「おい、お前ら、戦いは止めろよ」
「ソムサックの言う通りだ…………武器を下ろせ」
「こちらは、帝国警察部隊、第三小隊よ? 私はミア」
「こちらは、帝国警察アスカリ部隊…………だった」
ソムサックが、サナダとシェラ達の両肩を叩いて、レオも二人に停戦命令を出す。
ミアは、対峙する部隊に声を掛けつつ、メルケル200Eの二連銃身を下に開き、散弾を込める。
すると、向こう側からも、ラテン系に見える女性兵士から所属部隊の名前が口から出た。
「私は、ドミニック・フランク兵長ですっ! ウルグァイ出身の志願兵ですっ!」
ラテン系の目つきが鋭く、真面目そうな女性兵士は、どうやら隊長らしい。
真ん中分けした、黒に近い茶髪ロングヘアの上に、黒いベレー帽を被っている。
服装は、黒い戦闘服に、大きな弾帯つき防弾ベストを着ている。
武器は、ダットサイト&GPー25を装着した、AKー101を両手で握る。
それから、腰のホルスターには、H&K、P30を入れている。
「我が隊は、先の戦闘で壊滅っ! 後方のBCG・プレトニャン・ビルで再編中に、こちらへと向かうよう指示されました」
「そこで、バスの上から二階に侵入して、敵を殲滅したんだが、急に床が崩落したからな? そしたら銃撃戦が行われているから、救援に向かったんだ」
ドミニックの後ろから、黒人男性が話しかけてきた。
「そう言うワケか? 分かった、こっちの指揮下に入れ、えっと?」
「ファルク・キプロシィチ二等兵だ、ワーウルフだよ? へへっ!」
レオは、彼らを勝手に自らの指揮下に置いて、行動しようとした。
しかし、正式な命令も無いので、ドミニック達は彼に従う他ない。
そして、彼に対して、ファルクは笑いながら獣化しつつ、ワーウルフに変身を遂げた。
真っ黒い毛に被われた、彼は舌を出し、犬歯を見せつける。
彼は、青と白の迷彩服を着ており、野戦帽を被っている。
腹には、左胸にPORICUと書かれた黒いタクティカルベストを着ている。
背中には、予備の箱型弾倉を容れる黒い大型ポーチを、二個ベルトに下げていた。
武器は、両手で首からスリングベイルを垂らした、ダネルMGLを持つ。
そして、背中にはM60汎用機関銃を背負っていた。
「トゥキリ・スヌーカ一等兵」
「ペゼリ・スヌーカ二等兵」
「フェリシテ・ルクレルランド二等兵だよ」
それぞれ名を名乗る、ドミニック率いる分隊員たち。
「グルルッ!? 貴様、裏切らないだろうなっ!?」
「は? やんのかっ? 待てよ、味方だろ…………」
カルミーネは、獣化しながら灰毛にまみれた狼顔になると、ファルクを憎悪の眼差しで睨む。
「グルルルルッ!! ガウッ! ガウッ!」
「や、やめろよ、悪い冗談は? ひょっとして、白人至上主義者か?」
カルミーネは吠えながら中腰になり、ファルクもM60を構え始めた。
「ストップ、ストップ…………ブシュ~~? 興奮し過ぎよ?」
だが、カルミーネの耳元で囁くように、ベーリットは話しかけつつ、狼鼻を狙う。
次いで、媚毒ガスを微量だけ吹き掛けた。
「うんっ♡ ………はっ!」
「はぁ~~! 疲れる男ね? それから、さっきの兵士たちにも、媚毒ガスを掛けておきましょう」
「うっ! クソがっ! くたばれっ!」
「来るなっ! このっ!」
媚毒の匂いを嗅いだ、カルミーネは、ウットリしながら狼顔から人間に戻る。
そうして、彼は頬をピンクに染めたが、ベーリットにAGー3の銃口で左頬を突っつかれた。
これにより、すぐ正気に戻ったのだった。
媚毒ガスを嗅いだ敵は、徐々に体から力が抜けて動けなくなる。
しかし、極少量だけ吐かれた媚毒ガスに大した効果はなかったから、彼は正気に戻れた。
だが、これを大量に吸い込んだ場合は、ウットリしながら眠ってしまう。
「いいから、黙ってなさい…………」
このガスを、今から氷漬けにされた黒人兵士&蔦網に捕らえられた黒人女性兵士に吐こう。
そう考えた、ベーリットは冷たい微笑を浮かべながら二人に近づいていく。
「はい、はい、動かないで、私たちの仲間が仕事しやすいように黙ってなさい」
「黙っててくれると、お姉さん助かるし、ベーリットも楽に仕事できるからね~~」
そう言いつつ、シモーネは黒人兵士の眼と口だけを氷結魔法により氷で被い、鼻だけを出しておく。
ミネットも、蔦の数を何倍にも増やして黒人女性兵士が全く動けないようにしてしまう。
「ん、んっ! んん?」
「むーー! むーー!」
「はい、チェックメイト、ブシュ~~~~!!」
鼻から息を吐いて抗議する黒人兵士と、蔦山の中から騒ぐ、黒人女性兵士。
しかし、ついに彼らには、ベーリットによる媚毒ガスが吹き掛けられた。
「ん、ん、んんーーーー! うっ?」
「むぐっ! む~~~~! もが…………」
「ふぅ…………終わったわ? 二人とも、ありがと」
「いえいえ」
「どう、致しましてっ!」
黒人兵士と黒人女性兵士たちは、媚毒ガスを嗅いだ事で眠りこんでしまった。
「済まないな? アイツは悪い奴じゃないんだが、過去に色々あったんだ」
「だから、気を悪くしないでね」
「そ、そうか? そう言う理由で、帝国警察に入ったんだな…………」
レオとミア達は、何故カルミーネが、あんなにキレたのか事情を話す。
ファルクも、何となく激しい敵意を向けられた理由を察した。
2014年から2015年にかけて、アラビ・北アフレア方面で動乱があった。
これは、アラビの春と後に言われる。
当時、戦場の舞台となった、アラビ地域は当然だが燃え盛る戦火に包まれた。
また、同時に安全で裕福なハンザ諸国を目指した、大勢の難民が押し寄せた。
この混乱により、ハンザ人とアラビ人は宗教や風習が違うことで、互いに衝突した。
当時、アラビ人やアフレア人による、ハンザ人に対する暴行が行われた。
反対に、ハンザ人による報復攻撃で、難民に対する暴力も横行した。
「つらかったんだろうな…………」
ファルクも、当時の動乱で何かを受けたであろう、カルミーネを憐れんだ。
「あと、あの二人は完全洗脳された、ゾルダート・タイプだから?」
「分かっているぜ、あんまし、人間らしさが無いもんな? 大方、帝国に逆らって、ああされちまったんだろう」
ミアは、人形のように冷酷な眼を持つ、サナダとシェラ達を見て呟く。
ファルクは、洗脳されたであろう二人を見ながら、彼等にも憐れみの目を向けた。
「それより、どうするんだ? フンフン、火薬と科学兵器の匂いが充満している…………数と場所が把握し切れないほどだ」
「レオ、どうする? 一気に突入するのは危険だけど、やるしかないわ?」
「科学兵器ね? 敵のデバッグ・ソルジャーか? スパルトイが待機しているのね、それも複数体…………敵部隊の人数自体も多そうだわ?」
入口に、Mg M/07軽機関銃を向けて膝だちしながら、イェスパーは匂いを嗅いで敵の位置を探る。
ミアも、突撃を仕掛けて、強行突破するしかないと、覚悟を決める。
科学兵器の匂いと言う言葉から、ベーリットは敵部隊が強敵であり、人数も多いだろうと予想する。
その中には、連合版グール&バクテリエラー・が待ち構えている。
思わぬ科学兵の登場に、彼等は突入を躊躇し始める。
「ふーー? むっ? まあ、レギナ? 突入前にRPGを壁に、ブチ込むんだ?」
「分かったわ………他の連中も、RPGを壁に射ちましょう」
「爆風と同時に突入するのね? 敵は、煙と衝撃の勢いで怯むっ! そこを攻めるのね」
「RPGを持つのは分かったが、突入は何時にする?」
レオは悩みつつも、RPGーによる攻撃後に敵陣へと斬り込む決意をする。
指示を聞いて、レギナは69式火箭筒の二脚を事務机に載せて構えた。
ベーリットは、AGー3を背中に回し、コングスベルグコルトを両手で握る。
セトメ・モデロLを腰だめで構えつつ、ヴラウリオは突撃開始のタイミングを待つ。
RPGー7は二個、RPGー2は一個、69式火箭筒は一個ある。
「よっと、これは私が貰う………」
「俺も準備完了だ」
「持ちましたよ? 射ちますか?」
ドミニックとファルク達がRPGー7を持って立ち、ミネットがRPGー2を伏せながら構える。
「五秒後だ…………1、2、3」
レオは突入に向けて、準備を始めた。
だが。
「敵が攻めてきたぞっ! 右側からだっ!」
「RPGーを撃てっ!?」
いきなり、連合側部隊が叫び、次いで爆音が連続で木霊した。
「な? 何が起きた?」
爆発は何度も発生して、連合側を混乱させて銃撃音を鳴らしまくる。
レオは、初めてもいない内に、慌てふためく連合側を不思議に思うのだった。
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