アラビ首長国連邦、ドバイ。
ジュメイラモスク。
「撃つ…………」
「狙う」
「いくわよ」
モスクに備わった、ミナレットと言われる尖塔の上に、人影が見える。
右側のミナレットに座る一人は、RPGー7Dをを連結して組み立てる、ワーウルフである。
もう一人は、ヴァンパイアであり、モシン・ナガンM1891/30の精桿《ボルト》を引いている。
さらに一人、リッチがRGMー40を構えて、榴弾を撃つ。
三人は、真下を歩く人々に向かって、ゆっくりと引き金を引いた。
「銃声だっ! 何処からっ!」
「モスクの上だっ! ぐえっ?」
「ひぎゃあっ!?」
「きゃーー! 誰か警察をーー!」
「いや、がはあっ!?」
逃げ惑う民間人を、ミナレットから二人の放った強弾が襲う。
モシン・ナガンによる狙撃は、アラビ人男性の首を見事に貫通する。
RPGー弾を、喰らった白人女性は直撃しなかっらたが、体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。
榴弾が当たった、黒人男性は、木っ端微塵に吹き飛んだ。
しかし、すぐに彼等の元に、濃緑に塗装されたドローン型S3、2019ホバー・バイクが現れた。
「ドローンか」
「問題ない」
帝国軍・特殊部隊員たちは、空に現れた敵に対して動じる事はない。
S3、2019ホバー・バイクは、即座に撃ち落とされたからだ。
「狙撃完了よ…………」
「次がくる」
左側のミナレットにも、帝国軍・特殊部隊員たちがおり、彼等が狙撃した。
撃ち落としたのは、青緑色をしたギリ・スーツに包まれた、女性ドライアドだ。
彼女は、床に伏せながら、SVー98M狙撃銃を握っていた。
その右隣には、シモノフPTRS1941を構えた、トーテン・シェーデル・ゾルダートが居た。
「今度は何が来るか」
「地上部隊よ」
女性ドライアドが覗く、スコープはモスク正面の道路に向けられる。
そこには、ドバイ警察の車両が集まってきていた。
ジューポン製電動バイク、ZeC00も何台か走って来た。
日産GTーR、ランボルギーニ・アヴェンタドール。
さらには、フェラーリFFなどの高級車両のパトカー型も揃う。
ドバイは、裕福な都市であり、バイクやパトカーも高級スポーツカーを配備しているのだ。
パトカーには、白い車体で、ボンネット中央部や側面には深緑色の線が描かれている。
「敵が来たか…………」
「火力支援するわ」
「敵を制圧する」
「死を与えよう…………」
ドラグノフSVDMのスコープを覗く、帝国軍・アラビ人女性兵士。
ドラムマガジンを備えた、RPK201を激しく連射させまくる、帝国軍・黒人女性兵士。
AK12を構えて、単発で何発も銃弾を放つ、帝国軍・アシュア系兵士。
PKPM汎用機関銃を構えつつ、連続で機銃掃射する黒人兵士。
ジュメイラ・モスク正面から連中は、車両に向かって、狙撃や機銃掃射を続ける。
帝国軍兵士の制服に身を包んだ、連中は全員トーテン・シェーデル・ゾルダートだ。
「ぎゃっ!」
「う…………やられた、がは」
「怯むなっ! 増援が到着するまで持ちこたえるんだっ!」
「頭を下げろ、撃たれるぞっ!」
パトカーのガラスを割って当たった、狙撃や機銃弾は警官を殺傷する。
それでも、緑ベレー帽を被り、クリーム色の制服を着た警官隊は、車の陰に隠れて銃を構える。
カラカルFピストルを握る彼等は、ジュメイラ・モスクに向かって、発砲し続けた。
「撃たれた、手当てを頼む」
「分かったわ…………」
RPGー弾を撃ち尽くした、ワーウルフは腹部に重傷を受けた。
それで、背後に控えていた予備の弾頭を用意していた、リッチに治癒魔法をかけるよう頼む。
「そろそろ、撤退時期だ……」
ヴァンパイアは、モシン・ナガンM1891/30を床に置くと、発煙弾を何個も下に投げた。
それから、彼は小型パラグライダーを装着すると、ミナレットからモスクの裏へと降下してゆく。
ワーウルフやリッチ達も、それに続く。
向かいのミナレットからも、トーテン・シェーデル・ゾルダートが降下した。
ドライアドだけは、ミナレットから小ドームのポールに蔦《ツタ》を絡めて降りる。
さらに、奴は、日除け休憩所の小ドームに、そして最後に白い柵に蔦を伸ばした。
そうして、地上へと降りたった。
この頃には、正面で銃を撃っていた部隊も裏手に撤退していた。
「来たぞ…………」
無人で動く、白い移動式交番が二台も現れると、左右に開いたドアの中に、ヴァンパイアが入る。
三笠製作所が作った、自動運転無人交番SPSーAMV一号機型だ。
こうして、ジュメイラ・モスクでは、帝国軍・特殊部隊によるテロは成功するのだった。
ジュメイラ・ビーチ・ホテル、タクシー乗り場。
「仕掛けたぞっ!」
「よし、出せっ!」
黄色い、ランボルギーニ・タクシーに私服姿の帝国軍・特殊部隊員が乗ると走り出した。
しかし、その後ろには濃緑色に塗装された、小型無人パトカーが遠くから密かに走っていた。
オトソー・デジタル社製、OーR3だ。
この無人車両は、車体後部から小型ドローンを一機発進させると、カメラ映像を司令部に送信する。
そうして、不審車両であると思われた、ランボルギーニ・タクシーを、ドローンとともに追跡した。
「これで、後は三番アジトまで逃げるだけだな」
「チョロい任務だぜ?」
「後は、ビーチで遊ぼうか…………日焼け止めを買わないと」
「アハハ、そりゃいいなっ!!」
そうとは知らず、アロハシャツに身を包んだ、帝国軍・特殊部隊員たちは軽口を叩く。
車内から見る、ガラス窓の向こうには、綺麗な景色が映る。
右側には、斜め下へと傾斜が付いた、ジュメイラ・ホテルがある。
また、その先にはウォータースライダーがあり、どちらにも歩道手前に木々が植えてあった。
左側には、インサイド・ブルジャ・アイ・アラブの茶色い建物があり、手前には車が並ぶ。
こうした、観光名池を見つめる連中は、慢心しきっていた。
道路に出た、連中のランボルギーニ・タクシーは、暫くは普通に道路を走っていた。
しかし、いきなり前方から何かが来る。
右側から、新型セグウェイ、ホバーボードセグウェイが、急に飛び出してきたのだ。
「うわっ?」
「なっ!?」
帝国軍・特殊部隊員たちは驚いて、ランボルギーニ・タクシーを止めた。
だが、その隙を狙って、ホバー・ボードセグウェイに乗った人物たちが撃ってきた。
その内、一発がタイヤに当たり、パンクさせてしまった。
「クソッ! 降りろっ! 私服警官か、警備員だろうっ!」
「まったく、邪魔しやがって…………」
帝国軍・特殊部隊員たちは、ランボルギーニ・タクシーから降りると即座に銃を撃つ。
連中は、ステッチキン機関拳銃やレベデフ・ピストルを撃つ。
「ヤバイな、俺たちだけじゃ…………」
「このままじゃ、やられちまう」
ホバーボードセグウェイに乗っていた、私服警官たちも、急いで近くの木々に隠れる。
そこから、二人はカラカルCピストルで応戦しながら、応援が来るのを待つ。
しかし、そこに、ベントレー・コンチネンタル・パトカーが敵の背後に現れた。
深緑色の線が入ったドアから、女性警官が素早く降りて、カラカルSCピストルを構える。
「お前ら、降伏しろっ!」
「動くなーー!」
上部だけが白く染められた、深緑に塗装された、カウボーイ・ハットを被る女性警官。
その短い唾は、左右だけが上に折り曲げられており、帽子正面には金色紋章がある。
また、すっぽりと頭部は、顔以外の部位を深緑色の布で覆っていた。
彼女たちは、深緑色の制服を着て、足首まで覆うロングスカートを履いていた。
「クソがっ! が…………」
「うあっ!?」
帝国軍・特殊部隊員たちは、背後からの激しい銃撃を受けて死亡する。
後部ドアの右側に居た、PLKピストルを撃っていた隊員は、右目を撃ち抜かれてしまう。
左側に居た、MPー443グラッチを握る隊員は、胸に何発も銃弾を受けて力なく倒れた。
「ヤバイぜ? あ? ぐああ?」
「上からだっ! め、目がーーーー」
上空から一台のS3、2019ホバー・バイクが現れると、何かを落とした。
これには、白いバイクヘルメットを被り、深緑色のレーシングスーツを着た、警官が乗っている。
彼が、閃光手榴弾を下に投げたことで空中で炸裂したのだ。
これにより、残り二人となった帝国軍・特殊部隊員は目が眩む。
「増援が来たわっ!! もっと撃ち続けてっ!!」
「分かったぁっ! 貴様ら、動くなよっ!」
女性警官は、ベントレー・コンチネンタルから射撃を継続しながら叫ぶ。
その声を聞いて、私服警官も銃撃を緩めることなく発砲しまくった。
そこに、三笠製作所により作られた、自動運転無人交番SPSーAMV二号機型が、到着した。
灰色の車体と、正面が真っ黒なガラスで覆われた、大きな車体はバスにも見える。
その後部からは、REEMロボコップが四体も出てきた。
可動式台座に、人型ロボットが備えられた、これは車輪を回転させながら走る。
『犯罪者を拘束しますっ!』
『犯罪者を制圧しますっ!』
REEMロボコップたちは、四体とも並びながら疾走していく。
顔・手・台座などは、白く塗装されており、指先・腹部・肩部・首などは黒色だ。
腕・胸部・台座の中央下部などは、クリーム色である。
このように塗装された、彼等だが、胸にはモニターがあり、頭には深緑の制帽を被る。
そんな彼等は、走りながら背部に搭載した網カゴから電磁警棒を取り出した。
「く、な、なな何だ? ぐあっ!?」
「うぅぅ…………う? ぶあっ!!」
『犯人確保しました』
「アンタたち、ジュメイラ・ホテルに仕掛けられた爆弾は、既に解除してあるわよ」
「捜査は何ヵ月もかかったが、これで終わりだ…………さあ他の情報も、きっちり吐いて貰おうか?」
ステッチキン機関拳銃やレベデフ・ピストルを握っていた、帝国軍・特殊部隊員たちだが。
連中は、REEMロボコップ達に、頭や肩を叩かれたことで、凄まじい電流が体中に走る。
そして、女性警官や私服警官たちが、残る二人組に手錠をかけた。
このようにして、ジュメイラ・ホテル爆破事件は、ドバイ警察の活躍により幕を閉じた。
ドバイから離れた砂漠の何処かにある、地下・秘密基地。
「ジュメイラ・モスクは成功か、ジュメイラ・ホテルは失敗……他は順調に作戦行動中と」
薄暗い地下空間で、一人の帝国軍士官は歩きながら呟く。
そして、廊下の奥に着た彼は、自動ドアが両方に開くと中に入った。
『ぐあ、あ、ああぁぁ…………あ、ああーー』
『お、あ~~?』
『うぅ? うがっ! うぎぃっ!』
『いひっ! あがが、お…………』
そこには、大量の男女が裸で、カプセル内に閉じ込められていた。
と言っても、胸や腰周りは、流石に機械が取り付けられている
また、顔には、バイザーと透明なガスマスクが装着されており、白い吐息を吐くさまが見えた。
両腕がカプセル内の天井に、両足は膝まで機械に覆われている。
青く発光する液体にとともに、媚毒漬けにされているのだ。
ここは、地下深くに作られた帝国軍・兵士の工場だ。
「いやぁーー!? 離してっ! あぐ?」
「やかましいっ!」
「離せっ! 離せってんだっ! う……」
「黙れ……………」
帝国軍士官は、後ろから誰かの声が聞こえたことで背後を振り替えって見た。
そこには、両手に手錠を掛けられた男女が連行されてきており、暴れるので麻酔注射を打たれた。
ぐったりする二人は、カプセルへと運ばれていく。
「この地下工場さえ有れば、後は人員を滷獲すればよいだけ…………我々に敗けはない、フフ…………」
ニヤリと嗤う、帝国軍士官だが、帝国では捕虜や拉致した人間を、兵士として扱わない場合もある。
その時は、誘拐してきた民間人を武器もつ兵士ではなく、使い捨ての兵器として扱う。
ゆえに、捕獲ではなく、滷獲と言うワケだ。
ドバイで、派手なテロ戦いが繰り広げられている間に、帝国は地下に潜伏しながら暗躍していた。
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あと、生活費に直結するので、頼みます。
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女性警官の帽子は、ハイバックスタイルと言うそうですが。
日本だけでしか、こう呼ばないのかも知れないから、カウボーイハットにしときました。
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