シングァポール。
光明山晋覚禅寺。
「うわああああああっ!?」
「ああああぁぁぁぁっ!!」
白い壁とオレンジ屋根が目立つ、寺の三階から僧侶たちが投げ落とされる。
空中に飛ばされてから落下した彼等は、地面に叩き付けられて絶命した。
「ぐぅおおおおっ!?」
「うがあ~~~~!!」
ワーウルフ&オーガー達が、まるで理性を失った、ゾンビのように暴れ出した。
それにより、寺内を真っ赤な血と死体で満たされた惨劇の舞台へと染め上げる。
「に、逃げろーー!」
「テロだっ! て、て、テロだっ!」
「いやぁぁ」
「誰か、助けてよーーーー!!」
寺から逃げ出していき、ひたすら走り回る、僧侶や観光客たち。
彼等は、駐車場にある車の後ろや、向かいにある建物へと必死で向かう。
しかし、その背中を狙って、二階や三階から帝国軍兵士たちが、M16やM4を撃つ。
彼等は、東アシュアや東南アシュ系であり、おそらく、拉致され洗脳改造を受けたと思われる。
「ブフッ!」
「ビューー!」
「ぐお…………」
「あ」
その中には、バクテリエラー・ゾルダートが何人か存在しており、口から細菌粘液を撒き散らした。
この細菌テロにより、僧侶や観光客たちは次々と口から泡を吹いて倒れてゆく。
しかし、警察や軍は来ない。
ここだけでなく、市内各地・彼方此方《あちらこちら》で、連続科学テロが発生していたからだ。
ジョホール・シングァポール・コーズウェイ橋。
「爆破準備が、完了しました」
「よし、このまま撤退だ」
帝国軍・特殊部隊により、橋には大量のC4が投棄されていた。
白いバンに乗る、白人観光客に変装した、帝国軍・特殊部隊員たち。
彼等の乗ったバンからは、次々と路上に空き缶が投げられている。
その中身は、もちろんC4爆薬である。
「なんなんだよ、あの前の車っ!」
「煽り運転か?」
後ろを走る乗用車に乗った、シングァポール人たちは、物凄く態度が悪い、前を走るバンに愚痴る。
しかし、次の瞬間、ドンッと爆発が起こる。
それによって、乗用車に乗っている二人は叫ぶ間も無く、車ごと海に吹きとばされた。
ほかにも、連続爆発により、橋を渡っていた様々な車両が破壊される。
橋自体も、酷い損傷を受けて、使い物に成らなくなった。
また、この橋は水道パイプも通っており、これにより、パイプラインも寸断される事となった。
マレーシュア・シングァポール・セカンドリンク橋。
「あちらは上手くいったようだな?」
「ああ、こっちも爆弾を用意しなきゃ成らん」
ここでも、観光客に変装した帝国軍・特殊部隊の兵士たちが破壊工作を行おうとする。
彼等の乗った白いバンは、しばらくは何もせず橋をただ通過しようとする。
「そろそろ頃合いだな」
隊員の一人が呟くと、バンは屋根が左右に開き、さらにドローンが続々と空へと放たれた。
「ハハッ! 楽勝だな?」
「いや、待てっ!!」
「そこの車、止まれっ! シングァポール警察だっ!」
「動くなっ! 動くと撃つ」
「ドローンを全て撃ち落とせっ!」
「了解しましたっ!!」
バンの中で、笑いながら帝国軍・特殊部隊員たちは任務が終わったと思っていた。
しかし、背後を走っていた覆面パトカーから、二人の刑事がSR88A自動小銃を構えて出てきた。
また、その後ろを走っていた緑色に塗装された、バンからは陸軍兵士が飛び出してきた。
しかも、彼等はSAR21ブルパップ銃を構えながら素早く走る。
そして、宙を舞う無数のドローンなども精密射撃で、連射しながら、次々に撃ち落としていく。
「降伏しろっ!」
「逃げ場はない」
そう告げる、シングァポール警察の刑事たちだが、白いバンは突然発進した。
「クソ、逃げる気かっ!!」
「逃がすかっ!」
刑事や陸軍兵士たちは、白いバンに向かって激しい銃撃を加える。
「たく、捕まってたまるかよ」
「冗談じゃねえぜ?」
白いバンの中では、帝国軍・特殊部隊員たちが愚痴を呟く。
悪態を吐く連中だが、それもすぐに終わってしまった。
「ぐわあ~~~~?」
「ヤバイ、わっ!!」
突如飛来した、MD530G偵察攻撃ヘリコプターから銃声が鳴った。
マレーシュア特殊部隊員による、バレットRECー10セミオート狙撃銃が撃たれたからだ。
次いで、四輪のコンドル装甲兵員輸送車が、橋を猛スピードで走ってきた。
その中から、ウッドランド・デジタル迷彩に身を包んだ特殊部隊員たちが出てきた。
モスバーグM590ショットガン、シグSG553ライフル等を装備した彼等は、銃を構える。
それにより、先ほどの狙撃で転倒した、バン内で帝国軍・特殊部隊員は騒いだ。
しかし、それ以降は沈黙する。
「そっちは無事か?」
「大丈夫だ、それより…………うわ?」
「退避っ!?」
「あわわわわ…………」
マレーシュア陸軍特殊部隊・隊長が、シングァポール警察の刑事に話しかけた。
と、その時、急にバンが倒れていた場所を中心に橋が崩落し始めた。
両軍の兵士たちは、慌てて走りだし、車に乗って崩落現場から去っていった。
「爆薬ドローンはな、他にもあったんだよ…………連中はただの囮さ」
そう呟きつつ、茶髪の白人男性は、崩落した橋を遠くから眺めた。
彼は、個人所有のクルーザに乗りながら戦場で優雅にトロピカル・ジュースを飲む。
そして、空飛ぶデジタル・ウッドランド迷彩を施された、MD530Gをボンヤリと見つめる。
橋の下や柱には、C4を抱えた、自爆ドローンが既に設置されていた。
それが、爆発したことにより、シングァポールとマレーシュアは陸路が完全に寸断されてしまった。
こうして、両国は、帝国によるテロ攻撃で、経済的に大打撃を受けた。
マレーシュア。
タンジョン・プテリ・リゾート。
「さて、お集まりの皆様? 帝国の臣民になる覚悟は出来ましたかな?」
「分かっている、もう連合はダメだ」
「帝国の技術なら若返りも期待できそうね」
「報酬は幾らで、それなりの地位を寄越すってのは本当かぁ?」
「そんな事より、家の娘はっ!」
「あの娘は、私たちの宝なのよっ!」
白いストライプ模様が入った黒スーツ姿で、白髪・碧眼の白人男性が語りだす。
白い壁と黄色いカーテンに囲まれた、会場内には、さまざまなアシュア系の人種が集まっていた。
マレーシュア軍の高級将校は、帝国側に機密情報を流す気だ。
シングァポール超富裕層に属するマダムは、自身の美容にしか興味がない。
チィナーズ・マフィアのボスは、単純に帝国が支払う金目当てだ。
他の国からも、政府高官や財界要人に裏社会で有名な人物などが、ここには存在する。
そんな中で、ティー巨大貿易会社の社長夫妻は、娘を心配して騒ぎだす。
「まあ、まあ、落ち着いて…………皆さまが帝国側に着いて下さるならば危害は加えませんし、それなりの厚待遇で歓迎しますよっ! チィーナ武装警察や元共産党員の方々のように…………それと、娘さんは無事です」
笑顔で話すのは、帝国により送られた離間工作を専門とするスパイ。
「ソラヤ、入って来なさい」
「はっ! 了解しましたっ!」
スパイが娘を呼ぶと、野戦帽を被り、帝国軍兵士の格好をした女性が、会場に入室してきた。
「クソ、ふざけるなよっ!」
「ぁぁ…………」
「ふざけてませんよ、真面目な話です? 御両親、娘さんが可愛かったら我々の計画に同意して下さいね、でないと? ソラヤ、頭に銃を突きつけろ…………」
「はい、実行しますっ!」
父親は、真っ赤な椅子から立ち上がり、両手を黒い長テーブルに叩きつけた。
母親も、驚きのあまり眼を見開いて、口から小さな言葉しか出なくなってしまう。
「ね? このように、命令することも可能なんですよ…………娘の命が大事だったら、計画に参加して下さいよ? もちろん、計画成功の暁には貴女たちに洗脳を解いた可能を返しますから」
「ク…………」
「うっ! ううっ!」
スパイの言葉を聞いて、社長夫妻は何も反論することが出来なかった。
このように、東南アシュア地域でも、帝国により秘密裏に非道な工作が行われていた。
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