【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第一部 復活した大戦の悪霊たちの宴

第11話 全ての始まり

公開日時: 2024年7月9日(火) 10:57
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:31
文字数:3,767


「次のニュースです、中東地域からの難民がグリシア州の南海岸にボートで漂流して益々増えて来ており…………」


 非常に長い金髪碧眼の美人ニュースキャスターが、モニターに映る。


 知的な雰囲気の彼女が、新しく入った、ニュースを的確に伝える。



 高層ビルの壁面に飾られた、巨大な液晶画面からは、彼女が喋る声を出す。


 その明るい画面に映し出された、ニュースを見ていた、若者は愚痴を吐く。



「はっ! 何が難民だっ! 生活保護たかりの乞食と獣強姦魔の群れじゃねぇかっ!」


 数多く人々が行き交う一通りの中、液晶画面を見詰めていた若者。


 彼は、怒りで拳を強く握り締めて、頭の中で考える。



「俺の給料が安いのも税金が高いのも奴等のせいだっ!」


 彼が立ち止まっていると、道路の向こう側から何やらやってくる。



 街中に響く騒音と、五月蝿い掛け声。


 それと共に、頭に鉢巻きや頭巾を被った異様な集団が現れた。



「もっと難民に支援をっ!!」


「人種差別は反対っ!」


「我々にも人権があるっ!」


 彼等は、怒り声を上げて、道路を埋め尽くすほどの列を作って歩く。


 手には、世界平和や人種差別反対のプラカードを高く掲げる人々。


 彼等は、こちらへと徐々にやって来た。



「ネオナチはこの国から出ていけぇっ!」


「ナチスの子孫は永遠に罪人だっ!」


 道路を埋め尽くす程の大集団に属する人々は、非常に多種多様であった。



 浅黒い肌に、濃い顔の男性。

 黒い肌に、体格の良い男性。

 白い肌に、険しい目付きの金髪女性。

 目元しか見えない、黒いベールで顔を隠した女性。


 ~~と言った、人々が騒いで歩く。



『皆さんっ! 落ち着いて下さいっ!!』


 警官隊が、デモ隊を誘導する。


 その中で、警察官が警察車両として使用されている屋根上部から指示を出す。


 バンの屋根には、手刷りが付いていた。


 そこから、拡声器で五月蝿く騒いでいるデモ隊に警察官は指示を出す。



 デモ隊は、警察官により指示を聞くと、我々は貴様の指示には従えないと怒りだす。


 彼等は、更に騒ぎ、突然暴れ出した。



「ふざけるなっ! このナチ野郎ーーーー!!」


「私達の故郷を滅茶苦茶にした癖にぃっ!」


 難民達と左翼から成るデモ隊、いや、単なる暴徒の群れだが。


 彼等は、プラカードを振り回し、道路脇で警備していた、警官隊に襲い掛かった。



『皆さん暴動は止めなさいっ! 直ちに地面に伏せて抵抗の意思が無いことを示して下さいっ!』


 拡声器を持った、警察官は何とか事態を沈静化させようと叫ぶ。


 しかし、たちまち暴徒の集団と化したデモ隊は言う事を聞かない。



 その中で、誰かが突如、警察官に火炎瓶を投げ始めた。



『うわっ!? あああああぁぁああーー!!』


 拡声器を持った、警察官にも何処からから投げられた火炎瓶が直撃した。


 彼が凄まじいを発して、悲鳴が周囲に木霊する中、他の警官隊にも暴力が振るわれる。


 それは、プラカードや棍棒による単純な殴打だけでは無い。


 火炎瓶や鋭いナイフ等の凶器で、勢いづいた、デモ隊は抗争を始めた。



「やべぇ…………早く逃げなきゃ!?」


 それを見て居た若者は、一言だけ呟くと、デモ隊とは反対の方向に走り出した。



「…………んっ! あれは?」


 反対方向と道路脇のビルからは、重装備に身を包んだ、警察・治安維持部隊が現れた。


 治安維持部隊はデモ隊とぶつかり、激しい戦闘を行い始める。



 彼等は、暴徒鎮圧用の黒いプロテクターを身に付けている。


 頭かには、透明なフェイスシールドの付いた黒いヘルメットを被っていた。


 左手には、透明なシールドを構える。



 武器は、特殊警棒を始めとする様々な物を持っている。



 単発中折れ式、グレネードランチャー。

 ポンプアクション式、ショットガン。


 ~~等と言った、暴徒鎮圧用の非殺傷用武器を右手に装備していた。



「戦争だっ! 遂に、この国も戦争に巻き込まれるのかっ! …………」


 抗争から離れた場所まで、辛くも逃げ延びることができた若者。


 彼は、後ろに振り向いて、先程まで自分が居た場所を唖然と見詰めて立ち尽くす。



「死ねぇーーーー! ナチ公がぁ~~! 俺達の怒りを受けろ~~~~!!」


「今まで我々ティルク人を労働奴隷として低賃金で濃き使いやがって~~」


 難民と左翼から成るデモ隊は、治安維持部隊と凄まじい勢いで激しくぶつかり合う。


 頭から血を流そうと、体中に痣が出来ようと、デモ隊は暴れまくる。



 己の怪我など、お構い無しにナイフや包丁を振り回す、デモ隊・暴徒たち。


 それら刃物を、デモ隊は治安維持部隊員が着ている、プロテクターの隙間を狙う。


 その僅かな隙間から突き刺そうとしたり、突き出したりと派手に振り回す。



「暴動は直ちに止めなさいっ! 差もないと逮捕する」


「止めろっ! こんな事をして何に成るって言うんだっ!」


 治安維持部隊は、グレネードランチャーを発射して催涙弾を放つ。


 次いで、ショットガンの引き金を引いて、ゴム弾を発砲する。



「うわぁーーーー!」


「きゃ~~~~!?」


 激しく衝突するデモ隊と治安維持部隊による衝突で、双方に沢山の死傷者を出す。



 火炎瓶で、体を燃え盛る炎とガソリンに焼かれる警察官。


 デモ隊に、プロテクターの隙間を鋭いナイフで突かれる治安維持部隊員。


 体中から、血を流し倒れる、治安維持部隊員。



 催涙弾を浴びて、両目に手を当てて灰色の道路に倒れる、黒人男性。


 痛みと苦しさに呻き声を上げ、悶える、黒人女性。


 警棒で頭を殴られて血を流す、白人女性。


 目元に紫色の痣が出来て、フラフラさ迷い歩く、アラビ人男性。



 当たり一面は、野火の如く、先程よりも更に激しさを増して、辺りは騒然と成る。



 催涙弾と火炎瓶の煙が辺りに充満して、視界を遮り始める。


 道路上には、双方の倒れた死傷者と流れ出た赤黒い液体が、ドロりと流れる。


 生命の根源である血液が水溜まりの様に、灰色で無機質な道路に染みを作っていた。



 その様は、正に地獄絵図で有った。



 いや地獄ならば、まだましな方だろう。



 ここには、地獄より酷い憎しみと悲しみの連鎖しか無かった。



「こんな地獄が…………こんな物が? メッケル大統領や左翼達がテレビで言っていた難民を助けましょうって事だったのか…………」


 若者は、抗争を安全な遠くから見詰めながら、不意に口を小さく動かしていた。


 彼だって難民や左翼が言っている通り、何も難民全員が憎いわけでは無いのだ。



 悪さをする、難民や移民、そして今のように暴れ回る、極左が憎いワケだ。



『トントンッ!』


「誰っ!? …………」


「…………ひょっとしてデモ隊の仲間か…………それとも治安維持部隊の増援かっ! 俺はどっちでも無いんだっ! ナイフで刺されたり逮捕される何て御免だ…………」


 突然、背後から右肩を叩かれた彼は、一瞬ドキッとして、慌てて背後に振り向く。


 そこには、銀色のドラゴンとドクロが装飾として、施された、黒い制帽と黒い軍服が見えた。



 それ等を着た、謎の男が立っている。



 軍服には、死神の鎌が描かれた白い襟章と、白と青色からなる肩章を付ける。


 左腕には、黒い四角線内に、青色の紋章が描かれた、青い腕章を身に付けていた。



 その腕章には、黒色で✕印型・紋章があった。


 ✕型の紋章には、武器が描かれている。



 右からは、トライデント。

 左からは、デスサイズ。

 右下には、グレイブ。

 左下には、ランス。


 ~~等々が描かれている。



 その後ろには、同じような服装をした男たちが数名存在する。


 更に、大勢の黒いヘルメットと、防弾ベストを着た兵士たちが、大勢隊列を組んでいた。


 彼等は全員、銃剣の付いたAK74自動小銃を構えて、無言で立ち尽くしている。



 男は長身で、ガッシリとした体格に見えるが、同時に、スラリとした、モデル体型体つきである。



 太陽の光に照らされた、雪がごとく光る銀髪と深い蒼眼。


 それに、まるでリップを塗ったような濃い青色の唇。


 そう言った、奇妙だが、非常に整った顔立ちの持ち主だった。



 突然肩を叩かれて、驚きの表情を見せたまま動かない若者だったが。


 彼に対して、口をゆっくりと開いて、謎の男は喋り出した。



「同志よ…………安心したまえ全てのゴミは我々が片付ける…………」


 ニヤリと口角を吊り上げて、不気味な笑みを浮かべる、男。


 彼の口元に、視線を向ける若者だが、この男は警察官では無いとすると、ネオナチかと彼は思う。



「…………あっ!! …………」


 若者が視線を向けた、男の口元。


 そこには、猫や犬のような、ナイフが如き鋭く尖った犬歯が伸びていた。



 この男は人間では無いと、若者は思う。



 彼は後ろに控える、男と似たような格好の部下と兵士達にも視線を向ける。


 コイツらも人間じゃない、そう思った若者は悲鳴を上げる。



「あっ? ああゾンビッ!? 吸血鬼にゾンビだっ!?」


 若者が驚き、硬直したままでいると、男は再び、ゆっくりと低い声で喋り出した。



「さあ同志よっ! 我等ノルデンシュヴァイク帝国は諸君を下らない偽りの平和から解放しにやって来たのだ…………今直ぐに戦争を始め様ではないかっ!」


 男は高らかに宣言すると、腰のホルスターに手を伸ばす。



 そこから、銀色に塗装された、ワルサーやルガーの如く銃身が突き出た、グロック17を取り出す。


 男は拳銃を高く掲げて、難民と治安維持部隊の衝突する中に向けて走り出した。



「遅れるな……我々も後に続くぞ…………」


 副官らしき、若い灰髪で薄紫の瞳をした男は、まるで機械みたいに抑揚が無い声を出す。


 そして、先程突撃していった、隊長の男に続き、兵士達を率い突撃して行った。

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