【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第115話 傷つけられた乙女達による復讐の行進

公開日時: 2024年7月10日(水) 10:12
更新日時: 2024年7月13日(土) 11:27
文字数:3,850


「くたばったか…………」


 乗用車に乗り込もうとした、リーカー市長だったが、もう彼女は喋れない。


 そのボロボロに成り果てた、死骸を見て、冷たい眼差しを向ける、イルメラ。



 その瞳に映る物は、かつては市長だった遺体だが、それを見て彼女は何を思うったんだろうか。



 憎しみか怒りか、それとも悲しみか、それは、彼女にしか分からない。



「後は私は大聖堂に向かうわ? 貴方達は別の場所に行くんでしょ」


「そうだな、そっちは任せたぞ」


 事を済ませた、イルメラは、仲間である警察官たちと別れて、一人別の場所へと向かう。



 そこから、離れた場所では、大勢の黒い軍服を着た、女性達が無言で市中を歩く。



 それは、帝国警察隊員の服装をした女性達だ。



 彼女達は、皆無表情で行進する。



 最前列の女性達は、白い文字で我々は勝利するまで復讐を止めない。


 と、書かれた青い横断幕を持ち、それから二列目の女性達は、両手に白いプラカードを掲げる。



 白・黒・灰・茶などと、様々な髪色の女性からなる行進する、復讐者達。


 彼女達は、ケレン大聖堂を目指して、町中を誰に邪魔される事なく行進する。



「そこのデモ隊っ! 止まりなさいっ!」


 その前方からは、警官隊が拳銃を構えて、デモ隊が、大聖堂に近づかぬように警戒していた。



「貴方達…………コレでもまだ私達を撃つ事が出来るのかしら?」


「なっ? お前は警官だろっ!? なんで極右側に着いたんだっ!」


「我々はデモを抑制しなければ成らないのにっ!?」


 デモ隊から列を掻き分けて、真ん中から出てきた、イルメラの姿に、警官隊は驚く。


 そして、彼女はアシンメトリーで隠した顔の化粧をハンカチで拭いて落とした。



 次いで、彼女はプラカードを、堂々と頭上に掲げる。



 祖国よ、私達は一度目は難民達に傷付けられた。



 深く心を抉られた私達を、次は祖国が傷付けようと言うのか。



 そう言う言葉が、白いプラカードの板に、黒い字で書かれていた。


 それは、彼女達の怨嗟と強い憎しみが混じった気持ちを込めた物だった。



「くっ! 下がれ」


 黒い死神天使と化した、復讐の乙女達に威圧された、警官隊は下がるしかなかった。


 やがて、彼女達は行進する速度を上げ、街中を悠々と進む。



 そして、大聖堂に近づくと、一斉に歌を歌い始めた。



「我等はガイエルの黒軍なりっ! ハイアーーホホッ! そして圧政を妥当する、ハイアーーホホッ!」


 彼女達は歌う、かつて存在した黒い死神軍団の歌を。


 最早、誰も彼女達を止める事は出来ない。



 警官隊や軍もだ。



 凌辱され侮辱され侮蔑され、悲しみの底に沈んだ女性達。



 彼女達は産声を上げた。



 死神天使として、行進する悪魔と化して、生まれ変わったのだ。



「修道院の屋根を赤く染め上げよっ! 槍を構え、前進だっ! 修道院の屋根を赤く染め上げよっ! 槍を構え、前進だっ!」


 先程の無表情から一変して、怒り狂った表情となった復讐鬼達。



 誰も、彼女達の行進は止められない。



「アダムが耕し、イブが護る、主よ憐れみをっ! 圧政者は何処に居る?」


 彼女達が探す圧政者、それは、きっと社会の上に立つ貴族のごとき振る舞いをする者達。



 ハンザ連邦・ドイツェル州の左派議員、また彼等に連なる役人だ。


 悪徳商売に励む企業経営者、難民事業で不正な利益を得ている左翼団体構成員であろう。



「我等は、フロリアン・ガイエルとともに前進するっ! 反逆の為にっ! 彼は先陣を切って、前進するっ! 鎧兜を身に付けて…………」


 反逆者として立ち上がった、イルメラを含む、復讐者の軍団。



 彼女達は、誰にも邪魔されず、大聖堂を目指した。



 彼女達による怒りの表情と鋭い眼光。


 その眼力は、道端に隠れた男達を震え上がらせるほど、凄まじい殺気を帯びていた。



 酷い暴行を受け、その復讐を望む事により、心を病んだ女性達。


 彼女達は、死神と化して街中を悠々と進む。



 その恐ろしき姿を、堂々と晒しながら。



「死の天使達は敵地を進みっ! そして悪魔の唄を歌う、復讐鬼はオーデル湖畔の畔に立ち、微かに口遊むのだ」


 イルメラは、黒い死神の軍団に混じり、自身もまた歌う。


 ゆっくりと重々しい足取りで真っ直ぐ前進し続ける黒い軍隊。



 その悪魔たちによる足音は、もちろん世界各地でも鳴り響いていた。


 彼女たちは、灰色の道路を、黒い軍隊蟻が如く染め上げる。



 ハンザ連邦合衆国、ドイツェル州、州都ベリルン。


 フリードリヒスハイン=クロイツベルク区。

 


「我等は何処でも口笛を吹くっ! 我等は何処へでも進むのだっ! 全世界が我等を呪う、また称えようと、一抹の慰みに過ぎないのだ」


 ここでも、悪魔の唄を歌う、狂気を撒き散らす魔女が存在した。



 漆黒の軍服コートを、マントみたいに、彼女は前から吹く風に揺らす。


 同時に、長いシルバーホワイトの髪も、はためかせる。



 その正体は、ラヴィーネ大佐だ。



 彼女は一人、黒衣を纏う軍団の先頭に立ち、気味が悪い半笑いを浮かべて、力強く歌う。



 その後ろには、HK416ライフルを右肩に担ぎ、左手を揺らす女性達が続く。


 彼女と同じく、黒衣の軍服姿をした、女性軍団は列を成して、ガチョウ足行進で歩く。



 その姿は、かつて、第二次世界大戦で、戦争犯罪を多々おこした武装親衛隊を彷彿とさせた。



「我等は何処へでも常に進むっ! そして悪魔が嘲笑うのだ、ハハハハハッ! 我等はドイツェルと仲間の為に戦うっ! ゴミ共は休まずにやってくるっ!


 狂喜に彩られた、ラヴィーネ大佐が嗤うさまを見た者は、おぞましさの余り、背筋が凍るであろう。


 彼女の瞳は、獲物が潜む巣を前にして、笑みを浮かべる獰猛な黒い魔狼を思わせるからだ。



 後ろに連なる女性、いや死の天使達も、皆目を輝かせてともに歌い、街中を歩いた。



「我等は四方で、既に幾多の戦いを終えて来たっ! そして黒い肌を討つ、戦いの準備をしているっ! 親衛隊は休まず戦う、ドイツェルの幸福を妨げるゴミ共が消えるまでっ! 例え部隊が消耗するも、我等が退くことはないのだっ!」


 ここは、フリードリヒスハイン=クロイツベルク区、左翼政党の牙城だ。


 そして、ラヴィーネ大佐が率いる、彼女達が向かう先は、極左政党の事務所が複数存在するビルだ。



「ああーーーー!?」


「ぎゃああああ!!」


『ついに来たぞ…………我々の侵略の日だっ!! Xデーは成功だっ!! ハハハハハハハハハハ…………』


 この日、フリードリヒスハイン=クロイツベルク区では、悲鳴が木霊して止むことは無かった。


 緑の党を始めとする、左翼政党に所属する議員と支持者たちだが。


 彼等は、一部を除き、ほぼ全ての者が、慈悲なき死神たちの群れに命を刈り取られた。 



 ハンザ連邦合衆国、ドイツェル州、ミュンヒェン市、南ドイツェル新聞社前。



「我等は何処へでも常に進むっ! そして悪魔が嘲笑うのだ、ハハハハハッ! 我等はドイツェルと仲間の為に戦うっ! ゴミ共は休まずにやってくるっ!」


「うわぁーーーー!?」


 同日、同時刻、それは、ミュンヒェンでも起きていた。


 地の底から響いて来るような、不気味な歌い声。



 その歌声を響かせる軍団は、南ドイツェル新聞社の事務所に押し寄せた。



 こうして、社内で冷酷無悲な殺戮を楽しむ。



「うわぁぁーー!!」


「きゃああああっ!」


「ぎゃ~~~~!?」


 事務机の裏に素早く隠れた、灰色スーツ姿を着た、男性社員だが。


 その体を、MG3から放たれた銃弾が机ごと貫き、男性を襤褸切れに変えてしまった。



 黒い軍団を侵入させまいと、ドアの後ろに隠れた、女性事務員だが。


 その頭部を、黒い死神が構えるHK416が射出した、弾丸が意図も簡単に貫く。



 そして、廊下を走る、男性編集者は必死で、奥に逃走しようと速度を上げる。


 その背中に向かって、死神三人が構えた、HK416から銃弾が多数発射された。


 これにより、無数の風穴が開いた奴は、前のめりに倒れてしまった。



 死神の軍団は止められない。



 それは誰にもだ。



 ハンザ連邦合衆国、ドイツェル州、ハンブルグ市、左翼党事務所前の路上。



「我等は何処へでも常に進むっ! そして悪魔が嘲笑うのだ、ハハハハハハッ! 我等はドイツェルと仲間の為に戦うっ! ゴミどもは休まずにやってくるっ!」


「あああーーーー!?」


「うああぁぁぁ~~!」


 嘆きの亡霊を思わせる歌声が、街中に響きわたり、何処からでも聞こえてくる。


 その歌声は大きく、殺害される者達が上げる、悲鳴は掻き消されてしまう。



 行軍の途上に居た、アラビ人やアフレア人などは全て、彼女達が処理していく。



 黒い軍団は、今しがた左翼党事務所の人間を全員処理した帰りだった。


 その次いでに、邪魔な難民や移民は排除されている、真っ最中と言うわけだ。



 だが、そこに一人の民族衣装ブルカを纏った、アラビ人少女が居た。


 彼女は親とはぐれたのか、泣き止むことなく喚いている。



 やがて、一人の死神が、そっと少女に近づいた。



「いやっ!?」


 このままでは、自分は黒い死神によって、殺されてしまう。


 そう思い、逃げ去ろうとした、アラビ人の少女。



「えっ?」


 だが、その心配は、理由は分からないが必要なかった。


 死神は、天使のような笑顔で彼女を抱いたからだ。



 黒い死神は、微笑むだけで何も語らない。



 しかし、死神は何故彼女を助けたのだろうか。



「あ?」


 それは、死神が見た、少女の姿にある。



「うぅ?」


 ブルカの下に見えた、少女の薄浅黒い怯える顔には、両親に殴られたであろう、傷が沢山あった。



 その後、列を成した、死神の軍団は街中を狂った哀しい唄を歌いながら、さ迷い続ける。


 また、邪魔者から命を刈り取らんと、大鎌の代わりに銃を担いで進む。



 少女からブルカを剥ぎ取り、黒い制帽を被せた死神は、彼女の手を握り、二人一緒に街中を歩く。



 悪魔の唄を歌いながら。

 面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。


 あと、生活費に直結するので、頼みます。


 (^∧^)

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート