【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第57話 自宅、高級ホテル、次から次へと忙しい男

公開日時: 2024年7月10日(水) 00:34
更新日時: 2024年7月12日(金) 23:04
文字数:3,623


「行ってしまったわね…………」


「ああ…………そいじゃ俺は医務室に向かう」


 フロスト中尉とフィーン準尉たちが去っていくのを見送った、ミア。


 彼女は一言呟き、その隣に立つ、レオは医務室に向かおうと歩いて通路を目指す。



「じゃ、私は報告書を書いといて上げる」


「済まない、ミア…………」


 背後から声を掛けてきた、ミアに対して、レオは振り向いて礼を言って、感謝を伝えようとする。



「遠慮しないで、負傷者何だからっ! チュッ♡」


「…………!?」


 振り向いた、レオの頬に、いきなりミアは、キスをした。


 驚いた彼は、雪のような真っ白い顔面を紅潮させる。


 さらに、ほんのりとした、ピンク色を顔全体に浮かび上がらせる。



「赤くなって無いで、早く医務室に行かなきゃ駄目だぞっ!」


「ああっ! たく、お前はイタズラ好き何だから…………」


 唇を素早く離した、ミアは目を細めつつ、可愛らしい笑顔で微笑んだ。


 そんな彼女の後頭部に、レオは右手をそっと添えて、頭を優しく撫でる。



「心配してくれて有り難うな、じゃあ俺は医務室に行くよ」


「そう…………じゃあ後でまた第三小隊待機室で会いましょうね」


 別れを告げ医務室に向かう、レオの背中を見つめる、ミア。


 彼女の表情は、凄く寂しそうな顔を浮かべていた。



 一方、その頃。



 フロスト中尉を、後部座席に乗せた、フィーン準尉の運転する乗用車が、街中を優雅に走る。



 ドライエ、ティープ178シャプロン。



 それは、夕闇に包まれた薄暗い市内を、観光でもするかのように低速で走るが。


 両脇を、護衛である、漆黒のLAPVエノク軽装甲車に前後を挟まれて走る。



「中尉…………質問をしても宜しいでしょうか?」


「何だいフィーン? 君が気になった事は遠慮しないで、どんどん聞いて貰っても僕は構わないよ?」


 運転手として、ハンドルを握るフィーン準尉は、バックミラーをチラリと見る。


 後部座席で両腕を広げ、足を組んで寛《くつろ》いだ姿勢のフロスト中尉を確認する。



「では中尉? 何故、こんな時間に帰宅するのですか? 最近はレジスタンスの襲撃の頻度も上がり…………緊急事態に備え、我々警察部隊も常に出動の可能性を考慮し、待機していなければ成らない筈では…………」


「あれっ? 言って無かったけ…………そうか言い忘れていたか? いや実は帝国地上軍のラヴィーネ大佐から直々にホテルで、会食しないかと御呼ばれしてね…………」


 フィーン準尉の疑問に対して、忘れていたかと言って理由を話す、フロスト中尉。



「全く、会食なんて面倒な任務だよ」


「しかし、絶対に行かなくては成りませんよ?」


 フロスト中尉は、ラヴィーネ大佐から会食に呼ばれたのだと答えるが。


 もちろん、会食の後に、夜伽任務が待っている事は、フィーン準尉も分かっている。



「上の命令には絶対服従だし、従わない訳には行かないからねえ、それに装備も人員も融通してくれるって言うしさ」


「それで会食ですか? でしたら、ラヴィーネ大佐と今夜一晩はホテルの一室で御一緒に…………」


 フロスト中尉は、自分より上位の存在である、ラヴィーネ大佐には逆らえないと答える。


 それを聞いた、フィーン準尉は声が小さくなる。



「うーーん…………まあ? そうなるかな」


「そうですよね、上の命令には私達下士官は逆らえませんもの…………」


 フロスト中尉は、上手く誤魔化そうと、なんとか適当に答えるが。


 彼に、好意を抱くように、フィーン準尉は完璧に洗脳されている。



『…………そうは言っても、私の中尉が誰かに取られるのは嫌だわ…………』


 その後ろからでも分かる、フィーン準尉が放つ悲しげな雰囲気。


 そんな彼女の様子に、フロスト中尉は、何と言って良いか分からず黙ってしまう。



 こうして、暫くは気不味で静かな沈黙が続いた。



『…………困ったな? 彼女は嫉妬するタイプじゃ無いからな? だが僕が自分以外の女性と親しくするのが悲しいんだ…………頭の中では上官であるラヴィーネ大佐と仕方無くと言うのは理解出来ても…………』


 フロスト中尉は、曇る車窓の外に見える市内に目を向ける。


 こうして、彼は通り過ぎて行く。町の景色を眺めながら物思いに耽る。



『…………やはり一途な乙女としては上官との会食だから我慢しなければ? 何て言われても理解出来無いよな? そりゃ…………』


 フロスト中尉は、着任早々に学校教師として、潜入任務が決定した際にだが。


 ちょうど、女性教師ネースケンスが結婚して、育児出産の為産休を取った。



 それにより、彼女に代わり、臨時教諭に身分を偽造して、学校に潜入したのだ。



『…………人目見た時から惚れたんだよな? だって大切な…………大切な人に瓜二つだったんだからっ! フィーン、君と出会った時もビックリしたくらいだよ…………』


 その時に、フロスト中尉は、フィーン先生が持つ美しい容姿と声、また優しい性格に惚れた。


 その理由は、彼がまだ若い頃に好意を抱いていた、大切な女性と非常に似ていたからだ。



 彼女を一目みた時、一瞬好意を抱いていた、女性本人かと思ったくらいソックリだった。



『…………待って下さいっ! 待って下さいってばぁーー! …………』


『…………うふふっ! フロストッ! フロストったら? 早く来なさい…………置いてきますわよ…………フロストっ!』


『フロスト中尉っ! フロスト中尉っ!』 …………』


 そして、フロスト中尉は揺れる車内で、全ての記憶を思い出す。


 すでに過ぎ去った過去の想い出を、幼い頃好きだった、彼女との色褪せない綺麗な記憶を。



 だが、彼は突如現実に引き戻された。



「んっ!? ああっ家に着いたのか? さあフィーン準尉…………上がってくれ」


「中尉っ! ドアは私が…………」


 美しい幻想にも似た、物思いに耽る、フロスト中尉だったが。


 突如、聞こえてきた、フィーン準尉の声に驚いてしまう。



「いや、ここは紳士の役割だよ」


「中尉っ?」


 フロスト中慰、自らの自宅に車が着いた事を確認する。


 先に車から降りると、彼は執事のように、フィーン準尉が動くよりも早くドアを開ける。



「姫様、レディーファーストですよ、女性に優しくするのは紳士として当然の義務に御座います」


「中尉ったら、何を言ってるんですか?」


 ふざけて、護衛騎士の如く頭を深々と下げる、フロスト中尉。


 彼の仕草に対して、フィーン準尉は顔を真っ赤にして照れる。



「姫様、私は真剣ですよ?」


 フロスト中尉が、過去を回想している間、車列は何時の間にか、高級住宅街に辿り着いていた。


 こうして、帝国に反逆する一般市民彼から接収した、彼の自宅前に停車した。



 遥か海の向こうにある、アルメア合衆国が存在する。



 あの国とは違って、ハンザ連邦では、各都市・都心部に位置する高級住宅街だが。


 ここには、家屋同士の間に、隙間が全く存在しない。



 その一角に、フロストが所有する自宅は存在した。



 彼が住む家は、趣のある古い住宅で、築年数も長いで有ろう建物であった。



 その住宅周囲を、警察部隊が有する漆黒のLAPVエノク軽装甲車が、二両で停車している。


 また、警察隊員たちが警備に当たり、レジスタンス部隊による奇襲を警戒する。



「ふふっ? フィーン、上がってくれ」


「御命令と有らば…………」


 顔を真っ赤に紅潮させる、フィーン準尉の表情を見た、フロスト中尉。


 彼は、彼女の照れる姿に、微笑みながら自宅へと招く。



「仕方ないですね…………」


 その招待を受けた、フィーン準尉は、紅潮させていた顔を引き締め、命令ならと招待に応じる。



「さぁ姫様、我が城内へ私フロストが御案内致します」


「もうっ! 中尉ったら良い加減にして下さいっ!」


 自宅のドアを開いて、屋内へと、フィーン準尉を招く、フロスト中尉。


 彼等は、二人揃って、邸宅の中に入る。



「ふざけてませんよ、我が姫様? さて、もう少し暗くしましょうか?」


「いや、たく、中尉…………♡」


 フロストはドアを閉めると、電気のスイッチを押して、室内に明かりを灯す。


 そして、フィーンは彼の黒いコートを脱がして、玄関から奥へと向かう。


 次いで、ハンガーラックに吊るしてある、ハンガーに黒いコートを掛けた。



「有り難う、フィーン」


「中尉…………」


 面倒な事を、自らの代わりに行ってくれた、フィーン。


 彼女に対して、フロストは感謝の意を示そうと背後から優しく抱きつく。



 それから、耳元で、そっと感謝の言葉を呟く。



「うぅ…………♡」


「ふふ」


 抱きつかれた、フィーンは再び顔を赤く染めて、自らを後ろで抱く、フロストの両腕に手を添える。



「中尉、いえ、フロスト…………」


「何だい、フィーン?」


 頬を真っ赤に染めた、フィーンは顔を逸らして、恥じらい始める。


 そして、上司であり、恋人である、フロストの名前を呼び何かを頼もうとする。



 それを察した、彼は何を頼もうとしたのかと、優しく微笑みがら問う。



「その…………ベッドに参りましょうか」


「良いよ、君が望むの成ら…………」


 フロストとは、目を合わせず、恥ずかしそうに視線を剃らしながら呟く、フィーン。


 そんな彼女を可愛らしく思い、背後から抱きついていた、フロストは彼女の体を一旦放した。

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