帝国軍勝利により、フロスト中尉が率いる第二小隊は、連合側兵士を洗脳していた。
それにより、彼の部隊員が大幅に増員された。
「さあ、ネージュ、帰ろうか? あとは帝国軍に任せておこう」
「はい、我々の役目は終わりましたから? あら? 不味いわ」
フロスト中尉が、ブハンカに乗り込もうとした途端、ネージュ準尉は上空を見て顔色を変える。
「空襲だっ! 建物内に避難しろーーーー!」
「みんな、逃げて~~~~!?」
フロスト中尉とネージュ準中尉たちが、悲鳴を上げたのは、F35ライトニング2が現れたからだ。
だが、幸いな事に第二小隊は、爆撃される事なく、敵飛行隊は頭上を通り過ぎてゆく。
「メルヴェ、ハルドル、ティエン、こっちだ」
それでも、敵機に見つかった場合に備えて、ナタンは仲間たちを大聖堂内に退避させる。
「ネージュ、我々も大聖堂に向かうぞ」
「りょ、了解ですっ!」
フロスト中尉とネージュ準尉たちも、急いで大聖堂へと向かって走り出す。
「ふぅ~~? 全員、収容されたか? 他の連中は各自で、付近の建物に行ったのだろう」
フロスト中尉は、大聖堂内に逃げ込むと、一先ず安心する。
「機種は…………ボーイング777Xだ、あとエアバスのマーヴェリックだな」
「今頃、連合軍空挺師団の登場か?」
偵察ドローンからの映像を、フロスト中尉は、ラップトップを開いて眺める。
その横で、ナタンは忌々しげに呟いた。
「ナタン、ここも爆撃されないかしら?」
「その可能性があるな、地下道でも、あるなら良いが…………」
ナタンとメルヴェ達は、できるだけ窓から左端の方で、天井を眺めていた。
帝国軍は、多数のフラックタワー&防空システムを、都市中を囲むように配置していた。
自走対空砲・レーザー砲・魔術筒・地対空ミサイル等々だ。
しかし、先の戦闘では、大多数が連合側部隊により、ほぼ七割が破壊されていた。
「他にも、多数の戦闘機や爆撃機、それに輸送機が飛んでくるようだ」
「フロスト、こっちは終わったぞ」
入口付近で、偵察ドローン&屋上に設置されたPSWなどから、フロスト中尉は上空の様子を探る。
そこに、奥から部下を引き連れた、ザミョール中尉が現れた。
「ザミョール、そっちの掃討任務は大変だったか?」
「はぁ~~! ほりゃ、まあ大変だったよ? ん、どっかで見た顔が二人も居るな?」
フロスト中尉の言葉に、溜め息を吐いた後、咥えタバコに火を着けながら、ザミョール中尉は話す。
そんな彼は、追撃戦で逃げていた、二人組の顔を見つける。
「奴らは新入りか?」
「いや、前から居たよ、暫く見ないうちに忘れたのか?」
ザミョール中尉が疑問を口にすると、フロスト中尉は直ぐに答える。
その間も、外では、爆発音と対空砲火による衝撃音が鳴り響く。
「つまり、潜入工作していた訳か? 通りで見た事があるような気がしてたんだ」
「そうなるね」
ザミョール中尉は、タバコを吸いながら、ナタンとメルヴェ達を睨む。
その間、フロスト中尉は上空に新たな飛行物体が現れた事に気がつく。
卵を二つくっつけたような外観を持つ、飛行船に見える大型敵機は、落下傘兵を下ろしていく。
「飛行船型飛行機、エアランダーか? 厄介な奴がきたな」
フロスト中尉は、画面を注視しながら、エアランダーを警戒する。
対空砲火やレーザーなどは、魔法の障壁を張り、防御しているようだ。
地対空ミサイルや砲弾は、自動散弾銃や囮ミサイルで迎撃しているらしい。
それが、複数の飛行船からなる艦隊を作り、小型飛行船などを率いて来ている。
「小型飛行船も、ティルトローターに改造されているな? おそらく、ドローン母艦だろう」
「あとは、オスプレイやバローだよ」
「あのフロスト中尉、ザミョール中尉、奥へ退避して下さい」
入口付近で会話している、フロスト中尉とザミョール中尉たちを、ネージュ準尉が呼ぶ。
「あ? お前、文句あんのか?」
「あ、いえ、その」
背が高く、体格も良いザミョール中尉が、ネージュ準尉の前に立つ。
「冗談だ? カピトリーナ、ジナイダ、ゲンナジー、俺達も退避しよう? 彼女の言う通り、ここは危険だ」
「了解ですっ! 隊長、ワインの準備もできてますよっ? 特に、レフカディア・フラミンゴ&ヴェデルニコフ・シビルコビーが手に入りましたからねっ!」
「そうした方がいい? ネージュ、僕らも奥に退避しよう?」
ザミョール中尉は、カピトリーナを含む部下達を連れて窓から離れた場所に移動する。
一方、フロスト中尉もネージュ準尉を連れて、奥へと退避していった。
「外の様子は…………」
相変わらず、大聖堂の中から外況を確かめようと、フロスト中尉は赤椅子を持ってきて座る。
そして、ラップトップの画面を注視し続ける。
すると、フライング・ホエールス製LCA60Tが、空挺兵と空挺戦車を投下している様子が映る。
巨大銀色飛行船、圓夢号も地上へと降下していく姿が伺えた。
ホテルコプター、CHー53Eスーパースタリオンなども、ハンヴィーを吊り下げながら飛行する。
フライングVは、地上にクラスター爆弾を何度も降らせながら飛行していく。
大量に飛ぶ、電動垂直離着陸機、eVTOL《イーブイトール》も、ロケットポッドやガンポッドを振り撒いている。
「中尉、俺らは大丈夫でしょうか?」
「我々も、爆撃されてしまうのではないでしょうか?」
「大丈夫だよ? さあ、援軍登場だっ!」
画面を後ろから見ていたらしい、レオとカルミーネ達は、不安気な声を、フロスト中尉に向ける。
しかし、画面内では、上空が歪み、黒い竜巻のような物が映り始めた。
そこには、多数の鼠色や黒に塗装かれた、飛行船艦隊が映る。
LZ13ハンザ号は、上部に搭載した三つの多連想ミサイルポッドが火を吹く。
LZ17ザクセン号からは、誘導ミサイル・重力砲・機関砲が多数発射される。
LZ7旅客飛行船ドイチュラント号は、魔導筒から火炎弾や氷柱弾を砲撃しまくっている。
LZ129ヒンデンブルク号は、雷撃魔法と電磁パルス砲が放たれていた。
「おっ! 勝ち始めたなっ!」
「やるじゃないか?」
「えっ? 勝ってるの? どれどれ」
「私達にも見せなさい」
援軍の到着に、レオとカルミーネ達は、騒ぎながら跳び跳ねる。
ゲームや映画を観る子供のような二人に、ミアとベーリット達も、様子が気になってしまった
四人は、画面内に映る激しい戦闘を目にする。
LZ13ハンザ号からのミサイル攻撃で、フライング・ホエールス製LCA60Tは爆発炎上する。
LZ129ヒンデンブルク号の雷撃魔法と電磁パルス砲は、圓夢号を粉々に破壊する。
こうして、連合側の機体は撃破されながら地上に落下したり、爆破粉砕されて四散していく。
「こらこら…………アンタら、中尉が困るでしょう」
「邪魔しないで、黙っててよ」
ネージュ準尉とレギナ達は、空中砲撃戦を観賞する四人の背後から静かにと注意する。
そうこうしている間に、地上に展開する連合軍側にも攻撃が行われる。
「爆撃も始まったようだな?」
「大型爆撃機の到着ですね」
大型輸送機Auー124ルスラーンの飛行編隊も飛んでくる。
それから直ぐに、サーモバリック弾とキャニスター弾で地上を爆撃し始めた。
次いで、超大型輸送機Auー225ムリーヤの爆撃機部隊が登場する。
こちらは、機体下部に取り付けられた噴出口から、真っ青な毒ガスを散布し始めた。
フロスト中尉とネージュ準尉たちは、空戦の推移を見守り続ける。
上空では、帝国・連合と双方の戦闘機が飛んでいる。
だが、飛行船や航空機は、連合側の方が圧倒的な被害を被っていた。
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