オーストレイリア、首都メルボルン、プレストン・マーケット、クラマーストリート。
「おい、マジかよ? 何だってんだ?」
「えっ? 何が…………故障したのかしら?」
一台の大型トラックが街中を走っていたが、駐車場・入口で急に停まる。
それを車内から見ていた、男女は愚痴を溢す。
そして、ギィと言う音とともに、銀色コンテナのドアが開かれた。
「…………死ね」
「行動開始」
いきなり、コンテナ後部から大量の青ラバースーツを着た、ワーウルフが飛び出てくる。
老若男女と、さまざまな人種からなる、ワーウルフ部隊は、AKMやビゾンを撃ちまくる。
「ごばぁっ!?」
「ぎゃああっ!」
大量のAK弾や9ミリ弾を浴びた、自動車は窓ガラスが割れ、車内に居た男女を血塗れにする。
「急いで行動しろっ!」
「…………はい」
「了解」
制帽を被った、指揮官らしきヴァンパイアは、群れ成すワーウルフ部隊に命令する。
彼ら、ワーウルフ達の瞳に精気はなく、まるで人形みたいに表情がない。
「きゃああああ~~!?」
「うわっ! うああああっ! がっ!?」
「逃げろっ! テロだっ!」
「うぐぅぅ…………」
マーケット内へと逃げようとする、観光客や近隣住民たちの背中に、銃弾が飛んでいく。
これにより、辺りは地獄絵図と化した。
「うわああ、あぐっ!! ぅ…………」
「死ね」
『退けええええーーーー!?』
「ごばああっ!!」
一人の民間人は走って逃げていたが、いきなり正面に、ワーウルフが現れる。
そいつは、彼の首を片手で、絞め上げて窒息死させてしまう。
また、テロから逃げ出そうとした赤い自動車は、逃走する民間人を撥ね飛ばしてしまった。
「…………ウフフ、楽しくなってましたねぇ」
「ああ、だが俺たちは着替えるぞっ!」
ピエロ姿のソーサラーは民間人に変身しながら、不気味な笑みを浮かべる。
その隣では、無表情で帝国軍士官であるヴァンパイアが呟きながら上着を脱いだ。
こうして、テロの主犯格たちは、民間人に変装しながらトラックから離れてゆく。
「オマケに、これも上げるわっ!」
「てっ? 帝国兵っ!?」
「なんで、こんなにっ!」
民間人に変装しながら、ニヤリと嗤うソーサラーは幻影魔法を行使した。
それは、幻影でできた帝国兵であったり、民間人を帝国兵やワーウルフなどの姿に変えてゆく。
こうして、プレストン・マーケットは戦場と化し、混乱が更なる事態悪化を招く。
「きゃああああああーー!?」
「うぎゃ~~~~!!」
モールへと逃げ込もうとする者は、ワーウルフから銃や爪で殺害される。
また、ワーウルフ達は、アチコチに手榴弾を投げまくる。
駐車場から離れようと走る者は、同じく逃げ出そうとする自動車に引き殺されてしまう。
「お? パトカーか?」
「そうみたいねーー?」
南にある、クリケット・クラブへと逃げる、ヴァンパイアとソーサラー達。
彼らの前に、黄色い線が車体に入った、真っ赤なパトカーが走ってきた。
オーストレイリア警察ハイウェイ・パトロールが使用する、ホールデン・コモドアだ。
「帝国のテロよっ! モールには、まだ沢山の人々がっ!」
「ああ、負傷者で溢れているんだっ!?」
「分かった、君たちは早く避難するんだっ!!」
「ここは、我々に任せてくれっ!」
ソーサラーとヴァンパイア達は、民間人を装って、パトカーから降りた白シャツ刑事たちを騙す。
「あ~~あ、アレじゃあーー! 民間人も撃っちゃうわね?」
「だな、それが俺達の狙いだ…………」
刑事たちが駐車場へと走る行くと、後ろを振り向き、ソーサラーとヴァンパイアは呟く。
二人は、街路樹の木々に身を隠しながら増援として、さらなるパトカーが到着することを視認した。
白い車体に、黄色い線が入った、トヨタ・ランドクルーザープラドだ。
「射撃しろっ! もう、どうにもならんっ!」
「何て言う数だっ!!」
「ぎゃあっ!!」
「……………ぐ」
中から、白シャツの警官たちが出てくると、彼らは即座に帝国軍兵士やワーウルフ達に発砲した。
それにより、帝国兵が倒れると元の民間人となり、ワーウルフは撃たれても人形みたいに倒れる。
「チッ!」
マーケットの壁付近で、地面に伏せて、警官たちによる銃撃から身を隠す女ワーウルフ。
栗色で長い毛をした彼女だが、同じ顔が写された写真が、マーケットの壁に貼ってあった。
そこには、こう書いてあった。
行方不明者と。
ここ、オセアニア地域は、比較的安全な区域だが、それでも帝国側のテロが発生する。
理由は、帝国軍の工作員が拉致した人間を洗脳改造して、テロ活動に従事させる。
また、白人至上主義を掲げる極右やネオナチ等の組織も多数存在する。
そう言った組織が、帝国に協力しているからだ。
こうして、後方の一見安全だと思われるオーストレイリアでも非正規戦が行われていた。
ヒンドネシャ、首都ジャカルタ。
ハリム・ペルダナクスマ空港。
「ぐわあぁーーーーーー!?」
「ぎゃああああっ!!」
「きゃああぁぁぁぁっ!?」
飛行機が飛んできたかと思うと、空港内に突っ込んで大爆発を起こしたのた。
当然、空港内は騒然となる。
逃げ惑う民間人だが、彼らがパニックに陥って走り回る中、空港内にも爆発が起きる。
アロハシャツの観光客や、ジルハブを頭に巻いた地元女性などが騒ぎながら我先にと出口を目指す。
「ぐわっ!?」
「ぎゃああっ!!」
「ダメだ、行けない…………通してくれっ!」
ロビーにある椅子の間に設置された、ロープ罠に引っ掛かった観光客が爆弾を起爆させる。
それは、後ろを走っていた女性観光客を爆炎に巻き込んでしまう。
また、地元住民の男性は急にできた、ガラス窓を叩く。
「ダメだよ、クク…………プクク」
「ギャヒャヒャッ! マジ、だせーー!」
観光客に紛れた、ウィザードが氷結魔法で巨大な氷壁を作ったのだ。
その隣では、透明な氷壁を叩く男性を見て、指差しながら、ミミックマスターが爆笑する。
「頼むっ! 助け…………ぐぃうぇぇっ!?」
いきなり口から真っ赤な血を吐いて、氷壁を叩いていた男性は倒れた。
その後ろでは、何気ない顔をしている民間人に変装している、バクテリエラー・ゾルダートが居た。
「おい、後は過激派の連中に任せようや?」
「ハハッ! 奴ら、勝手に自爆するから便利だしな」
「そうしよう…………今頃、他の場所でもテロは起きているだろうからな」
氷壁を溶かした、ウィザードの言葉に、ミミックマスターは嗤いながら答える。
そして、溶けた氷の向こうから来た、バクテリエラー・ゾルダートも呟く。
飛行機を空港に突っ込ませたのは、彼らや帝国軍ではない。
ヒンドネシャでは、国内に複数の過激派組織が存在している。
それら、過激派に、帝国は武器や情報を、密かに提供しているのだ。
これにより、今回の空港は、大規模なハイジャックと爆破テロを受けた。
スカルノ・ハッタ国際空港。
空港の敷地内にある、ガソリンスタンドが吹き飛び、大炎上する。
「大変だっ! 消防隊を呼べっ!」
「きゃーー! テロよっ!」
「うるさいっ! 神のためにっ!」
「天に召されるためにっ!」
空港内を歩いていた様々な客は、ガソリンスタンドが吹き飛んだと聞いて慌ただしくなる。
しかし、その中には、過激派が紛れており、連中は自爆テロを行った。
「ぎゃああああっ!?」
「いやーーーー!!」
空港内を、激しい爆風が舞い、大量の肉片と真っ赤な血を周囲へと撒き散らす。
どの過激派組織が、誰を自爆犯として送ってきたかは分からないが。
空港内では、次々と派手な爆発が連続で起こり、その度に民間人たちが肉片と化す。
こうした地獄の様相が、自爆犯が全員爆死するまで、空港内では繰り広げられた。
ジャカルタ大聖堂。
「きゃああぁぁぁぁっ!? テロよっ!」
「外から来るぞっ!」
大聖堂内に、地元民の男女が逃げ込んで来ると、直ぐ後ろから銃声が聞こえる。
「オラオラ、死にやがれっ!」
「神を冒涜する者どもめっ!」
「うっ!」
「きゃっ!」
AK74を大聖堂内に向けて乱射する、二名の過激派テロリストたち。
観光客や地元住民が集まっていた、大聖堂内は血で染まる。
彼らは、路上でも街行く人々を無差別に銃殺していく。
ジャカルタ市内は、帝国側が潜入させている工作員と複数の過激派組織により大混乱に陥っていた。
ヒンドネシャ、西パプア州、マノクワリ地区。
真っ赤な屋根が目立つ、西パプア州地域総合病院は、現在テロ攻撃を受けていた。
「今だっ! RPGを撃てっ!」
帝国から供与された武器で、パプア解放戦線軍が、病院に襲撃を仕掛けてきたのだ。
病院正面の壁や赤屋根には、RPGー2やRPGー7が何発も撃ち込まれた。
爆風とともに、壁が崩れ、窓ガラスが割れる。
そうして、煙が晴れる前に、トヨタ・テクニカルから、AK74やPK機関銃が撃たれる。
何台も並ぶ、テロリスト達の車列からは猛烈な射撃が放たれる。
「よし、今はヒンドネシャ軍の主力部隊は北に向かって居ないしっ! マノクワリ警察も、てんてこ舞いだからなっ! 遠慮しないで撃ちまくれ」
「はいよ、旦那っ!」
野戦帽を被る帝国軍の下士官が、そう言い放つと、迫撃砲が病院に撃ち込まれる。
トヨタ・テクニカルの荷台に載せられた、2B11重迫撃砲は両輪を回される。
そうして、病院のアチコチに砲弾が振り袖ぐ。
ここだけではなく、西パプア州では、帝国軍特殊部隊による支援の元、連続テロが各地で発生した。
実行部隊は、帝国軍により、武器を供給されているパプア解放戦線軍である。
「患者を避難させろっ! ぐあ…………」
「はいっ! ぐぎゃっ!」
「ぐ…………」
病院の裏手から看護士たちは、必死に患者を逃がそうとした。
だが、ここにもパプア解放戦線軍が待機しており、次々と矢が射ち込まれる。
元々、彼等は銃器よりも、弓矢を使った襲撃が多かった。
ゆえに、射撃に関しては名手ばかりであり、まず先に看護士が狙われた。
そして、患者たちが、今度は弓矢に殺られていく。
頭や腹に、弓矢を受けた患者たちは、歩ける者やストレッチャーに載せられた者を問わず殺される。
「ふむ…………市内も火の手が上がっているな」
帝国軍下士官が、町の方を眺めると、街中が火と煙に包まれていた。
南西にある、オレンジ屋根が目立つ高校からは科学攻撃を受けたらしく、緑色の毒ガスが立ち上る。
さらに、南西にある青い屋根の軍用病院からも、炎が燃え盛る。
ここからでは見えないが、南には銀色屋根の総合施設がある。
しかし、その位置からも真っ黒い煙が舞い上がるさまが確認できた。
ヒンドネシャは、東アシュア方面に軍の主力部隊を抽出・派遣していた。
その結果、兵力と警備体制が低下していた、国内はテロによる嵐に見舞われた。
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