「お願い、急いでっ! このままじゃ、レギナが死んじゃう」
「分かってるさ、だから急いでるだろ? 心配視るなって」
ベーリットの頼みに答えた、カルミーネは廊下を、レギナを背負いながら走ってゆく。
突撃兵である、ワーウルフに変身している彼は、彼女の重さを気にせず、悠々と疾走していった。
こうして、負傷した捕虜である彼女は、医務室&洗脳教育室である、101号室まで運ばれた。
「よっ! よっ! よっ!! 急がないとっ!!」
「急がないと…………じゃなくて、もっと早くっ!!」
101号室まで、重傷を負った捕虜である、レギナを背負って走る、カルミーネ。
その後ろを追いかけ、彼を叱りながらも走り続ける、ベーリット。
「ーーしなくて、大丈夫、着いたからさ?」
「なら、良かったわ…………」
101号室まで、あっという間に、カルミーネはたどり着いた。
その後を追ってきた、ベーリットも安堵して、ふぅ~~と息を吐く。
「フェスターシュッ?」
「居るわよ、この騒ぎだから負傷者でも運んで来たんでしょう?」
「そうなんですっ! どうか、何としても彼女をっ!」
ドアを開いて、カルミーネは軍医であるフェスターシュニー博士を呼ぼうとしたが。
戦闘により負傷者が出ているだろうと、手術準備を、すでに終えていた、彼女が先に答えた。
そして、ベーリットは今にも死にそうなレギナの事を心配する。
「……助けて上げるから落ち着きなさい? って、驚いたわ、テロリストを捕虜にしたのね……」
室内の奥で、オフィス用・円椅子に腰掛けて、PCを見ていた、フェスターシュニー博士。
彼女は、背もたれに掛けていた白衣を纏いつつ、立ち上がると驚いた表情を見せる。
「彼女は…………レギナは、私の幼馴染みでっ!」
「そして、テロリストの情報も知っている」
「まあまあ、事情は分かったわ……とにかく、今は麻酔と治療が先決ね? 彼女を置いたら貴方たちは外に出てなさい」
レギナを助けて欲しいと必死で訴える、カルミーネとベーリット達。
だが、そんな二人とは対称的に、フェスターシュニー博士は冷静に、昏睡状態の彼女を見る。
「カルミーネ二等兵、スキャナー台に運んで……それから、さっき言った通り二人とも暫くは外にね」
「分かりました」
「そうします」
フェスターシュニー博士の指示に、大人しく従う、カルミーネとベーリット達。
こうして、CTスキャナー台に運ばれた、レギナは負傷した部位の診察を受ける。
また、カルミーネとベーリット達は、部屋から外に出て行った。
「うぅ…………」
「ふふ、直ぐに苦しみは無くなるわ……そうしたら楽になるわよ」
急に小さな声で呻いた、レギナに対して、フェスターシュニー博士は不気味な微笑みを浮かべる。
スキャナー台上で、負傷者の四肢を拘束した、彼女は早速治療に移る。
「まずは、全身麻酔…………それから患部を治療&血液を入れ換えないとね? 洗脳は軽い程度にしておきましょう」
フェスターシュニー博士は、レギナを死なせぬ為に緊急治療を行うべく、コンソールパネルを触る。
そして、天上が開き、そこから何本ものロボットアームが降りてきて、レギナに近づいていく。
今度は、それ等が彼女の顔に医療用酸素マスクを取り付け、洗脳用アイマスクを装着させる。
ヘッドギア型の装置が、頭部に密着すると、次に四肢に注射器を備えた、ロボットアームが近づく。
「いぅっ!?」
「まだ、意識があるのね? 大丈夫、直ぐ夢の中に入れて上げるから♡」
こうして、レギナは何本ものロボットアームに取り付けられた、注射器を打たれる。
その様子を、ウットリしながら見下ろす、フェスターシュニー博士。
今、彼女が見ている前で、レギナは赤い血液を抜き取られ、青い血液と薬物を投与されているのだ。
「青い血液は生命力が強いからね…………そう簡単には死ななく成るわよっ!」
そう言いつつ、フェスターシュニー博士はコンソールパネルを操作する。
彼女が、次に行う治療は、負傷した患部の回復手術だ。
そのために、ロボットアームが素早く動き、メスやピンセットを使って、手術を行った。
「…………終わったわね」
結果、レギナは弾丸に貫かれた脇腹を塞がれ、あっという間に治された。
そうして、最後に呟きながら、フェスターシュニー博士は、彼女の脇腹前後に湿布を貼った。
「はぁ~~ようやく、一服できるわ」
そう言うと同時、フェスターシュニー博士は、白衣のポケットから煙草を取り出して口に加えた。
それから、レギナは安静に休ませるために数時間もの間、しばらく眠らされた。
一方、彼女が治療を受けていた頃、カルミーネとベーリット達は。
「レギナは…………無事だよな?」
「きっと無事よ、きっとね」
外のドア両脇で、カルミーネとベーリット達は呟く。
「あーー殺られちまったぜぇ? ナタンの野郎、次あった時は?」
「また、やり返されちゃうんじゃないのっ? あれ?」
そこに、レオとミア達が話ながら現れた。
「あ、その様子だと戦闘に巻き込まれたか?」
「…………で、そっちは勝ったのよね?」
「もちろん、勝ったーーと言いたいが、勝ったには勝ったんだが、ナタンには逃げられた」
「それから、内側だけでなく、外からも砲撃があったわ…………ナタンは砲撃で開いた穴から落下しつつ逃亡していったのよ」
カルミーネは、二人の少しボロくなった姿を見て言い、ベーリットも何気なく呟いた。
彼等の問いに、苦笑いでレオは答え、疲れたと言う感じで、ミアも起きた出来事を教えた。
「ナタンか? やるな、やっぱ、アイツは凄いやっ!」
「感心して、どーーすんのっ! てか、それより大事な話があるわ」
「なんだ、大事な話しって?」
「かなり気になるんだけど、悪い話しじゃないわよね…………」
カルミーネは、テロリストとして現れた、ナタンの名前を聞いて喜ぶ。
ベーリットは、そんな子供みたいな彼に対して、軽く突っ込みを入れた。
そして、レオとミア達はベーリットの口からでた大事な話しと言う言葉に食いつく。
「良い話しよっ! なんと、レギナを捕らえる事ができたのっ!」
「そうだぜっ! いや~~最初は、まさかレギナを捕まえられるとは思ってなかったんだけどな」
「レギナ、マジかよっ!? アイツもようやく帝国警察の仲間入りってか?」
「また、昔みたいに、一緒に戦争ごっこ成らぬ、本物の戦争が出きるのねっ♡」
ベーリットは嬉しそうに話すと、カルミーネも自慢げに語る。
それを聞いて、レオは大喜びし、ミアも昔馴染みが時陣営に来てくれたと歓喜した。
「ふん…………お前ら、邪魔だぞっ! ここは学校の廊下じゃあ~~ないっ! このゴプニクどもがっ!」
「そう言わないでくれって、彼等も功績は上げているんだからさ?」
四人が、ワイワイガヤガヤと騒いでいると、ザミョール中尉とフロスト中尉たちが現れた。
因みに、ゴプニクとはロシャ連邦で、悪ガキ・或いはヤンキーを意味する言葉である。
「だとしても、躾はきちんとしておけ…………フロスト」
「ゴメン、ゴメン……ほら、君らもボケっとしてないで、敬礼して」
ザミョール中尉は機嫌が悪いらしく、フロスト中尉を置いて先に歩いて行ってしまう。
それに、フロスト中尉から指示が出た、四人は壁際に並び、急ぎローマ式敬礼を行った。
「はぁ~~? やれやれ、あの狼にも困ったもんだ…………」
フロスト中尉は、先を行ってしまった、ザミョール中尉を、見ながら溜め息を吐く。
そして、彼が曲がり角から、姿が見えなくなるまで見送った。
こうして、一人静かに、彼は呟くのだった。
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