【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第135話 レジスタンス達の任務は失敗した…………

公開日時: 2024年7月10日(水) 21:45
更新日時: 2024年7月13日(土) 11:46
文字数:3,438


「あっちだっ! 急げっ!」


「向こうの部屋から聞こえたぞ」


「署内に侵入者が出たっ!」


「怪しい奴を捕まえろっ!?」


 二名の警察署員らに、レギナを含む、レジスタンス達も続いて走る。


 その途上、長い廊下を進んでいると、曲がり角や部屋からも警察署員たちが続々と現れる。



「ヤバイわね、このままじゃあ? 逃げらんなくなるわよ?」


「ああ…………さっきの二人組も、先に走って行ってしまったしな」


 ティエンの言葉に隣を走る、ハキムも額から汗を垂らして、焦りつつ答える。



 誰か分からないが、潜入任務に失敗して、早く爆弾を爆弾させたのだろう。


 そのため、彼等五人はドサクサに紛れて、警察署から密かに逃走せねば成らない。



「じゃあ? ここらで私達は逆方向にっ!」


「もちろんだっ! レギナ、リュファス、サビナッ! あっちに行くぞっ!」


 踵を返し、今来た道に戻る、ティエンとハキム達。



「分かったわ、しっかし? いったい誰が、しくじったのよっ!」


「それは、分からん」


「誰だっていい、計画変更して爆弾をアチコチに投げておこう」


「逃走しながら、爆破くらいはしないとね」


 悪態を吐きながら走る、レギナは怒鳴り、リュファスも分からないと困ったように答える。


 ハキムは走りながらも、懐から手榴弾やC4を投げ転がしてゆく。



 ティエンも、爆弾を幾つか走りながら廊下に落としていく。


 こうして、混乱の渦中に包まれた署内を彼等は駆けて行った。



 その後、幸運にも彼等は、無事に駐車場まで、戻ってこられた。



「あっ! あのジープは……コマンドの連中、先に逃げたか?」


 旧ソ連製のGAZー67が、警察署内にある屋内駐車場を走る姿を、ハキムは見た。



「ZILー157も無いわ」


 自分たちが乗って来た、トラックの姿もなく、ティエンも焦り始める。



「いや、待てっ! アレを奪おう?」


「サイドカーが何台か有るわっ!!」


 黒と青に塗装された、ウラル製サイドカーを、リュファスとサビナ達が見つけて走る。



「よしっ! アレで脱出するっ! はっ?」


「居たぞっ!! おい、お前ら、署内が混乱に包まれる中、逃げようとするとは……」


 ハキム達も、二人に続いて、ウラル・サイドカーを目指しつつ走っていた。


 駐車場の脇にある、それ等に乗ろうとした瞬間、後ろから声をかけられた。



「動くなっ!! サイドカーに乗ろうとする理由、それから所属と階級を言えっ!!」


「…………それは」


 帝国警察部隊の下士官らしき、制帽を被る男が怒鳴るように、ハキム達へと告げる。


 それに対して、当の彼は何も答えられず、言葉が口から出ない。



「言えないのかっら?!」


「…………ふぅ」


 一方、奴は複数人の部下を引き連れており、連中は全員が、ハキム達にAK200を向ける。


 なので、仕方がないと思った彼は、ある行動に出た。



「プランBだっ!!」



 今まで、ハキム達は署内の彼方此方《あちらこちら》に、手榴弾と爆弾を捨てて走ってきた。


 本来なら、他のチームも無事に脱出できたであろう時に使う予定だった。



 だが、この場を凌ぐには、今使う他ないと、彼は判断した。



「うわっ! ぐっ!」


「揺れがっ!!」


「何が起きたっ!?」


 警察隊員たちは、慌てふためき、爆発による揺れによろける。



「今だっ! お前ら、先に行けっ!! 俺が援護するっ!」


 ムーディーAKMSを乱射する、ハキムは仲間達を逃がすべく怒鳴る。



「分かった、だが直ぐに来てくれよ、ハキムッ!」


「逃げながら撃つわねっ!!」


 ウラル・サイドカーを運転するリュファスは、スターリングMK5.パラ使用を片手で撃つ。


 一方、側車に乗ったサビナは両手でMP5を構えて、敵を撃ちまくる。



「ハキム、レギナッ! 早く乗ってちょうだいっ!」


 ティエンは、ウラル・サイドカーに跨がりながら二人が来るのを待ち、Vz58ライフルを構える。


 そして、敵に狙いを定めると連射しながら仲間達を呼びつつ援護する。




「今いくっ! レギナ、走れっ!」


「言われなくてもっ!?」


『ドンッ!』


 ティエンが援護してくれている間に、ハキムとレギナ達は逃走しようと踵を返した。


 しかし、運悪くレギナの右足を銃弾が、一発命中して、見事に貫いてしまった。



「…………」


 レギナを撃った女性隊員は、黒い野戦帽を被り、野戦服に身を包んでいる。



「レギナッ!? 早く助けないと!」


「今行くからな、待っていろっ!!」


「痛たた、くっ! 援護するわっ! 二人とも、私は大丈夫よっ!」


 ティエンとハキム達は、窮地に陥った、レギナを助けようと試みる。



「レギナ、諦めないでっ!」


「今助けるからな」


「ハキム、ティエン、私を置いて先に行って、ちょうだいっ!!」


 焦る、ティエンはウラル・サイドカーを、レギナの方へと走らせようとする。


 ハキムも、援護射撃をしながら走って、彼女に近づこうとした。



 しかし、彼女は二人の救助を拒んだ。



「そんな事、出きるわけないでしょっ!!」


「そうだ、仲間を見捨てる真似はしないっ!!」


 威勢よく叫びながら、ティエンはウラル・サイドカーを走らせ、ハキムも乱射を続けつつ近寄る。



「あっちだっ!!」


「見つけたぞっ!?」


 負傷したレギナより、ティエンとハキム達の方が目立ってしまい、敵から銃撃を受けてしまう。


 さきほどの女性隊員だけではなく、何処からか、続々と警察隊員が集まって来ていた。



 彼等は、二人を狙って十字砲火を浴びせるべく引き金に指をかけ続ける。



「二人とも…………ゴフッ!? もう、私はダメなの? ね? だから行って…………」


「…………ぐっ!」


「がっ!?」


 そう言うと、ティエンとハキム達を援護するべく、レギナはコンパウンド・ボウから矢を放つ。


 それらは、警察隊員たちに当たるが、肩や足を射ち貫いただけに終わった。


 彼女の左脇腹からは、真っ赤な血が大量に流れ出ていた。



「くぅっ! 分かったわっ! 先を急ぐわっ!」


「レギナ、最後の手向けだ…………」


『ドンッ!』


 敵の攻撃が激しくなってきた事から、ウラル・サイドカーを急発進させようとする、ティエン。


 その側車に乗り込み、ハキムは帝国兵にレギナが洗脳されないようにと、一発銃弾を放つ。



「ぐ…………」


「ハキムッ!? 行くわよっ!!」


 しかし、ハキムが撃とうとした瞬間、警察隊員が彼の腕を狙撃した。


 それにより、彼は残念だが、レギナの射殺を断念した。



 また、グズグズしている暇はないと、ティエンはウラル・サイドカーを猛烈に疾走させた。



「く、ケホッ! ケホッ! かは…………ぅ?」


 口からも血を流す、レギナは最後の力を振り絞り、敵に対して、コンパウンド・ボウを向ける。


 彼女は、あと一人、敵を射ち殺したら自分も自害する積もりだ。



 レジスタンス員等やコマンドー隊員たちは、潜入などの任務では、全員に毒物が配られている。


 もちろん、自害する時に使うためであり、奥歯などに青酸カリを仕込んであるのだ。



「…………あ、と、一人?」


「そうは、させないわよっ!」


 レギナは、自身に近づいてくる野戦帽を被った、グールの女性隊員を、目に捉える。


 そして、倒れた体を、そちらに向けると、コンパウンド・ボウから矢を射った。



 しかし、背中に銃を背負った女性隊員は、ブラックサーベルを鞘から途中まで抜き、矢を弾いた。



「…………レギナ、久しぶりね?」


「べ、ベー!? ぐ、もう…………」


 近づいてきていたのは、幼馴染みである、ベーリットだった事に驚く、レギナだったが。


 すぐに、彼女は奥歯を噛んで、青酸カリを飲もうとする。



「ハァ~~~~~~!! 青酸カリみたいに甘い桃の香りがするでしょう? 大丈夫、貴女は死なせない」


「うっ!? うぅ…………」


 口からガスを吐いたベーリットだが、とうぜん彼女が喉から出したのは猛毒ではない。


 それは、微毒ガスであり、手足のマヒと睡眠効果が高い物だった。



「誰か、誰か担架を持ってきてっ!!」


「誰かって聞いて、やってきたよ?」


 ベーリットは、衛生兵であるリッチを探すも、残念ながら何処にも見当たらない。


 それで、仕方なく味方部隊員に担架を持ってくるように頼みつつ叫ぶ。



 そこに、カルミーネが現れた。



「カルミーネッ!? テロ……じゃなくて、私達の大切な仲間が死にそうなのっ!! 彼女を背負って、医務室まで運んでっ!!」


「分かった、って、レギナ…………そうか? 君はテロリストに加わっていたと言う話よりっ! 先に運ばないとね」


 ベーリットの頼みに、カルミーネは答えて、レギナを背負って走り出す。


 彼の兵種は、突撃兵であるワーウルフだ。



 よって、人間一人くらい背中に軽々と背負って走るくらい朝飯前だ。



 こうして、負傷者である彼女は医務室&洗脳教育室である、101号室まで運ばれて行った。

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