帝国軍部隊は、壁面を登り、三階にまで上がってくる。
「な、なんだよ、コレ? どうなっ!?」
「死ねーーーー!!」
「グラップリングフックだっ!」
「連中、壁を上がってくるぞっ!!」
ナタンは、敵の歩兵部隊が部屋に入り、暴れ回っているさまに驚く。
そんな彼の隙を狙って、帝国軍兵士が、スコップを振り回してきた。
ワンは、床に落ちた重りとロープを見たあと、88式汎用機関銃を撃ちまくる。
チューも、03式自動歩槍に銃剣を着剣すると、突進する。
「ぐっ! このっ!」
「ぐっ? があっ! う…………」
AMDカービンで、スコップの柄を抑えた、ナタンは敵兵を蹴る。
そして、銃床で胸を殴りつけ、フリッツ・ヘルメットを被る頭を力強く叩いてやった。
「このやろ」
「うわああああっ!!」
「喰らえっ!」
「うぐぅぅ…………」
ワンは、機銃弾で敵兵を次々と射殺していき、チューも銃剣で、ドライアドの喉を一突きした。
「ナタン、その鉤縄のロープを切ってっ!」
「窓際のフックも外すんだよっ!」
メルヴェは、重りが着いた、グラップリングフックのロープを切るように頼んできた。
一方、フランシーヌは窓際に引っ掛けてある物を指差す。
「分かった、待っててくれっ!」
「待ってられないわよっ!」
「こっちもだわっ!!」
「ぐぁっ! 狙撃兵も居るぞっ!」
ナタンは腰から抜いた、レギオールナイフで、ロープを急いで切らんとする。
しかし、特殊繊維で作られた、金属製の縄は、そう簡単には千切れない。
メルヴェは、黒い野戦服を着た、獣化した女ワーウルフと対峙する。
口から毒ガスを放とうとした、グールの顎《アゴ》を、フランシーヌはAKのグリップで叩く。
そうしている内、下から投げられた鉤縄を落とそうとした、ウェンの左肩を弾丸が貫いた。
「死ねっ! 死ぬんだっ!」
「ナタン、切らないと次から次へと、増援が到着するわよっ!」
「分かっているっ! だが、切れないんだっ! こうなったら…………」
女ワーウルフの放った鋭いパンチを、メルヴェは交わしつつ、サッと後ろに引き下がる。
ナタンは、その間に重たいグラップリングフックを持ち運び始めた。
「それっ!」
「ぐわああああああっ!?」
ナタンの投げた、グラップリングフックは、鉤縄を使って登って来た、帝国兵に当たる。
そして、そのまま奴は悲鳴を上げながら真下へと落下して行った。
「があっ! 腕がっ! クソッ! スナイパーめっ!」
「それより、私を助けてっ!」
「こっちもだよっ!」
「下からも、まだ来ますよっ!?」
重りとグラップリングフックを投げたばかりのナタンに、狙撃が浴びせられた。
それで、彼は左腕を負傷してしまうが、そうこうしている間にも、敵は雪崩れ込んでくる。
女ワーウルフは、回し蹴りを放つと同時に、鋭い鉤爪による斬撃を仕掛ける。
メルヴェは、腹に一撃を食らうとともに、何とか二撃目だけは回避しようと体勢を下げる。
フランシーヌは、全身から毒ガスを噴出し始めた、グールを急いで撃ち殺す。
また、路上から鉤縄や蔦縄を使って、帝国軍兵士やドライアドが登ってくる。
それを、アイリーは191式自動歩槍を乱射しながら何とか止めようと試みる。
「メルヴェ、今助けるっ!」
「ぐぎゃっ!?」
「はぁ~~助かったわ…………」
「まだ、外から来るわよっ!」
「安心するのは早い」
ナタンが咄嗟に投げた、レギオールナイフは、女ワーウルフの左側頭部に突き刺さった。
それで、右側に奴が倒れると、メルヴェは安堵して、ため息を思いっきり吐いた。
ようやく、室内に突入してきた、敵部隊は撃退したが、フランシーヌは気を抜かず下を眺める。
バレットM95で、タカヤマは公園の塹壕内に潜む、ドライアドを撃ち抜く。
「それも、分かっている…………ふん? なんだ、あの紅い瓶は? 燃えているっ?」
「火炎瓶だわ、味方の投射よっ!」
空高く舞う火炎瓶を、ナタンは眺めながら不思議そうな顔で見ていた。
しかし、彼もメルヴェの言葉を聞いて、我に返ると公園にAMDカービンを向けた。
「迫撃砲だっ!」
「いや、待てっ! これも味方のだっ!」
ヒューーと迫撃砲の砲弾が飛翔する音が木霊したが、それは後ろから聞こえる。
ナタンは、一瞬だけ焦ったが、ウェンの声を聞いて、確かにそうだと思った。
一門だけしか、砲は無さそうだが、それでも無いよりはマシだ。
「敵が吹き飛んでいるっ! 炎も公園を焼いているわっ!」
「歩兵部隊が後退していくわっ! でも、代わりに?」
砲弾と火炎瓶は、何回も振り袖いて、公園の彼方此方《あちらこちら》に穴凹と火を広げる。
イエローボーイを乱射しながら、メルヴェは味方の後方部隊による援護を喜ぶが。
アイリーは、敵の機甲部隊に動きがある事に気付き、また砲撃が飛んでくると予測した。
「Tー95が動き出したわっ! 奥へ退避して下さいっ!」
「もう、遅いわっ! 伏せてっ!」
ドンッと大きな音が鳴り響き、アイリーとメルヴェ達は床に身を伏せた。
しかし、彼女らは砲撃が飛んで来ないので、不思議に思っていると、また爆発音がした。
「味方だっ! 味方の砲撃だっ!」
チューは、北側のロワイヤル通りから戦車隊が走ってくる姿を見た。
黄緑色に塗装された、Tー90を中心とする機甲部隊は、Tー95部隊を攻撃する。
「赤い旗が立っている? 滷獲したんだな?」
ナタンは、味方機甲部隊を眺めたたが、Tー90以外は、旧式のTー64が二両だけしか見えない。
それでも、貴重な機甲戦力であり、三両とも、Tー95部隊を撃破した。
「敵の反撃が始まるぞっ!」
「あっ! 殺られたっ!」
Tー95部隊は、いきなり現れた、旧式戦車隊の奇襲に対応できず、何度も砲撃されて撃退された。
しかし、残るTー90Mプラルィブ部隊は、精密射撃で反撃してきた。
ナタンは、砲身を動かす敵軍の機甲部隊を見ていたが、戦車以外も兵器が機関砲などを撃ち始めた。
メルヴェは、味方のTー64が機関砲を浴びて炎上するさまを目にする。
さらに、Tー90が砲弾を何発も浴びて、爆発物反応装甲を全て破壊される。
そうして、車体も被弾して、爆破させられてしまった。
「残るは一台、対戦車兵器は?」
「あるには、あるが無誘導型は命中率が低い、誘導型は妨害電波で軌道を剃らされてしまう」
「それに、残り数が少ない…………」
「カールグスタフやジャベリンを持った、対戦車部隊はまだ来ないのか?」
「いや、今来たぞっ!!」
ナタンが呟きながら、戦車が殺られたあと、自身に砲弾が飛んでくるだろうと考えた。
それ故、彼は壁に身を隠しながら対戦車兵器を探すが、チューは無駄だと答える。
ワンも、壁際に立て掛けられた、何本か残る、69式毫米反坦克火箭筒を目にする。
対戦車兵器を待ち望むウェンに、何処からか声がかけられた。
「ドゥロル? いったい何し…………」
「なぜ、貴方が?」
「援軍に決まってんだろ」
ナタンとメルヴェ達は、急に登場したドゥロルに驚いたが、彼が指差す方に目を配る。
すると、ドリアードや民兵たちが塹壕内を通り、戦車隊へと近づいていく姿が見えた。
「うおっ! 戦車を撃破したぞっ!」
「BTRも殺られたわっ!」
ナタンとメルヴェ達は、次々と破壊炎上していく、敵の機甲部隊を目にする。
「ジャベリンは使い果たしたが、塹壕から近づけばRPGー2でも充分に効果を発揮する…………あと、ブリュッセル宮殿と連邦政府庁舎は制圧済みだ、そっちからも対戦車兵器が放たれるだろう」
RPGー2とRPGー7を装備した、ドライアドと民兵たちは、一斉発射で奇襲を仕掛けたのだ。
ドゥロルが語る通り、対戦車兵器は四方八方から飛んできて、敵の機甲部隊を壊滅してしまった。
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