室内に、多数の敵兵が突入してきた事で、連合側は負け始めていた。
「来てるぞっ! 喰らえっ!」
褐色肌のラテン系に見える、レステルはボサボサ髪が生えた頭を揺らしながら毒ガスを吹いた。
彼の顔は、傷と煤《すす》まみれで分からなかったが、正体が毒撃兵スパルトイだった。
「ぐああっ!?」
「ぐぅ…………」
噴出された緑色の毒ガスにより、突入してきた帝国軍兵士たちは倒れてしまう。
「こっちからも来てるねっ! 連中、砲撃を止めて突入に切り替えたようだっ!」
「援護するよっ!!」
68式拳銃を発砲しまくるパトリシアの背後から飛び出た、フランシーヌは援護射撃を開始する。
彼女も、ストックレスAKを乱射しながら突入してきた、帝国軍兵士たちを射殺する。
「ワーウルフが来るよっ!」
「分かっ!?」
パトリシアとフランシーヌ達は、奥から現れた青ラバースーツの突撃兵ワーウルフを警戒する。
二人とも、銃弾を乱れ撃ちしながら、奴を止めようとするが、動きが素早く一発も当たらない。
「そんな攻撃が当たるかっ!」
ワーウルフは、一直線に走るのではなく、ジグザグに動き回る。
しかも、壁を蹴ったり、四つん這いで跳び跳ねたりしながら突撃して来るのだ。
「不味いっ! 突破されるっ!」
「うわああああぁぁっ!」
「ぐあ…………」
パトリシアとフランシーヌ達は悲鳴を上げて、死を覚悟した。
しかし、ワーウルフの鋭く輝いた爪が、二人に届くことはなかった。
「どうやら、死んだようねっ!」
メルヴェが、RDIストライカーを一回だけ撃ったからだ。
「散弾銃かい?」
「そうよ、でも残り弾数が少ないわ」
「それより、こっちからも来るぞっ!」
「分かっているわよ」
フランシーヌの問いに、メルヴェは答えながら回転男装を見ると、残弾数が僅かだと分かった。
その間、レステルは、ファマエ短機関銃を撃ちまくり、残弾がなくなった。
パトリシアは、68式拳銃を撃ちながら、彼の背後に移動する。
その間も、帝国軍兵士たちは、段々と向かってくる。
「クソッ! 弾倉を切り替えるよりっ!」
「支援するっ! 早く身を隠せっ!」
ファマエ短機関銃を床に置いた、レステルは、コルト・コブラ、リボルバー拳銃を何発か撃った。
彼の背後から、ナタンがAK12を連射しながら後退するように伝える。
「分かった、いったん離れる」
「敵は、まだ来るっ! 油断するなっ!」
レステルは、左側の部屋へと退避しつつ、ファマエ短機関銃から弾倉を抜く。
その間も、ナタンはAK12を何発か連射しながら敵を食い止める。
「連中、こっちに居るぞっ!?」
「装甲兵と防弾兵を前に出せっ!」
帝国軍部隊は、叫びながらも部屋の入口などに身を隠しながら移動してくる。
連中は、前面にRPKー74分隊支援火器を装備した、シュヴァル・リッターを押し出してきた。
その後には、暴徒鎮圧部隊で使われる重装備に身を固めた、防弾兵が続く。
「不味いわっ!?」
「とにかく、撃ちなっ!」
メルヴェは、RDIストライカーから素早く何発も散弾を放った。
フランシーヌも、ストックレスAKを乱射しながは右側の部屋に逃げ込む。
「このまま、押しきってやる」
「させるかっ! うわっ!」
前進してくる、シュヴァルツ・リッターに対して、ナタンは右側の部屋からAK12を出した。
だが、その途中で奴が乱射した弾丸が機関部を破壊してしまい、黒い破片が飛び地った。
「おい、大丈夫かっ? 今は下がれ」
「分かってる、しかし…………」
レステルは、左側の部屋からレミントン、モデル870を何回か発砲する。
ナタンは、引き下がりながらも、MASー1935を取り出し、二丁拳銃で敵を待ち構える。
「もう、お前たちは終わりだっ!」
「クソッ! 来るなっ!」
「来ないで、ちょうだいっ!」
「いや、終わるのは、お前らだ…………」
RPKー74分隊支援火器を連射しまくりながら移動するシュヴァルツ・リッターだが。
奴を止めようと、ナタンは二丁の銀色に光るMASー1395を、ひたすら乱射しまくる。
メルヴェも、床に伏せながら、サルマスシズK10を両手で構えて撃ちまくった。
二人とも、流石に負けるかと思ったが、機関銃用の弾薬箱が後方から投げられた。
「は?」
「どうし、ぎゃあっ!」
「ぐわわっ!」
弾薬箱の正体は、シェイプシプターが使う爆弾であり、中身は梱包爆薬が詰まっていた。
これにより、帝国軍の突撃部隊は何人かが爆発で死んでしまった。
「く、怯むなっ! 前に?」
「ぐおお…………」
「進ませる訳が、ないだろ」
残る防弾兵は、タカヤマのバレットM95から放った弾丸により、二人纏めて射殺されてしまう。
「一旦、引き下がるぞっ! 階段まで後退しろっ!」
「フラグ投擲っ!」
装甲兵と防弾兵が居なくなった、帝国軍部隊は、後方へと退避し始めた。
「待てっ! 逃がすかっ!」
「待ちなさいっ!」
「おい、深追いはするな」
「それに、まだ外にも敵は存在する」
ナタンは、二丁拳銃を乱射しながら帝国兵たちの背中を狙う。
メルヴェも膝だちで、両手に握る、サルマスシズK10を発砲する。
しかし、何の種類か分からない手榴弾を警戒して、レステルは敵を攻撃しなかった。
タカヤマも、直ぐに部屋の中で行われる砲撃戦に戻っていった。
「ぐわっ! んん、これは?」
帝国軍兵士が後退したあと、残された防弾兵の遺体から、ナタンは小銃を拾った。
「ナタン、まだまだ来るから気をつけてっ!」
「メルヴェ、分かっている」
メルヴェは、左側の部屋に引き下がりながら、ナタンを援護射撃する。
一方、彼は防弾兵の遺体を引きずりながら、AMDカービンを適当に乱射する。
「ここで、寝ていろっ!」
ナタンは、部屋の入口まで来ると、防弾兵の遺体を床に置いた。
エビテール型ヘルメットに、フェイスバイザー、全身を覆うプロテクター。
そして、彼は青い制服から察するに、この兵士がフランシュ州出身だと推測する。
おそらく、複数ある憲兵隊や特殊部隊から派遣されたのだろうと思った。
「弾薬は貰うぞっ!」
部屋の中で、タクティカルベストを脱いだ、ナタンは二丁拳銃で敵を牽制する。
そして、隙を見て防弾兵の遺体からベルトと弾帯を抜き取った。
「こっちから来たよっ!」
「撃ち殺…………?」
「まて、味方だっ! だから死んでくれっ!」
パトリシアとフランシーヌ達は、敵が現れたと思って銃を構えた。
しかし、現れた男は、赤ベレー帽を被る緑色の野戦服を着ていた。
それで、油断した彼女らを、奴はMP5Kで狙い撃ちしてきた。
「ぐっ! このやろうっ!」
「死にやがれってのっ!」
「ぐわ…………あ、ああ」
フランシーヌは、何発か銃撃を喰らったが、防弾ベストにより、肩を負傷しただけで助かった。
そして、パトリシアとともに反撃して、変装兵ヴァンパイアを倒した。
「まだ、まだ、敵が来るね?」
「おいっ! 今度は正面から来たっ!」
「二人とも、助けてくれぇ~~!」
「この数は…………不味いです」
パトリシアは、68式拳銃を構えながら敵が近づいてくる様子を伺う。
そして、部屋の方から、ウェンとチュー達が救援を求めて来た。
アイリーも、単発射撃しながら苦戦しているようだった。
こうして、今度は帝国軍歩兵部隊が正面から攻めてきた。
「どうしたっ! うわっ!?」
「ぐがっ!?」
「うっぐぅぅ…………」
「この野郎っ!」
ナタンが急いで部屋に飛び込むと、そこでは激しい白兵戦が展開されていた。
女ワーウルフが、191式重機関銃を持っていた、チィーナ兵の顎《アゴ》を蹴り飛ばす。
ドライアドが、自衛隊員の首をコンバットナイフで切り裂く。
帝国軍兵士の頭を、ワンは88式汎用機関銃を振り回して、銃床で勢いよく殴った。
「中で戦闘がっ!!」
「ヤバイねっ!」
「うああああっ! あ…………」
「うぐぅ? がっ!! が」
「こっちは、俺達が抑えるっ!」
「他の人は、部屋に行って」
メルヴェは入ってくるなり、帝国兵をサルマスシズK10で撃ち殺す。
フランシーヌも、AK用バナナ弾倉で、帝国兵の腹を叩き、次いで頭を何度も蹴飛ばした。
部屋の外からは、パトリシアとレステル達が敵と交戦している銃撃音がする。
こうして、帝国側は、あらゆる場所から建物を制圧しようと攻めてくるのだった。
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