【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第7話 警察に逮捕されて?

公開日時: 2024年7月8日(月) 13:46
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:29
文字数:3,050


 サンドラは、ナタンとメルヴェ達の逃亡を手助けしてくれたかに見えた。


 しかし、彼女の親切さに感謝しつつも、突然警察隊員たちの声が響き渡った。



「手を上げたまま、少しも動くなよっ!」


「妙な動きを見せたら、すぐに射殺してやるからな」


「このまま署まで、連行する」


「おバカさん達、帝国側にも協力者やスパイが存在する事を忘れたの?」


 制帽を被った、隊長らしき人物が、ザウエル&ゾーン38Hの銃口を、二人に向けてくる。


 フリッツ・ヘルメットを被る警察隊員は、ワルサーP38を両手で構えている。


 野戦帽の警察隊員は、ワルサーPPを強く握っており、鋭い眼光をしていた。



 他にも、ナタンとメルヴェ達を複数人の警察隊員たちが、UMP45を持って包囲していた。



 そう、レジスタンスに加担する、サンドラの正体は、帝国警察が市中に紛れ込ませた密告者だった。



「クソッ! この裏切り者めっ!」


「いや、最初から帝国側だったのね…………」


「そうよ、私は帝国警察隊員で、貴方たちを捕まえる潜入捜査員なの? クスクス…………まあ、これで、また私は昇進できるわ」


 ナタンは、驚きと絶望の表情を浮かべたが、それを怒りが込もった顔に変化させる。


 メルヴェも、キッとした鷹のような目を、周りを囲む警察隊員たちに向ける。



 サンドラは、二人を見下すように喋りながら、口角を吊り上げ、不気味な笑みを浮かべていた。


 彼女の裏切りによって、彼等が企てた逃亡計画は破綻してしまい、逮捕されてしまった。




「ご苦労、よくやってくれた」


「はっ! このエリーゼ・バーデンッ! 帝国の為なら、身を粉にして働きますっ!」


 隊長に対して、サンドラは冷たい笑みを浮かべながら、本名を名乗りつつ報告を行った。


 この裏切り行為により、彼女は帝国警察では、さらに地位が高くなるだろう。



 だが、それは潜入工作員である彼女に取っては、当然のことだった。


 帝国のために働くことが、彼女が抱く信念であり、自身に与えられた使命だった。



「お前ら、装備を下ろせっ!」


「武器をチェックする」


「分かった…………」


「ナタン? まだ、脱出するチャンスはあるから自決しないでね?」


 隊長は、ザウエル&ゾーン38Hの銃口を、二人に向けたまま、怒鳴りながら命じる。


 フリッツ・ヘルメットの警察隊員は、敵が反撃してこないように警戒する。


 野戦帽の警察隊員は、リュックを取り上げつつ、体をタッチして、隠し武器がないか調べた。



 その後、ナタンとメルヴェ達には、手錠が嵌められた。



「ああ、メルヴェ…………今は大人しくするよ」


「喋るなっ!!」


「さあ、外にトラックが停まっているわ? そこまで、一緒に行きましょうか」


 ナタンは、後頭部から、野戦帽を被る警察隊員によって、ワルサーPPのグリップで叩かれる。


 その背後では、エリーゼが上機嫌で、嗤いながら歩きだす。



「いやあ~~? ラッキーだったわ、あと少しで、軍に手柄を取られるところだったからねぇ~~?」


 教会の外に出た、彼等を出迎えた車両は、黒いウラルー572060警察仕様型トラックだった。


 エリーゼは、二人を帝国軍に渡すよりも、自身が所属する帝国警察に身柄を拘束させようと考えた。



 それは、二つの組織が対立しており、彼女は自分が属する側に、渡した方が得だと思ったからだ。


 ナタンとメルヴェは、このようにして、裏切り者として、行動する彼女による罠に陥った。



「ナタン? いよいよ、ヤバくなったわね」


「だが、どうしようも無い…………」


 ナタンとメルヴェ達は、帝国警察に捕まるという運命をたどった。



「えっと? その人達を解放しろと、大尉から言われました」


「えっ? 何故にっ? せっかく、捕まえたのにっ!」


 黒いウラルー572060警察仕様型トラックの側面にあるドアが開いて、中から将校が出てきた。


 すると、彼の口からは、ナタンとメルヴェ達を解放しろと言う、信じられない言葉が出た。



 予想だにしなかった発言に、二人を捕らえた功労者である、エリーゼは驚く。



 しかし、その理由は直ぐに分かった。



「ソイツらは、帝国軍のスパイなんだよ? テロリスト側に潜入しているんだと」


 ドアの奥から、将校らしき人物が出てきて、二人が味方組織に属すると、面倒そうに説明した。



「なっ! 何ですってっ!?」


「…………いや、実はテロリスト側に潜入中だから、他の敵や民間人から怪しまれないように、芝居を演じてたんだ」


「そうよっ! それに、下手に暴れたりしたら、アンタ等から撃たれちゃうし」


 語られた情報を聞いて、またもや、エリーゼは驚いて叫んでしまう。


 ナタンとメルヴェ達は、その言葉が事実だと言って、苦笑いや疲れたような表情を浮かべる。



「…………と言うわけだ? うちの者が済まなかったな?」


「申し訳ないですわ、まさか味方だったなんて、思わなかったものですから?」


「別にいいさ、それより、拘束を解いてくれないかな? もう、これは必要ないだろ」


「組織が違うとは言え、味方同士だし、私達は気にしないわ」


 将校とエリーゼ達は、ナタンとメルヴェ達に謝罪は言葉を述べる。


 それに対して、二人は気分を害することなく、笑顔で答えた。



「まあ、謝罪の代わりに、ジュビレ通りにある調剤薬局にまで運んでくれないか? あと、適当に顔や体を殴って、怪我をさせてくれ」


「そうして、痣でも作っておかないと、テロリストや民間人からは怪しまれるし? 降りる時は、後部ハッチから私達をゴミのように投げ捨ててね?」


「分かりました…………我々、警察部隊も喜んで協力しましょうっ! さあ、こちらへ」


「本当に申し訳ありませんでしたっ!!」


 頭を下げながら、将校は荷台内部へと、ナタンとメルヴェ達を案内する。


 エリーゼも、まだ謝罪しながら、二人の手を引っ張って、車内に入るのを手助けする。



 こうして、幸運なことに、警察内部にいる協力者の手助けで、彼等は潜入工作員だと勘違いされた。


 しかも、それにより、無事に解放されるどころか、目的地まで運んで貰う事となった。



「じゃあ、頼むよ? 出発してくれっ!」


「賠償の代わりに、タクシーになってね~~」


「分かりました、出発しろっ! 目的地は、ジュビレ通りの調剤薬局だ」


「了解しました、今から走らせますね」


 車内左右の座席に、警察隊員たちが座ると、ナタンとメルヴェ達も、そこに腰を下ろした。


 右側に座った、二人の対面には、将校とエリーゼ達が居て、彼等は黙っていた。



 内部協力者の正体も不明なまま、誰を信じれば良いか、今は分からない。


 この状況に、彼等は焦っていたが、暫くは荷台で体を揺らされる他ない。



「はあ? これで、秘密基地までは帰還できる」


「戦場で、タクシーが見つかるとはね…………」


 ナタンは、何気なく呟きながら、帝国軍スパイの振りを続ける。


 メルヴェも、薄暗い車内で、背中を壁に凭れかけながら、体中から力を抜きつつ話す。



 こうして、彼等を乗せた、黒いウラルー572060警察仕様型トラックは街中を走っていく。


 それから、長い間、二人は警察隊員たちとともに、過ごす他なかった。




「まもなく、目的地の薬局に到着します」


 運転手は、二人の目的地に近づきつつある事を、落ち着いた口調で語った。



「ようやく、目的地に着くのか? じゃあ、取り調べを受けた民間人が、ボコボコに殴られたようにしてくれ」


「そうじゃないと、彼方さんから疑われちゃうからね」


「では、行きますよ? お前ら、やれっ!!」


「任務のためですからね…………やりまわすわっ!」


 車両が止まると、ナタンとメルヴェ達は立ち上がり、眼を強く瞑った。

 

 そして、将校とエリーゼ達が拳を構えた瞬間、全員に凄まじい衝撃が走った。

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