「クソッ! 離せっ! 離せってのっ!」
「さっさと、離しやがれっ!!」
机の下敷きにされて、身動きが取れない、レオとカルミーネ達だったが。
そんな二人へと、頭部に銃を突きつける、四人のレジスタンス員たち。
白人レジスタンス員は、机の裏面に飛び込み、二人を押さえつける。
また、フロックコート内側から抜き取った、五十四式手槍を倒れているレオの後頭部に突きつける。
その右側では、黒人男性が、カルミーネに馬乗りに成って、コルトパイソンを顔面に向ける。
「そんな、子供のオモチャで脅されるかよっ!」
「そのデカブツをさっさと退けろ、低能っ!!」
レオとカルミーネ達は、強気な姿勢を崩さないが、それは単なる虚勢であった。
「五月蝿い奴等だぜ、俺達、連合軍コマンドを嘗めるなよ」
「そうだ、我々連合軍も過酷な戦場を生き抜いて来たんだ、だから君達に負ける訳にはいかないんだ」
連合軍コマンドと名乗った黒人男性と、同じく連合軍コマンドのアラビ人男性。
二人は、憎々しげに目の前で苦しみ踠《もが》く、スパイ二名を睨む。
それを、ラハーラーは黙って見ていた。
「ラハーラー、リーダーに帝国のスパイを捕らえたと伝えに言って来てくれっ!!」
「分かった、行ってくるよ」
やがて、黒人男性コマンドが、リーダーへの報告を、ラハーラーに頼む。
すると、彼は素直に従い、ドアを開けつつ部屋を退出した。
「退けっ! 退けろよぉおーーーー!!」
「邪魔だああああぁぁーーーー!?」
その様子を見ていた、レオとカルミーネ達は、押さえられている身体を揺らす。
こうして、暴れながらレジスタンス達による拘束から逃れようと、必死でもがく。
「このおーーーー!!」
「避けやがれっ!?」
さらに、レオはヴァンパイアの能力を引き出そうとし始めた。
また、カルミーネも、即座に変身して、ワーウルフになろうと試みた。
「このおぉーーーーー!!」
「グオオォォーーーー!?」
白くて鋭く尖った犬歯を覗かせる、レオは激しく暴れだす。
口許を、黒灰色の毛に包まれた、狼顎に変化させる、カルミーネ。
「ガルルルルッ!!」
「動くなっ!!」
二人による変化を察した、黒人コマンドは、レオの前で自らも変身し始めた。
彼は、鮮やかな黄色い体毛を生やしていき、やがて、猫科動物の顔に変わる。
もう一人の、アラビ人男性コマンドも表情を一変させ、口許から鋭い犬歯を覗かせた。
「なっ! 既に連合軍側もバイオ技術を手に入れていたのかっ!?」
「だからって、いい気になるなよっ! クソ野郎がああぁぁっ!!!!」
二人の連合軍コマンド達の変貌を、間近で見せつけられた、レオとカルミーネ達。
二人は、コマンド達による変身した姿に驚くのだが。
『…………くっ! どうやって技術を入手したのかは知らないが? 反撃しなければ…………』
『…………邪魔だっ! 退けよっ!! 能無しの暴力野郎共がっ!! 退かないのなら…………』
連合軍側が、バイオ技術を入手した事実に、レオとカルミーネ達は、すごく驚いたが。
「さて、どうするか?」
「この野郎っ!!」
直ぐに、冷静さを取り戻し、反撃の隙を伺おうと思案するレオ。
そして、正面の黒人レジスタンス員ワータイガーを標的に狙う、カルミーネ。
魔狼が、物凄い眼力で獲物を睨むが如く、彼は憎しみを込めた瞳を向ける。
「どうやって、手に入れたのかは、俺達も知らんっ!」
「質問に答えるのは、貴様らの方だぞ」
黒人男性コマンドとアラビ人男性コマンド達が、二人に告げると、木製のドアが少し開く音がした。
「何だ、ラハーラー、もう戻って来たのか?」
「随分、早いな?リーダーが何か指示を!?」
黒人コマンドとアラビ人コマンド達が、後ろに視線を向ける。
すると、少しだけ開いたドアからは、SIGMA拳銃の銃口だけが出ていた。
それは、ドアの近くに立つ二人に向けて、何度も銃声を鳴らして火を吹いた。
「なっ!? コイツら以外にも、スパイがっ!!」
「ぐはっ! クソがっ! なら反撃してやるっ!!」
口から血を吐きながらも、即座に反撃しまくる黒人コマンドのワータイガー。
背後で何度も火を吹く、SIGMAに向けて、応戦する、アラビ人男性コマンド。
「このっ! 喰らいやがれっ!」
「死に晒せっ! スパイ野郎っ!」
黒人男性コマンドが、右手に握る、MAGー7は何度も散弾を放ちまくる。
アラビ人男性コマンドの、ラシード半自動小銃も7、62ミリ弾を何発も撃つ。
二人が、何度も銃弾を放った木製ドアは、粉々に吹き飛ぶ。
お陰で、原型を留めない程に、穴が開いてしまった。
「ぐっ! お前ら動くなよっ!」
「誰が銃撃してるんだっ!?」
扉の方から、飛んできた銃撃に怯む、黒人レジスタンス員と白人レジスタンス員たち。
彼等は、捕らえたばかりのレオとカルミーネ達に、動くなと脅す。
『…………今だっ! こちらの反撃開始だぜっ! …………』
『…………誰が、貴様らゴミの言う事に従うかっ! …………』
不意の銃撃に怯み、一瞬だけ隙を見せた、レジスタンス達。
連中に、机の下敷きにされていた、レオとカルミーネ達がったが。
今が好機と捉え、二人とも即座に反撃を開始する。
「うらあぁっ!」
「グゥォォーー」
二人は、自分達を押さえつけていた机を退かすと同時に反撃する。
次いで、机越しに、体の上に跨がっていた、レジスタンス達に襲い掛かる。
「うわぁーーーー!?」
「ああぁ~~~~!?」
懐に飛び込まれて、首筋を噛まれた、白人レジスタンス員。
コルトパイソンを握っていた両腕を、へし折られた、黒人男性レジスタンス員。
二人は、凄まじい悲鳴を上げる。
「くっ! こっちもか」
「ぐああっ!!」
ドアを銃撃していた、黒人コマンドは、後ろで悲鳴を上げる、二人に気を取られてしまう。
その隙に、銃撃による火力が下がったことで、隙を突かれる形となった。
「何だっ!? 銃撃音がするぞ」
「敵襲っ! 敵襲だぁーー!!」
謎の人物が握る、SIGMAは、アラビ人コマンドに当たり、右肩を撃ち抜ぬいた。
その戦闘音に、気がついた、レジスタンス員たちが、次々と応援に駆けつけてきた。
「あああっ!? 何だっ!!」
「うわ、潰されるーー」
彼方此方《あちらこちら》で鳴り響く、爆音と悲鳴、それは、レジスタンス達が爆発に巻き込まれた音だった。
「ぐっ! スパイが弾薬庫を爆発させたか」
『ドンッドンッドンッ!』
負傷した、右肩を気にする事無く、アラビ人コマンドは叫ぶ。
その直ぐ後、SIGMAに対して、ラシード半自動小銃で応戦する。
「クソッ!」
黒人コマンドは、揉み合いになっている、二人のレジスタンスを助けたいが。
自らが握る、MAGー7散弾銃の銃撃に巻き込む訳には行かない
こうして、やむ負えず、扉の陰に隠れる何者かに応戦を続ける。
その後ろでは、レオとカルミーネ達が、必死で戦う。
二人は、レジスタンス達から逃れようと、抵抗を続けていた。
「ひああぁぁぁぁっ!!」
「べっ!?」
揉み合いに成った、レオは白人レジスタンス員の首筋に噛みつく。
それから、直ぐに顎《アゴ》へ凄まじい力を入れる。
その攻撃によって、彼は首筋から噛み千切った、肉片を地面へと吐き捨てる。
「があっ!!」
「やめろおおぉぉ~~~~!?」
その隣では、ワーウルフに完全変身した、カルミーネが暴れる。
彼は、黒人レジスタンスの首を、人間離れした腕力で、掴みかかって締め上げる。
「グオオオオッ!!」
「ぐへっ!?」
抵抗する間も与える事無く、直ぐさま、強い握力を加える、カルミーネ。
彼は、眼前で苦しむ、黒人レジスタンス員の首をへし折っていた。
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