【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第157話 脱出したが再び…………

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:29
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:50
文字数:3,643


「終わったぞ…………」


 ナタンは、帝国警察の制服に着替えて、黒い制帽を被り、虹色に光る幻影から出てきた。


 彼が、今まで着ていた衣類は、黒い箱に仕舞い、それを脇に抱える。



「私もよ」


 メルヴェの方は、制服ではなく黒いコートを纏い、足元は青いラバータイツが見えた。


 二人は着替え終えると、ボクサー装甲車に乗ろうと後部ハッチに入ってゆく。



「さあ、帝国兵の方々も早く乗車して下さい、工作員と残像部隊の回収が、我々の任務ですから」


「分かった」


「了解…………」


 六人全員が、ボクサー装甲車に乗ると、シャッターが開いた。


 そうして、ナタンとメルヴェ達は仕方なしに、帝国警察の車で、どこかに連れて行かれる。



「出すぞ」


「取り敢えず、帝国警察署まで行きますね」


「ああ、分かった…………メルヴェ、このままだと」


「ええ…………分かってるわ、前に爆破させた場所よ」


 野戦帽を被る運転手は、短い言葉を呟くと、ボクサーを走らせた。


 オルツィから声をかけられた、ナタンは短く答えると、メルヴェにヒソヒソ声で話し始めた。



 帝国警察が駐在する警察署は、二人を含む破壊工作部隊が、つい最近テロ攻撃をしかけた場所だ。


 ハッキリ言って、そんな場所にまで連れていかれるのは不味い。



 しかも、フロストを始め、レオやミアなど顔を知っている連中も多数だからだ。


 だが、今のところ、工作員だと勘違いされている二人に拒否権はない。



 また、妙な言動をすれば正体がバレて逮捕されてしまい、警察署で洗脳されてしまう。


 何とかならないか、彼等は装甲車の座席に隣同士で座りながら苦悩する。



「む? なんだ、こんな場所で検問所か?」


「はあ? 仕方ないですっ!」


「な、なんだってんだよっ!!」


 ボクサーの運転手が検問所手前で、車両を止めた途端、四方からRPGー弾が飛んできた。


 それは、直撃はしなかったっが、左タイヤを粉々に破壊してしまった。



 オルツィとソムサック達は、慌てて後部ハッチから飛び出し、周囲を確認する。



「検問所がない? はっ? まさか…………敵ソーサラーの幻影っ!!」


「オルツィ、俺の後ろに隠れろっ! オラーーーー!!」


 ボクサー装甲車の陰右側から正面を見た、オルツィは呟きつつ驚愕する。


 ソムサックは驚きのあまり、固まって動けない彼女を守るように立ち、両手を前に出した。


 そこから発射されるのは、腕着式・短機関銃による9ミリ銃弾だ。


 これで、彼はビル屋上から、RPGー7の次弾を撃とうとする連合部隊を牽制する。

 


「死ねぇ~~~~!?」


「装填完了っ!!」


 しかし、RPGー7を扱う連合側兵士は、容赦なく弾頭を発射する。


 周囲が灰色の爆風に包まれる中、それでもソムサックは射撃を止めない。



「く…………ここは、私たちが援護するわっ! 早くビル内に行って下さいっ!」


「ぐわあっ!?」


「お前ら、護衛は頼んだぞ」


「早く行くんだっ!」


 リカーブボウを、矢継ぎ早に射ちつつ、オルツィは二人に向かって叫ぶ。


 放たれた一撃は、連合側兵士の眉間に当たり、力を失った死体はビルから下に落下していく。



 さらに、他の兵士たちにも、肩や胸へと矢が当たって負傷させる。



 両腕を屋上に向けて、9ミリ弾をバラ撒き続ける、ソムサックも帝国兵たちに対して叫ぶ。


 運転手の兵士も、ボクサー後部左側からレベデフ・ピストルを撃ちながら行くように指示する。



「分かっ!! ぐわあ…………」


「りょ、ぎゃああああ」


 その時、斜め上から飛来した、巨大な火球が帝国兵たちを包み込んでしまった。



「な、なんだ?」


「マジシャンよっ! ああーー帝国で言う、ウィザードの事よっ!」


 混乱しながらも、ボクサーから出てきた、ナタンは丸焦げになった死体を見てつぶやく。


 メルヴェは、彼の疑問に答えながらも、サルマスシズK10拳銃を片手で撃ちながら走る。



「詳しい説明は後でっ! ナタン、早く来てっ!」


「今行く、援護は任せたっ!!」


「任せないっ! 私の幻影でっ!」


 メルヴェは走りながら、ナタンを呼び、彼も銃を撃ちまくりつつ駆け出していく。


 ブルパップ式自動小銃FADは、ダダダダと一定速度で弾丸を連射する。


 ゆえに、狙い撃ちには有利だが、乱戦で使用するには発射速度が遅いので不利だ。



 しかし、それでも、彼は撃ちまくりながら走ってゆく。



 それを援護するために、オルツィは幻影魔法で虹色モザイクの壁を作った。


 また、偽の幻影兵士を続々とボクサー装甲車から出現させた。



 こうして、彼女は二人を援護する。



「ナタン、こっち」


「今いく」


 ビル内に入った、メルヴェとナタン達は、戦闘地域から離れるべく内部を駆ける。


 外からは、未だにドォンと爆発音や銃声が鳴り渡る。



「なるべく遠くに離れなくちゃなっ!!」


「今じゃ、連合も帝国も敵よね…………」



 帝国側から密かに離れた、ナタンとメルヴェ達は、ビルを走り抜け通りに出た。



「居たぞっ、撃ちまくれっ!!」


「帝国兵だっ! 死ねーー!!」


「なっ! しま…………」


「ヤバいっ!?」


 連合軍兵士たちが、急にビルから飛び出て、ナタンとメルヴェ達に銃を向けた。


 そして、無情にも射撃音が響き渡る。



「ぐわあーーーー!?」


「ぎゃあああああっ!」


 しかし、撃たれたのは何と連合軍兵士たちだった。



「援軍だっ!!」


 BTRー80装甲車の屋根に乗って現れた、帝国軍兵士たちが、連合軍兵士たちを撃ち殺した。


 二人の連合軍兵士が倒れた事を確認すると、彼等はナタンとメルヴェ達に寄ってくる。



「無事か? 怪我はないか?」


「いえ、それより向こうで味方がっ!」


「ああ、あっちで戦っているんっ! うわっ!」


 帝国兵が、声をかけてきたが、メルヴェとナタン達を狙って銃弾が飛んできた。


 屋上から放たれた、弾丸は着弾する度に、二人の周囲に灰煙を上げまくる。



 また、屋上だけではなく、ビル内からもAK47自動小銃やPK機関銃が撃たれる。



「散開しろっ! ビル内に突入するっ!」


 帝国軍・下士官が叫ぶと、BTRー80から兵士たちは飛び降りて、ビル内へと入ってゆく。


 ナタンとメルヴェ達も、慌てて右側のビル内に向かって走り、窓を割って転がり込んだ。



 さらに、BTRー80は後退しつつ斜め上に向けて、KPVT14、5ミリ機関銃を撃ちまくる。


 そして、後部ハッチから多数のドローンと小型ロボット戦車を出撃させた。



「仕方ない、このままでは連合側に殺されてしまう」


「必要とあらば、撃つしかないわね…………」


 ナタンとメルヴェ達は、帝国軍兵士が階段を駆け上がる中、二人だけで密かに話す。


 連合側の奇襲により、帝国側は血気盛んに反撃に移り、ビル内で激しい戦闘を繰り広げるだろう。



 二人は、襲撃された装甲車と帝国軍部隊から再び逃げるように走り出した。


 そのまま戦闘に参加せず、密かに逃げようとするが。



「こっちは制圧したっ! 次のビルに部屋に向かうっ!」


「援護するっ! 左側は俺が担当だっ!」


「了解、背後は任せろっ!」


 いきなり、帝国軍の制服を着たリュファスが部下を引き連れて入ってきた。


 背後に率いるは、ワーウルフとオーガー達だ。



「はっ! ナタン…………チッ!」


「あ…………この裏切り者めっ!」


「不味いわっ! きゃあっ!?」


 咄嗟に舌打ちしつつ、オピネルナイフを投げる、リュファスと、頭を下げるナタン。


 しかし、次なる一手たる軍用ポケットナイフを、奴は投げ、彼はFADで受け止める。


 最後に、奴は三度目の投擲に、ウェイド&バッチャーナイフを投げた。



「不味いわっ! きゃあっ!?」


 流石に、これは回避しきれず、ナタンの頭に刺さってしまい、メルヴェが悲鳴を上げる。



「大丈夫だっ! メルヴェ、これくらいっ!」


「ナタン、良かっ? …………って、援護するわっ!」


「させるかぁーーーー!!」


 ナタンは、頭部に鋭いナイフが刺さったかに見えたが、帝国警察の制帽に当たっただけだった。


 そして、彼は反撃のためにFADを撃とうとするが、リュファスが走り出す。



 そうして、懐から取り出した、レギオールナイフで、彼のFADを叩きつけた。



 そのせいで、銃撃は逸れてしまう。



 奴は、さらにFADを構えた、メルヴェの腹を思いっきり蹴った。



「ぐふっ!? ぐぅ…………」


「メルヴェッ! よくも、メルヴェをっ!」


「知るか、死ねっ! スパイめっ!」


 吹っ飛ばされた、メルヴェが近くの壁に当たってしまうと、ナタンは勢いよくリュファスを怒鳴る。


 だが、奴はレギオールナイフで、FADを押さえつけつつ、また懐から何かを出そうとした。



「これを喰らいなっ!」


「しまったっ!?」


 バンッと、一発銃声が鳴り響き、リュファスが、ナタンを撃ち殺したかと思われた。



 しかし、倒れたのは何と、奴だった。



 そこに、右から歩いてきた、メルヴェがFADの銃口で、奴を突っついた。



「貴様ら、動くなっ!!」


「どうなってるんだ?」


「黙れ…………コイツは二重スパイよ」


 AK74Uを構えた、ワーウルフが叫び、PKP機関銃を抱える、オーガーは立ち尽くす。


 メルヴェは、持ち前の演技力で、二人を騙しつつ、リュファスの死体を蹴った。



 すると、その衝撃で、彼が懐に入れていた右手が胸元から出てきた。



 そこには、MASー1935ーAが握られていた。

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