帝国側は、洗脳改造車に連合軍兵士や民兵たちを連行していっている。
「いやだああ~~~~!?」
「静かにできんのか」
「やめろっ! このっ! うっ!」
「黙れっていろ」
自分の番が来て、泣き叫ぶ、女性民兵は、オーガーに首輪で引き摺られていく。
暴れ過ぎる、アラビ人兵士は、グールが低致死性の毒ガスを吐いて眠らせる。
「ナタン、君にはアラビ人分隊を任せよう? あの二人も上げるよ…………メルヴェ、君にも何か上げたいが?」
「了解しました…………」
「中尉、私は前から頼んでいた、豪華な挙式を上げたいわ、あと、ハネムーンもしたい」
フロスト中尉は、薄ら笑いを浮かべながら捕虜たちを見回していく。
ナタンは辞令を受け入れたが、メルヴェは無茶な要求を頼む。
「あ? そうだったっけ? まあ、戦争も終盤だし、争闘戦が片付いたら隊員たちを集めて、派手な式を行おうかぁ? ハネムーンは無理だろうけど」
「そうは、させないっ!!」
フロスト中尉が歩いていると、拘束されていたはずの連合軍兵士が、いきなり走り出した。
「中尉っ!?」
「この野郎っ!!」
「撃ち殺せっ!」
「待ちなさいっての」
突然、エマージェンシーナイフを素早く、フロスト中尉に振るった、連合軍兵士。
それを見て、ネージュ準尉は悲鳴を上げ、レオは腰から、ワルサーP5Lを抜き取る。
カルミーネも、タンフォリオT95を両手で握り、照準を合わせようとする。
しかし、ベーリットだけは冷静に振る舞った。
「流石は、SASだな? だが…………しかし、君の上層部であるMI6にも、我々の仲間は居るんだよ、ボンド君」
「く、なら自爆っ!!」
「だから、させないっての」
「動かないでね」
ナイフを握る右手を、フロスト中尉に取り押さえられた、ギデオンは左手をポケットに突っ込む。
しかし、その左腕を両手で掴み、ミアは凄まじい握力で握りしめる。
また、レギナは身動きが取れないように、彼の頭髪と右手を引っ張る。
「く、ぐう~~!!」
「アッハッハッ! 互いの諜報部に、スパイを潜ませているのは当然だろう? なあ、キーラン?」
「キーラン? お前、キーランなのかっ!」
「何となく、似てるとは思ってたけど…………」
地面に押さえられた、キーランは憎悪の眼差しを、フロスト中尉に向ける。
それよりも、ギデオンの正体に、レオとメルヴェ達は動揺してしまう。
「え? ギデオンとは知り合いなの?」
「昔馴染みよ、ギデオンは偽名ね、本名はキーラン・ライリー」
「おっと、動くなよ?」
「お前達の妙な動きも、我々には分かっている」
ハーミアンが驚くと、レギナは彼の事を知っている理由を説明する。
それから、妙な動きを見せた連合軍兵士たちに、背後から銃が突きつけられる。
イェスパーは、ブルーノの後頭部にベルグマン・ベアード拳銃を突きつける。
ヴラウリオも、ベッキーの背中に、ラーマ・ガルドーネ・ガビロンド拳銃を向ける。
「隊長、済みません…………」
「申し訳ないです」
ブルーノとベッキー達は、キーランに対して、自爆が失敗した事を詫びる。
「まあ、まあ、暗くなる必要は無いさ? これからは帝国が君達を雇ってくれるんだからな、ククッ!」
「キーラン、あの時はよくも撃ってくれたな? このっ! これ以上余計な動きをすれば、次は容赦なく射殺するっ!」
「ぐぇっ! うあ、あ? ナタン…………やはり貴様は殺しておくべきだったな」
フロスト中尉は、嗤いながら歩いていき、ナタンは、キーランの顎を思いっきり下から蹴り上げる。
それを受けて、彼は口内を切ったらしく、唇から血を垂らしながら罵声を吐く。
「キーラン、そうはさせない、私のパートナーを殺そうとしたら、どうなるか分かっているでしょう」
「だ、そうだ…………キーラン? まあ、メルヴェも落ち着け」
キーランに冷酷な狼の眼孔を向ける、メルヴェは鼻から下だけが灰狼化していた。
怒りと憎悪に燃える彼女を、フロスト中尉は落ち着けようとする。
「クソ、必ず殺してやるからな」
「分かったよ…………それより? イェスパー、ヴラウリオ、ソムサック、オルツィ、サナダ、シェラ? 三人を改造車両まで案内してやれっ!」
「了解です」
「承知しました」
「了解ですぜ」
「分かりましたわ」
フロスト中尉の命令が下ると、警察隊員たちは一斉に動き出す。
イェスパーとヴラウリオ達は、キーランの首輪を引き摺っていく。
ソムサックとオルツィ達も、ベッキーの両脇を掴んで連行していった。
無言のまま、サナダとシェラ達は、ブルーノを連れてゆく。
こうして、他の隊員たちも、連合側から獲た捕虜を改造車両まで、強引に運び始めた。
「させるかよっ! これでも、喰らえーーーー!!」
「うわっ! 何処から出てきたんだよっ! 全くっ!」
いきなり、公園のタイルが剥がれたかと思うと、閃光手榴弾が、アチコチで爆発する。
それとともに、マッチョな黒人男性が、コルト・デルタエリートを、両手に乱射してきた。
さながら、それはハリウッド映画のようであった。
「ぐあっ!? ぐおっ!」
「大した物だ、今ので何人か逃げ出したようだからな? 貴様は確かーー? あ~~ウェストと言ったな」
「中尉、無事ですかっ?」
ウェストは、タイルの上で後ろに倒れ、胸からは血が流れ出る。
MABーモデルDの銃口を向けつつ、負傷した敵を見下ろしながら、フロスト中尉は呟く。
ネージュ準尉は、彼に怪我が無いかと、急いで近寄っていく。
「ああ、僕は咄嗟に伏せたからね? それより、彼は?」
「ぐぼ、げ」
「ウェスト、済まないが助けられない」
「貴方には、お世話に成ったけど、この負傷じゃあ」
どうやら、フロスト中尉が伏せたと同時に発砲していたらしく、ウェストは口から血を吐く。
その胸には、幾つも風穴が開けられており、出血量から命が長くは無いと伺えた。
「衛生兵を呼ぼうにも、他の負傷兵や洗脳改造を行うので、手一杯のようだ、残念だが君は死ぬ」
「ごぼぉ? ぃ」
フロスト中尉は、嗤いながら地面に倒れる、ウェストの前で片膝をつく。
「死んだか、今は洗脳作業や負傷者の回復が先決だ、コイツは放置しておけ」
ウェストが何も喋らなくなると、フロスト中尉は部下達に命令する。
「ナタン、怪我は無い?」
「大丈夫だ…………さきほど、大聖堂内で治療を受けてから、怪我はしてない」
メルヴェが心配しながら近寄ると、少しだけナタンの表情は緩くなる。
「あの? こちらに向かい、フロスト中尉の命令に従うように言われたんですが」
「我々の指揮権は、貴方が握っているんでしょうか?」
「んあ? ああ、君達も洗脳改造が終わったようだね? 指揮官は確かに僕にあるんだが、指示は分隊長の彼に聞いてくれ」
紺色ポンチョコートを着て、頭をフードで覆い、顔も大きい襟で隠した、ハルドルが現れた。
下には、帝国警察の制服を着ているらしく、袖やズボンは黒色だ。
ティエンも歩いて来たが、両頬が青緑色の何かに覆われている。
それは、丸みがかった楕円形の鱗であり、口内に生えた牙も、ナイフみたいに長く鋭い。
彼女の服装は、黒い野戦帽を被り、野戦服を着ていた。
フロスト中尉は、ナタンの方を向いて、二人を任せる事にした。
「分隊長、我々への指示は?」
「私達に何か有りますか?」
ハルドルとティエン達は、早速ナタンに指示を聞いた。
「いや、それよりも俺が憎くないか?」
「今は無いです」
「帝国の洗脳で逆らえなくなりましたから」
ナタンの質問に答える、ハルドルとティエン達は、完璧に洗脳された。
「そうか? なら、よかった」
「これからは、帝国側で仲間に成るわね?」
「ハルドル、ティエン、よろしくね~~」
「私達は、また仲間として、やっていきましょっ!」
ナタンは短く答えると、メルヴェは二人に対して笑顔を向ける。
元々、レジスタンス仲間だった、レギナとハーミアン達も彼らを歓迎した。
「それより、ここを離れよう?」
「作業も終了した見たいですからね」
ウニモグ製トラックから出てきた、連合軍兵士は、マンティコア装甲車へと向かっていく。
反対に、その青い幌からは、新たな帝国警察隊員が、続々と出てくる。
その様子を見ていた、フロスト中尉は任務完了したと思い、撤収作業に移ろうとした。
ネージュ準尉も、早々とマルキ通りに停めてあるブハンカに向かって行った。
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