【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第188話 目指すは…………

公開日時: 2024年7月11日(木) 22:34
更新日時: 2024年7月14日(日) 10:01
文字数:3,083


「うわわっ! 火炎が…………」


「無事? ナタン?」


 火炎瓶により、ナタンの周辺にまで炎が広がってきて、路上に積もる雪を溶かす。


 急いで、ティーグルMから離れた彼の元に、メルヴェが寄ってきた。



「ああ、何とか? 敵も殲滅されたらしいし?」


「そうね、あの炎と上からの銃撃じゃあ…………」


 帝国兵たちの死体は、道路に出てきた民兵たちに蹴られたり、叩かれたりしていた。


 ナタンとメルヴェ達は、それを疲れた表情で眺めつつ立ち尽くす。



「おい? お前たち、ただの民兵じゃないな?」


「なら、さっさと着てくれっ! 一緒にワイン・パレスに向かうんだっ!」


「グリズリーに乗ってくれ、乗り手は死んじまったからな」


「分かった、今行くっ! メルヴェ、機関銃手は任せた」


「OKよ、後ろは任せてねっ!」


 グリーン・シュヴァリエから、いきなり二人は声をかけられた。


 赤いベレー帽の連合側兵士は、一緒に着いてくるように伝えた。



 そして、フリッツ・ヘルメットを被る連合側の兵士は、ヤマハ・グリズリーを指差す。


 ナタンとメルヴェ達は、指を指された軽車両に走ってゆく。



「おっと、死体から武器とベストを…………」


 走る途中で、帝国兵の死体から、タクティカル・ベストを剥ぎ取る、ナタン。


 それと、同時に彼は近くに落ちていた、AK12も拾う。



「メルヴェ、乗ったか?」


「今、乗ったわ……出していいわよっ!」


 ヤマハ・グリズリーの運転席に座った、ナタンは後ろに声をかけた。


 メルヴェは、牽引トレーラーに付けられた装甲の中に、ドアを左右に開いて入った。



 装甲の上には、アルメア製、OPGK防盾《ぼうじゅん》が備えられていた。


 これは、本来ハンヴィー上部の機銃マウントに取り付けられる物である。



「出すぜ、いいか?」


「いいわっ!」


 ヤマハ・グリズリーの防弾装甲が無い運転席と、装甲板に覆われた牽引トレーラー。


 これらは、ややチグハグな印象を与えるが、それでも連合側の貴重な機甲戦力である。



 そして、ナタンとメルヴェ達が乗ったと同時に、周辺で停まっていた車両部隊も動き出す。


 アルメア製、RGー33トラックが走り出すと、後の車両も続く。



「いったい、どうする気なんだ?」


「退かすのよ」


 RGー33トラックだが焼け焦げた、偵察装甲車フェネック&輸送装甲車フクスに向かっていく。


 そのうち、損傷が酷く、ほぼ破壊され尽くしていた、偵察装甲車フェネックに衝突する。



 そうして、邪魔な障害物を取り除きつつ道を開いた。



 ナタンとメルヴェ達は、それを見ながら一番後ろの列に加わり、ヤマハ・グリズリーを移動させる。



 その途上、敵味方が死体と化して、雪つもる路上に横たわる姿を二人は目にした。


 先ほどの戦闘で、フェネック&フクス装甲車から出てきた敵兵と、応戦していた連合兵だろう。



 二人が、ティーグルM部隊に奇襲をかけている内に、反対側でも激闘が行われていたのだ。



「部隊が移動を開始するっ! 急げっ!」


 RGー33トラックから、指揮官らしき紅ベレーの黒人兵士が声を上げる。



「気をつけろ、ここは荒野のウェスタンだ…………てか?」


「ふざけてないで、警戒は怠らないでね」


 ナタンは、不意に口から有名な戦争ゲームの台詞を出した。


 そんな彼に対して、メルヴェは注意しつつ、M60車載機関銃の照準を、屋上や屋根に合わせる。



 すると、帝国兵から武器や装備を取った民兵たちは、すでに姿を消していた。



 そうして、二人の乗った、ヤマハ・グリズリーは敵装甲車の残骸を通り抜ける。


 ここは、T字路となっており、この奥から敵装甲車部隊が出てきたんだろうと、二人は思った。



「この先は気を付けるぞ」


「そうしてね…………」


 ナタンは前を走る車両部隊に合わせ、ヤマハ・グリズリーの速度を上げはじめる。


 メルヴェは、背後から奇襲を受けないように気を緩めず、防盾の中から呟く



 そんな二人は、左側にあるジョンクシオン通りをすぎると、歴史的な建物を見た。


 帝国により青灰色に塗装された、ミゾン・アイノン博物館だ。



「この先、右側にまた横道がある」


「…………分かったわ、警戒するわ」


 前を走る、ゲッコー、RDLVの後部には、グリーン・シュヴァリエが乗っている。


 そして、彼は自らが握る、ミニミ分隊支援火器を広い道路である、オー=ポン通りに向けている。



 そこを、ナタンが通りすぎる際、メルヴェも同じ方向に、M60車載機関銃の銃口を動かした。



 しかし、運良く敵は現れなかった。



「しっかし、ワイン・パレスってのは何処だ? 刑務所じゃなさそうだが?」


「たぶん、この方角から察するに、ブリュッセル宮殿と、その周辺じゃないからしら」


 何事もなく、凍った道路を走行していく、連合軍・車両部隊の車列。


 その進行上に、敵影はなく安全に移動を続けている。



 しかし、気を抜く事はできない。



 そこかしこに、敵味方を問わず、伏兵が潜んでいるからだ。



 RPGやドラグノフなどを含む、対戦車用・狙撃用の武器を持った誰かを警戒せねば成らない。


 この静寂は、不気味で言いようがない緊張感が漂う。



「交差点だ、敵は居ないよな?」


「BTRよっ! 右っ!」


 広々とした交差点を、ナタンが運転するヤマハ・グリズリーが通行している最中、危機が迫った。


 右側から猛スピードで走る、BTRー70装甲車を見つけたからだ。



「いや、アレは味方だ…………」


「そうね、緑色だわ?」


 近くまで来たのに、攻撃してこないBTRー70を不思議に思った、ナタンは味方車両だと気づく。


 メルヴェも間近で見て、緑色の車体だと分かり安堵した。



 そうこうしながら、二人を含む部隊は、交差点を通りすぎてゆく。


 彼等が敵と勘違いした、装甲車は、そのまま真っ直ぐ走って行った。



「行ったか? は、前を見ないとっ!」


「安全運転、よろしくね」


 そう言いながら、味方の車列に着いてゆく、ナタンとメルヴェ達。



 彼等の左側に広い横道が見えた。



 そこはV字型になっており、手前にだけ道路が両方の道に繋がっている。


 奥にある、もう片側はパソコンショップの敷地らしく広い歩道がある。



 しかし、そこに突如、装甲車が現れた。



 歩道には、25ミリ機関砲の砲塔を備えた、92式装輪装甲車が乗り上げる。


 道には、戦車のように見える砲塔を備えた、05式自走迫撃砲が塞ぐように停車した。



 そして、周辺には、フリッツ・ヘルメットを被った、連合軍兵士が現れる。


 彼等は、鉄条網や土嚢を運び、道路を封鎖するべく作業を始めた。



 その中には、グリーン・シュヴァリエ&オーガー達が警戒に当たっている。



「緑色か? 味方だな」


「以外と、機甲戦力が揃っているのね」


 ナタンとメルヴェ達は、味方兵器の頼もしさを話しながら進んでゆく。



 そうして、左側には灰色の巨大なホームセンターを見た。


 反対側には、曲がり角にケーキ屋と、広い横道のアメリケーヌ通りがある。



「ん? なんだ…………」


「アレも味方よっ!」


 そこから、車列先頭に味方の機甲部隊である、緑色と茶色い迷彩塗装を施された、装甲車が加わる。



 フランシュ、パナール社製、EBR90偵察戦闘車。


 フランシュ、パナール社製、ERC90偵察用装甲車。



 これらは、先ほどの05式と同じく、戦車みたいに砲塔を備える装甲車両だ。



「帝国軍の戦車を破壊してくれればいいけど?」


「どうかしら? こんだけ重装備なら大丈夫だと思うわ」


 強力な兵器が味方に加わったが、ナタンとメルヴェ達は、戦車と鉢合わせしないように願う。


 何故なら、これら軍用車両は、戦車と装甲車の中間ほどしか強くないからだ。



 つまり、装甲の硬さや砲撃力などが中途半端なのである。



 なので、二人は敵戦車が登場しないように神に祈るしかなかった。


 そして、心配する彼等を他所に、車列は次の交差点まで近づいていた。

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