ここは、ベルギュー州、州都ブリューセル。
かつて、そう呼ばれた場所だ。
週末世界のように、灰色雲が空を覆う中、街中には怪しい雰囲気が漂っていた。
「奴らだ…………」
イポカンプ通り、薄暗い屋内の中で、密かに蠢く影が、一つあった。
「メルヴェ、来たよ…………」
「分かったわっ! ナタン」
茶髪で、青目の青年は、建物内からBTRー80装甲車が近づいてくる音を聞いて、準備する。
湿っぽい室内から、もう一人、黒髪ショートヘアで黒みがかった瞳の女性が窓に近づいた。
二人とも、緑色のコートを着ており、ただ、静かに敵を待つ。
その背中には、リュックが背負われている。
「爆発したっ! 今だっ! 火炎瓶投下っ!」
「これでも喰らいなさいっ! タンデム弾よっ!」
BTRー80装甲車は、路上に仕掛けられた即席爆弾により、派手に車体を舞いあげる。
その後ろを走っていた、同じ車両も火炎瓶により、視界を炎で塞がれてしまう。
また、対戦車用武器であるRPGー7から発射された、タンデム徹甲弾が車体を貫いた。
直後、激しい爆発が起こり、この車両も粉々に吹き飛んでしまう。
「敵襲っ! 反撃しろっ! 歩兵部隊は降車するんだっ!」
黒いフリッツ・ヘルメットや防弾ベストを身に付け、野戦服を着た帝国軍隊長は叫ぶ。
すると、残り二台のBTRー80装甲車からは、素早く帝国軍兵士たちが降りてきた。
そこを狙って、四方八方からレジスタンス部隊が、銃撃を仕掛ける。
青白い肌の帝国軍兵士たちは、まるで死人みたいに不気味な顔をしている。
それに、弾を何発か喰らっても気にせず、腰だめで、AK74を撃ちまくってきた。
レジスタンス側の放つ銃弾は、確実に帝国軍兵士を貫いている。
だが、ターミネーターを相手しているように、あまり効いてないように見える。
「火炎瓶だっ!」
「フラグもっ!」
「ぐあ」
「が……………」
建物二階の窓や、三階屋上から、レジスタンス部隊が矢継ぎ早に武器が投擲される。
落下していく、それらは帝国兵たちを焼き払い、爆散させてしまう。
「ん…………この音は? 不味い、戦闘ヘリだっ!! 撤退しようっ!!」
「向こうで、緑の信号弾も撃ったわね? じゃあ~~最後に、ここも焼き払うわよ」
五月蝿いプロペラ音を聞いた、ナタンと言われた白人青年は直ぐに逃げる準備に移る。
メルヴェと呼ばれた、女性レジスタンスも、床に撒かれていた灯油に着火したマッチを投げつける。
それは、燃え広がり、火の海を作り上げる。
「突入っ! GOーー! GOーー! GOーー!」
「ストーイッ!! ダスビダーニャッ!!」
屋内に侵入してきた、帝国軍兵士たちは、AK74を乱射しまくる。
だが、炎の影から床に身を伏せた、ナタンとメルヴェ達も、AKMとAK47Sで反撃する。
「ぐふっ!」
「うわ、あ?」
二人の放った銃弾は、防弾ベストを貫通して、帝国兵たちに何発も弾丸を浴びせた。
それにより、帝国軍を撃退した二人は地下室への入口に飛び込んだ。
「メルヴェ、今爆破するぞ」
「分かったわ、やって頂戴」
ナタンとメルヴェ達は、地下道を走っていき、仕掛けられていた、C4爆弾を起爆した。
これで、入口は完全に土砂で覆われてしまい、帝国軍部隊の追跡を不可能にした。
「ナタン、帰るわよ」
「ああ、行こう…………俺達のアジトに」
メルヴェは、AK47Sのスリングベイルを右肩に背負い、先に地下道を歩いていく。
その黒いショートヘアを後ろから見ていた、ナタンもAKMを抱えたまま一歩進み出す。
二人は、レジスタンス組織の一員であり、終わりなき戦いに身を投じている。
現在は、ノルデンシュヴァイク帝国により、州都ブリュッツェルと言われる場所で戦っているのだ。
帝国は、異次元からの侵略者であり、圧倒的な科学力と軍事力を誇っていた。
2015年。
帝国軍の総攻撃により、難民危機を迎えていた、EU軍&NATO軍は完全に瓦解した。
逆に、北アフレアを目指して、地中海から船舶で、難民を引き連れて撤退していった。
帝国軍は、各地で極右勢力&ネオナチの協力により、逃げ送れたEU軍を各個撃破した。
破竹の勢いで、進軍した後はレジスタンスが組織されたが、帝国警察により掃討作戦が開始された。
EU軍残党と民間義勇兵からなるレジスタンス部隊も、次々と帝国警察に狩られていった。
だが、それでも人々は希望を捨てなかった。
二人が、少し広い空間に出ると、右側の地下道へと歩いていく。
「こっちで物音が聞こえた気がする?」
「行って見よう、まだ敵が潜んでいるかも知れない」
「追っ手だわ、私達を探しているわ? いえ、どうやら既に片付けた見たいね…………」
「先回りされていたのか、こっちだ、身を隠すぞっ!」
制帽を被る帝国警察の隊員たちが、二人に気がついたらしく、前方から段々と近づいてくる。
そんな中、ナタンとメルヴェ達は、レジスタンス仲間達の死体を見つけた。
「どうだ、誰か居ないか? 誰だっ!」
「敵かっ! 射殺するぞっ!」
長身の警察隊員は、グロック18拳銃とライトを敵に向かって、素早く構える。
ガタイの良い警察隊員は、フランキ・スパス15散弾銃を両手で持ち上げた。
「撃つなっ! 帝国軍部隊だ」
「テロリストを追ってきたんだ?」
だが、見つかったのは、前方から現れた帝国軍兵士たちだった。
「こっちは、掃討が終わってる、このまま捜索しても無駄だろう」
「我々が、チェックしたが逃げていた連中は、この様だよ…………」
「分かった、我々は帰投する」
「そっちも、索敵任務は終了だろう」
長身の警察隊員が、銃を下ろしつつ歩きだし、ガタイが良い警察隊員も散弾銃を背中に背負う。
すると、若い帝国軍兵士は踵を返して進み始め、もう一人の帝国軍兵士も後に続く。
「奴ら、行ってしまったな?」
「私達も行きましょう」
ナタンとメルヴェ達は、地下道の脇に死体に重なるようにして、身を隠していた。
そして、危機が去った今、二人は再びアジトへの帰還ルートへと向かっていく。
縦横無尽に掘られた地下道は、中世から現在に至るまで様々な理由で作られた物だ。
大戦時には防空壕として、平時には密輸品の貯蔵庫を隠すために様々な勢力が作った。
現在も、レジスタンス員が隠れ家にしながら坑道を広げている。
「この先を降りれば、次の道に行ける」
「そうね、先に行くわっ!」
ゆっくりと、地下道を進んでいた、ナタンの前に大穴が現れた。
メルヴェは、飛び降りると同時に周囲にAKMの銃口を向ける。
「敵は居ないわ、大丈夫よっ!」
「分かった、こっちも降りる」
メルヴェは、前方にAK47Sを構え続けながら、ナタンを呼ぶ。
暗闇の中に広がる黄色い土壁を、二人は見ながら奥へと前進していく。
眼前に広がるのは、何処までも続いるように見える地下道だけだ。
気を抜かず、早歩きで動いていた彼等だが、急に左右の壁が爆発して襲う。
「うわっ! なんだっ!」
「敵襲よっ! 反撃しなきゃっ!」
どうやら、帝国軍が罠を仕掛けていたらしく、二人は不意討ちを喰らってしまい、吹き飛ばされる。
尻餅を突いた、ナタンは直ぐさまAKMを持ち上げ連射しまくる。
メルヴェも、左右に銃口を揺らしながらAK47Sを大口径弾を撃ちまくった。
当然、向こうも壁に身を隠しながら、AK74やH&K416と言った、自動小銃を乱射してきた。
「引っ掛かったぞ、敵は二人だけだっ!」
「すぐに殲滅してやるからなっ!!」
帝国軍部隊が、ナタンとメルヴェ達に銃弾を浴びせようとしてくる。
連中が放った弾丸は、二人を蜂の巣みたいに貫かんと大量に跳んでくる。
「不味い、喰らえっ!」
「な、煙がっ!」
このままでは、撃ち殺されてしまうと判断した、ナタンは発煙弾を投げた。
それにより、帝国軍部隊の視界は遮られてしまい、二人は身を隠すことに成功する。
「メルヴェ、今のうちに投げるぞっ!」
「分かってるわっ! 行くわよっ!」
ナタンは、素早く着火した火炎瓶を投げつけて、地面に炎を広げる。
メルヴェも、手榴弾を二個も転がして、敵の眼前で炸裂させる。
「うわああああっ!!」
「ああーーーー」
「ぎゃあっ!?」
「うああぁぁぁぁっ!」
この結果、帝国軍部隊は、火炎と爆風で一気に殲滅されてしまった。
「なんとか、助かったか?」
「そうね、早く行き?」
「あっちで、銃声がしたぞっ!」
ナタンとメルヴェ達が、ホッと息を吐くことが出来たのも一瞬だけだった。
なぜなら、後方から帝国側の追跡部隊が差し迫っていたからだ。
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あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
⭕️ 帝国軍&帝国警察に関して。
モデルは、ナチス・ドイツの国防軍と武装親衛隊ですね。
この作品で、帝国は様々な国をモデルにしました。
ナチス+ソビエト連邦+現代ロシア。
この中でも、特に装備や兵器に関しては、現代ロシア軍やスペツナズ寄りになってます。
まあ、その辺りは御了承ください。
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