帝国軍は、大兵力を宇宙や異次元から援軍として、呼び寄せた事で大勝利を果たした。
「お姉さま、他の女性兵士も連れてきました」
「ふむ? ならば、あのトラックまで運ばせろっ!」
サングリーズルは、ラーズグリーズルに味方部隊が到着した事を知らせる。
そうして、デーモンの飛行編隊を見ると、黒網をワルキューレ達が、四人で運ぶ姿が視認できた。
その隙間からは、黒いバブルラバーが垂れているが、千切れ落ちる事はない。
「うぅっ! が、ぐぁ」
「うう~~? ぐぇ」
弱毒性&媚香性のある、バブルラバーに浸された、女性兵士たちは、何もできず呻くしかない。
少しの苦しみと悦楽を同時に与えられた、彼女たちは、公園に下ろされていく。
「彼女たちも運ぶように命令しろっ!」
「ははっ! 雑用は、お任せあれっ!」
ラーズグリーズルは、フロスト中尉に尊大な態度で命令する。
「おい、聞いたな? みな、デーモン部隊の方々を手伝うんだっ!」
フロスト中尉の命令により、各隊員たちは、素早く、女性兵士たちを連行していく。
走り回る隊員には、さきほど洗脳されたばかりの元連合側兵士だった者も存在する。
「おっ! 今度はカスマナーフト部隊が来たぜ? 今度は、どんな無茶な命令を下すのやら?」
「さあな、しかし我々自身には命令に従う他、選択肢がないよ」
ザミョール中尉は、フロスト中尉とともに別の味方精鋭部隊が、こちらに向かってくる姿を見た。
そして、ジェットパックを背負った、カスマナーフト&フョードル部隊が降りる。
「宇宙軍歩兵、第二大隊長のユーリー・クリカレフ少佐です、こちらに師団長は居ませんでしょうか?」
ユーリー少佐を名乗る人物は、フョードルを二体も引き連れて歩いてくる。
彼の青みがかった、透明なバイザーには、乾燥して、ミイラ化した顔がある。
それも、最早骸骨と言えるくらい、痩せ細った恐ろしい容姿をしていた。
しかし、その容姿とは裏腹に礼儀正しく、フロスト中尉とザミョール中尉たちに話しかけてきた。
「済みません、我々も下士官ですから、何処で高級将校が陣頭指揮を取っているかは分からないのです」
「そうでしたか? では、我々は命令があるまで、こちらの公園で待機させて貰います」
フロスト中尉の説明を聞いて、ユーリー少佐は、バイザーを上げると、頭を人差し指でかく。
「分かりました、我々も何か有れば手伝いましょう」
「あのーー済みませんが? 警察部隊は引き上げるように命令されました」
フロスト中尉は、上級兵士部隊に恩を売ろうとしたが、そこにカピトリーナが現れた。
「手柄を、軍部が独占する気か?」
「まあまあ、そう愚痴るな」
ザミョール中尉は、両腕を組みながら悪態を吐くが、フロスト中尉は仕方がないと呟く。
「…………と言う訳ですから、我々は失礼させて頂きます」
「了解しました、我々が後を引き継ぎましょう」
申し訳なさそうに話す、フロスト中尉に対して、ユーリー少佐は快く応じた。
「オレッグ、ワレリー、我々は艦隊が移動するまで地上を警備するっ!」
「分かりましたっ!」
「了解ですっ! 少佐殿っ!」
ユーリーは、部下を呼ぶと公園に、カスマナーフト&フョードル部隊を展開させる。
その命令を聞いて、オレッグと呼ばれた兵士は、ビームガトリングを抱えて飛んできた。
ワレリーも、ロングレーザーライフルを構えながら周囲を警戒する。
「ユーリー少佐、私達も暫くは待機する」
「ラーズグリーズル隊長、分かりました」
ラーズグリーズルとユーリー少佐たちは、二人とも知り合いらしかった。
きっと、同じ宇宙軍部隊に所属しているのだろうと、フロスト中尉たちは判断した。
「さて、我々は退却する、ブハンカに向かおうか?」
「了解しました、中尉っ!」
「俺たちも引き上げるっ!」
「了解です、全員に通達してきます」
フロスト中尉は、ネージュ準尉に命令しながら、ブハンカに向かう。
ザミョール中尉とカピトリーナ達も、いったん大聖堂へと歩いてゆく。
「ねぅ? ナタン、これで私達も安全になったしぃ~~♡」
「分かってる、今は言わなくてもいい」
「イチャイチャしやがってっ!」
「はぁ…………アンタら、邪魔よ?」
メルヴェは、ナタンの左腕に絡み付きながら、キャッキャウフフと愛嬌を振り撒く。
しかし、そこにザミョール中尉とカピトリーナ達が現れると、二人の行くてを塞ぐ。
「お前ら、あの時は良くも俺を攻撃しやがったな?」
「あの? それは…………」
「申し訳ありません、任務でしたのでっ!!」
追撃してきた、ザミョール中尉に対して、二人は背後から拳銃を向けた。
狼化した、彼を前に、メルヴェは縮こまり、何も言い返せなくなってしまう。
萎縮する彼女を庇おうと、ナタンは一歩前に出た。
「任務だと、それで俺が死んでたら、どうする積もりだった?」
「どうも、こうも、ありません…………自分は任務を完遂するだけです」
胸ぐらを掴んだ、ザミョール中尉は、ナタンの顔に鋭い眼孔を向ける。
彼の目には、まるで意志が宿って無いように見えた。
「ぐっ?」
「ふん、まあいいっ! その忠誠心に免じて、今回は赦してやろうっ! カピトリーナ、行くぞっ!」
「了解で~~す、中尉」
ナタンを離した、ザミョール中尉は部下である、カピトリーナを引き連れてゆく。
「ナタン、大丈夫だったか?」
「怪我は無いかい?」
「ナタン君、怖くなかった」
「あの人、凄くヤバいでしょう」
ナタンを心配した、レオとミア達が走って来ると、彼に優しい言葉をかけてきた。
カルミーネとベーリット達も、彼へと急いで駆け寄ってきた。
「いや、心配は要らんよ」
ナタンは、ネクタイを閉め直しながら顔色一つ変えずに返事する。
「かなり、ヤバい奴だったな? スペツナズやFSB上がりか?」
「あの人、色んな噂があるからね? オモン、ソーブル、ヴィンペル、ワグネル…………いったい、何処に所属していたのやら?」
「他にも、候補としては? チェーカー、スメルシ、KGB、GUR、モングル組、オリガルヒ…………」
キーランは、狼化するザミョール中尉が元々所属していた部隊は、いったい何だろうかと考察する。
レギナも、正体不明な上に、経歴も不透明な人物だと評する。
さらに、他の組織名をハーミアンは上げるが、どれが当たりかは全く分からないままだ。
「もしかしたら、コンニ・グループか? それとも、ホテル・モスクワかもな?」
「いや、超国家主義派《インナー・サークル》? または、ターミナス・アウトカムズかもな」
「それ全部、架空の組織だろ…………」
レオは、ふざけて答えると、カルミーネも架空の社名を上げ続ける。
そうやって、アホを言い続ける二人に対して、キーランは呆れながら、ツッコミを入れた。
「貴方たち、ふざけている暇があるなら、撤収準備に移りなさいっ!」
いつまでも、ふざけ続ける部隊員たちを、ネージュ準尉は注意した。
「済みません、今すぐ動きますっ!」
「申し訳ありませんっ!」
「早くしないとっ!!」
「もう一回、怒られちゃうわっ!」
レオとカルミーネ達は走りだし、ミアとベーリット達も、素早く動き出す。
そうして、彼らは、サント・デュギュ広場に止めてある車列の黄色い車両に向かう。
「みんな乗ったか?」
「全員、乗ったわよ」
カーキ色のフィアット508CMコロニアーレに乗り込んだ。
レオ、カルミーネ、ミア、ベーリット達が座席に座ると、レギナとハーミアン達は荷台に乗り込む。
牽引された、二人が乗る席には多数の銃器が立て掛けられていた。
パラドーD付きのタンタル、ベクターR5、キアッパ・トリプルスレット散弾銃。
また、床にも武器が設置されていた。
H&K、MG4分隊支援火器、ステアーF90、ディマコC8SFWなどだ。
「武器も積んであるな? よし、カルミーネ、出せっ!」
「あいよっ!」
レオは、牽引された荷台に積んである武器を確認すると、カルミーネに車を発進させるように頼む。
これらの銃器は、潜入工作時に使用していた物だ。
「ナタン、私達も行くわよ? 安全運転で頼むわ」
「ああ、任せてくれ」
黒いアグラレ・マルア軍用ジープに、メルヴェとナタン達が乗り込むと車は発進する。
後部座席には、ハルドル・ティエン・ジハード、ファン達が乗っている。
「後ろは、キーラン達か?」
車を走らせて、ミラーをチラリと見た、ナタンの目には、青いアグラレ・マルアが入る。
そちらは、キーランが運転席に座り、シモーネが助手席に座る。
後部座席には、ベッキー・ブルーノ・カディア・イッセン達が乗っていた。
こうして、彼らは警察署まで帰途についた。
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