【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第152話 レジスタンスの虜囚にされて

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:23
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:47
文字数:3,492


「さあ、ガルム、アセナ…………脱出しましょう? 私達が援護しますから」


「弾除けなら任せとけっ!!」


「あ、ああ、そうだね…………」


「はやく、情報を持ち帰らないと成らないし」


 女性兵士とオーガー達は、ドアの外に出ると、左側に向かって走り出す。


 ナタンとメルヴェ達も、連合軍兵士の死体からFADと、自らが愛用する拳銃を拾い、彼等に続く。



「ナタン、どうする? 取り敢えず、今はスパイの振りをするしかないわ」


「…………そうした方が良さそうだ、しかし何《いず》れは、バレるだろうから…………」


 そう話しつつ、オーガーと女性兵士に続いて走る、ナタンとメルヴェ達。



「敵だっ!!」


「撃てっ! ここを通すなっ!」


 敵を発見した、レジスタンスや連合軍兵士たちは応戦してきた。


 彼等は、薄暗い廊下の奥から自動小銃や散弾銃を放ってくる。



 また、それらはオーガーが受け止めてくれたが、ソーサラーは彼の背後に隠れるしかない。


 ナタンとメルヴェ達も、地面に伏せつつFADを撃ちまくる。



「ソムサック、援護するから、そのまま突進してっ!!」


「オルツィ、分かってるぜっ!」


 女性兵士は、オーガーの名前を呼ぶと、幻影で帝国軍兵士たちを複数出現させる。


 もちろん、ソムサックも、二体ほど出現させて、敵に向かって突進させる。




「よし、今だっ!!」


「罠にかかったなっ!」


「んな物が俺に効くかよっ! さあ、かかってきやがれっ!」


 鋼鉄製のドアやドラム缶を、遮蔽物として使用しながら身を隠す、レジスタンスや連合軍兵士たち。


 彼等の激しい銃撃を、両腕を交差させた、ソムサックと呼ばれた、オーガーは真っ直ぐ突進する。



「メルヴェ、今だ…………ここから離れるぞ」


「ええ、行きましょう」


 ナタンとメルヴェ達は、帝国側の二人が戦闘に集中している内に、サッと密かに逃げだした。


 立ち上がった、二人は背後の十字路から右に曲がり、できるだけ銃撃戦から離れようとする。



 彼等が入った通路は、死体がたくさん頃がっており、薄暗い辺り一面が赤と青に濡れている。


 連合側・帝国側と、双方の兵士が戦闘で死亡したからだ。



 こうして、服装が緑と黒の死体が横たわる中、彼等は走ってゆく。



「ナタン、ブービートラップが増設されているはずだわ、これ以上は走るのを止めましょう」


「罠か…………メルヴェ、じゃあーーどうす?」


 メルヴェは、立ち止まると、作動した数々の罠を指差して言った。


 それ等の装置や仕掛けを、ナタンも目にした事で彼も止まろうとしたが。



「走れっ!! 制圧を急ぐんだっ!!」


「毒ガスを使えば楽勝だってのっ!」


「私の炎からは逃げられないわ…………」


 先にある十字路の左側から、いきなり帝国側部隊が現れた。


 連中は、壁《タンク》役であるシュヴァルツリッターを中心にした部隊が突撃する。



 その背後には、グールが青紫色をした毒ガスを撒き散らしつつ走る。


 さらに、もう一人女性ウィザードが右手に青い火炎を纏いながら続く。



 他にも、何人かの兵士が続き、何処かに向かって走っていく。



「行ったわね…………でも、味方からは私たちスパイだと思われているわ」


「しかも、帝国軍からも狙われている…………あと、罠が仕掛けられている」


 ナタンとメルヴェ達は、連合軍側からは敵の潜入工作員だと知れ渡っている。


 また、敵である帝国軍側に見つかった場合も、戦闘は避けられないだろう。



 さらに、ここには多数の罠が設置されてある。



 天井から落下した、トゲ付き鉄球や、深い落とし穴に散弾銃トラップなどだ。


 こうした、多種多様な罠が設置された、通路を走るのは、自殺行為と言える。



 トゲ付き鉄球は、帝国側兵士の頭を潰し、落とし穴を覗き込めば底が見えず真っ暗だ。


 多分、落とし穴の蓋が開いていると言うことは、帝国側兵士が落ちたと考えられる。


 散弾銃トラップに引っ掛かった兵士は、血塗れで壁に背中を預けたまま事切れていた。



「私も疑われていたから、罠の設置場所は教えられてないから、分からないわ…………」


「来た道を戻るか?」


 ナタンとメルヴェ達は、このまま進めば罠により命を落とすだろうと判断した。


 そうして、次に行くべき道を元来た通路と定めた、二人は直ぐに後ろを向いた。



 今の二人に味方は居ない。



 帝国と連合、どちらも敵であり、また通路には罠が設置してある。


 移動するにも難があり、両勢力から狙われる彼等は、ただ困り果てる。



「誰だ、誰か隠れているのか?」


「返事を返せっ! さもなくば撃つっ!」


 ナタンとメルヴェ達は、いきなり声をかけられたので、ビックリした。


 そして、そちらの方を見ると、目映いフラッシュライトで照らされてしまう。



「ぐわ、眩しいっ!」


「ちょっ!!」


 フラッシュライトから浴びせられた発光は、ナタンとメルヴェ達の視界を妨げる。



「不味い、どっちの勢力なんだ?」


「分からない……でも、どっちでもヤバいわよ」


 姿を見せぬ相手による目眩ましに、二人が驚いていると。



「敵発見、射撃を開始する」


「了解、射撃開始します」


 今度は、通路の反対側からも声がしたかと思った瞬間、何発も銃弾が跳んできた。


 そして、自動小銃による小口径弾が暗闇から次々に姿を表し、二人のすぐ側を高速で通過する。



「不味い、不味すぎる……どうにか? こっちだ、メルヴェ」


「こっちって? ナタン……ここね」

 

 ナタンは、近くあったドアを開いて室内へと逃げ込む。


 次いで、メルヴェも彼を追って急いで中に入ってきた。



 しかし、二人が逃げ込んだ場所は、広い洞窟の空間が広がっていた。



「ここは? まだ拡張工事の真っ最中だった区画だ…………」


「気をつけて、ナタン? ここにも罠が張られているはずだからっ!?」


「突入ーー!! この地点を確保するっ!!」


 剥き出しの黄色い土壁や岩柱など、起伏が激しい地形を見ながら、ナタンは呟く。


 メルヴェも、地下空洞に漂う湿気を感じながら、額から冷や汗を垂らしつつ話す。



 しかし、ここにも帝国軍&帝国警察部隊が侵入してきた。


 

 連中は、シュヴァルツ・リッターを二体、オーガーを、三体も引き連れている。


 また、ロシャ連邦特殊部隊などで使用されるVANTーVMシールドを装備した兵士が多数だ。


 シールドからは、何個も取り付けられた、ライトの光が発せられている。



 他にも、様々な兵種が混じり、かなり人数も多い事から、大規模な部隊である事が伺える。



「メルヴェ、あそこの柱に隠れるぞっ!」


「ええ、行きましょうっ!」


 大部隊を前に、ナタンは身を隠すことを余儀なくされ、近くにあった岩柱に走る。


 メルヴェも、間近にあった窪みに飛び込み、姿勢を低くしながら敵の様子を伺った。



 帝国軍兵士たちは、周囲の罠や伏兵に警戒しながら散会し始めた。


 ここも、警戒しなければ、罠に嵌まってしまう可能性があるからだ。



 そして、天井や地面には、多数の伏兵が潜伏しているだろう。



「今だっ! 充分に惹き付けたっ!」


「発射っ!」


「喰らえ、喰らえっ!」


「やはり、奇襲かっ! シュヴァルツ・リッターと軽戦車を前に出せっ!」


 レジスタンス員たちが、彼方此方《あちらこちら》から姿を表すと同時、ロケット弾を撃ち始めた。


 RPGー2、RPGー7、89式火箭筒《かせんとう》などが、敵に弾頭を撃ち込む。



「ぐわっ!」


「ぎゃああああっ!」


「ぐあーーーー!」


「がふ…………」


 四方八方から撃ち込まれた、ロケット弾は敵の装甲や楯を簡単に吹き飛ばしてしまう。


 対する帝国軍も、兵士や小型のロボット戦車などが銃撃しつつ応戦する。



 だが、レジスタンス達は直ぐに何処かへと身を隠してしまった。



 レジスタンス達も、連合軍から供与された武器で戦闘力を強化されていたのだ。


 いくら頑丈な肉体を持つ、帝国のアンデッド兵と言えど、強烈な爆風には耐えられない。



 こうして、先手を取られた帝国側部隊は、多数の死傷者を出してしまった。



「こっちも反撃だっ! フォイアッ!!」


「撃てーー!!」


「射撃準備完了っ!!」


 空中を浮遊する、多数のドローンが潜伏するレジスタンス員を探して飛び回る。


 そして、帝国軍の指揮官らしき兵士が叫ぶと、連中もグレネード弾を発射した。



 自動小銃の下部に備えられた、グレネードランチャーから弾頭が飛ぶ。


 それに合わせて、ロボット戦車からも、軽ミサイルが岩柱に向かって飛ぶ。



 もちろん、それ以外にも自動小銃や分隊支援火器から銃弾が周囲にバラ撒かれる。



「ぐわああっ!!」


「ぎゃっ!!」


「うおっ!?」


 反撃により、放たれた榴弾で、レジスタンス員たちも次々と吹き飛ぶ。


 グレネード弾が岩柱に命中すると、中に隠れていた、白人レジスタンス員が爆発で死ぬ。


 窪みや岩陰に隠れていた、者達も爆風や機銃弾により殺られていく。



 こうして、この広い空間も激しい戦闘が行われる戦場と化した。

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