【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第97話 また女性士官と

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:33
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:18
文字数:3,001


「この先に階段がありますが、急なので、気をつけて下さい」


 下士官グールは、先をどんどん歩き、やがて、右側には鉄製の銀色ドアが見えてくる。



「では、地上に行きましょうか」


 それから、ドアを開いて、下士官グールは階段を上がり始める。



「中尉、先程は有り難う御座います」


「貴方の助けがなければ僕達は…………」


 階段は、コンクリート製であり、一段ずつ上る際に、レオとカルミーネ達は上を向く。


 また、彼等は先を歩く、ザミョール中尉へ窮地を救ってくれた礼を述べる。



「ふんっ! 一つ貸しだと、フロストに伝えておけっ!」


 長い階段を歩きながら、ザミョール中尉は一言だけ答える。


 こうして、五人で階段を上がりきると、地上では、数十人の帝国軍部隊が辺りを封鎖していた。



「地下にあるテロリストの死体は、全て焼却処理しろ」


「了解ですっ! いつでも死体を燃やせますっ!」


「武器弾薬は、我々が全部押収するっ! 警察部隊に取られてたまるかっ!」


「了解、これより回収任務を開始しますっ!」


 ヴァンパイアが命じると、シュヴァルツ・リッターは、ローマ式敬礼をした。


 そして、背中に装備した火炎放射器から火をブワッと出して、調子を確かめると歩きだす。



 オーガーが指示を出して、帝国軍兵士たちとともに、地下防空壕への入口へと走ってくる。


 彼等は、集団で迫って来るが、ザミョール中尉たちの左側を通り抜けていく。



 帝国軍部隊は、この場所で発生した事件に関して、自分たちが戦ったからと躍起になってる。


 そして、結果的に得た、戦利品を確保するために動いている訳だ。



「また、お前かっ?」


 そこに、護衛を二人も引き連れた、帝国軍の女性士官が現れた。


 ザミョール中尉を見るなり、彼女は露骨に面倒臭そうな顔を見せる。



「良く合いますな? フォイルスニェーク大尉?」


「ふん、私は貴様の顔なぞ見たくもないっ!」


 礼儀正しく、ローマ式敬礼をしながら声を掛けた、ザミョール中尉であったが。


 一方、フォイルスニェーク大尉の方は、帝国警察は、誰であろうと相手もしたくは無かった。



 ラヴィーネ大佐とフロスト中尉の関係など、一部を除いて、帝国地上軍と帝国警察部隊は仲が悪い。


 非常に、険悪な理由は、権力争いが主な原因であり、いつも同じ帝国の組織同士で対立していた。



 その理由は、管轄区域を廻って、どちらが治安維持や占領政策を行うか。


 今倒したばかりのレジスタンスは、軍・警察どちらによる手柄なのか。



 他にも、軍事予算と治安維持に掛かる費用・補給物資と人員・最新装備と兵器の保有数など。


 こう言った、様々な問題で、彼等は深刻に対立していたのだ。



 帝国が手に入れた、植民地惑星の捕虜や住人を、両組織で取り合うなど、最早、日常茶飯事なのだ。



「大尉、我々は貴女達の反対側から地下に侵入して、連合軍コマンドーを殲滅しました」


「良かったな? では、私は忙しいから、これで失礼させて頂くっ!」


 ザミョール中尉の戦闘報告を、聞く暇も無く、フォイルスニェーク大尉は立ち去ろうとする。



「ふんっ!」


「はあ…………」


 早々に、装甲車にまで、立ち去ろうとする、フォイルスニェーク大尉。


 彼女を、ザミョール中尉は追い掛けようとはせず、黙って見送る。



『…………さて、現場検証は、このグールとするか? …………』


「煙草を吸わねば、落ち着かないわっ!」


 そして、副官であろう、グールの下士官と。細かい話をしようと考えた、ザミョール中尉であった。


 一方で、後ろ姿を見せる、フォイルスニェーク大尉は、非常に機嫌が悪そうだ。



 彼女は、黒いBTRー82装甲車へと向かい、火を着けていない煙草を片手に、足早に歩いて行く。



「んっと…………」


 突如、BTRー82の上から、フードを深く被る、足元まで黒いマントを着た何者かが現れた。


 奴は、いきなり暗殺者みたいに、地面に飛び下りてきたのだ。



 そして、不審者は、フォイルスニェーク大尉の前に飛び下りる。


 次いで、疾風が吹き抜けるかの如く、素早く近づき、背後に回る。



「危ない、レジスタンスの生き残りが居たかっ!」


「喰らえっ! レジスタンス野郎がああっ!!」


 ザミョール中尉の背後に控えていた、レオとカルミーネ達は、直ぐに拳銃を取りだす。


 次いで、銃口の先端を、正体が何者か分からない暗殺者に向けた。



「動くな、一歩でも動いて見せろっ! そうしたら、俺の脳天を9ミリ弾が貫くぞっ!」


「さもなくば、我々が、お前を撃つっ! これは脅しではなく本気だぞっ!」


 怒気を含んだ、叫び声を上げた、レオは即座に、ワルサーP5Lを構える。


 一方、カルミーネは、タンフォリオT95を両手で力強く握る。



「止めろ、彼に何をする気だ、貴様らはっ!?」


 二人を止めようと、後ろへ向き直った、ザミョール中尉は、両手で二人を制そうとするのだが。



「まったく、あの時助けて上げたのに」


 謎の人物は、深く被っていた、フードを素早く払い除けた。


 そうして、黒いマントの下から首に巻いた、シュマグと軍服を見せる。



「僕の事は、覚えてるよね? 穴に入った時から顔を合わせてるんだから」


 フードの下に隠されていた、女性みたいな童顔は浅黒かった。


 そして、彼はアイルトン・ブルー色の瞳を大きく開き、ニヤけた表情で、こちらを見ていた。



「やあ、また合ったね?」


「お前は確かっ!?」


「君はあの時のっ!」


 再び出会った、意外な人物の姿に驚いた、レオとカルミーネ達であったが。


 そんな彼等を前にして、ラハーラーは飄々と話す。



「貴様等、私の可愛い部下に銃を向けるとは良い度胸をしているな…………しかも命を助けて貰った上の所業とはな?」


 怒気を含む言葉と、非常に鋭い眼差しで睨む、フォイルスニェーク大尉。


 彼女は、部下である、ラハーラーへと、銃口を向ける二人を威圧する。



 その睨みに気圧された、二人は怖じ気づき、あまりも恐ろしくて、すぐに銃を下ろしてしまう。



『…………何て言う威圧感だよっ! まるで、蛇に睨まれたカエルになった気分だぜ…………』


『…………こっ! 怖いっ! 恐怖でチビりそうだよ…………いくら美しい女性でもこれは流石に…………』


 レオとカルミーネ達は怯えたまま、身動き出来ずに固まっている。


 そんな彼等に杖を向ける、フォイルスニェーク大尉。



「貴様らああぁぁっ! 死ねっ!!」


 フォイルスニェーク大尉の右手に握られた杖は、二人に向けられると、青白く発光し始める。



「待ってっ! 僕が、せっかく助けて上げたんだから生かしてやってよ?」


「…………そうか、お前がそう言うなら? 二人とも生かしてやろう♡」


 杖を向けた、フォイルスニェーク大尉の前に、ラハーラーは立ち、二人に対する処刑を止める。


 それに一瞬驚く、彼女であったが、彼の言葉を聞いてから機嫌良く笑みを浮かべて、杖を下ろした。



「だが、しかし…………今度は無いぞ」


「は…………はいっ!!」


「了解しましたっ!?」


 再び、蛇のように不気味で、冷酷な視線を二人に向ける、フォイルスニェーク大尉。


 そんな彼女の睨みに、レオは返事をして、カルミーネも、ビビりながら返答した。



「じゃあ、私は先に行く…………お前は後から私室に来い、今回の御褒美にたっぷり可愛がってやる」


「…………♡ 楽しみにしています大尉」


 フォイルスニェーク大尉は、ラハーラーの身体に、しがみつく。


 次いで、頭を撫でながら、彼女は耳元で囁くように喋った。



 すると、彼は照れているのか、すごく恥ずかしそうに答える。


 その後、直ぐに上機嫌になった彼女だが、何処かへと歩いて行ってしまった。

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