「御注文はお決まりでしょうか?」
「フロスト、お前は何を食したい」
「私は特に有りませんので大佐と同じ物を…………」
ウェイターが、注文を取りに来ると、ラヴィーネ大佐は、フロスト中尉の方に目を向けて問う。
「そうか? では、カルボネートフラマンドとピュレを…………飲み物はグーズビールを二人前頼む」
「はい、畏まりました」
ラヴィーネ大佐は、注文を頼むと。注文を承った、ウェイターは胸に手を添える。
それから、頭を深々と下げた後、厨房へと向かって言った。
「フフ…………私の我が儘を聞いて貰った礼だが、お前は人員と装備を欲しがって居たな?」
「ラヴィーネ大佐、その話しですが殉職した隊員の補充だけでは無く、何人か隊員を増員して欲しいのですが…………」
ラヴィーネ大佐は、正面に座る、フロスト中尉へと顔を真っ直ぐに向ける。
そして、妖しげな微笑を浮かべながら、欲しい物はと問い質す。
もちろん、フロスト中尉は、人員不足に苦しむ自らの部隊に増員を頼んだ。
「分かった…………帝国軍の殲滅された部隊の生き残りと、今回のテロリストの襲撃で捕らえた捕虜から作成した兵士をそちらに送ろう」
「有り難う御座います、大佐…………これで我が隊も、帝国に反抗する愚かなテロリスト達と全力で戦えますっ!」
ラヴィーネ大佐は、フロスト中尉の願いを聞いて、人員を増強することを許可した。
その事に対して、彼は素直に、感謝の言葉を述べるとともに深々と頭を下げた。
「気にするな、それと私からの餞別だが、特別で素敵な贈り物をプレゼントしよう? それが何かは明日の朝まで分からない、お楽しみだがな…………フフ、フフフフッ♡」
「はぁ、お楽しみですか?」
特別な贈り物を、プレゼントすると言い出した、ラヴィーネ大佐。
彼女の前で、頭に?マークを浮かべる、フロスト中尉であった。
その後、注文した料理が届く。
照明器具から、ボンヤリと淡い青光りが、薄暗いレストランの店内を照らす。
そんな中、フロスト中尉とラヴィーネ大佐は、向かい合って、会話しつつ料理を堪能する。
向かい合う、二人の眼前には、ベルギューで食べられる伝統的な料理がある。
グラスに注がれた、特産品のグーズビールとともに、それ等の料理は二つ並ぶ。
一つはピュレと呼ばれる料理だ。
この煮込み料理は、ポロネギ・ホワイトアスパラガス等をブイヨンで煮込んだ、ポタージュである。
もう一つは、カルボネートフラマンドと呼ばれる、牛バラ肉の角切りと玉葱を炒めた物だ。
また、これを水では無く長時間ビールで煮込み、とろみと甘辛い味付けを施した、肉料理である。
「このピュレなんだが知っているか? ホワイトアスパラガスが入っている、私達の白い肌と白髪の様に白い野菜、だが収穫時期は春だ…………」
「今は、我等帝国の国営地下農場施設で、照明器具により、季節に影響される事無く、栽培・収穫されていますね?」
ラヴィーネ大佐は、目の前にあるピュレに入っている、具材ホワイトアスパラガスを見つめる。
そして、フロスト中尉に、雌狼のような鋭い視線を移して、語り始める。
「これにより、食糧に関しては、供給量が低下することは無くなりました」
「ああ、そうだな、フロスト…………だが私が言いたいのはな? もう春は来ないと言う事だ…………幾らテロリストや連合軍が、ピュレのように暖かい春が来る事を待ち望んでも、それはもはや死に絶えて消え去り、永遠に無く成ってしまったのだ」
フロスト中尉は、ラヴィーネ大佐を激昂させぬように、当たり障りのない言葉を選んで答える
そんな中、彼女は語り続ける。
ニヤリとした、笑みを浮かべつつ、帝国の絶対的な勝利と栄光。
そして、絶望による統治と恐怖を用いた、支配を喜びながらだ。
「だが…………それでも諦め切れず、愚かにも微かな希望を抱き、帝国に刃向かう不届き者達が居るな?」
「テロリストの中に存在する手練れの者に? 連合軍の一部の精鋭特殊部隊の兵士の事でしょうか?」
ラヴィーネ大佐は、フロスト中尉の瞳を覗き込むように、じっと見つめて、真剣な顔付きで話す。
すると、帝国と敵対する勢力の中でも、勇猛果敢に抵抗運動を続ける過激派一派を、彼も語り出す。
そして、一部レジスタンス員や連合軍に所属する精鋭たちの名を上げた。
「そうだ…………奴等は所詮ありもしない一筋の希望にすがる愚かで哀れなクズでしか無いが、だが希望を持ち続ける戦士でもあるからこそ強い、肉体的にも精神的にもな…………」
ラヴィーネ大佐は、テーブルに両肘を突き、次いで両手の指を、細い顎《あご》下で組み合わせる。
笑みを浮かべた彼女は、悪戯好きな少女や、大人の妖艶な女性にも見える。
そんな表情を、フロスト中尉に向けて、持論を語る。
「私は強い者、美しい者が好きだ…………奴等が逆境にも負けずに、直も我等ノルデンシュヴァイク帝国に反抗するなら、是非とも配下に加えたい…………」
「大佐…………微力なれど、私に出来る事は何でも致します、捕虜が必要ならば幾人でも捕らえて献上致して御覧に入れましょう」
自らの演説に酔いしれているらしく、天井を見つめながら、ラヴィーネ大佐は語る。
そして、彼女は、飛び回る羽虫を掴み取るかのように拳を強く握る。
その手を、彼女がスゥ~~と静かに引くと、フロスト中尉は、捕虜を大勢捕らえると申し出た。
「フフッ! 頼もしいな、フロスト? だが、貴様は今人員が足りずに困っている筈では無かったのか?」
「はっ! それは…………今以上に戦果を上げ戦力を増強次第、大佐にも捕虜を御提供させて頂きたいと思います」
妖艶な笑顔を浮かべながら、ラヴィーネ大佐は、フロスト中尉に意地悪を言った。
痛い所を突かれた、彼は、ヤル気のある所を見せようと耳に良いことを語る。
「まぁ、そう固くなるな? 貴様の隊が苦境に立たされているのは私も存じている、成ればこその捕虜から製造した人員を餞別として貴様に贈与するのだ、有り難く思え?」
「はいっ! 我等、帝国警察特殊部隊への御協力と装備・人員の提供を非常に感謝致します」
意地悪を言って、ラヴィーネ大佐は、フロスト中尉を困らせた。
だが、言うまでも無く、レジスタンス達による、必死の抵抗は、激しさを増すばかりだ。
ここ最近の帝国地上軍・帝国警察部隊では、死傷者が増している。
それにより、相当な被害が出ている事は、彼女も存じていた。
と言うわけで、彼女は帝国警察に対する協力を申し出たのだ。
そして、もう一つの帝国警察に協力する理由であるが。
「これで、我が隊は、さらに戦果を上げるでしょうっ! 本当に感謝します」
「そうか? では、今度は戦場で、それを見せて貰おうか」
それは、ただ単に容姿が気に入った、フロスト中尉をホテルに呼ぶと言った、口実のためであった。
また、貴重な装備と人員の増強を融通してくれた、ラヴィーネ大佐に対して、彼は感謝を述べる。
「ここが、スイートルームになります」
「分かった、ほら、フロスト? 入れっ!」
「はっ! 了解ですっ!」
その後、食事を終えた、二人はホテルマンに高級ルームへと案内される。
中に入るなり、早速夜伽の準備をしろと、ラヴィーネ大佐は言いだす。
もちろん、嫌だと断ることが出来ぬ、フロスト中尉は、下された命令に従う他ない
「フロスト、早くシャワーを浴びて来い、私を待たせるなっ!」
「了解しました、ラヴィーネ大佐…………では行って参ります」
シャワールームに行けと、ラヴィーネ大佐は、フロスト中尉に対して命令する。
それに、素直に従い、実は家で一回浴びているんだよなと思う、フロスト中尉は仕方なしに向かう。
『…………フィーンには悪いけど…………これも仕事の内だからね…………』
フロスト中尉は、帝国警察士官の制服を脱ぎ、シャワールーム内に入る。
そこで、彼は熱々のシャワーを、一気に鍛えられた細身に浴びる。
また、彼は仕事とは言え、大佐と肌を重ねる事を、心の中で、フィーンに詫びる。
「これは、浮気じゃないからな…………」
シャワーを浴び終わり、白いガウンを、フロスト中尉は羽織る。
ラヴィーネ大佐の待つ、ベッドルームを目指して歩いて行く。
「次は、私の番だなっ!」
そこで、ラヴィーネ大佐が、椅子に座って待ち構えていた。
こうして、今度は彼女が、シャワールームへ行こうと立ち上がった。
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