バンバンと発射音を鳴らして、ドラグノフKの銃口からは、次々と弾丸が放たれる。
このマークスマンによる射撃は、レジスタンス達に取っては、かなり驚異だったらしい。
「ぐわっ! 腕がっ!」
「がはぁ? ああ~~~~」
「う…………? ぁ?」
ナタンを狙っていた、レジスタンス員達が次々と狙撃されていく。
一人は、腕を撃たれて、二人目は右肩を撃ち抜かれて、三人目は頭にクリーンヒットした。
「うらっ! くらえっ!」
「死ねっ!」
「後ろからもだとっ!!」
「敵に挟ま…………!?」
スーラーンとブラトノワ達が、レジスタンス達の背後から現れたらしい。
突然の奇襲に、連中は慌てて、後ろに振り向いたが、時既に遅かった。
「ぎゃっ!!」
「ぐああああっ!?」
スーラーンの投げた飛刀《フェイトウ》は、レジスタンス員を二名殺害する。
ブラトノワがPPS撃った銃弾は、背後に振り返った、レジスタンス員達を三名も倒した。
『…………助かった? ふぅ………………』
頭上からの攻撃を、何とか凌ぎきった、ナタンは走りだす。
フォイルスニェーク大尉率いる部隊から離れる為に、彼は急いで前へと進み続ける。
そんな、彼は受付カウンターを飛び越え、左右のエスカレーターに挟まれた廊下の奥へと向かう。
「何だ?」
廊下には、無数の爆殺や銃殺された、死体が大量に転がっていた。
きっと、ここにある亡骸は先ほどの戦闘で死んだ、レジスタンス員たちだ。
殺ったのは先に突入した、スーラーンとブラトノワ達による強襲攻撃だろう。
『…………さっき二人が投げた手榴弾だな? ずいぶん遠くまで投げたんだな…………』
走る、ナタンは廊下脇に倒れた死体を見ながら思う。
「なっ! ラジコンだと?」
不意に前方から、子犬程度の四角い車が走って来る姿が見えた。
奥から来た、それを見て、即座にナタンは右側の部屋に入り込む。
「な、なんだ、ありゃ?」
六台もの緑色をした、ラジコン部隊は、ナタンが今来た廊下を走り、入口を目指す。
この二列で進んでいた超小型車両部隊は、ゴプニカが構えるドラグノフKによって撃たれた。
幾つかの7、62ミリ弾が四角い装甲板に当たるが、大した効果はない。
その様子を、息を殺した、ナタンは部屋で息を殺して、隠れながら伺っていた。
「連中が正面から来るぞっ!! 急げ、早く援軍に向かうんだっ!!」
「スナイパーが居るようだぞ、気をつけろっ!!」
今度は、いきなり廊下の奥から、レジスタンス員たちが走ってきた。
ナタンは、連中の声や足音を聞いて、静かに部屋で動かず、敵が去ることを待つ。
『…………八人か? こりゃ~~不意打ちは無理だな…………』
走る足音から敵の人数を、大体把握した、ナタンは額から冷や汗を流す。
それから反対側のドアまで歩いていき、物音を立てずに開くと部屋を出ていく。
「おや? 何処へ行くんだい?」
「プリンス、声を出すんじゃないよ」
ナタンは、急に背後から聞こえた声に振り向き、腰から、MASー1935を抜こうとした。
しかし、そんな彼の正面に立っていたのは、プリンスとゴプニカ達であった。
「ああ、悪いね」
「たく…………」
プリンスは、浅黒い顔下半分にトゥアレグ族が着用するマフラーを巻いている制服姿の兵士だ。
拳銃バルチエフを片手に握った、彼はニコニコと柔和な笑みを浮かべて立っている。
その後ろには、ゴプニカが背中にドラグノフKを背負っていた。
金髪ロングパーマのワーウルフである、彼女はアディダス製、青ジャージを上下に着ていた。
「側面を突こうと、回り込んで来たのか? ならば、このまま連中の背後に回ろう」
「出てくる連中は、全員射殺してやるわ」
『…………不味いな~~せっかく逃げられると思ったのに…………』
プリンスとゴプニカ達は、ナタンとともに、レジスタンス達を、三人で背後から奇襲攻撃する気だ。
思わぬ人物たちの登場に、密かに逃亡する計画を立てていた、彼は焦ってしまう。
また、悩む彼だが、今は二人と一緒に、廊下の奥へと進むしかない。
「その通りさ、さあ行こう」
「こっから先は、コバルトでね…………じゃないと戦えない」
プリンスは、ナタンの右後ろ側を、バルチエフを片手に歩く。
ゴプニカも、両手でリボルバー拳銃コバルトを握りつつ、左後ろ側を警戒しながら歩く。
足早に進み、レジスタンス達の背後を取るべく、三人は奥へと向かってゆくが。
両側のドアを見ながら、行くてから伏兵が現れないかと思う、彼等は緊張する。
「ん? 妙な音がした? これは…………」
先頭を歩く、ナタンの耳に前方から聞こえてきた、妙な物音。
それは、誰かが走って、靴が床を踏みつけるようにも、銃を撃つようにも思える。
「戦闘だ、どうやら向こうでも始まったようだっ!」
「急がないとねっ!?」
「別動隊が先に始めたのかっ!!」
連続する銃声を聞いた、ナタンは急いで、真っ直ぐ廊下の奥へと向かう。
ゴプニカとプリンス達も、彼と同じく戦闘が行われている場所へと走る。
遠くから、聞こえてくる銃撃音が大きくなる度に、一向は戦場へと近づいているなと感じる。
「外の方だ、窓の明かりが見える」
ナタンが前方を見ると、真っ白い光が廊下最奥の割れた窓から射し込んでいた。
激しい戦闘は、どうやら通りで行われているらしく、外から様々な音が響く。
建物の外壁や窓ガラスへと、銃弾が当たって砕ける破壊音や銃声などだ。
「外は…………向こうが敵か?」
「背後を取っているから、こっちは有利ね? 私は援護するわ、前衛は頼んだわよ」
「分かった、俺達は先に進むっ!」
ナタンが、窓の外を見ると、右側からレジスタンス部隊が銃を撃っている姿が見えた。
流れ弾が跳んで来ると、危ないので、彼は直ぐさま一歩後ろに下がる。
ゴプニカは、コバルトを腰のホルスターにしまうと、背中からドラグノフKを取り出して構える。
プリンスは、窓の外に飛び出し、右側へと向かって走り出した。
「あっ! 待てよっ?」
ナタンは、勝手に走っていった、プリンスを止めようと声を出した。
『…………先に行ったか…………この戦闘の最中なら混乱に乗じて脱出できる…………』
プリンスの後を追って飛び出した、ナタンは直ぐに近くにあった、自動車の残骸に隠れた。
ボコボコに膨らみ煤けた、トランクの陰から、様子を伺うべく、彼は左側の方に近寄る。
そこから、顔を出した彼は、向こう側で戦闘を続けるレジスタンス部隊を眺めた。
大型バスが、真ん中に陣取り、その両脇を自動車が並び道路を、バリケードとして塞ぐ。
「来たぞっ! 絶対に突破させるなっ!!」
「ドローン部隊の援軍はまだかっ!?」
自動車の残骸陰や大型バス車内から、レジスタンス員達が、複数人で動く姿が、チラホラ見える。
自動小銃や汎用機関銃を、撃ちまくる連中は、必死の抵抗を続けているようだ。
さらに向こう側に位置する、帝国軍部隊も足止めされているが、徐々に前進し始めている。
このまま行けば、敵部隊は殲滅されてしまい、ナタンが逃げる隙は全く無いだろう。
「おい、ナタンだったか? 仕掛けるぞっ!」
「いや、待て…………もう少し様子を見ようか」
不意に聞こえた、プリンスの声に、ナタンは右手側・路地に隠れる彼へと振り向く。
今レジスタンス側に奇襲攻撃をして勝っても、ナタンは再び逃げられぬだけだ。
「いきなり、飛び出すのは不味いからな」
だから、彼は様子を伺う振りをしつつ、プリンスから離れようと画策するのだった。
しかし、予想よりもレジスタンス側の抵抗は激しいらしく、中々離脱することは難しそうだった。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!