【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第119話 どうにか逃げ出さないと

公開日時: 2024年7月10日(水) 10:48
更新日時: 2024年7月13日(土) 11:29
文字数:3,317


「ぐあっ!?」


 帝国軍下士官が、注射を刺すと同時に、女性レジスタンス員の口から拳を抜き取る。


 彼女は、一瞬だけ目を見開いて叫んだが、直ぐにグッタリと項垂れて、大人しく眠ってしまった。



「連行しろ、BTRの中に押し込んで置けっ!」


「了解」


「了解」


 帝国軍下士官が命令を下すと、帝国軍兵士たちは彼女を後方に連行していく。


 その光景を見ながら、ナタンは強く唇を噛んで、ひたすら耐える。



 帝国軍・帝国警察に捕まったレジスタンスの行く先は、101号室送りだ。


 つまりは、洗脳されて、帝国の侵略の尖兵とされてしまう。



 だが、彼女を助ける事は出来ない。



 今、彼が飛び込んだ所で、蜂の巣にされるだけだ。



「んん…………貴様は誰だ、我が隊の者ではないな?」


「私は帝国警察部隊の者で、地下道の奥から銃撃音を聞いて、駆け付けて来ました…………」


 部屋の隅に立っていた、ナタンに気がついた、帝国軍下士官は声をかけると、彼は適当に答えた。



「そうか、なら掃討に付き合え? 付近には、まだテロリスト達が隠れているかも知れないからな」


「了解しましたっ!」


 帝国軍下士官の命令に従い、ナタンも、レジスタンス残党を捜索する任務に加わる。



『…………何とかして然り気無く逃げ出さねば…………』


 レジスタンス達の捜索を、手伝う振りをしようと、ナタンは動く。


 こうして、隙を伺いつつ、この場を離れようと、彼は考えたわけである。



 それから、部屋に幾つか存在するドアが、帝国軍部隊の兵士達に開かれていく。


 脱出を目指す、ナタンも同じように開けて、中を確認しようとした。



「なっ!? どうやら当たりっ!?」


「撃てぇっ!!」


「撃ち殺せっ!」


 ドアを開いた、ナタンを目掛けて、廊下の端からレジスタンス達は、手持ち武器で一斉射撃を行う。



「うわあっ!」


 ナタンを貫かんと、放たれた大量の銃弾だが、それ等は、全てが四角い氷壁に弾かれた。



「何が?」


 ナタンが目を開くと、彼の前にはウィッチカが立っていた。


 両手を前に突きだして、氷結魔法による防御魔術を展開していたのだ。



 そして、二人の背後から、素早い矢による射撃が二回も放たれる。



「ぐあっ!」


「あっ!!」


 廊下の曲がり角から、何度も銃撃を加えてくる、レジスタンス達。


 黄色いベレー帽を被るレジスタンス員と赤いベレー帽のレジスタンス員たちは、後ろに倒れた。



 それは、二急所である胸を二人は矢に貫かれたからだ。



 さらに、廊下奥の木箱裏に隠れて、銃撃してくる生き残りが存在した。


 だが、緑色ニット帽を被った、レジスタンス員の顔面に、ナイフが投げつけられた。



「うわ!?」


「ウィッチカ、援護してっ!」


「了解、任せなペクレン」


 緑色ニット帽のレジスタンス員が倒れると同時に、ペクレンは駆け出していく。


 彼女は、死体と化した、レジスタンス員の顔から、ナイフを素早く抜き取る。


 と同時に、自らの腰から、もう一本ナイフを引き抜いた。



 その突撃に呼応した、ウィッチカは彼女を援護しようと、黒い魔導杖を振るう。



 吹雪とともに、鋭く尖ったガラス片みたいな氷柱《つらら》の弾丸を、無数レジスタンス達へと連続で放つ。



「敵が突っ込んで来るぞっ!?」


「うぎゃっ!!」


「撃てっ撃てっ!?」


 廊下を真っ直ぐ走る、ペクレンを狙う数人のレジスタンス達だが。


 彼女を撃ち殺そうとした彼等だが、機関銃が放った散弾の如き、氷柱に体を貫かれてしまう。



 ウィッチカが放った、強烈な魔法攻撃に連中は怯んでしまう。


 その隙を突いて、一気に距離を詰めた、ペクレンは両手に構えた、二刀流ナイフを素早く振るう。



「奴を近づけるなっ!!」


「ヤバイ! 接近してきたぞっ!?」


「このっ!」


「ごあぁっ!」


 踊るように、鋭利な刃を振るいながら移動する、ペクレンの舞い。


 その素早さに、レジスタンス達は、ただ翻弄されるだけだ。



 こうして、銃撃をすり抜けつつ、接近してくる彼女を、連中は仕留めることは出来なかった。



「アハハッ! 弱すぎるわねっ!」


「ぎゃっ!」


「ぐわっ!」


 右腕を振るい、ペクレンは、ナイフでレジスタンス員の首を切り裂く。


 二撃目を近くに立っていた、レジスタンス員の額に突き刺した。


 次いで、左腕を突きだして、三人目である、レジスタンス員の心臓を貫く。



「クソ!! 撤退だっ!」


 残る一人のレジスタンス員は慌てて、スモークグレネードを投げつける。


 これにより、姿を隠すべく、周囲に煙幕を炊こうとするのだが。


 それよりも早く、ウィッチカが放った氷柱が、奴の顔上面を貫いた。



「これで全て、殲滅完了っと」


「あっという間に片付いたわ」


 ウィッチカとペクレン達は、冷たい侮蔑の視線を向けながら呟く。


 周囲に転がる、レジスタンス達の無惨な遺体を見て、戦闘が終わったと彼女達は思った。



「あ、有り難う…………助かったよ」


 そんな二人を前に、ナタンは自分を助けてくれた礼を言った。


 すると、彼女たちは、先程みせた冷たい視線が嘘かのように、笑顔を彼に向ける。



「べっ! 別に良いのよ、礼なんて?」


「そうよ、私達は仕事をしただけよ」


「いや、そうとは言え、助かったのは事実さ」


 ウィッチカとペクレン達は、二人とも頬を紅く染めて話すのだが。


 ナタンは、彼女達の様子を、不思議がると同時に思案する。



『…………不味いな? 後を付けられていたか? きっと、道路に開いた穴から入って来たんだな…………』


 早くレジスタンス側の秘密基地へと帰還せねば成らない、ナタン。


 彼は、二人をどうやって、煙に巻くか考えつつ、顔には出さないようにしながら自然に構える。



「あの? 君たちは帝国軍の所属みたいだけど、今の僕は残敵の争闘に協力しているんだ、それで君たちにも一緒に敵を捜索して欲しいんだ…………」


 まだ、レジスタンス達が居るやも知れぬので、捜索を手伝って欲しいと、ナタンは語る。



 すると、二人とも嫌な顔をせず、それどころか、直ぐに笑顔で答える。



「良いわよっ! 私達も残敵の掃討は、どの道命じられるだろうし」


「そう、だから私達は貴方に協力するわ」


「良かった、じゃあ僕は奥に向かうから援護を頼むよ」


 ウィッチカとペクレン達は、文句を言わず残敵の捜索と掃討任務を快諾してくれた。


 そんな二人を前にして、ナタンは廊下の奥に存在するドアに行く。



『…………奥に行けば彼女達からどうにかして姿を眩ませるだろう…………』


 その向こう側にある部屋が複雑な作りなら、二人から逃れられるかも知れないと、ナタンは思った。



「じゃあ、奥の扉を開くよ…………」


「ええ、良いわ」


「準備は出来てるわよ」


 そう考えた、ナタンがドアの近くにまで来て、左側の壁に張り付く。


 彼の背後から援護しようと、ウィッチカは魔導杖を両手で構えた。


 ペクレンは、膝だちになり、丸木弓を両手で確りと構えた。



「突入するっ!」


 それから直ぐに、ナタンは奥のドアを少しずつ開いていく。


 すると、そこは倉庫らしい場所で、部屋の真ん中と隅には、大きな棚が置かれていた。


 そこには、段ボール箱が沢山あり、それらが乱雑に積まれていた。



 部屋の向こう側には、ドアが二つあり、左には上階へと続く階段が存在する。



「階段は僕が調べるよ? 扉は君達が頼むよ」


「分かったわ、アイスシールド」


「左のは、私が担当するね」


 ナタンは、MASー1935を両手で構えながら、階段を目指す。


 ウィッチカは魔法で作った氷の盾を左手に構え、突発的な遭遇戦に備える。


 ペクレンは、敵が白兵戦を挑んでくると考え、二刀のナイフを構えて、ドアに進む。

 


「…………上には敵は無し…………か?」


 階段を上った、ナタンはフロア全体を見渡すと、静かな空間で呟いた。


 そこは、広くはなかったが、辺りには段ボール箱が散らばる。



 その中でも、大きな薄茶色をした、プラスチック箱が目立つ。



「…………ふぅ」


 その空間には、左右に廊下があり、ナタンは慎重に歩いていく。。


 そうやって、彼は廊下と大きなプラスチック箱に近づいていった。



 MASー1935を構えたまま、彼は進む。



 そして、目標へと静かに近付いてから、それを彼は蹴り上げる。


 また、彼は中に誰かが潜んで居ないかと、銃口を突きつける。



「…………撃たないでくれ、頼む…………」


 すると、大きなプラスチック箱の下から黒人レジスタンス員が出てきた。


 その事に驚いた、ナタンは黙ったまま、固まるしか無かった。

 面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。


 あと、生活費に直結するので、頼みます。


 (^∧^)

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート