【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第285話 大聖堂を守れ

公開日時: 2024年7月12日(金) 17:27
更新日時: 2024年7月15日(月) 08:39
文字数:3,462


 帝国側は、大聖堂内に突入したが、連合軍部隊の反撃に合い、一時撤退した。



「敵が居ないぞっ!」


「退散したな?」


 左右両側に、並べられた椅子の裏から、ラテン系PMC要員は、ドアを眺める。


 中央アシュア系レジスタンス員は、カルカノ小銃を構えながら、敵を警戒する。



「おい、撤退命令が出ているんだぞっ!!」


「まだだ、工兵隊が爆弾を仕掛けるまで、撤退はできないっ!」


「はあ? そんな暇はないっ? うぐぅ…………」


 ナタンが柱に隠れている、黒人民兵に命令を伝達したが、まだ無理だと言われた。


 メルヴェは、呆れながら溜め息を吐こうとした途端、突如天上から降ってきた瓦礫に襲われる。



「メルヴェ、メルヴェッ! メルヴェ、大丈夫か?」


「大丈夫、左肩を痛めただけよ、それより? 大丈夫かしら?」


 ナタンは怪我を追った、メルヴェへと直ぐさま駆け寄る。



「ヘリコプターが飛んでいるな?」


「それも、二機ね? 機種は別ねっ! また、撃って来るわよっ!」


 ナタンとメルヴェ達は、上空をヘリコプター部隊が飛んでいることに気がつく。


 その内、一機がAGSー30自動擲弾銃から榴弾を連射してきた。



 この攻撃により、再び大聖堂内に、瓦礫が降り注ぐ。



「うわ、逃げろっ!」


「不味い、椅子の下に伏せろっ!」


 崩れてきた瓦礫から、身を守るため、連合軍兵士と南太平洋系民兵は、赤椅子の下に逃げ込む。



「おい、お前ら、大聖堂に援軍を呼んで来てくれっ!」


「はあっ!? 撤退命令が出ているんだぞ、正気か?」


「私達も、逃げないと殺られちゃうわよっ!」


 東アシュア系レジスタンス員から言われた言葉に、ナタンとメルヴェ達は驚く。



「そんなの俺は知らないっ! グダグダ言うなら、上に言ってくれ」


 それだけ言うと、東アシュア系レジスタンス員は、柱の陰へと走って行った。



「最早、指揮系統が無いんだな…………」


「ナタン、裏から私達だけで逃げましょう?」


 そう言って、立ち去ろうとした、ナタンとメルヴェ達だったが、いきなり機銃弾を浴びせられた。



「また、帝国軍が撃って来たぞ、連中はジリジリと攻めて来る気だっ!」


「誰か、ダネルMGLを持ってこいっ!」


「俺達も撃ち返さないとなっ!」


「当然ね、殺られっぱなしは性に合わないわ」


 連合軍兵士は、赤椅子からM16A3を乱射し始め、黒人民兵はステンガンを撃ちまくる。



 ナタンも、レミントンM870を発射する度に、ポンプを引く。


 メルヴェは、床に伏せながら、マウザーC96カービンを撃ちまくる。



「ぐぅぅ…………ナタン、撃たれたわ、ヤバいかも?」


「メルヴェ、不味いっ! ここから離れよう?」


 機銃弾が飛び交う中、ナタンは脇腹を撃たれた、メルヴェを連れて、大聖堂奥にある裏口を目指す。



「ナタン、衛生兵を呼んで来て…………動かすと痛いから、あそこの瓦礫に私を隠して…………ゲフッ!」


「分かった、必ず衛生兵を連れて来るっ! それまで、ここに居ろよっ!」


 メルヴェを、爆撃で崩れた瓦礫に隠した、ナタンは右側の方へと向かって、裏口から外に出る。



 彼は、吊り橋を通ろうかと思ったが、負傷した彼女を連れて行くのは危険だと考えた。


 付近に、多数の歩兵戦闘車も迫っていたから、良い的になると思った訳である。



「衛生兵と言うか? マミーを連れて来ないと? ん、このっ!」


「うわ、ぎゃあっ!」


 ナタンは、レミントンM870から散弾を放ち、左側から走ってきた、バイカー兵を射殺する。



「よし、行くぞ」


 ナタンは、敵から奪い取った、青いヤマハXT250に乗ると、直ぐに発進させた。


 彼は、ボワ・ソバージュ通りから、バンク通りへと進む。



「敵発見っ!」


「追跡しろっ!」


 そこに、交差点の右側からシュコダオクタビア製パトカーが登場して追跡され始めた。



「こんな時にっ!」


 後ろに振り向いた、ナタンが見たのは、フロント・バンパーが水色に塗装された車体だ。



 青いパトランプを照らしつつ、警報を鳴らす、コイツは厄介だ。


 前輪付近には、前から後ろへと、斜め下に続く三本の青線と、一本だけ水色線が描かれている。



「チッ! しつこい奴らだ」


「止まれっ! 撃つぞっ!」


 ナタンを追跡するパトカーから、マカロフ拳銃で何発か弾丸が発射される。


 しかし、そんな攻撃が彼に当たるはずもなく、バイクは走る速度を上げ続ける。



「ヤバいっ!」


 砲撃跡地に出来た、雪融けした泥水を跳ねながら、ナタンの跨がるバイクは高く飛び上がった。


 パトカーも、そこを通って飛びはねながら、ひたすら彼を追う。



「ん、何だ、敵か?」


 バンク通りを通過した、ナタンは左右両側のビルに何かが動いている姿を目視した。


 しかし、真後ろを追跡していた、パトカーは複数のRPGー7を撃たれて、大爆発する。



「味方だったか?」


 その隙に先へと進んだ、ナタンは交差点を曲がり、モンターニュ・ド・ロラトワール通りに行く。



 しかし、ここで、敵のバイカー部隊が現れた。



「また、追撃か?」


 ヤマハ製、XTZ660テネレに乗った、二名のバイカー兵たちは、ナタンを追跡する。


 二人は、フランシュ軍で使用される、青いバイカー・ヘルメットを被り、黒い野戦服を着ている。



「くそっ! これじゃあ…………はっ!」


 ナタンは、交差点を右側に曲がり、リーニュ通りに入ると、ビルの隙間にバイクを停めた。



「奴は、何処へ行った?」


「居なくなった?」


「おい、どうしたんだ?」


 二名のフランシュ軍装備バイカー達は、追跡していて、姿が見えなくなった敵に困り果てる。


 そこに、灰黒いレザーコート&レザーパンツを身につけて、バイクに跨がった兵士が現れた。



 もちろん、その正体は、黒いIHPSヘルメットを被るナタンである。



「敵を見失ったんだが…………?」


「奴は、何処に消えたんだ?」


「分かった、俺は前に進む、君達は反対側を捜索しに向かってくれ」


 二名のフランシュ軍装備バイカー達を、ナタンは上手く騙す。



「じゃあ、任せたぞ、そっちは頼むっ!」


「仕方ない、分かったぞ」


「行くしかないか?」


 ナタンが、リーニュ通りを進み出すと、二名のフランシュ軍装備バイカー達も後ろに戻っていく。


 そして、再びビルの隙間を見つけた彼は、そこで軍服を脱ぎ捨てる。



「は? なんだ?」


 こうして、再びレジスタンス員の格好に戻った彼は、いきなり乗り物が走っていく姿を見た。



 連合軍兵士が乗っている、ホバークラフト、住友エクセMTが、大聖堂へと向かっていく。


 それを、帝国軍兵士の乗った、アエロサンRFー8は、機銃掃射しながら追撃を仕掛けていた。



 これを見た後、自身も戦闘に巻き込まれる前に移動しようと、ヤマハXT250に乗った。



「ん、またかよっ!?」


 ナタンを、ビルから出てきた、大勢の帝国軍兵士たちが走りながら追ってきた。



「前からもかよっ!」


 リーニュ通りから交差点に出た、ナタンの前方には、警察隊員が検問所を設置していた。


 しかも、こちらも大人数で、彼を待ち構えており、走りながら発砲してくる。



「戻るしかないかっ!」


 結局、ナタンは、元のボワ・ソヴァージュ通りに戻り、バイクを大聖堂裏で停止させた。



「援軍は無理、衛生兵は無しか? 吊り橋から戻れば良かったか? う………撃たれたか? 俺も、ダメかな」


 ナタンは、大聖堂から伸びる吊り橋が無事な姿を見て、後悔する。


 しかし、いつまでも悔やんでいる暇はなく、彼は大聖堂内に戻っていく。


 だが、さっき敵に撃たれていたらしく、彼の腹部からは真っ赤な血液が垂れていた。



「メルヴェ、メルヴェ? 居ない…………」


「逃げろっ! 撤退だっ! 工兵隊も死んだっ!」


「爆薬も足りないっ!!」


 ナタンは、瓦礫を掘り起こして、ここに隠れているはずのメルヴェを探すが、なぜか彼女が居ない。


 そうしている内に、白人民兵と黒人レジスタンス員が、大聖堂の奥に逃げてきた。



「おい、ここに負傷者が居たんだが知らないか?」


「知らないっ! 他の兵士とともに脱出したんだろう」


「そんな事より、撤退だっ!」


 ナタンの質問に、白人民兵は答え、黒人レジスタンス員は急いで逃げようとする。



「分かった、安全かどうかは分からないが、上から行けっ! 吊り橋は、まだ残っているっ!」


「アンタは、どうするんだ?」


「もう、良い、放置しておけっ!」


 ナタンは、白人民兵に礼を言うと、反対に自身はと聞かれた。


 黒人レジスタンス員は、さっさと走っていき、退散してしまう。



「俺は残る…………殿は任せろ?」


「分かった、なら任せたぞ…………」


 ナタンは、祭壇の手前に座りながら、白人民兵に残る事を伝える。


 すると、向こうも背中に見える赤い血液が垂れているのを察したらしい。



「残り、俺だけ」


 そうして、連合軍部隊は全員撤退していき、ナタンだけが残された。

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