【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第288話 公園で行われているのは?

公開日時: 2024年7月12日(金) 17:31
更新日時: 2024年7月15日(月) 08:41
文字数:3,298


 帝国側は、洗脳改造車に連合軍兵士や民兵たちを連行していっている。



「いやだああ~~~~!?」


「静かにできんのか」


「やめろっ! このっ! うっ!」


「黙れっていろ」


 自分の番が来て、泣き叫ぶ、女性民兵は、オーガーに首輪で引き摺られていく。


 暴れ過ぎる、アラビ人兵士は、グールが低致死性の毒ガスを吐いて眠らせる。



「ナタン、君にはアラビ人分隊を任せよう? あの二人も上げるよ…………メルヴェ、君にも何か上げたいが?」


「了解しました…………」


「中尉、私は前から頼んでいた、豪華な挙式を上げたいわ、あと、ハネムーンもしたい」


 フロスト中尉は、薄ら笑いを浮かべながら捕虜たちを見回していく。


 ナタンは辞令を受け入れたが、メルヴェは無茶な要求を頼む。



「あ? そうだったっけ? まあ、戦争も終盤だし、争闘戦が片付いたら隊員たちを集めて、派手な式を行おうかぁ? ハネムーンは無理だろうけど」


「そうは、させないっ!!」


 フロスト中尉が歩いていると、拘束されていたはずの連合軍兵士が、いきなり走り出した。



「中尉っ!?」


「この野郎っ!!」


「撃ち殺せっ!」


「待ちなさいっての」


 突然、エマージェンシーナイフを素早く、フロスト中尉に振るった、連合軍兵士。


 それを見て、ネージュ準尉は悲鳴を上げ、レオは腰から、ワルサーP5Lを抜き取る。


 カルミーネも、タンフォリオT95を両手で握り、照準を合わせようとする。



 しかし、ベーリットだけは冷静に振る舞った。



「流石は、SASだな? だが…………しかし、君の上層部であるMI6にも、我々の仲間は居るんだよ、ボンド君」


「く、なら自爆っ!!」


「だから、させないっての」


「動かないでね」


 ナイフを握る右手を、フロスト中尉に取り押さえられた、ギデオンは左手をポケットに突っ込む。



 しかし、その左腕を両手で掴み、ミアは凄まじい握力で握りしめる。


 また、レギナは身動きが取れないように、彼の頭髪と右手を引っ張る。



「く、ぐう~~!!」


「アッハッハッ! 互いの諜報部に、スパイを潜ませているのは当然だろう? なあ、キーラン?」


「キーラン? お前、キーランなのかっ!」


「何となく、似てるとは思ってたけど…………」


 地面に押さえられた、キーランは憎悪の眼差しを、フロスト中尉に向ける。


 それよりも、ギデオンの正体に、レオとメルヴェ達は動揺してしまう。



「え? ギデオンとは知り合いなの?」


「昔馴染みよ、ギデオンは偽名ね、本名はキーラン・ライリー」


「おっと、動くなよ?」


「お前達の妙な動きも、我々には分かっている」


 ハーミアンが驚くと、レギナは彼の事を知っている理由を説明する。


 それから、妙な動きを見せた連合軍兵士たちに、背後から銃が突きつけられる。



 イェスパーは、ブルーノの後頭部にベルグマン・ベアード拳銃を突きつける。


 ヴラウリオも、ベッキーの背中に、ラーマ・ガルドーネ・ガビロンド拳銃を向ける。



「隊長、済みません…………」


「申し訳ないです」


 ブルーノとベッキー達は、キーランに対して、自爆が失敗した事を詫びる。



「まあ、まあ、暗くなる必要は無いさ? これからは帝国が君達を雇ってくれるんだからな、ククッ!」


「キーラン、あの時はよくも撃ってくれたな? このっ! これ以上余計な動きをすれば、次は容赦なく射殺するっ!」


「ぐぇっ! うあ、あ? ナタン…………やはり貴様は殺しておくべきだったな」


 フロスト中尉は、嗤いながら歩いていき、ナタンは、キーランの顎を思いっきり下から蹴り上げる。


 それを受けて、彼は口内を切ったらしく、唇から血を垂らしながら罵声を吐く。



「キーラン、そうはさせない、私のパートナーを殺そうとしたら、どうなるか分かっているでしょう」


「だ、そうだ…………キーラン? まあ、メルヴェも落ち着け」


 キーランに冷酷な狼の眼孔を向ける、メルヴェは鼻から下だけが灰狼化していた。


 怒りと憎悪に燃える彼女を、フロスト中尉は落ち着けようとする。



「クソ、必ず殺してやるからな」


「分かったよ…………それより? イェスパー、ヴラウリオ、ソムサック、オルツィ、サナダ、シェラ? 三人を改造車両まで案内してやれっ!」


「了解です」


「承知しました」


「了解ですぜ」


「分かりましたわ」


 フロスト中尉の命令が下ると、警察隊員たちは一斉に動き出す。



 イェスパーとヴラウリオ達は、キーランの首輪を引き摺っていく。


 ソムサックとオルツィ達も、ベッキーの両脇を掴んで連行していった。



 無言のまま、サナダとシェラ達は、ブルーノを連れてゆく。



 こうして、他の隊員たちも、連合側から獲た捕虜を改造車両まで、強引に運び始めた。



「させるかよっ! これでも、喰らえーーーー!!」


「うわっ! 何処から出てきたんだよっ! 全くっ!」


 いきなり、公園のタイルが剥がれたかと思うと、閃光手榴弾が、アチコチで爆発する。


 それとともに、マッチョな黒人男性が、コルト・デルタエリートを、両手に乱射してきた。


 さながら、それはハリウッド映画のようであった。



「ぐあっ!? ぐおっ!」


「大した物だ、今ので何人か逃げ出したようだからな? 貴様は確かーー? あ~~ウェストと言ったな」


「中尉、無事ですかっ?」


 ウェストは、タイルの上で後ろに倒れ、胸からは血が流れ出る。


 MABーモデルDの銃口を向けつつ、負傷した敵を見下ろしながら、フロスト中尉は呟く。


 ネージュ準尉は、彼に怪我が無いかと、急いで近寄っていく。



「ああ、僕は咄嗟に伏せたからね? それより、彼は?」


「ぐぼ、げ」


「ウェスト、済まないが助けられない」


「貴方には、お世話に成ったけど、この負傷じゃあ」


 どうやら、フロスト中尉が伏せたと同時に発砲していたらしく、ウェストは口から血を吐く。


 その胸には、幾つも風穴が開けられており、出血量から命が長くは無いと伺えた。



「衛生兵を呼ぼうにも、他の負傷兵や洗脳改造を行うので、手一杯のようだ、残念だが君は死ぬ」


「ごぼぉ? ぃ」


 フロスト中尉は、嗤いながら地面に倒れる、ウェストの前で片膝をつく。



「死んだか、今は洗脳作業や負傷者の回復が先決だ、コイツは放置しておけ」


 ウェストが何も喋らなくなると、フロスト中尉は部下達に命令する。



「ナタン、怪我は無い?」


「大丈夫だ…………さきほど、大聖堂内で治療を受けてから、怪我はしてない」


 メルヴェが心配しながら近寄ると、少しだけナタンの表情は緩くなる。



「あの? こちらに向かい、フロスト中尉の命令に従うように言われたんですが」


「我々の指揮権は、貴方が握っているんでしょうか?」


「んあ? ああ、君達も洗脳改造が終わったようだね? 指揮官は確かに僕にあるんだが、指示は分隊長の彼に聞いてくれ」


 紺色ポンチョコートを着て、頭をフードで覆い、顔も大きい襟で隠した、ハルドルが現れた。


 下には、帝国警察の制服を着ているらしく、袖やズボンは黒色だ。



 ティエンも歩いて来たが、両頬が青緑色の何かに覆われている。


 それは、丸みがかった楕円形の鱗であり、口内に生えた牙も、ナイフみたいに長く鋭い。



 彼女の服装は、黒い野戦帽を被り、野戦服を着ていた。



 フロスト中尉は、ナタンの方を向いて、二人を任せる事にした。



「分隊長、我々への指示は?」


「私達に何か有りますか?」


 ハルドルとティエン達は、早速ナタンに指示を聞いた。



「いや、それよりも俺が憎くないか?」


「今は無いです」


「帝国の洗脳で逆らえなくなりましたから」


 ナタンの質問に答える、ハルドルとティエン達は、完璧に洗脳された。



「そうか? なら、よかった」


「これからは、帝国側で仲間に成るわね?」


「ハルドル、ティエン、よろしくね~~」


「私達は、また仲間として、やっていきましょっ!」


 ナタンは短く答えると、メルヴェは二人に対して笑顔を向ける。


 元々、レジスタンス仲間だった、レギナとハーミアン達も彼らを歓迎した。



「それより、ここを離れよう?」


「作業も終了した見たいですからね」


 ウニモグ製トラックから出てきた、連合軍兵士は、マンティコア装甲車へと向かっていく。


 反対に、その青い幌からは、新たな帝国警察隊員が、続々と出てくる。



 その様子を見ていた、フロスト中尉は任務完了したと思い、撤収作業に移ろうとした。


 ネージュ準尉も、早々とマルキ通りに停めてあるブハンカに向かって行った。

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