ガブリエル・プティ通りでは、レジスタンスと帝国軍部隊による激しい戦闘が発生した。
また、投げられた幾つかの発煙弾から白煙が、空へと登っていくが、視界を遮るほどは出なかった。
「うわあーーーー!?」
「ぐああああっ!」
Tー80U戦車による砲撃で、また左側の屋根から銃撃していた、レジスタンス員が吹き飛ぶ。
地上にも、左右に並んだ、車両の陰に隠れつつ、帝国軍部隊が展開してきた。
「うわっ! メルヴェ? この先に行くのは危険だっ!」
「私も、そう思う? それに、銃に弾が無いし…………」
レジスタンス員たちは、Tー80U戦車の砲撃によって、次々と倒れていった。
BTRー80装甲車からも、PKVT機関銃とPKT機関銃により、大口径弾と機銃弾が放たれる。
ナタンとメルヴェ達は、アシュア系レストランの中で、密かに行動しようと話し合う。
しかし、彼女が両手に握る、ランゲンハン拳銃は弾丸が空になっており、もう戦闘で使えなかった。
「仕方ないわ、今から装備を出すけど、ここは強行突破する?」
「ああ、そうしよっ!? どうやら、それしか道は無くなったようだ…………」
メルヴェは、屈みながら床に置いた、リュックから自分の装備を取りだそうとした。
だが、ジュビレ通りを左右両側から挟むように、帝国軍の車両部隊が現れた。
それを見た、ナタンは頭を下げて、アシュア系レストランの壁に身を隠す。
どうやら、四台の軍用車両が応援に駆けつけて来たようだ。
正面には、ヴォルク歩兵機動車が二台、後ろ側からは、イヴェコLMV軽装輪装甲車が二台もある。
「不味いな、こっちに気づいて無いと良いが?」
「大丈夫よ? それより、どうする? 戦うのは無理があるわ」
ヴォルク歩兵気動車からは、M4カービン&グロック17カービンを装備した、歩兵が飛び出た。
連中は、向かい側の建物へと、銃を撃ちながら素早く移動していく。
イヴェコLMV軽装輪装甲車からも、黒いベレー帽と、ブルータイガー迷彩服の兵士達が現れる。
奴等も、AK74MやAK15Kを構えつつ、アシュア系レストランの上部を撃ってきた。
「ヤバイ…………まさか、俺たちの存在が、バレてるのか?」
「いえっ! どうやら、上に誰かが居る見たいだわっ!」
ナタンとメルヴェ達は、屋内で身を屈めたまま、ひたすら息を殺して、姿を隠すことに徹した。
「うああああーーーー!?」
ブルータイガー迷彩部隊に撃たれた、白人レジスタンス員が、叫びながら地上へと落下してくる。
一方、連中は血と穴だらけに成った、死体を気にしないで、アシュア系レストランの前を通った。
「連中、自動車を盾にしながら、撃ち合う積もりだ」
「私達が、背後から援護するしかないわね? はぁ~~」
ここを越えなければ、目的地までは向かう事ができず、しかも迂回ルートは使えない。
何故なら、援護射撃を任された軽機関銃手や、分隊支援火器手が、軍用車両の方に残っている。
また、彼等を倒したり、アシュア系レストランの奥から隠密行動しても、そこには行けないだろう。
何故なら、二人が向かうべき先は、Tー80U戦車が陣取る場所にあるからだ。
「拳銃より、こっちねっ! 喰らいなさいっ!」
「ぎゃああっ!」
「ぐわあっ!?」
「メルヴェ、勝手にっ!?」
「後ろからだっ!! 撃ち返せっ!!」
「目標、あの二人に集中しろっ!!」
メルヴェは、店内から飛び出し、路上に倒れた、レジスタンス員の死体から武器を手に取った。
次いで、転がりながら、M16A1を彼女は、弾倉が空になるまで連射させまくる。
こうして、RPKー74Mを撃っていた、分隊支援火器手と、AK12を構える兵士が射殺される。
ナタンが心配する中、ブルータイガー部隊は、後方から奇襲を受けて、彼女に集中砲火を浴びせた。
しかし、自動車の陰に隠れる、彼女を仕留めることは出来ず、銃弾を放ち続けるしかない。
さらに、彼が反撃した事で、連中もトラックや建物へと身を引っ込めた。
「ぐわあっ!?」
そんな中、一人の若いレジスタンス員が、衣料品店の屋上から、RPGー7による奇襲を試みた。
だが、それは、Tー80Uによる砲弾の衝撃で吹き飛ばされた事で、阻止されてしまった。
戦車と装甲車に援護された、帝国軍部隊は、地上に広がるように展開してきた。
左右に並んだ、車両や建物などの陰に隠れつつ、連中は着実に前進して来ている。
奴等は、重装備で火力の高い武器があり、レジスタンス側に取って、かなり圧倒的な戦力だった。
「あの上の連中も、助けないとなっ!」
「うわっ! 黒服部隊が反撃して来たわっ!」
ナタンは、レジスタンスを背後から支援しようと、帝国軍部隊や自動車を撃ちまくる。
生き残っている、帝国軍部隊から激しい応酬を喰らって、メルヴェは自動車の陰へと下がってゆく。
「あの女を殺せっ! 火力を集中させろっ!」
「了解、標的に射撃を浴びせます」
「狙いは定めた、後は指を引くだけだ…………」
ヴォルク歩兵気動車から、黒服部隊の援護射撃チームは、激しい攻撃を行ってくる。
車体後部から、RPKー16を撃っている分隊長は、メルヴェを射殺するように命令を下す。
PKPブルパップの二脚をボンネットに載せている、機関銃手は機銃掃射を途切れさせない。
ドラグノフSVDMを構えた、狙撃手も彼女の頭を撃ち抜かんと指を引いた。
「うわわっ! これは、かなりヤバイわっ!!」
「メルヴェ、頭を下げていろっ!?」
メルヴェは、軍用車両と戦車側に向かった部隊の両方から、身動きが取れぬほど撃たれている。
乗用車とピックアップの間に隠れた、彼女は銃弾が飛び交う中、路上に伏せているしかない。
ナタンは、窮地に立たされた、彼女を援護しようと、UMPー45の銃口を双方に向ける。
アシュア系レストランの入り口から、先ずは軍用車両部隊を狙い、次いで反対側を乱射しまくる。
「レストランの中にも居るぞっ!」
「あの男も狙えっ! ぐわっ!?」
「があっ!!!!」
ナタンにも、武器の照準を合わせて、攻撃してきた、帝国軍部隊だったが。
ヴォルク歩兵気動車ごと、レジスタンス員が放った、RPGー弾に破壊されてしまった。
「メルヴェ、これで後ろの奴等を気にしなくていいぞっ!」
「ええっ! 後は、正面の連中に気を向けられるわっ!」
ナタンは、乗用車の方へと走りだし、そこを狙って、M4カービンを構える敵が射撃してきた。
銃口から、小口径弾が多数射出されて、彼の体を貫かんとする。
しかし、彼は何とか、ピックアップのフロントにまで逃げ込めた。
そこでは、メルヴェが隠れており、M16A1の弾倉を交換していた。
「ナタン、あそこの駐車場に向かうわよっ!」
「分かった、だけど無理はしないでくれっ!」
メルヴェは、ピックアップのフロントから飛び出すと、腰だめで乱射しながら走る。
彼女が、素早く向かう先には、衣料品店の駐車場ゲートがある。
当然だが、敵はM4カービンやグロック17カービンで、彼女を狙ってくる。
だから、ナタンは自らが敵の注意を惹き付けるべく、UMP45を連射する。
「ナタンッ! こっち、こっちっ!」
「メルヴェ、今そっちに行くからな」
「ぐああっ!?」
「ぎゃああーーーー!!」
クリームがかった、ベージュ色の屋根を潜り抜けて、メルヴェが無事に駐車場へと入った。
すると、彼女はナタンを手招きしながら、黒い乗用車に向かって、M16A1を撃ち続ける。
二人の銃撃を受けて、帝国軍兵士はグロック17カービンを落としながら後ろに倒れた。
BTRー80装甲車から放たれる機銃掃射も、右側は建物の出窓を粉砕する。
大口径弾と機銃弾による猛烈な射撃は、レジスタンス員を落下させる。
「不味いっ! 戦車砲が、こっちを向いたっ!」
「ナタン、今すぐ奥に逃げるわよっ!!」
Tー80Uの砲塔が、慌てて逃げ出した、二人に向かって、真っ赤な砲火を吹いた。
その威力は凄まじく、ナタンとメルヴェ達を、衝撃で吹っ飛ばしてしまった。
「…………たた、うあ? メルヴェ、生きているか?」
「ええ、大丈夫よ? はっ! それより、敵が来るわ」
ナタンとメルヴェ達は、二人とも立ち上がったが、それと同時に、帝国軍兵士たちが走ってくる。
「うぅ…………このままでは? いや、アレだっ! メルヴェ、敵に変装するしかないっ!」
「ナタン、間に合うかしら?」
そう言いながら、ナタンとメルヴェ達は、レジスタンスと帝国軍兵士たちの死体を目指す。
そして、二人は服を脱ぎ変えるが、そこに敵部隊の足音が近づいてくる。
「動くなっ! いや、味方か?」
「さっきの二人は、どうした?」
「銃撃したら、奥に逃げて行ったぞ」
「他は、この通り仕留めた…………」
帝国軍兵士とブルータイガー兵士たちが現れると、ナタンとメルヴェ達に銃を向けた。
しかし、黒いフリッツ・ヘルメットや制服を着ている二人を、誰もレジスタンス側とは思わない。
「これから、掃討戦に移るっ! 各自、テロリストを射殺、または捕縛しろっ!」
「命令だ 我々はレストランを調査する」
「分かった、向こうは頼んだぞ」
「私達も、この辺りを調査するわ」
隊長らしき人物の命令が下ると、帝国軍兵士たちは、通りへと戻っていく。
ナタンとメルヴェ達も、連中と離れると本来の目的地である場所に向かっていく。
「メルヴェ…………やっと、戦車の向こうにある、タクシー会社にまで行けるな? あそこまで行けば、安心だ」
「ええ、ナタン…………ようやく私達の戦いも終わりね? 後は、もう戦いに巻き込まれないように祈りましょう」
「おら、来いっ!」
「早くしやがれっ!!」
「ぐふっ!」
衣料品店の前を歩く、ナタンとメルヴェ達は、帝国軍部隊を目にする。
連中は、建物の中から引きずり出した、レジスタンス員に犬用首輪を嵌めた上に、腹を力強く蹴る。
二人は、それを目にしながらも顔を背けつつ、M4カービンを担いで、歩道を歩いていくしかない。
今の彼等は、帝国兵に変装しているため、彼を助ける余裕はなかった。
「しかし、協力者が本物か、敵のスパイか? 見分けがつかないな…………」
「ええ、ひょっとしたら? 私達の身近な仲間も敵の工作員かも知れないわ…………」
ナタンとメルヴェ達は、裏切りにあったが、誰が敵であり、また本物の味方かは分からない。
味方組織内に潜む、潜入工作員《スリーパー》も存在すれば、帝国軍側で密かに情報を流す者も居る。
よって、彼等の壮絶なゲリラ活動と、スパイ合戦は、日夜激闘と暗躍を何度も繰り広げる。
ただ、月日が立つに連れ、レジスタンスが起こすテロと帝国による報復は、苛烈さを増すのだった。
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