【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
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第100話 闇の中から魔女の屋敷に? 2

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:35
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:11
文字数:3,178


 山岳地帯に囲まれた、貧しく過酷な国アフガネスタン。



 ここから、平和で豊かなハンザ連邦へと逃れる事を決心した、ラハーラー。



 彼は、大勢の児童達とともにバスに乗っていた。



 車体は、襤褸《ボロ》くて赤錆ていたが、他に代えのバスも無かった。


 なので、仕方無しに、現在も使用されている動く、スクラップだ。



『…………これで幸せになれる…………』


 国境沿いに建設された道路を進む、バスの窓から、ラハーラーは明るい景色を見る。


 窓の外には、隣国パキィスタンへと続く、山間部に設けられた橋を眺める。



 この後、彼は列車や船で、ハンザ連邦合衆国に向かう事になる。


 だが、ハンザ連邦に到着しても、そこにあったのは絶望的な状況だけだった。



「診査書類は通ったので、安心ですよ」


 市役所の窓口で、移民・難民を担当する市職員から、そう言われて安心した、ラハーラー。


 しかし、大量の難民が押し寄せた事により、ハンザ中は混乱していた。



 戦乱に次ぐ戦乱と、未だ終わらない内戦拡大の一途が尽きないからだ。


 また、アラビ地域は元より、ハンザ連邦も難民受け入れを行う各機関が、既にパンクしていたのだ。



 これにより、先に来ていた、難民達に給付金と、心身の治療は優先されたた。


 そのため、後から来た、難民達と彼は、大した、ケアを受ける事は出来なかった。



 生活できる、ギリギリの給付金と住む場所は、役所から与えられたが。


 一人、文化が全く違う異国の地で暮らす、彼は心が癒えてはなかった。



 しかし、銃撃と爆発音が病まぬ故郷よりかは、幾分か、彼にはマシに思えた。


 

「やっと平和に暮らせる」


 そう呟いた、ラハーラーだったが、難民が押し寄せる事は止まなかった。


 さらに、ハンザ中で、極右勢力が勢いを増して、難民の支援が、打ち切られたりし出した。



 これに、追い討ちを掛けるように、一部の難民達による、ハンザ女性に対する暴力が振るわれた。


 偽装難民による給付金詐欺、難民に変装した、テロリストの潜入。


 移民排斥を掲げる極右勢力の台頭と、ネオナチによる大規模デモ。


 保守派・市民を自称する、極右過激派のアラビ人やアフレア人に対する排撃。


 自警団員が行う、移民&難民との流血を伴う激しいデモによる衝突。



「くそう…………」


 そう言った事が連続で続き、ラハーラーの住んでいた、バラック小屋も燃やされてしまった。


 勢い良く燃え盛る炎は、一気に木製の小屋を灰に変えてしまった。



 それから、直ぐに混迷を極める世界は帝国に侵略された。


 また、予算と軍備の不足した、ハンザ連邦軍は数日で瓦解してしまい、彼も火中へと巻き込まれた。



「くっ! ふぅーー!! …………ぐっ?」


 そして、火中から別の火中へと飛び込んでしまう形となった、ラハーラー。



 そんな彼に、運命の日が訪れた。



 それが、路地裏で死に瀕している際に、彼女と出会った事である。



 今の彼は、暗く怪しい場所で、手術台に拘束されて、今まで見てきた悪夢に魘されていた。



 青白く光る複数のモニター。



 それと、上から伸びる毒々しく光る・水色・薄緑色・ピンク色など、薬液の流れた管が伸びる。



「…………ここは? うぐっ!?」


 斜めに立て掛けられた、手術台に載せられている、ラハーラー。


 その首や両腕には、管が繋げられ、彼は苦し気に首を振っては呻く。



 また、胴体は黒い五本のベルトで固定され、麻薬か毒薬かは分からない、薬液に苦しみ続ける。



 その側に近づく、人影があった。



「はぁーー♡」


 ラハーラーの側に近づく怪しい人影、それは勿論フォイルスニェーク中尉である。



「苦しいか? フフ…………今楽にしてやるぞ…………」


 上から伸びる管の先に手を伸ばす、フォイルスニェーク中尉。


 彼女は、ピンク色の液体の詰まったパックを握り締めて、薬液が流れ落ちる速度を、さらに上げる。



「ふぅ~~♡ …………ん? …………」


 身を、プルプルと震わせながら、目を覚ました、ラハーラー。


 彼は、暗い空間内で天井に浮かぶ、雪の結晶型ライトから放たれる青白い光を眩しく思う。



「起きたか? 私の可愛い坊や…………」


 五角形のブルーライトから注ぐ眩い光に、ラハーラーが目を瞑る。


 すると、隣から、誰か女性らしき人物が声を掛けてきた。


 その女性は、コート型軍服に付いた胸ポケットから、取り出した煙草を口に加える。



 次いで、人差し指の指先から、小さな火を着ける。



「貴女は…………誰?」


「ふぅ~~? 安心しろ、もう既に改造と洗脳は済んでいるぞ」


 ラハーラーは、いきなり現れた謎の女性に対して、すごく警戒するが。


 フォイルスニェーク中尉は、煙草から薫《かお》る煙りを深く味わうように、肺の奥まで吸い込んだ。



 それを、ぷっくりとした青唇から離した、フォイルスニェーク中尉は、にこやかに微笑む。


 次いで、口からブルーライトに照らされた、灰白い煙りを吐き出すと、ゆっくりと話し始めた。



「私は、ノルデンシュヴァイク帝国地上軍・所属のフォイルスニェーク中尉だ、君は私に捕らえられたんだよ」


 目を少し細めて、フォイルスニェーク中尉は狐のような表情と眼差しを向ける。


 そうして、彼女はラハーラーのアフガンアイと呼ばれる深く光沢を放つ瞳を、真っ直ぐに見つめる。



「僕は捕虜なの? それとも囚人?」


「フフッ…………両方だな」


 アフガンで暮らしていた時に、あの男から受けた、拷問に近い体罰を思いだした、ラハーラー。



 そして、身をすくませる彼だったが、そんな幼い中性的な顔立ちは美しく見える。


 また、恐怖を浮かべて、身体を硬直させる様子は、被虐心を上げさせる。



 このように、フォイルスニェーク中尉は、彼を愛くるしい奴だと思う。



「お前の名前は、ラハーラー・コウヤールだな? 移民・難民管理局のデータを調べたから、名前は分かったんだっ! これからは私の奴隷として働けよ?」


「いっ! いい嫌だっ! 誰かっ! 誰か助けてくれえぇぇーーーーーー!!!?」


 ラハーラーの身体に覆い被さるように、跨がった、フォイルスニェーク中尉。


 彼女は、彼が左右に振るう、頭の両脇に勢いよく両手を突いた。


 そして、彼が泣きそうな顔をしていても、彼女は気にする事なく、己の妖しく光る瞳を近づけるが。



 もちろん彼は拷問されると思い、騒ぎながら体を激しく振って、拘束から逃れようともがくのだが。



 そう簡単に、ベルトは外れはしない。



「クソーーーー!?」


「はぁ♡」


 ガタガタと手術台を揺らして、必死に暴れまくる、ラハーラー。


 両手で彼の顔を、グイッと掴んだ、フォイルスニェーク中尉。



「黙れ…………今良いことをしてやる…………んっ♡」


「ふっ!? …………」


 フォイルスニェーク中尉の青い唇と、ラハーラーが、ひたすら動かす青黒い唇が、静かに重なる。



「うっ!? うぅぅ?」


「アハハッ!」


 ラハーラーの頭を掴んでいた両手を離した、フォイルスニェーク中尉。


 彼女は、次に両手を、左右にあるピンク色の薬液パックと水色に煌めく薬液パックに伸ばした。



「行っただろう? もう既に改造と洗脳は済んでいるってな…………キーワードは、アフガンハウンド」


「ぐぐぐぅっ!? ぐおっ!! オオオオオオオッ!!!!!!!?」


 フォイルスニェーク中尉が、不気味な笑みを浮かべつつ、キーワードを唱えた。


 すると、ラハーラーの身体は、みるみる内に膨れ上がってゆく。



「ブハハッ!!」


「ウガアアアアーーーーー!!」


 両手の甲や、首の両側に繋がる薬液は、フォイルスニェーク中尉が強く握り締めている。


 それで、ストローで吸いとられているかの如く、ラハーラーへと、一気に毒薬が流れこんでいく。



「フフッ♡ フフフッ♡ 媚薬と強壮剤、そして麻薬《クロコダイル》と催淫剤をブレンドした特製媚毒の味はどうだ?」


「グオオオオオオオオオオオッ!」


 ラハーラーの凄まじい変貌ぶりに、非常に満足したらしく、フォイルスニェーク中尉は呟いた。


 しかし、媚毒の効果と、ワーウルフに改造された、ラハーラー。


 彼は、答える事すら出来ず、おぞましい咆哮を上げるだけだった。

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