鼻を突く、土臭い匂いが辺りに充満する地下道内を、仕方なく歩かされる、レオとカルミーネ達。
それから、二人を信用せず、後ろでAMDー65を構える女性レジスタンス員。
暗く、三人の足音しか聞こえない洞窟を歩いている彼等は、所々に点在する横穴が目に入った。
そこに、薄緑色をした、プラスチックケースが大量に、保管されているのが目に入った。
これが、おそらく隠匿された、レジスタンス側が備蓄する武器弾薬だろうと、二人は思った。
「さぁ、この部屋だ」
女性レジスタンス員から背中を銃口で押される、レオとカルミーネ達は、木製の壁とドアを見た。
そして、後ろから小銃を突きつけられたまま、二人は入室を強制される。
「あそこに座れ」
渋々、中に入った彼等は、四角い木製テーブルと、四つの背凭れつき椅子に座らされた。
「誰か連れて来たようだな?」
「リーダーか?」
奥の暗闇から、レジスタンス達が足音を立てず静かに、ゆっくりと姿を現す。
一人は、上下に焦げ茶色の作業着と、カーキー色に染められた、フロックコートを着た白人男性だ。
もう一人は、ウットランド迷彩服を着ている、緑色のベレー帽を被った黒人男性が現れた。
「何だ、連絡係りが来たのか?」
「情報は何処だ?」
「こいつ等は情報を持って来たのさ、ただ連絡係りじゃなくて、その護衛だって」
白人レジスタンス員と黒人レジスタンス員たちは質問してきた。
二人の問いに、女性レジスタンス員は直ぐに答える。
そして、彼女は連れてきた、二人が連絡係りの護衛だと、両手と首を振って教える。
「そうか、お前はリーダーの所に情報が手に入ったと伝えに行け」
「我々は彼等を尋問する、後はこちらが受け持つ」
「はい、今行きますよ、じゃあ尋問は任せたからね?」
席に座り、白人男性と黒人男性のレジスタンス員たちは、レオとカルミーネ達を睨む。
それと、女性レジスタンス員は指示に従い、ドアを開いて、外へ退出する。
「さて、君達と会話でもしようか」
「早速質問をさせて貰うぞ」
正面に座る、白人男性と黒人男性たちは、レジスタンス員の中でも幹部クラスらしい。
「お前達は何処から来たんだ」
「おいおい、レジスタンス同士の拠点を教えるのは禁句だろ?」
白人男性レジスタンスが質問すると、レオは予《あらかじ》め捕虜から聞き出していた情報を駆使した。
『…………以前捉えた捕虜を洗脳したおかげで? レジスタンス同士が細かい情報を教え合わない事は分かっているんだよ…………』
レオは、前もって知っていた、レジスタンス側の知識を上手く使った。
それにより、この場を上手く誤魔化そうとした訳だ。
「そうだったな、では貴様等は律儀に情報を届けてくれた訳だ」
「はい、情報に何が書いてあるかは知りませんが、届けなければと思い、ここまで隠れながら来ました」
黒人男性レジスタンス員の問いかけに、緊張せず、自然に笑顔すら浮かべて答える、カルミーネ。
「そうか、君達が本当に我々レジスタンスの仲間か、それとも帝国側が寄越したスパイかは分からないが…………」
白人男性レジスタンス員は、正面に座る二人が、本当にレジスタンスなのか。
それとも、帝国兵なのかは保留にして、しばらくは観察することに決めた。
「暫くは待機していてくれ」
「ま、そうなるわな」
「仕方ないですね…………」
「スパイ容疑が晴れると良いけど?」
白人レジスタンス員が、そう言いながら、テーブルの上で両腕を組む。
黒人レジスタンス員もまた仕方無いと思い、二人を観察する事にした。
レオとカルミーネ達は、自然にレジスタンス員の振りを続ける。
二人による変装は、完璧であり、今はまだ正体が、バレる心配が全くなかった。
『…………チョロいぜ? この様子だと、偽の情報が書かれた書類もバレて無いだろうな…………』
『…………アハハッ! 潜入は楽勝だっ! コイツらの間抜けぶりには驚くよ…………』
レオとカルミーネ達は、変装潜入が全くバレて無いと思って、二人とも安堵していた。
『ラハーラーだ、開けてくれ』
「もう来たのか? 入って良いぞ」
「何だ、ラハーラー?」
そこに、女性レジスタンス員、ラハーラーの声が聞こえる。
白人レジスタンス員と黒人レジスタンス員たちは、彼女の名前を呼ぶ。
そして、先程リーダーの元へと向かった、彼女はドアを開いた。
「ラハーラー、何の用だ?」
「どうしたんだ?」
「さっきの女性?」
「だね?」
白人レジスタンス員・黒人レジスタンス員・レオ・カルミーネ達。
彼等は、四人とも現れた、ラハーラーに視線を向けた。
「女性?」
「彼は、ああ見えて男だぞ」
白人男性レジスタンス員と黒人男性レジスタンス員たちは、衝撃の一言を放った。
「はっ!?」
「えっ!!」
余りの出来事に、非常に、ショックを受けた、レオとカルミーネ達。
二人は、一瞬だけ固まってしまう。
「そんな事より、情報を分析した結果、重要なことが判明した」
「何だ、敵の攻勢計画かっ!」
「いや、何か別の情報かも知れない」
ラハーラーと呼ばれた、女性だと思われた、男性レジスタンス員だが。
彼の口から出た言葉は、重要な情報を入手したと言う話だった。
『…………ククッ! これで奴等の計画は狂うなっ! 俺達は、この任務を成功させて出世だ…………』
『…………フッ! お前等が帝国に対する反抗作戦を立てているのは、既にバレてるんだよ…………』
潜入している、レオとカルミーネ達は、スパイであると知られぬため、内心で笑う。
彼等は、レジスタンス達に渡した偽造文書から、間違った情報を入手したのだと思った。
「少し邪魔するぞ」
「俺達も用がある」
ラハーラーの後ろから、ドアを開いて、新たにレジスタンス員たちが、二人も現れる。
彼等は、その手に銃を構えていた。
一人は、黒人男性であり、緑色ベレー帽を被り、南アフレア軍の迷彩服を着ている。
右手には、短機関銃のような形状をした、散弾銃である、MAGー7を握っていた。
もう一人は、アラビ人で、顔に赤白模様のハッタを被っている。
服装は、民族衣装である、濃緑色のジャラベーヤ服を着ている。
そして、ラシード半自動小銃を両手で構えていた。
「君達の文書は完璧に偽造されていた、しかし、匂いまでは誤魔化せなかったな」
「君達は、相当な訓練を受けてるな? だが、我々だって、それは同じだ」
新たに現れた、黒人レジスタンス員とアラビ人レジスタンス員たちは、二人に銃口を向ける。
どうやら、コイツ等は特殊な訓練を受けた、精鋭らしかった。
「待ってくれ? いったい何の事だっ!」
「僕達は、レジスタンスだっ! 敵じゃないっ!」
再び、レジスタンス側から、スパイ疑惑を掛けられた、レオとカルミーネ達だったが。
彼等は、必死で違うと慌てながら何とか否定しようとするのだが。
「黙れ、お前等はスパイだろっ! お前等に加えてっ! 文書の方からも帝国側の独特の匂いがプンプンするのは何故だっ!」
「残念だったな、コイツは特別鼻が効くんだ、諦めろ」
現れたばかりの黒人レジスタンス員とアラビ人レジスタンス員たちが、二人に銃を向ける。
レオとカルミーネ達は、慌てて立ち上がり、即座に反撃しようと試みた。
「待て、何かの間違いだ」
「止せ、止してくれっ!」
だが、そんな、レオとカルミーネ達による思惑を見透かしたのか。
向かい側の椅子に座っていた、レジスタンス員たちは素早く行動に移る。
「帝国の犬めっ!」
「ふざけやがって」
白人レジスタンス員と黒人レジスタンス員たちは即座に動いた。
彼等は、机を押し倒して、レオとカルミーネ達を下敷きにしてしまった。
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