場違いな青ピエロ少女は、駆け出しながら空中でくるんと、一回転すると、五人に分身した。
「行っくよぉーー!!」
地面に下りた瞬間に別れた、彼女たちは、再び一斉に駆け出す。
そして、レジスタンス側の機銃掃射を回避して、走り抜ける。
地面を、真っすぐ一直線に走っていく者に、天井をすばやく駆けていく者。
右の壁を、ジグザグに動き回りながら近づいてくる者。
左側から、空中を何回も一回転しながら、派手に目立つ行動を取る者。
そして、天井から壁を走り、壁から地面へと、螺旋を描くように走る者。
これら分身により、レジスタンス側を、トリッキーな動きで撹乱する、ピエロ少女。
「誰か、アイツを止めろっ!」
「駄目だっ! 止めらっ!!」
それを食い止めようと、レジスタンス側は、機銃の猛火力で、ピエロ少女を狙いを集中するが。
彼女が、鉄条網やバリケードを飛び越えた辺りで、帝国側が援護射撃を行ってきた。
「ぐわっ!?」
「ぐああああ」
ピエロ少女の後ろに控える、煙幕に紛れた、帝国側部隊は、レジスタンス達を銃撃を加えていく。
それにより、キャリバーM50を構えた、レジスタンス員は一人だけとなった。
こうして、残りのレジスタンス達だけでは、火力不足になり、帝国側部隊に押しきられてしまう。
「これでも喰らえっ!」
「RPGだっ!」
「グレネードランチャーだっ!」
RPGー7・手榴弾・火炎瓶・M79などの武器を、レジスタンス側が持ちだす。
こう言った火器で、帝国側部隊を近寄らせぬべく、連中は諦めず必死の抵抗を試みる。
「今だっ!」
「このっ!」
その後ろでは、追い込まれた、レジスタンス達を挟み撃ちにしようとする二人が存在していた。
それは、銃を構えた、レオとカルミーネ達であり、彼らは曲がり角から身を乗り出して射撃する。
こうして、ワルサーMPとベレッタM12を連射して、敵が後退できぬように制圧射撃を加える。
「おっ? 仲間割れかなぁ~~?」
「それじゃあ、チャンスだっ!」
ピエロ少女の分身も、機銃掃射を、易々と回避しつつ、土嚢に向かって走り抜ける。
彼女達は、五人とも、スローイングナイフを生き残った、レジスタンス員に素早く投げる。
「ぐわっ!」
「あっ?!」
生き残った、レジスタンス員達も、ピエロ少女によるナイフ投げで、次々と殺害されていく。
右首筋・咽仏・額の中心・両こめかみ・心臓・下顎など。
こう言った、場所に次々と、ピエロ少女のスローイングナイフが何回も当てられる。
「呆気ないね~~?」
「そ~~だねぇーー?」
「はっ! コイツは」
「まだ生きが有る?」
「そう見たいだね?」
分身を含めた、ピエロ彼女は、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら自分たちで会話する。
いったい、どれが本物かは分からないが、彼女たちは、レジスタンス達の死体を見下ろす。
「さて、どうしちゃうかしら?」
やがて、幻術を解いて、一つの身体に纏まった、ピエロ少女。
彼女は、そこら中に頃がる死体から唯一、苦し気に呻く、レジスタンス員の生き残りに目を向けた。
「あっはぁーー! テロリストをゲットーー!!」
ピエロ少女は、呻き続ける、レジスタンス員の衣服を調べた。
どうやら、彼は運良く財布に、スローイングナイフの刃が突き刺さっていたようだ。
これにより、心臓にまで、切っ先が達していないことを発見した。
「おい、終わったのか?」
「ん、そだよっ♡」
一人捕虜を確保した、ピエロ少女の元に、グール下士官グールが現れる。
そして、彼は周囲の安全を確保したかと、聞いてきた。
その質問に、彼女は短く答え、足下のレジスタンス員の頭を、ブーツで勢いよく踏んだ。
こうして、捕虜を捕らえた事を自慢した。
「見事に滷獲したよっ」
「うむ、良くやったな」
ピエロ少女と下士官グール達を、取り囲むように、帝国軍部隊が死体を調べ始めた。
オーガーは、レジスタンス員の死体を踏み潰して生死を確認する。
帝国軍兵士たちも蹴飛ばしたり、脈を調べて、死体の振りをした、生き残りが居ないかと探る。
「でっ! そこに隠れているのは誰かな?」
「居るのは分かっている、出てこないのなら手榴弾を」
「まっ! 待てよ? 俺達は味方だっ!」
「変装中の帝国警察隊員だよっ!」
ピエロ少女と下士官グール達が、睨んだ先の曲がり角から声が聞こえた。
その後、ゆっくりと銃を捨てて、レオとカルミーネ達は姿を現した。
「貴様ら、証拠はあるのか?」
「そーーよっ! 証拠は? 証拠っ?」
物陰から姿を見せた、二人を怪しんだ、下士官グールとピエロ少女たち。
彼等は気を抜かず、少しでも、変な動きを見せたらと、警戒していたが。
「証拠はと言われても…………」
「済みませんが、有りません」
レジスタンスの残党だと思われている、レオとカルミーネ達。
信用がない二人は、帝国軍部隊から小銃を向けられるが。
「信じられんな、やはり不意打ちを喰らう前に脳天を撃ち抜くか」
「だよねーー? 私も自爆には巻き込まれたくないしぃ~~」
グール下士官は、二人に右手に握るGShー18の銃口を向けてくる。
ピエロ少女も、両腕を交差させ、手指の間に、スローイングナイフを握る。
周りを取り囲む、帝国軍兵士もまた、険しい表情を銃口と同時に、正面の二人へ向ける。
『…………コイツ等は帝国軍部隊か? 警察部隊なら、話が早いんだが…………』
『…………眠らされるのなら…………まだマシだけど? 撃ち殺されるのは流石に不味いな…………』
同じ帝国警察部隊なら、面倒な説明が不要だなと思う、レオは気まずそうな顔をする。
睡眠薬を噴射する、スプレーを嗅がされ眠らされるのなら、まだしもだが。
組織が違うとは言え、味方に射殺されるのは、洒落にならないと、カルミーネは思った。
「その変で、勘弁してくれ? その悪ガキ共は同僚の部下なんだ」
その時、不意に曲がり角から、妙に落ち着いた、男性が登場してきた。
「はっ! 何者だ貴様、名を名乗れっ!」
「まだ、レジスタンスの生き残りが居たのねえっ!」
武器を、曲がり角の奥に武器を向ける、下士官グールとピエロ少女たち。
だが、彼等の前に、暗闇から現れた人物は、帝国警察に所属する下士官だった。
「味方だと言っているだろう」
徐々に、暗闇から姿を表して、こちらに足音をカツカツと立てつつ近付いてくる、下士官。
その正体は何と、ザミョールだった。
「帝国警察、12管区、第二小隊・隊長ザミョール・コウリコスカヤ」
「どうやら、本当に味方の様だな…………」
「確かに味方のようね?」
両手を、頭の上に掲げ、右手に身分証明書を持つザミョール中尉。
その姿に、下士官グールとピエロ少女たちは、武器を下げた。
「信じてくれたか?」
「武器を下げろっ!」
ザミョールの背後から部下達が、ぞろぞろと出てくると、下士官グールが率いる部隊も銃を下げる。
「隊長、こちらは、ほぼ制圧済みです」
コルト45を両手で握る、略帽を被った、ガリーナ二等兵が暗闇の奥から現れた。
彼女は、背中にPPSh41を背負っている。
「そうか、御苦労だったな」
ザミョール中尉は、後ろへ振り向き、短く答えると、再び前を向き、下士官グールに質問する。
「そいつ等は、連れて行っても良いよな?」
「知り合いか? ならば、取りあえずは味方だと信じよう」
ザミョール中尉が、レジスタンス姿の二人を連れて行こうとする。
それに対して、下士官グールは、レオとカルミーネ達の身柄を引き渡した。
「あんたとは、話し合わなければ成らない事が、沢山あるな?」
「地上で、話の続きはしよう」
ザミョール中尉と下士官グール達は、話し合いは明るく落ち着いた場所で、行おうと決めた。
そう判断した、二人はともに、地上を目指して歩き始めた。
「さぁ、お前ら行くぞ」
「はっ! ザミョール中尉」
「了解、ザミョール中尉」
先頭を歩く、ザミョール中尉の後を追って、レオとカルミーネ達も、スタスタと歩き始めた。
「ドーリス、貴様も来い」
「はいよ、コフマン少尉」
下士官グールである、コフマンは地上に向かう前に副官の名前を呼ぶ。
それに答えた、帝国軍部隊・所属の青いピエロ少女ドーリスも、上官である彼を追ってきた。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!