突如、姿を消した、ナタンとメルヴェ達。
彼等を追っていた、帝国警察隊は二人見失ってしまい、混乱していた。
「野郎…………ふざけやがって」
しかし、ザミョール中尉だけは二人が左側に見える裏路地に入っていったのだと推測した。
そこで、彼はタウラスを路地に入れると案の定、二人が走っている姿を視認できた。
「うわっ! まだ、アイツが追ってきてるぞ、しつこい野郎だっ!」
「しつこかったら、どこまでも逃げてやるだけよっ!」
そう言いつつ、ナタンとメルヴェ達は道路を真っ直ぐ突っ切る。
だが、またしても前方から新手が現れた。
「敵発見、これより攻撃に移るっ!」
「了解、こちらも攻撃するっ!!」
四台のバイク部隊が襲来したかと思えば、いきなり二人を攻撃した。
IZHプラネータ・スポルトに乗った警察隊員は、いきなり射撃を開始する。
バイクの車体両側に上下逆さに備え付けられた、小型短機関銃PPー91ケダールを連射する。
ヴェロモーターズ、ステルス200フレイムに乗った警察隊員も、ハンドルから手を話した。
そうして、すぐさまSRー3ヴィーフリ自動小銃を両手で構えると、一気に連射しだした。
「ヤバいっ! 回避しないとっ!」
「流石に死んじゃうわっ!」
左右に避けるようにして走り、ナタンとメルヴェは攻撃から身を守ろうとした。
そのお陰で、バイク部隊による突発的な銃撃をは回避できた。
「ふんっ! そう簡単に逃げられると思うなっ!」
しかし、ザミョールも、裏路地を抜け出てきて再び追跡に加わる。
さらに、強襲攻撃を避けたばかりのナタンとメルヴェ達に、さらなる驚異が迫る。
カタタタッと、火花を散らす金属音が聞こえたかと思った瞬間、それは二人に襲いかかった。
「…………うらっ!」
「喰らいな」
スズキ・カタナに跨がった、アシュア系で、金髪オールバックの兵士が、鉄パイプを高く掲げる。
デマック・アンダーボーンに跨がった、アシュア系の女性兵士が、細剣フルーレを真っ直ぐ構える。
「ヤバい、回避できっ! がっ!!」
「危な、い…………!?」
鉄パイプは、ナタンの額を右から叩きつけ、血を流させる。
細剣フルーレは、メルヴェの左肩を切り裂き、皮を剥いだ。
カタナに跨がる、兵士は黒いツナギに、銀色の神風特攻隊と卍が描かれた特服を着ている。
茶髪ロングヘアーを靡《なび》かせる女性兵士は、中世風の鎧に身を包んでいる。
二人は、後ろに振り向いて見た、意思の宿らぬ黒い瞳を持つ、帝国側兵士を不気味に思う。
「あんなヤバそうな奴ら、相手していられるかっ!!」
「絶対に逃げ切ってやるわ、絶対にね…………」
そう判断した、ナタンはバイクの速度を上げまくり、敵から離れようとする。
同様に、メルヴェも五台の追跡部隊を相手する気はなく、逃走せんとハンドルを強く握りしめた。
「逃げ切れると思うなっ! まだまだ増援は来るぞっ!」
ザミョールは、強く狼のように、ナタンとメルヴェ達を睨みながら、タウラスを走らせる。
そうして、四台のバイクよりも一気に前へと出た。
「まだ来やがる…………」
「呆れるわよ…………」
ザミョールによる執拗な追跡に、ナタンとメルヴェ達は半ば呆れつつも逃げ切ろうと努力する。
しかし、その時だ。
「喰らえっ!」
急に路地右側から一台のIGパルサーが飛び出し、ナタンに対して長くて黒い棒を振り上げた。
それは、ロシャ警察・交通機動隊で使用される長尺ストレート警棒PUSー900であった。
「うわあっ! 喰らえっ!」
パンッと音を鳴らし、咄嗟に取り出した、MASー1915から一発銃弾を飛ばした、ナタン。
この一撃により、IGパルサーに乗っていた警察隊員は、PUSー900を落とす。
そして、向かいのビル壁に突っ込んでいった。
「不味いわ、横からも奇襲されるなんてっ! でも、よそ見をしている暇はないし…………」
「メルヴェ、今のはヤバかったぜ…………」
サイドミラーを眺めながら、メルヴェは、未だにザミョール中尉が追ってくる姿を確認する。
ナタンは、息を吐きながら安堵する暇なく、バイクを走らせる。
「ふん、このまま射撃で狩ってやる」
ザミョール中尉を中心に、後方から一斉射撃が開始された。
そうして、ナタンとメルヴェ達に再び背後から銃弾の雨が浴びせられた。
「また、銃弾かよっ!」
「ほんと、しつこいわね」
ザミョール中尉たちによる、正確な射撃を避けるべく、ナタンとメルヴェは蛇行運転をする。
それぞれ、彼等はバイクを傾けながら何度も右に左にと回避しながら、スピードを上げる。
そうして、必死に攻撃を交わすので、二人は手一杯になり反撃すらまま成らない。
だが、追跡部隊は気がつかなかった。
「あ、何だ?」
「あっ!」
IZHプラネータ・スポルトに乗った警察隊員は、横から何か来るのに気がついた。
ヴェロモーターズ、ステルス200フレイムに乗った警察隊員も左側から来た物を見た。
だが、既に遅かった。
「追跡を振り切れっ!?」
「やってるとこだっ!」
「あーー! しつけぇーー!」
「とにかく、撃ちまくれ」
連合側部隊のチィーナ製BJ2022勇士に乗った兵士達が、AK47自動小銃を乱射しまくる。
これに、気がついた、二名の警察隊員たちが衝突により、はね飛ばされてしまった。
「ぐわーーーー!」
「あああああっ!」
吹き飛ばされた警察隊員を気にせず、走り続けるBJ2022勇士。
だが、追撃部隊を撃ちまくる彼等を追って、ウラルー4320トラックの巨体が走る。
それにより、アシュア系の兵士達は事故に合わずに済んだが、進路を塞がれてしまった。
彼等は、ウラルが居なくなると、二人とザミョール中尉らが消えた事に気づく。
しかし、追跡しようにも道路に雪は存在せず、何もすることが出来なかった。
「お前ら、運が良いな…………だが、それもここまでだ」
ザミョール中尉は、未だ諦めることなく、執念深く二人を追跡する。
そんな彼の前に、道路が陥没している様子が見えた。
「ヤバッ! 道路がない、下は巨大な穴だ」
「それでも、行くしかないわっ!」
ナタンは前に気を配ると、陥没した道路が見えたが、メルヴェはバイクを止める気はない。
クレーターになっている陥没穴に、メルヴェが突っ込んでいくと、ナタンも仕方なしに飛び込んだ。
「ぐっと、とと…………」
「うわっと?」
前輪から降り立った、ナタンとメルヴェ達はバイクを停めると直ぐに後ろに振り向く。
そうして、彼は、MASー1935を両手で構える。
彼女は、FADで、ザミョール中尉が来るのを待ち構える。
「行き止まりだっ! ん? お前ら…………」
タウラスを宙に浮かせながら、二人を見たザミョール中尉は呟くが。
「喰らえ、火炎だっ!」
「ぐおおおおっ!」
突然、火球が飛んできたかと思った瞬間、それはザミョール中尉に命中した。
彼は、火達磨になる事を恐れ、タウラスから飛び降りた。
主を失った、タウラスは真っ直ぐ走り茶色い岩に激突四散した。
「ぐぅ…………貴様ら、このっ! 制服が台無しだっ!!」
「まだ、アイツは生きているぞっ!?」
「ほっといて、早く行きましょうっ!」
ザミョール中尉は、燃える上着やシャツを脱ぎ捨てて、上裸姿になる。
その胸には、正教会で使用される八端十字架などが、黒いタトゥーで描かれていた。
他にも、肩には肩章、左腕には髑髏、右腕にはキリル文字が隙間なく入れてある。
そして、手や顔など一部を除いて全身に、タトゥーが施されていた。
銃を構えて、彼を待ち伏せしていた、ナタンとメルヴェ達だったが。
二人とも、彼が新手に気を取られている内に近くの路地へと、バイクを捨てて走っていく。
「連中より面白い奴が現れたな…………出てこいっ!」
「いいだろう、正々堂々と勝負してやろうじゃないか」
ザミョール中尉が叫ぶと、茶色い岩が動き、その下から黒人男性が姿を見せた。
彼は、マサイ族らしく、緑色のマントを羽織り、服は真っ赤な民族衣装を着ていた。
武器は、細長い槍を右手に杖代わりに掴んでいる。
「かかってこいっ!」
「いざ、参るっ!」
ザミョール中尉は、腰からNR2ナイフを取り出し逆手に握る。
対するマサイ族の戦士は、長槍を勢いよく振り回しつつ迫ってゆく。
「ああ、味方が戦っているぞ」
「あのマサイ族を撃てっ!」
帝国警察部隊が、IGパルサーに乗って現れると、ザミョールを援護するべく射撃をし始めた。
「させるかっ!」
「やらせないっ!」
ナタンとメルヴェ達は、路地からFADを撃ち、マサイ族の戦士を支援する。
こうして、二人は敵部隊の注意を惹くのだった。
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