【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第299話 次の世界へ

公開日時: 2024年7月12日(金) 17:52
更新日時: 2024年7月15日(月) 08:43
文字数:3,519


 八人の警察隊員は、二階で、車が走ってくる音を聞いた。



「おっ? 隊長が到着したぞっ!」


「あっ! 本当だわ」


 レオとメルヴェ達は、廊下の窓から敷地内に車両が走ってくる姿を見た。


 黒いメルセデス1913、37/95偵察車&青い水陸両用車トリッペルSG6だ。



「送って貰って、悪かったね? 車の整備を理由に少しは休んでいきなよ? あと、渡したい物もあるし」


「中尉、整備兵を呼んできますっ!」


 フロスト中尉が到着すると、メルセデス1913、37/95偵察車の後部座席から降りる。


 ネージュ準尉も、後部座席の右側から出てくると、直ぐに走って行った。



「はっ! 有りがたき、言葉ですが…………」


「私達は、先を急いでまして」


「あーー? そちらの隊長は、かなり煙草が好きだったろう? 高級な物が入手できたから、今後の付き合いを考えて、贈答品として、プレゼントしたいんだ」


 二人とも、黒いシュタールヘルム1918年型を被り、第一次世界大戦時の簡素な軍服を着ている。


 そして、両足に履いた茶色いブーツは、灰色のゲートルが巻かれていた。



 仮面を着けているのか、真っ白な骸骨顔をした警察隊員は、申し出を遠慮する。


 かなり崩れた、ゾンビ顔の警察隊員も同じく、休む暇はないと断る。



 しかし、フロスト中尉は何とか止めようとする。



「まあ、かなりの量だから運ぶのに、少し時間がかかる? それに、連合側からの応酬品なんだが、こっちの兵士に運ばせるから」


「どうする? ヘルマン」


「ルドルフ、せっかくだから受け取ろう」


 フロスト中尉による説得に、二名の警察隊員たちも納得したらしい。


 ゾンビ顔は、ルドルフと言うらしく、茶色いベルトを身に付け、弾帯を左右二個ずつ装着している。


 その背中には、G98小銃を背負っていた。



 スケルトン顔は、ヘルマンと言うようで、首の両側から布袋を下げている。


 両手には、MP18短機関銃を持っている。



「君たちも休んでいたまえ?」


「了解です」


 フロスト中尉は、水陸両用車トリッペルSG6を警備する警察隊員にも声を掛ける。


 彼は、黒いシュタールヘルムM42を被り、武装親衛隊の制服を着ている。


 両手には、ドライゼMG13汎用機関銃を持っていた。



「それじゃあ、煙草を運ぶように伝えてくる」


 フロスト中尉が、城内に向かう時、周りの警察隊員たちを、チラリと見た。


 降下猟兵用シュタールヘルムを被る警察隊員は、フィールドブルーの軍服を着用している。



 背中には、ラインメタルFG42自動小銃、後期型を背負っていた。



 黒い野戦帽の警察隊員は、軍服コートを羽織っており、MP38短機関銃を持っている。


 略帽を被る金髪ピクシーヘアの女性警察隊員は、黒い軍服を着て、紺色スカートを履いていた。



 両手には、マウザー・シュネルフォイヤーを握っていた。



「連中、第一次世界大戦と第二次世界大戦の兵士みたいだな?」


「帝国は、それだけ多世界を支配下に置いてるのよ?」


 疑問に思うカルミーネに、ミアは両腕を組みながら答える。


 その時、輸送ヘリ、Kaー60カサートカが轟音を立てて、敷地内に着陸した。



「ラヴィーネ大佐だ、何の用だろうか?」


「フロスト中尉に会いに来たとか?」


 ナタンとメルヴェ達は、Kaー60カサートカを眺めて呟く。


 すると、中から二名の護衛を連れて、ラヴィーネ大佐が降りてきた。



 その時、彼女は窓に映る、二人を睨んでいた。



「どうしたんだ?」


「緊急の用事かしら?」


 キーランとベーリット達は、いきなり姿を現れた、ラヴィーネ大佐が何のために来たか考える。



「貴様らが、私の可愛い部下たちを殺害したようだな? よくも小飼にしていた、サビナとリュファスを殺したものだ、大した奴らだっ!! キャーーハッハッハッ!!」


 八人が、廊下で窓を眺めていると、右側から護衛を連れた、ラヴィーネ大佐が怒鳴りながら現れた。


 彼女は、狂気的な笑みを浮かべつつ、ライヒスレボルバーを撃つべく腰に手を伸ばす。



「大佐、お待ち下さい、そちらの潜入工作員が私の部下を嵌めようとしました…………しかし、彼らは自身らの脇の甘さにより、レジスタンスと二人に倒されたのです」


 だが、そこに背後から現れた、フロスト中尉が止めに入る。



「つまり、私の部下は貴様の部下よりも、雑魚だったと…………」


 ラヴィーネ大佐は、自身の部下たちを殺した、ナタンとメルヴェ達を未だに処刑しようとする。



「はい…………しかし、彼らは帝国を裏切りっていました、幾つかの情報がレジスタンス側に漏れてましたし」


「ふん、それは私自身が連中を信用させるため、わざと流させた情報だ」


 フロスト中尉の言い訳に対して、反論するラヴィーネ大佐。



「ですが、それにより、こちらの工作員も身が危険に曝されました…………彼らは二人の正体をレジスタンス側に教えようとしましたし…………」


 ナタンとメルヴェ達を、助けようと何とか説得を続ける、フロスト中尉。



「また、サビナに関しては、ただ単に工作員であるとバレてしまいました…………リュファスに関してはナタンとの死闘の末に殺害されました」


「ああ、要するに私の部下達が間抜けだったと言いたい訳か?」


 フロスト中尉による必死の説得を聞いても、ラヴィーネ大佐は怒りを沈める事はない。



「では、フロスト、貴様が責任を取って死ぬがいいっ!」


 ラヴィーネ大佐は、怒りの矛先を今度はフロスト中尉に向ける。


 そうして、彼女が、ライヒスレボルバーを彼の眉間に突きつけた。



 しかし、チャキッと音を出すだけで、弾丸は発射されなかった。



「…………と、思ったが? ふむ、今度は貴様の勇気と、優秀な部下達に免じて赦してやろう」


「ありがとう御座います」


 何とか、ラヴィーネ大佐の怒りは収まり、フロスト中尉は感謝する。



「だが、次はない? それから、お前達のような優秀な工作員が欲しいものだ」


「はっ! 肝に命じておきますっ! それから、工作員が欲しければ何時でも言って下さい」


 ライヒスレボルバーに弾丸を込めると、ラヴィーネ大佐は歩き出す。


 そうして、再び右側から、フロスト中尉に銃口を向けた。



「その時は、ナタンとメルヴェを死んだ連中の変わりに補填して貰おう? まあ、邪魔したな」


 それだけ言うと、ラヴィーネ大佐は護衛を引き連れて帰って行った。



「ふぅ~~終わったね? さあて、僕を送ってくれた部隊も見上を積んだようだし、別れの挨拶を告げてくるよ? その後、午後から地下室で説明会を開くから待っててくれ」


「中尉、ありがとう御座いますっ!」


「助かりましたぁ…………」


 フロスト中尉に、ナタンとメルヴェ達は直ぐさま感謝して礼を言った。


 二人は、蛇に睨まれた蛙《カエル》の如く、ラヴィーネ大佐には、ビビって全く動けなかった。



「礼は良いさ、それより、きちんと説明会には参加するんだよ、遅刻は厳禁だからね」


 それだけ言うと、フロスト中尉も外の部隊に別れを告げるため、歩いて行った。



「午後から説明会か? いったい、何を話すのだろうか?」


「きっと、いよいよ、異世界への侵攻作戦でも始めるから、その説明じゃない?」


 カルミーネとレギナ達は、説明会の議題は何だろうかと話し合う。


 そうこうしている内に、あっという間に時間が過ぎてしまった。


 地下防空壕の広大な空間に集まった、第二小隊・隊員たちは、四隊に別れて整列している。



「やあ、みんな? よく集まってくれたね? この世界も後僅かな領域にしか、もう連合側は存在しないっ! 南アフレアの南端、一部ニューギニア地域、南アルメア最南端…………帝国は、この星をほぼ手中に納めたと言っていいだろう」


 フロスト中尉は、スクリーンに星が映し出されると、壇上で演説を始めた。



「さて、ここで、説明する世界の名前は、地球《アース》っ! 我々が侵攻した時、ヴァースは難民危機に見舞われていた」


 次に、全く同じ星が映像に登場すると、フロスト中尉は大きな声で説明を続ける。



「しかし、アースは更に酷い場所だっ! なぜなら、ロシアとウクライナは戦争中だし、中国と台湾は戦争間近だっ! さらに、日本・韓国・北朝鮮も戦争には巻き込まれるだろう」


 様々な媒体で流されている映像を、フロスト中尉は警察隊員たちに見せながら語り続ける。



「中東情勢も中々だ、イスラエルはハマスと交戦しながら、アラブ諸国に包囲されつつあり、難民問題は未だに解決していないっ! さらに、あらゆる組織は腐敗して、テロリストと癒着しているっ! アフリカ諸国や南米も混乱と紛争で滅茶苦茶だっ! さらに、環境破壊も酷いっ!」


 腕を勢いよく振るい、フロスト中尉は怒鳴るように語りかける。


 会場の警察隊員たちは、黙って彼による演説に耳を傾けている。



「こんな脆い世界は、今まで見た事がないっ! 我々は一ヶ月後、この世界に侵攻する」


 フロスト中尉の演説は、拍手喝采を浴びながら終わった。

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