「おっ? お前等、密輸品の受け取りに行くんだってな、頑張れよ」
「美味い飯がたらふく食いたいから、チーズと真っ赤なトマトの載ったピザと、アフレア産のワインを頼むぜ」
工具箱を持ち歩いていた、黒人レジスタンス員は、前方から向かってくる二人に気がついた。
彼は、ナタンとメルヴェ達に頑張れと、陽気な笑顔で声をかける。
白人レジスタンス員も、美味い物が食いたいからと、アレコレ贅沢を言ってきた。
「そんな物より化粧品に紅茶、それと凄く甘いチョコレートを私は、お願いするわ」
「ピザやら、チョコレート何かは気にしなくて良いわよ、戦争には武器・弾薬と医薬品が必要だから頼むわね? 貴方達…………」
その右隣を歩く、段ボール箱を運搬する、アシュア系女性レジスタンス員も話しかけてくる。
彼女は、化粧品や紅茶我が儘にを要求しながら笑顔を向けてきた。
三人が欲求する物を聞いて、呆れ顔になる、ヒンド系の浅黒肌をした、女性レジスタンス員。
彼女は、これから戦場へと潜入する、ナタンとメルヴェ達を気遣った。
「ああっ? 有り難う…………それと美味い物や紅茶が有ったら、きちんと持ち帰って来るよ」
「そんな物より、私達レジスタンスに必要不可欠な弾薬類が最優先だけどね」
前方から声を掛けてきた、四人に対して、ナタンは適当に返事を返す。
弾薬類の方が、優先順位は上だと、ヒンド系女性レジスタンス員と同意見を述べる、メルヴェ。
やがて、彼等と別れたら二人は広い通路から左に曲がる。
その狭い通路を通って、ブリーフィングルームを目指す。
その途中で、室内で壁に立てかけてある、モニターが映像を流す音声が聞こえてきた。
それを、暇そうに見つめる、男女二名のレジスタン員達も見えた。
「何か新しいニュースでも入ったのかな?」
「まぁ、少~~し、気になるわね?」
画面には、何が映っているのかと気になる、ナタンとメルヴェ達。
二人も、明るい光を放つ、モニターに視線を向けて、映像内容を注視する。
『昨日、ベルギュー各地では、テロリストによる爆破、銃撃テロが発生しましたが、帝国地上軍、帝国警察の迅速な対応と活躍によって、瞬く間にテロリスト等は制圧されました…………次のニュースです…………』
画面内では、帝国広報庁・所属である、青髪で黒いスーツ姿の人物が写る。
それは、帝国のプロパガンダを垂れ流している、ニュースキャスターだ。
画面の中から、彼が次々と新たな情報を発表して、ニュース内容を詳細に語る。
『新たに属州として、二つの国が我がノルデンシュヴァイク帝国の手に落ちました、一つは…………』
「つまんねっ?」
「ちょっとっ! 今私が見ていたのよっ!!」
赤いベレー帽を被った、アラビ人男性レジスタンス員が呟く。
彼は、モニター画面に映るニュース映像を、リモコンのボタンを押して消してしまう。
すると、勝手に番組を消され事で、スラヴ系の女性レジスタンス員は怒りだした。
「こんな物見たって、気分が落ち込むだけだぜ? 外の連中を見てみろよ? 皆サブリミナル洗脳で根暗に成っちまってるじゃねぇかよっ!」
「だけど、私達は奴等のニュースを見て情報を集めたり、弱点を発見しなければ行けないのよっ!」
下らない物なんか見るなよと怒る、赤いベレー帽を被った、アラビ人レジスタンス員。
対する、スラヴ系の女性レジスタンス員は、少しでも情報を収集する必要性を説く。
だが、二人は互いを理解し合うことなく、口論を展開する。
「んな事言ったってな? あんな映像見るだけ無駄だろ、あんまり変な情報を見ていると洗脳されちまうぜ?」
「全く…………貴方の方こそ、奴等に洗脳されて、ヤル気を無くしたんじゃ無いの?」
『…………仲間同士で喧嘩するなよ…………』
『…………呆れるしか無いわね…………』
激しい口論を続ける、アラビ人レジスタンス員とスラヴ系女性レジスタンス員たち。
二人を尻目に、ナタン・メルヴェ達は呆れてしまいつつ部屋を後にする。
そして、彼等は再びブリーフィングルームまで続く、狭い通路を進んで行った。
『…………帝国が、また植民地を…………果たして僕等は勝てるのかな? …………』
ブリーフィングルームを目指し、狭い通路を黙々と、ナタンは進む。
彼は、帝国側が流した、先程のプロパガンダ放送が報じた内容を思いだして、物思いに更ける。
帝国広報庁は、毎日のように、テレビ・ネット・新聞など。
こう言った、有りと有らゆる情報網を駆使して、プロパガンダを流す。
そうして、この星に住む住人を、洗脳するべく宣伝戦を行っている。
これ等、宣伝・洗脳活動により、住人達の間には、帝国には勝てないと言う考えが浸透している。
それに、いつしか諦めと絶望と言う、負の感情が漂っていた。
帝国広報庁は、ニュースを通じて、様々な報道を行っている。
捕らえた、捕虜の処刑執行を殺戮パレードみたいに報じる映像。
帝国地上軍・帝国警察部隊が、圧倒的な戦力で、勝利する戦闘映像。
等々と言った、プロパガンダを大量に流していた。
特に、収容所に囚われた、捕虜の様々な残虐な公開処刑だが。
それを視聴するのは、耐え難く、目を被いたくなる程である。
しかし、その上を行く、処刑方法がある。
それは捕らえた捕虜を洗脳改造して、帝国の支配に加担する尖兵にする映像である。
記憶と人格を抹消された、レジスタンス員。
仲間の情報を帝国側に流す、レジスタンス員。
仲間達を憎むように、思考と感情を改竄されたレジスタンス員。
等々と言った、不幸なレジスタンス員たちを映像に映して、公開するのだ。
「毎日見ていると洗脳される…………か?」
「捕まってしまうと、私達も帝国の兵士に…………」
放送を見るのも、捕まり公開処刑されることも、とても恐ろしい。
どちらにしろ、自分たちが、そうならないように、ナタンとメルヴェ達は願って呟く。
その後、二人はブリーフィングルームと書かれた看板が掛けられた、ドアまでやって来た。
「皆もう居るかな?」
「私達で最後かしらね?」
ナタンとメルヴェ達はドアを開き、中に入ると、室内には、大勢のレジスタンス達が集まっていた。
その数は数えると、二十人程である。
また、説明を行うリーダーと、プロジェクターを扱う、二人の人員だけが立っていた。
それ以外のレジスタンス員たちは、全員左右に、三列ずつ並べられた席に座っている。
「ナタン、メルヴェ、二人とも遅いぞ」
「遅刻ギリギリとは良い度胸だな、二人してイチャついて居たんじゃあ無いよな?」
ブリーフィングルーム内で、最前列の席に座る、ウェストとハキム達。
彼等は、遅刻しそうになった、ナタン・メルヴェ達を睨む。
その後、すぐさま二人に対して、揃って文句を言ってきた。
「イチャついて何か無いってばっ!」
「そうよっ!!何を言ってんの、このエロオヤジがっ!?」
「そこの二人…………これから作戦内容を説明するから席に着きなさい」
イチャついてないと、顔を真っ赤にして否定するナタンと、大きな声で怒鳴り返す、メルヴェ。
そんな彼等を、オレンジ色に染められた、ベレー帽を被った、レジスタンスのリーダーは注意する。
それから、彼は二人に対して、大人しく着席するように促した。
「はい…………済みません」
「申し訳、有りません」
レジスタンスのリーダーから、着席する様命じられたナタンとメルヴェ達。
彼等は、まるで学校教師に叱られた、小学生みたいに謝罪した。
それから、彼等は大人しく、二人分だけ空いている最後列の席に着いた。
こうして、今回の作戦に必要な人員が全員揃った。
それにより、プロジェクターが、二人のレジスタンス員に操作される。
暗い静かな室内で、白いスクリーンには今作戦の内容が見えた。
作戦地域・移動ルート・潜入ポイントなど。
これ等が示された、地図が映し出されたのだった。
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