【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第164話 機動部隊と騎兵隊

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:46
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:55
文字数:3,874


 槍騎兵隊は、ナタンとメルヴェ達に向かって、突っ込んでくる。



「真っ直ぐ突撃…………と、見せかけてっ!!」


「こっちね? 行くわよっ!!」


 ナタンが、左に急旋回すると、メルヴェも後に続いていく。


 こうして、二人は狭い路地に入って、槍騎兵隊から逃げていく。



「はあ~~何とか逃げられたわ?」


「連中、もう追って来ないよな?」


「まさか…………こっちに来るとはな?」


「我々が、相手を致しましょう」


 メルヴェは、敵部隊から上手く逃走できたと思い、ため息を吐きつつ安堵する。


 ナタンも、後ろを向いて、騎兵が追撃して来ないことを確認する。


 しかし、二人の正面には、また新たな敵が黒馬に跨がり出現した。



 片方は、軍服の上に、漆黒のロングコートを着用している。


 また、肩には、チュートン騎士団の黒い十字架が描かれた、白いマントを羽織っていた。


 脚には、黒い乗馬ズボンに、漆黒の乗馬ブーツを履いている。



 腰のベルトからは、帯刀しているピロー・ソードが引き抜かれた。


 

 もう片方は、頬に青筋が浮かび上がる程、血色が悪い蒼白い肌の持ち主だ。


 彼の体中には、蛙《カエル》や蛆《ウジ》が、怪我や腐敗痕などが、黒い刺青《いれずみ》として描かれている。


 当然だが、それらが顔や首にまで描かれていた。



 頭には、制帽を被り、黒い司祭服《キャソック》の上に、コート型軍服を羽織っている。


 首からは、パフェ・グレープ色に染められた、ストラと、銀色のロレーヌ・ロザリオを垂らす。



 こちらも、漆黒の乗馬ブーツを履いている。



 手には、鉛色をした、一メートル程で、細身の出縁型棍フランジ・メイスが確りと握られている。



「貴様らは、我が剣の錆びにしてくれよう」


「神の罰として、頭を潰して上げましょう」


 ドラハンギフト中尉は、制帽を被っている、パールホワイト色の髪を風に靡《なび》かせる。


 モワヌ準尉も、背を屈めながら、出縁型棍フランジ・メイスを横に構えだした。



 二人とも、白兵専用武器を振りかざしながら猛烈な勢いで、黒馬を突進させてきた。



「ヤバいっ! 騎士みたいなのと、僧侶みたいな奴が、突っ込んで来たっ!」


「あんな強そうなの相手してらん無いわよっ! 回れ右っ! 右にっ!」


「逃がすかっ! 貴様ら、真っ向から戦う気概は無いのかっ!」


「なんと、情けない奴等だ」


 ナタンとメルヴェ達は、敵が二人しか居なくても、その雰囲気から隊長格クラスだと察する。


 そして、何かヤバい感じがすると判断した、彼等はバイクの向きを変えて、真後ろへと逃げ出した。



 しかし、ドラハンギフト中尉とモワヌ準尉たちは、それぞれ、白兵専用武器を片手に追ってくる。


 バイクと黒馬だと、前者の方がスピードが速くなり、逃走するには有利かと思われた。



 だが、そう簡単に、敵から逃げられるはずがない。



「前方、左から来るぞっ!」


「ヤバいわっ!」


「…………ウィンド・ランス」


 ナタンとメルヴェ達は、正面から敵が来ても、後ろに下がる訳にも行かず、前へと進むしかない。


 十字路から現れた、二頭だてのワゴネット馬車を見ても、二人はバイクを速度を上げて走らせる。



 対する、向こうの方は、車上から女性魔術師らしき者が、風刃魔法を乱発してきた。



「うわっ! 当たったら一撃で死ぬぞっ!」


「不味いわっ! 左右に避けましょうっ!」


「我々も避けるぞっ!」


「はっ! 分かりました、隊長っ!」


 ナタンとメルヴェ達は、左右に別れて、風槍を回避しようとした。


 同じく、二人を追撃していた、ドラハンギフト中尉とモワヌ準尉たちも、回避行動を取る。



 その間も、業者が操る、ワゴネット馬車からは、風刃魔法が連続で放たれる。



「不味いっ! だが、このまま突っ込むしかないっ!」


「あの魔法使い? いや、ウィザードは強敵だけど、行くしかないわねっ!」


 ナタンとメルヴェ達の進む正面からは、ウィザードが二人を近づけまいと、雷撃魔法を放ってくる。


 奴は、大きな薔薇《ばら》の髪飾りを二本と、スミレ色をしている羽飾りを付けた、黒い唾広帽《キャペリン》を被る。


 顔には、大きな丸眼鏡を掛けており、冷利な雰囲気を醸し出す、パウダーアクア色の瞳が目立つ。


 ペールホワイト色ピクシーショートヘアと、バイキング・ブルー色の唇は幼さを感じさせる。



 その見た目からは、彼女は想像もできないほど、紫電を放電してきた。



「うわっ! 電撃がっ!」


「これは、避けられないわっ! いや、もう行くしか無いわっ!」


 扇状に放たれた雷撃魔法を、回避するのではなく、ナタンとメルヴェ達は、真っ直ぐ突き進む。



「…………チッ!」


「やった、すり抜けたっ!」


「死ぬかと思ったわ…………」


 結果、ヴァリィズニ兵長が放った協力な雷撃魔法に当たることなく、二人は左右から避けられた。


 そして、ナタンとメルヴェ達は、このまま敵から離れようと、バイクを加速させる。



「ヒヒーーンッ! ブルルッ!」


 しかし、二人の頭上左側から蒼ざめた馬が、屋根を飛び越えてきた。


 そいつに跨がった、女性騎士は着地すると同時、即座に後ろに振り向く。



 奴は、ナタンとメルヴェ達を獲物として、狙うべく、素早くロングボウから矢を放ってきた。



 さらに、馬を回頭させると、今度は背中の鞘から、グレートソードを引き抜いた。



「うわっ! かなり、正確な射撃だっ!」


「そんな事より、前から奴が来るわよっ!」


「胴体を斬るっ! ふぅん…………」


 放たれた矢は、ナタンの右耳を掠めていき、二発目は首に切り傷を付ける。


 メルヴェにも、射撃が当たり、左膝のズボンを切り裂いてしまう。



 そして、女性騎士は、いよいよ二人へと、グレートソードを片手に迫り来る。



「くっ! 来るぞっ! 不味いっ!」


「このままだと、斬られちゃうわっ!」


 女性騎士は、全身を漆黒のフルプレートアーマーに包んでいる。


 頭部は、口許部分だけ、素顔が見える漆黒のアーメット状をした、兜を被る。



 その後頭部からは、ゴールド・スパーク色に輝くロング・ウェーブパーマ髪を風に揺らしている。


 彼女は、藍色に染まった唇と、白い頬しか分からず、その素顔は謎に包まれている。



 ナタンとメルヴェ達は、かなり不気味な女性騎士を前に、左右へと互いに、バイクを離そうとする。


 こうする事で、どちらか一方が、斬激を引き受けようと言う算段だ。



「斬るのは貴様だっ!」


「げっ! こっちかよっ!」


 ヤーブモリ軍曹は、ニヤリと口角を吊り上げながら、ナタンの方へと蒼馬を走らせる。


 そして、彼女が右手に握っている、グレートソードが、彼の首を狙って振るわれんとした。



「RPGだっ!」


「喰らえっ!」


「ぐふっ!?」


「ヒヒーー!!」


「な、ななな? なんだっ!」


 しかし、その一撃が放たれる前に、別な場所から砲撃が飛んできた。


 対人弾頭OG7Vを、取り付けた、RPGー7を持った、レジスタンス部隊が攻撃してきたのだ。



 これにより、無数の破片が、ヤーブモリ軍曹へと襲いかかった。


 また、それが直撃した、蒼馬は苦しそうに叫びながら、路上に倒れてしまった。



 こうして、ナタンは間一髪のところで、何とか窮地を救われた。



「やったぞっ!」


「他の連中もっ!」


 屋根の上から、白人レジスタンス員は、RPGー7に次弾を取り付ける。


 黒人レジスタンス員も、AK47Sに武器を持ち変えて、二人を狙う追撃部隊に照準を合わせる。



「味方部隊かっ! 助かっ? うわっ!」


「まだ、油断禁物よ、ナタンッ!」


 ヤーブモリ軍曹が落馬しても、他の帝国警察部隊は追撃を止める気配はない。


 後方から、紫電と風槍を乱発された、ナタンとメルヴェ達は、姿勢を低くしながら逃げてゆく。



 それしか、今の二人には出来ることが無いからだ。



「援護するっ!」


「次は、奴等だっ!」


「殺らせるかよっ!」


「喰らえっ!!」


 白人レジスタンス員は、対人弾頭OG7Vを、後方のワゴネット馬車へと、射ち放った。


 黒人レジスタンス員も、AK47Sを滅茶苦茶に乱射しまくった。



 アシュア系レジスタンス員は、屋根に伏せて、PKを連射しまくり、追撃部隊を牽制する。


 ラテン系レジスタンス員は、スコープをキャリングハンドルに取り付けた、M16を連射する。



「ぐっ! 殺られて、たまるかっ!」


「危ないっ!」


「我々は、一旦停止せねばっ!」


「ぐっ! 屋根から攻撃してくるとは…………」


 ヤーブモリ軍曹は、近くの建物へと逃げ込み、ヴァリィズニ兵長は、雷撃魔法を展開させる。


 それにより、紫電の壁を作り、弾頭や銃弾を弾こうと試みた。



 二人の隙を見て、攻撃しようとしていた、ドラハンギフト中尉とモワヌ準尉たちも、馬から降りた。


 そして、彼等も付近の家屋へと逃げ込んでいき、レジスタンス側による集中砲火を避けようとした。



「やった、これで奴等は、追って来られない」


「やっと、追撃から解放されるのねっ!」


 ナタンとメルヴェ達は、バイクの速度を下げながら後方を確認する。


 そうして、ようやく敵の執拗な追跡から逃げきれたと思った。



 だが、帝国警察も、そう甘くはない。



「うわあっ!! 凄い風圧だっ!!」


「ドラゴン? いや、アレは?」


 黒いスカルドラゴンが、空中から滑空してきて、強風を吹かせる。


 ナタンとメルヴェ達は、それを前方から受けながら滑空してくる、骨竜を眺める。



 背中に乗っているであろう、操縦者までは見えないが、大型ヘリ程もある黒い巨体は目立つ。


 アレは、おそらく帝国が異世界から連れてきた怪物の一つだろうと、二人は思った。



 そして、彼等が警戒する中、敵から攻撃が放たれるのだった。



「ギャアアアアーーーー!! ブシュアアーーーー!?」


「ぐああああっ!」


「ぐえーーーー!?」


 スカルドラゴンは、レジスタンス側部隊に向かって、口から毒ガスを噴射した。


 これにより、辺り一面が、真っ青な毒霧に包まれてしまうのだった。

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