。
それにより、他の仲間達も、今日はもう家に帰る事にした。
そこから離れた、工場長室では、子供達が帰るのを、フロスト先生と老人たちが見届けていた。
「やれやれ…………まさか、あんな子供達に我々の計画を感づかれるとは…………」
「殺しは止して下さいよ…………偶然とは言え、彼等は、この工場の存在に気がついただけですから」
窓から、子供達が散って行くのを眺める、老人とフロスト先生達。
二人は、三階の窓辺で、殺しや何やらと、かなり物騒な会話をしている。
「ああ…………分かってるわい」
「こんな下らない事で、計画が台無しになるのは勘弁だし、感の良い彼等を上手く手なづければ、何れは帝国の優秀な兵士や警官に…………」
ナタン達は、どうやら殺されはしない様だが、老人とフロスト先生たちは、怪しげな会話を続ける。
「ふむ…………そうじゃな、しかし誰も本物の銃の部品だけを作っているとは思うまい…………」
「ええ、まさか玩具用とは言え、ここが後のXデーに備えた、表向きは玩具工場であり、そして裏では軍用銃部品の製造工場であるとは誰も考えないでしょう」
老人とフロスト先生たちは、もちろん帝国から秘密裏に派遣された、潜入工作員だったが。
それをまだ、ナタンを含む八人の子供たちは知る由もなかった。
「Xデーか…………待ち遠しいわい」
窓から、差し込む日差しと明るい空を、忌々しげに睨みながら、老人は呟くのだった。
この日、難民達による犯罪発生率が高まる中、それでも、ハンザは未だ平穏を保っていた。
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